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ホームオリジナル記事イングリウッド、創業16年目で初めて外部投資家を受け入れた理由
2020-10-30

イングリウッド、創業16年目で初めて外部投資家を受け入れた理由

#OMO#人工知能#データ分析#越境EC#CRM

創業以来、15年間一度も資金調達をせず増収増益を続けてきたイングリウッド。

ECを起点としたデータテクノロジー事業やAI事業を中心に事業を伸ばし、2020年8月期時点での売上は未上場ながら150億円超えを達成している。

これまで外部からの調達を行っていなかった同社だが、2020年3月・4月に日本郵政キャピタルとみずほキャピタルを株主に迎えた。

IPOを目指していながら、これまでメディア露出を積極的に行わなかったイングリウッドに、今どのような変化が起きているのだろうか。

INITIALでは今回、同社代表取締役社長/CEOの黒川隆介氏、取締役CFOの堂田隆貴氏に単独インタビューを敢行。

なぜ創業16年目にして外部の投資家を入れることを決断したのか。ポストIPOを見据えた資本政策と、世界市場への勝算を聞いた。

CONTENTS

2005年創業。ビジネスに絶対はない、と学んだ起業当初

創業以来15年、資金調達を行なってきませんでしたが、これまでどのようなお金の価値観を持たれて経営されてきたのでしょうか。

イングリウッド 黒川(以下、黒川)私たちは創業初期の2005年から第16期である2020年の3月まで、一度も資金調達をせずここまで自己資本で会社を運営してきました。

スタートアップにおける経営では、会社の成長と社長の成長は非常にリンクしていると思っています。

イングリウッドがスタートしたところからお話すると、私は大学を卒業して就職をせずビジネスの世界に飛び込み、ファイナンスも分からない、仕事のやり方もビジネスマナーも含めてプロセス全てが手探りという状態でした。そのため、その場しのぎのビジネスをやるしか選択肢がなかった。

ビジネスを始めた当初はお金が無い分、とにかく自分から動く、働くことを意識していました。資金繰りについては、いかにお金を早く入金していただいて遅く支払うか。本当に筋肉質にやらざるを得なかったところからのスタートです。

スニーカーの卸業をやった後は小売の世界に入っていくのですが、2005年当時はまだインターネットが普及しきっておらず、Eコマースという言葉をほぼ誰も知らない状態でした。リアル店舗がスタンダードだった中で、私たちはお店をやる資金力がなかったので、インターネットを使いながら小売をスタートさせました。

銀行からの借り入れは検討しましたか。

黒川初めてファイナンスしようと思ったのが、2005年の創業から半年経った頃でした。小売のビジネスが堅調に伸びていったので、拡大のためにまず信用金庫にお借りしに行こうとしたら、「決算書ないよね」と言われて、「決算書って何でしたっけ?」というような話で(笑)特に、Tシャツ・短パンで行ったのでかなり不審がられました。

信用金庫ではなくメガバンクに行けば借りられると思い、次にみずほ銀行、三菱UFJ銀行と尋ねました。そこに行ったら、ほぼ担当も付かず、「貸せません」と爽やかにその場で断られて終わったという経緯があります(笑)

そんなご苦労があったんですね。

黒川初めて銀行からお借りしたのが第6期くらいで、りそな銀行から1,000万円お借りしました。

そういった経験があったので、キャッシュフロー自体をかなり注視するようになりました。PL、BS、CFの基本知識は本で読んで、自分なりに表計算を入れて管理していました。

当時のことを振り返って思うのは、経営者ってお金があればもっとたくさんできるのにとか、色々なアイデアはあるのに、という人も多いと思います。

ですが実際には、その時々が自分の実力で、実力が無かったから調達はもちろんできなかったし、お金も借りられなかったと思うので、時流のせいにしてはいけないなと考えています。

今でも会社全体にその意識は残っていて、私たちは社員全員、ファイナンスの勉強をするようにしています。保守的にPLをつくるとか、どういう入金タームでビジネスが行われているのか、という部分を深く理解しているメンバーが多いです。

これまで会社経営をしてきて自分が痛かったことや、デフォルト(債務不履行)を3回くらい起こしそうになり、入金遅延も含めて本当にまずいという状況が何回かありました。そこで学んだこと自体を、自社メンバーに今落とし込んでいるところです。

とにかくビジネスに絶対はない、というのは常に忘れないようにしています。上手くいっていると思っていても必ず事件は起きます。もちろん未来予想や大きなビジョンを描きながら、最悪の事態も想定して、直近の数字と資金繰りを重視して、経営を行っているという感じですね。

inglewood 05

イングリウッドが株式会社化したのはいつでしょうか。

黒川2014年です。株式会社化した背景は、将来の業容拡大を見据えてでした。当時は事業展開もまだまだ手探りの状態で、組織体制は脆弱であると言わざるを得ませんでした。

そのため、強い組織を形成していくためには、それまでにない優秀な人材の確保が急務だと感じていたことも大きな理由です。

2018年に上場を決断。パブリックな会社になるため、いまの立ち位置を知りたかった

今回の資本提携についてお話を伺っていきたいのですが、なぜこのタイミングで外部の投資家を入れられたのでしょうか。

黒川自分たちの方向性や市場におけるポジションを確認したかったのが大きな理由です。

私たちは現在、第14期(2018年)に上場を見据えて、現CFOも含めて各役員陣を揃えていったというステータスです。

いま、会社自体の方向性は固まってきているのですが、それに対して市場価値がどのように付いて、どんなポジションとして評価されるのか。未来の方向性の確認という意味合いもありました。

機関投資家、VCも含め色々な方々と軽いディスカッションをしながら、2018年から感触を確かめていきました。

上場を見据えてということですが、2020年に行われた資本提携では創業者の株式を日本郵政キャピタル、みずほキャピタルに売却しております。ご自身のEXITも目的にしていたのでしょうか。

黒川私のEXITが目的ではありません。多様な株主を当社に招き入れることで、外部から適正な評価をいただき、ガバナンス強化を一層強めていく意図があります。

第三者割当増資をしなかったのは、既に利益面で一定以上の実績を積み重ねており、金融機関からの融資が十分に実行可能だったからです。資本コストを考慮しつつ、増資という選択は採用しませんでした。

日本では上場前の株式売却は一般的ではないですが、それについてはどのようにお考えですか。

イングリウッド 堂田(以下、堂田)たしかに、非上場株式のセカンダリーマーケットについては、日本ではまだまだ整備されていないと認識しています。

今後、非上場株式の流動性を高めることは、多くの非上場企業が成長し続けるための重要なポイント(課題)であると考えています。

また、セカンダリーマーケットが整備されれば、IPO以外の複数のEXITの選択肢が広がるので、投資対象の企業がIPOのみを意識することなく、中長期的な目線で経営判断を行うことができる利点もあると考えています。

堂田さんは今回の資本提携をどのように捉えていますか。

堂田イングリウッドにジョインしたのが2年前で、ちょうど当社がIPOを目指そうと決めた時期でした。

この会社はずっと自己資金と銀行の借り入れで資金繰りを回してきましたが、山あり谷ありがありつつも、何とかやってこれた。

一方で上場を考えたときに、当時はそれまで全く上場を意識していないかたちで経営をしてきたので、内部管理体制やコーポレートガバナンス面で非常に脆弱な面もありました。自分の役割としては、まずそこを急速に整えていかないといけないという点が一義的だと思いました。

今回の資本提携に関して、確かに何が何でも資金調達を行わなければいけない状況ではありませんでしたが、外部からどのように評価されるのか、は重要だと思いました。

今後パブリックな会社になることを考えると、当社を応援してくださる株主様であったり、そのほかの方々に対して説明責任が当然求められます。

いきなりこの状態から頑張ってパブリックな会社になるよりも、いろいろな会社にアプローチさせていただきながら、自分たちの振る舞い方を見定めたい思いがありました。

とは言え、イングリウッドは、会社名でプロダクトを世に大々的に出していたり、会社名でお店を持っていないので、知名度はほぼゼロに近いところから投資家を回っていきました。

プライベートエクイティ・ファンドのミダスキャピタルにシニアパートナーとして参画されたのも2018年とお伺いしました。その意図とは何でしょうか。

黒川先ほども申し上げたように起業当初は、私一人で始めたビジネスでした。軌道に乗ってきたとはいえ、強い組織になるためには全てのリソースが足りない状況がしばらく続きました。

そのような中で、様々な先輩方や経営者の方々と親交を深め、アドバイスをいただく中で、現物出資スキームによるミダスキャピタルのストラクチャーに参画することで、適切な人材の紹介や知見の共有など新たに得られるものも大きいと考え、参画を決意しました。

この参画の意図としては①根幹事業であるEC事業およびECソリューション提供事業で、個人100%の状態で進めていくことに一定の限界を感じていたこと、②優秀な人材を確保することでより強固な競争力を得ること、の2点がイングリウッドの持続的な成長のためには不可欠だと考えたことも大きな理由です。

投資家に評価された強みはオンライン・オフラインの融合戦略

今回の資本提携の難しさは、どのようなところにありましたか。

黒川他社と比較した際の強みや独自性を的確に説明する点に苦労しました。

近年の流れでは、スタートアップを中心に、基本的には単一事業を伸ばしていくパターンが多いと思います。

一方で、当社はECのソリューション提供会社で、自社で在庫を抱えながらセールスをやる事業もあれば、他社の小売やECの支援、AI分野にもビジネスを展開しています。 投資家から見たら多角経営をしている会社は分かりにくい場合があります。業績が伸びている指標や、事業を分かりやすくする説明するための情報整理に注力しました。

それぞれが独立しているのではなく、3つの事業が有機的に繋がり、それぞれがシナジーを出しながら業績にヒットさせるかたちでやっています。

あと外部要因では、コロナ禍の影響でそもそもマーケットが撃沈していた状態で、無事にクロージングまで辿り着けるかは非常に気を遣ったところではありました。

今回、イングリウッドは投資家から、どのような点が具体的に評価されたのでしょうか。

堂田イングリウッドが強みとして持つ、オンラインとオフラインの融合を強く評価していただきました。

自分たちの力でオンライン上に19店舗を保有しており、長年に渡って増収増益を続けているので、そもそもの実力を数字で証明しつつ、近年の当社の成長をけん引し業績貢献が大きくなっているECソリューションの提供ビジネスをアピールしました。

コロナ禍に入って特に小売市場は実店舗よりECにフォーカスされがちでしたが、物販のEC化率は10%以下と、実際の市場の大きさでは、まだまだ実店舗のほうが10倍以上あります。かつ価格が安いものに関しては、小売業者にとってはECでの展開が難しい。

そのため私たちとしては、実店舗を無視して運営していくことは難しいと判断したことに対しても、投資家から「そうだよね」と評価をいただきました。EC化率が伸びていく事は当たり前で、全体の小売市場を取りに行くという姿勢についても評価をいただいたポイントです。

財務の観点から見ると、イングリウッドの強みとは何でしょうか。

堂田私がジョインした2018年8月期(第14期)では、純資産で約14億円、営業利益が約8億円、純利益で約5億円でした。よほど資本効率が良くなければ、なかなか出せない数字です。運転資本も厚いわけでもないのに、これは何だろう、という印象が最初はありました。

結局のところイングリウッドの強みとは、”無形資産”と呼ばれるバランスシートに見えてこないノウハウや人的資源の厚みが、ビジネスに表れているのではないかと感じています。

財務の観点はもちろん大切なのですが、社内のカルチャーやメンバー同士のやり取り、コミュニケーション、そして何よりも数字へのコミットが多分に寄与している点だと思うので、一概に数字だけでは語れないだろうなと考えています。

これは過去16年間にわたって積み上げてきたカルチャーですので、何が何でも守らないといけないですし、逆にここが毀損すると、数字には出てこないかもしれないが非常に脆弱な会社になるのだろうと思います。

ビジョン実現のために日本・中国・米国の3ヵ国を獲る

今後は海外市場へのコミットもされていくのでしょうか。

黒川グローバルに展開していきたいです。基本的に私たちが狙っているのが、日本・中国・米国の3ヵ国です。

まず中国市場のオンラインとオフラインに関しては、展示会も含めてすでに参入していて、5期目に入ります。

中国本土への拠点はまだ保有しておらず、いろいろな企業と提携を進めている段階です。今後提携先をさらに拡充していきたいのと、それに伴い中国でのメンバーを採用していきたいと思っています。

次に米国ですが、私たちはニューヨークに子会社を持っておりまして、西海岸・東海岸含めてある程度大規模の倉庫を借りることができるような状態になっています。

米国市場でのオンラインに関しても今トライしているところなので、この3拠点で商品を流通させていきたいと考えています。

イングリウッドが目指す未来について教えてください。

堂田いいものを世の中に送り出していきたいです。

私たちの会社には自社製品であろうが、他社、クライアントの製品であろうが、オンライン・オフライン含めて最適な販路を見つけることで売上を伸ばし、エンドユーザーにいいものを届けていこう、という強い思いがあります。それを有言実行し続けられる存在でいたいです。

また、自社ブランドで何かいいものを送り出していきたいですね。当然お金も時間も掛かるとは思いますが、一定の予算や上限を設けながら会社全体で挑戦していきたいです。

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黒川前期に50人近くを採用しましたが、社員の教育や資金余裕を作ることにフルコミットできなかったので、将来に繋がることにはどんどん投資をしていきたいと思っています。

加えて、海外市場への進出拡大です。中国や米国は本当に大きな場所で、かつ人口も多い国です。そこに対して私たち日本人が立ち向かっていったとしても、なかなかビジネスの芽が出にくいという現状があります。

例えば、ロサンゼルスで日本人が10億円ぐらい売り上げていると、天才とか神とか周囲から言われます。確かに現地でのビジネスは貿易・商社、飲食店などが多くありますが、その多くは個人自営業の規模です。

実際に米国でとてつもなく成功している日本人は少数で、それは中国も然りです。私たちがベンチャーと言っても16期やってきている中で、海外市場を攻略するノウハウ自体はあるので、あとは資金投下の仕方だけだと思っています。

かつ中国・米国ともに今、人脈が非常に豊富になってきているので、そこでテストマーケティングをしながら資金を投資していきたいですね。

海外と言えど、基本的に同じ人間がものを売ったり買ったりしているわけで、原則原理は同じです。市場が大きなところに行かないと、日本でのビジネスは先細りになる一途です。会社の成長を考えたら、必然の選択であると思っています。

私たちのミッションである、「商品を売る最強の集団であり続けること」を恥ずかしげもなく常に言い続けていますが、これを世界で実現したい。

先ほど言った日本・中国・米国の3ヵ国を獲ることができれば、それほど難しいことではないと思っています。

今後もミッション実現のためにフルコミットしていきたいです。

(取材・文:花岡郁、編集:藤野理沙、デザイン:廣田奈緒美、石丸恵理、写真:イングリウッド社提供)

#OMO#人工知能#データ分析#越境EC#CRM

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