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ホームオリジナル記事【独占】Vertexトップが語る、日本市場に参入した理由
2020-12-10

【独占】Vertexトップが語る、日本市場に参入した理由

#VC/CVC#海外

シンガポール政府系投資会社テマセク傘下のVC、Vertex Holdings(バーテックス・ホールディングス、以下バーテックス)。これまでにアジアや米国、イスラエルなど世界中のスタートアップに多数の投資を実行し、足元のアクティブポートフォリオは200件以上、AUM(運用資産額)は35億ドルを超える。

最近、そのバーテックスが日本市場の潜在性を感じ、日本企業との協業を加速させている。2019年に組成したファンドには、大手商社やメガバンクなどの日本企業7社がLP出資を行い、2020年9月には東京に駐在員事務所を開設した。

INITIAL編集部は、バーテックスを率いるチュア・キーロックCEOにシンガポール本社で独占インタビューに成功。日本語媒体としては初の取材記事になる。チュアCEOが語るバーテックスの成功の秘訣と日本企業との協業のビジョンに迫った。

グローバルトップクラスVCに君臨するバーテックスの日本戦略とは。日本企業との協業や東京駐在員事務所開設の意図を聞く。

CONTENTS

イノベーションの実現がなければ生き残れない

チュアCEOは、起業の経験や経営のプロフェッショナルとしての素晴らしいキャリアを経て、2008年からCEOとしてバーテックスを12年間率いてきました。バーテックスという政府系VCが設立された経緯について教えて下さい。

現在のバーテックスは、独立したベンチャーキャピタル(以下VC)として活動していますが、元々はシンガポール・テクノロジーズ(以下、ST)のVC組織として、1988年に設立されました。

STは一定の成功を収めましたが、時代の流れに応じた変革を実現するために2004年に改組され、政府系投資会社テマセクとして生まれ変わりました。

テマセクは、シンガポール航空やDBS銀行といったシンガポールを代表する企業を傘下に収めて成功してきました。しかし同時に、大きな懸念も抱えていました。それは、これからの時代のビジネスで大きな影響を与えるイノベーションやデジタルトランスフォーメーションにどう対応していくかという課題でした。

こうした課題を克服するには、単に企業に投資をするだけでなく、イノベーションやデジタルトランスフォーメーションのエコシステムを形成するけん引役とならなければなりません。その試みの一環としてシンガポール政府は、バーテックスを分離・再編してバーテックス・ホールディングスとして再スタートさせたのです。

イノベーションの努力を怠る企業には将来がありません。フォーチュン500社の顔ぶれを比較すれば一目瞭然です。1955年のリストに載っていた企業は、2017年には60社しか残っておらず、88%がリストから外れました。時代に要請されたイノベーションに対応できたか否か結果が反映されています。

私は、とあるきっかけでテマセクの関係者に紹介される機会がありとても話しが弾み、テマセクから資金を提供するから、アジアや世界で革新的な分野で成長する企業を見つけて欲しいと言われました。

この目標を実現するためには、3つの条件がそろった人材が組織を率いる必要がありました。その3つの条件とは、起業家精神を持っていること、デジタルトランスフォーメーションを理解していること、そして経営者としての経験があることです。私はこの3つのスキルを持っていたため、適任と判断されたのでしょう。

シンガポール政府がバーテックスを通じてスタートアップ投資をする政策的な意図について教えて下さい。

シンガポールは東京23区ほどの大きさの面積の小さな国です。そして天然資源もありません。唯一あるのは人材です。

シンガポール政府は、今後一層進むデジタル化社会に向けて、企業や人材が適切に対応できるように常に試みを続けています。例えばAIに対応できる人材などがそうですし、国そのものがスマートシティとして成長して成功を収めつつあります。

更なるイノベーションを実現して生き残るためには、シンガポール政府はVCが最良の手段だという考えに至りました。

私は、15年近く前にシンガポール国立研究基金(National Research Foundation Singapore)の議長を務め、イノベーションに取り組んできました。当時は、誰も東南アジアのVCに関心を持っていませんでした。

バーテックスがVCとして再スタートした2008年の運用資産額は僅か2億米ドルでしたが、10年以上を経た2020年は35億米ドルと17倍以上に達しています(※筆者注:AUM:Asset Under Management=運用資産額ベース)。

そして、今、新型コロナウイルスの感染が世界を襲うなか、多くの人が職を失っています。ただし、スタートアップはコロナ禍のなかでも人を雇いつづけており、労働市場の緩衝役という重要な存在になっています。

こうしたVCをとりまく環境の変化と、コロナ禍のなかでもイノベーションが続き、雇用を生み出していることは、シンガポール政府が15年、20年の先を見据えてVCを育成し、スタートアップに投資をしてきた努力が実を結んだと言えます。

もちろん、これからもシンガポールによるイノベーションへの飽くなき挑戦の旅路は終わることがなく、長く長く続きます。

VCは本来ローカルビジネス。グローバル視点との掛け合わせが強み

シンガポールには多くの民間のVCが活動していますが、バーテックスが持つ独自の強みはどこにありますか。

他の一般的なVCとの違いは2点あります。

第一に、バーテックスはグローバルに活動をしている点です。シンガポールにあるVCの多くは、投資対象をシンガポール国内、東南アジア、あるいはインドといった地域に限って活動している投資家が殆どです。

一方で私たちは、グローバルな視点から米国、中国、イスラエル、東南アジア、インドといった地域ごとのファンドに加えて、ヘルスケアとグロースの視点から、計6つのネットワークファンドを持っています。

第二に、投資先の事業開発をグローバルにハンズオン支援する多国籍のパートナーシップチームを有している点です。例えば、日本人の同僚がいることで日本企業と緊密に仕事をすることができます。投資をして終わりではなく、投資したスタートアップが大企業と協業したり、グローバルなビジネスを展開することをサポートしています。

そもそも、VCは非常にローカルな、つまり、現地に根ざしたビジネスなのです。現地固有の事情を理解していなければ、よい投資先をみつけることはできません。私たちは、グローバルなネットワークを通じて正しい情報を入手しつつ、多国籍な同僚たちがローカリティを発揮し理解します。

例えば、中国では上手くいきそうなプロダクトでも、世界視点で見るとイスラエルのプロダクトと競合しているかもしれません。実際に今、東南アジアのチームがサイバーセキュリティのソフトウェア会社をみていますが、この分野はイスラエルが進んでおり、イスラエルのネットワークファンドの同僚を通じて、正しい情報を集めて判断をすることができます。

とても大切なことなので、もう一つの事例をお話ししておきましょう。近年、中国で成功した企業が東南アジアに進出しました。東南アジアの華人と中国本土の中国人は、中国語という言語は理解できても、文化や習慣がとても異なります。

長い歴史のなかで、元々東南アジアに住んでいた人々の考え方や行動の影響を受けて、華人はローカライズされています。しかも、東南アジアの華人は、中国の南部から移民した人たちが多数であり、同じ中国大陸といっても、北京など中国北部の人々とは言葉や文化も異なります。

件(くだん)の中国企業は中国本土の考え方で展開しようとしましたが、結局は失敗してしまい、東南アジアから撤退しました。

こうしたローカリティの重要性については、多くの人が理解していないポイントでもあります。VCという仕事はとてもローカルな仕事であり、かつグローバルな視野も持つ適切なチームも作ることが鍵となります。

投資基準は「これから大きくなるか」ではなく「真の社会変革をもたらすか」

これまでバーテックスが投資したスタートアップには、その後に大きく成長している事例が多数ありますが、いくつか代表的な事例を教えて下さい。

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