initial-logo

  • 3分でわかるINITIAL
  • ログイン
ログイン
  1. ホーム
  2. オリジナル記事
  3. グローバル投資家が語る、日本のスタートアップ投資と可能性
2021/05/28

グローバル投資家が語る、日本のスタートアップ投資と可能性

  • #VC/CVC
  • #海外

「成長株運用の祖」と称されたトーマス・ロウ・プライス・ジュニアが1937年に創業した、ティー・ロウ・プライス(以下、T.Rowe)。米国を代表する機関投資家だ。他社に先駆ける形で2015年から日本のスタートアップに投資を始めている。

T.Roweに続く形で、日本のスタートアップ投資において、フィデリティ・インターナショナルやKKRなど海外VC・機関投資家の存在感が増してきた。

海外投資家はなぜ今、日本のスタートアップに関心を寄せるのか。他の国と比較した日本のスタートアップの魅力はどんなところにあるのか。T.Roweで日本株式運用のポートフォリオ・マネジャーを務めるアーシバルド・シガネール氏に聞いた。

CONTENTS

日本のスタートアップ投資の魅力と難しさ

他の海外機関投資家に先駆けて2015年に日本のスタートアップ投資を始めようと考えた理由を教えてください。

日本の未上場株投資事業に参入したのは2015年ですが、最初の3年は投資に至りませんでした。2018年にfreeeに投資したのが最初で、これまで開示しているSanSan、プレイド以外にも何社か投資しています。

T.Rowe Priceは、米国未上場投資では、20年以上の投資実績があります。我々の代表的な投資信託であるNew Horizons Fundは運用資産が4兆円を超えていますが、このうちの約5%を常に未上場株に投資しています。このファンドではUberなどの米国の著名IT企業に未上場のときから投資しており、かなり成功していると言えるでしょう。

こうした米国でのノウハウがあるから日本でもリターンをあげられると思ったわけです。2015年頃は環境が変わり始めて日本のスタートアップの数がちょっとずつ増えていた時期で、その点も面白いなと思って参入を決めました。

日本のスタートアップ投資にはどんな魅力があるのでしょうか。

まず日本企業はモダナイゼーション(近代化)やイノベーションを加速する必要があるのにかなり遅れています。今話題になっているDX(デジタルトランスフォーメーション)を見ても、他国が先行する中、日本だけディスラプションが始まったばかり、という印象です。

一方で、その問題に気付いた人たちがスタートアップをどんどん立ち上げています。もちろん、昔ながらの日本企業との競争になりますが、他の国に比べるとスタートアップが勝ちやすいと思います。なぜなら、昔ながらの日本企業は動きが鈍いし守りも弱いのでディスラプトされやすいんです。だからスタートアップにはいろんなチャンスがあると思います。出遅れ感から見るに、例えばDXの分野では今後10年間の成長は心配ないでしょう。

もう1つの魅力は、日本企業は意外と海外では知られていないので、ほかの投資家に気づかれずにとてもいいスタートアップを見つけられる点にあります。だからこそ、日本におけるスタートアップ投資のフロントランナーであるメリットはかなり大きいと言えます。

日本企業は上場し、東証一部に市場替えして初めて海外投資家に注目してもらい、そこからはどんどん資金が集まるようになります。未上場あるいは上場後の時価総額が小さい段階で投資すると、かなりいいリターンを得られる。このメリットが日本ではとくに大きいと言えます。

日本のスタートアップ投資で難しい点を教えてください。

最も大きい問題はTAM(市場規模)が小さいことです。日本は人口がそれほど大きくないので、国内事業だけでは成長に限界があります。当然、海外に進出できる企業だったらその問題はなくなりますが、日本のスタートアップは未だにかなりドメスティックだと言えます。優秀なファウンダーでも英語ができないなどの問題があるため、日本発の世界で勝てる企業は未だに現れていません。

私の同僚を含め、海外にいるファンドマネージャーが日本のスタートアップに投資しない理由はそこにあります。彼らは中国・インド・米国には投資するけれども、日本にグローバルで勝てる企業が現れない限り投資しないということです。日本のスタートアップの世界は非常に狭くて、人材が少なく、ダイバーシティにも欠けています。グローバルで勝てるという印象は今のところ正直あまりありません。

こうした問題があっても、魅力で挙げたように大手との競争が厳しくなく、日本内に限ればかなりのシェアを獲れるので、スタートアップに投資しています。とはいえ、海外に行けるかどうかがいずれ課題になると思います。

当社の投資先であるfreeeを例にとってみましょう。会計の世界は風習などがずっと変わらず、サービスが古くて高額で、カスタマーエクスペリエンスはよくありませんでした。だからこそfreeeやマネーフォワードは参入後、非常に容易に勝つことができました。

クラウド会計ソフトはまだそれほど浸透しておらず、トータルシェアが低いので、今後10年間については成長の懸念はありません。ただ、10年後にfreeeのシェアが50%、マネーフォワードのシェアが50%になったときに、海外で勝てるかどうかはポイントになると思います。

シード投資でなくてもスタートアップ投資の際に10年先の成長性を考慮しているのでしょうか。

この続きを見るには
この記事は、法人向け有料サービス「INITIAL Enterprise」限定公開です。
続きは、無料トライアルに申し込むと読むことができます。
契約済みの方はログインしてください

関連する企業


01 / img / img_documentCreated with Sketch.
DOWNLOAD DOCUMENT
資料をダウンロードする
RECOMMENDEDおすすめ記事
  • 乗り遅れるな、東証市場再編。スタートアップに与える4つの影響とは(前編)
    • #IPO記事
    • #資金調達記事