国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は2021年8月、大幅に温室効果ガスを削減しない限り、21世紀中に地球温暖化は1.5~2度進むという予測を発表した。報告書では「人間の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化したことは明白である」と述べられており、温室効果ガスの削減は、いよいよ待ったなしの課題になろうとしている。
こうした難題を解決すべく、温室効果ガスの削減や地球温暖化対策に焦点を当てたClimate Tech(クライメイトテック=気候テック)関連のスタートアップが次々と生まれている。二酸化炭素を石油由来製品の代替になるよう転換して商品パッケージに使用したり、大気中の二酸化炭素を直接収集したりーー。こうした新たな技術を持つスタートアップに投資マネーも向かう。VCによる特化型ファンドが設立される一方、2020年にはAmazonが気候特化のCVCを立ち上げた。
“今そこにある危機”をチャンスに変え、地球の未来を救う一助となると期待を集める気候テックについて、その最前線をお伝えする。
(この記事は最新のテクノロジー動向を英語で伝えるサービスSPEEDA EDGEの記事を元にINITIALが編集・加筆してお届けします)
温暖化対策、待ったなし
2021年8月にIPCCが発表した第6次評価報告書は、改めて私たちが直面する問題を浮彫にした。
報告書では「人間の影響によって大気、海洋、陸地が温暖化したことは明白である」と述べ、「広範かつ急速な変化が生じている」と足下の状況を説明している。
未来の展望も明るくはない。大幅な排出削減策を直ちに実施しても、温暖化が進む可能性は高まっている。報告書によると、最も楽観的なシナリオでも、地球の気温は2050年代までに産業革命前と比べて1.5℃上昇。より可能性の高いシナリオでは、2100年までに少なくとも2〜2.5℃上昇すると予測されている。
台風や洪水などの災害を引き起こすとして専門家が指摘する1.5度の気温上昇がより現実的な未来となりつつある。
気候テックの市場規模は急拡大
IPCCのレポートではより深刻な事態が明らかになったが、それ以前から温暖化対策は世界中の関心を集めてきた。日本でも2020年に菅政権が「2050年までに(温室効果ガスの排出を実質ゼロにする)カーボンニュートラルを実現する」と宣言するなど、世界各国も待ったなしの課題と捉えて取り組もうとしている。
この世界的な難題に取り組むべく、米国を中心にClimate Tech(気候テック)企業が育とうとしている。
SPEEDA EDGEの試算によると、米国における気候テックの市場規模は、2020年時点で168億ドル(1兆8480億円)。これが2025年には保守的な予想では207億ドル(2兆2770億円)、標準的な予想で242億ドル(2兆6620億円)、最大に拡大した場合、301億ドル(3兆3110億円)になるとしている。
SPEEDA EDGEでは気候テックとして次の4つの分野を対象に市場規模を試算している。
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