今週のニュースでは建設テックのクラフトバンクと、世界で初めて次世代パワー半導体材料・酸化ガリウムの量産に成功したノベルクリスタルテクノロジーを取り上げる。
クラフトバンクは内装事業とプラットフォーム事業を手がけるユニオンテックから分社化されたスタートアップ。急成長している最中、なぜ分社化し、3.5億円の資金調達をしたのかをクラフトバンク代表取締役社長の韓英志氏に聞いた。
コラムでは米国を中心に広がる、スタートアップに新たな資金調達手段を提供するFinTech企業を紹介する。
建設テックのクラフトバンクは2021年2月に分社型吸収分割により新設されたスタートアップ。クラフトバンクの前身となるのは、ユニオンテックでR&D部門として展開していた工事受発注プラットフォーム事業である。
今回、新会社設立後、初の資金調達をデライト・ベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、複数の個人投資家から行い、総額約3.5億円を調達した。また、ユニオンテックの既存株主であるDCM Ventures、みずほキャピタルも株式交換により新会社クラフトバンクの株主として同社への支援を継続する。
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みずほキャピタルとDCMベンチャーズから資金調達し、急成長を遂げていたユニオンテックをなぜ分社化したのか。分社化と今回の資金調達の背景、今後の展開についてクラフトバンクの代表取締役社長、韓 英志氏に聞いた。
「ユニオンテックは創業以来、内装事業を手掛けてきました。2016年には新たにプラットフォーム事業の展開、2018年には副社長として私が経営参画し、内装事業のデジタル化とプラットフォーム事業の拡大に取り組んできました。その過程でユニオンテック代表の大川(祐介氏)と常々、「プラットフォーム事業が一定規模まで成長すると、①IT建設業として成長、②両事業それぞれに独立性を持たせた上での成長、のどちらかを判断するタイミングが来る」と話しており、時期を見計らっていました。両事業互いに補完しあってユニット・エコノミクスの構築を図ってきましたが、圧倒的な成長シナリオが見えました。それを実現するためには、お互いに独立性を持たせて事業展開することが最善の手段であると考えました(韓氏)」
なぜ今のタイミングで分社化したかについては、「①内装事業、プラットフォーム事業それぞれが成長軌道に乗ったこと、②プラットフォーム事業の成長ストーリーが明確に定まったこと、③コロナ禍で建設業界のデジタル化が一層加速していること、にあります。内装事業はデジタル改革が実り、売上高は35億円、営業利益率も安定的に10%超と、業界ではトップレベルの利益率水準となりました。プラットフォーム事業も順調に成長していることを踏まえ、足元で動いていたシリーズBの資金調達を取りやめ、両事業がいかにして非連続な成長ストーリーを描けるか、という戦略に立脚し、思い切ったチャレンジをしました(韓氏)」
建設テックのスタートアップとしては、2021年に上場したスパイダープラスや、アンドパッド、助太刀などが挙げられるが、各企業が展開する事業と顧客は異なる。
スパイダープラスは、現場の施工管理者(現場監督)向けに建築図面・現場管理アプリ、アンドパッドは現場から経営改善までを一元管理できるプロジェクト管理サービス、助太刀は人手不足解消のためのマッチングサービスを中心にファクタリング・ECなどを展開する。
クラフトバンクについては、工事会社のネットワークを有することを強みに、工事会社と発注企業を直接マッチングさせるサービス「CraftBank」を展開する。建設業界では、多重請負構造による中間コストの発生と信頼できる工事会社を手配することができないという課題が存在する。それを同社が提供する「CraftBank」で受・発注企業を直接マッチングさせることで中間コストを削減できる上、平均3.2日以内、約90%の確率で最適な工事会社とのマッチングが実現する。2021年6月時点では日本全国の専門工事会社の※約20万社のうち、10%に相当する2万3000社が「CraftBank」に登録している。(※令和元年度建設工事施工統計調査報告における許可業者数/国土交通省)
発注企業の課題に工事会社の手配課題が存在する中で、クラフトバンクが高精度のマッチングが実現できる背景には独自で構築した施工力データベースの存在がある。これまで自社で内装業を手掛けながら、受発注マッチングプラットフォームを展開してきたことで、対応可能工事や各工事会社の主要取引先、売上、希望人工単価、工事キャパシティ(職人数)などあらゆる独自データを蓄積しているのだ。
韓氏は今後の展開について、「これまでは施工力データベースにより高精度の受発注マッチングを実現してきました。次なる展開は建設業界版Shopify、BASEのような事業です。工事会社はそれぞれKPIが異なる上、工事フローも異なります。例えば、電気工事だと必ず現地調査が必要になる一方で、メンテナンス工事が不要になる場合が多いなど建設業界は複雑に変数が絡み合っています。どの工事会社でも導入してもらい、価値提供するにはカスタマイズできるサービスの提供が求められます。そこで、クラフトバンクでは実際に工事をする専門工事会社向けに案件管理、手配・見積自動化ツールを、工事会社自らカスタマイズできる管理システムとして提供していきます。ここでも施工力データベースが鍵となるでしょう」と語る。
建設業界の適正化とIPOを見据えて、MBOを選択したクラフトバンク。建設業界のインサイダーとして蓄積したデータとナレッジを活かし、レガシー業界のDXを実現することはできるか。
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