スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、ピックアップニュース3選、独自取材による注目スタートアップ紹介、インドVCの投資状況を定点観測する「GLOBAL EYE」のコンテンツをお届けする。
ピックアップニュースでは、DRONE FUNDによる100億円規模のファンド組成発表から、ドローン、エアモビリティ市場の現状と今後の動向を探る。
注目スタートアップとして、フェミニンケアブランドを展開するMellia(メリア)を紹介する。アパレルD2Cブランドなどと比べると市場規模が小さいからこそ、こだわる今後の事業展開、ファイナンスを見据えた投資家の選定などを代表の原 由記氏、和田 由紀氏に聞いた。
GLOBAL EYEではインドトップVC6社の投資状況を定点観測。インドのスタートアップ投資環境を整理した上で、7〜9月の投資状況から投資セクターやマーケットトレンド、注目のビッグニュースについて解説する。
エアモビリティ・AI領域に資金が集まる。INITIALピックアップニュース3選
「INITIALピックアップニュース3選」では、資金調達など抑えておくべき3大ニュースを解説する。
今週は、10月14日から10月22日のニュースで、大型ファンドの設立や注目の資金調達ニュースを選定した。
DRONE FUND、3号ファンド設立。投資家層に変化、上場と5G活用の狙いか
まずは、独立系大型ファンドの設立ニュースだ。DRONE FUND(ドローンファンド)は、5月に3号ファンドを設立、9月にファーストクローズを迎えたことを発表した。同VCは設立4年目で、コロプラ元副社長、エンジェル投資家の千葉功太郎氏が代表を務める。
ファーストクローズではSMBC日興証券、NTTドコモ、ソフトバンク、小橋工業、国際航業、リバネスなど大手事業会社が参画した。2021年3月にファンド総額100億円のファイナルクローズを目指す。
DRONE FUNDの投資領域は、国内外のドローン・エアモビリティ企業だ。1号ファンド(総額15.9億円)、2号ファンド(総額52億円)を通じて、自律制御システム研究所(国内初のドローン上場企業)など既に国内外40社以上に投資実績がある。
ファンドごとに主要投資家層の違いが見られる。2号ファンドの最大投資家は岡山県の農業機械メーカー小橋工業だ。同ファンドでは農業や物流などの産業分野や海外企業への投資を中心に行っており、小橋工業はファンド投資先であるエアロネクストの商品化・量産化の支援を行うなど、LPと投資先との協業も行っている。
一方、3号ファンドの最大投資家はSMBC日興証券とNTTドコモだ。2号ファンドとは異なり、既存投資先の上場に向けた追加投資、5Gの通信インフラを活用する狙いが考えられる。
ドローン・エアモビリティ領域は政府も力を入れている分野だ。2019年6月、政府は成長戦略実行計画において2022年度にドローンの有人地帯での目視外飛行の解禁と2023年度にエアモビリティ(空飛ぶクルマ)の事業化を閣議決定した。政府が物流だけではなく人を乗せてのドローン活用社会に向け法整備を行う今、国内のドローン企業にはチャンスが訪れているのではないだろうか。
JDSC、シリーズBで29億円調達。AI企業は高評価額の傾向続く
次に、DX関連企業の大型調達のニュースを紹介する。日本データサイエンス研究所(今後JDSCに会社名変更予定)は、シリーズBで29億円の調達を発表した。投資家は、スパークス・グループ、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)のほか、ダイキン工業、中部電力など事業会社、金融系VCなどだ。
東京大学発のAI企業であることから、シード期は東京大学エッジキャピタル(UTEC)、シリーズA以降は事業会社や銀行系VCへと投資家属性がシフトしている。
背景には、大手企業のDX推進とAIを実装する需要予測、価格最適化ソリューションなどを提供する同社の事業内容が成長ストーリーを描きやすいことにあろう。すでにマザーズへ上場したPKSHA Technology(初値時価総額728億円)やニューラルポケット(同703億円)などの前例もあり、バリュエーションも高値がつきやすい。
既に前回ラウンドのシリーズA調達後評価額は79億円と、同シリーズの評価額中央値12億円よりも遥かに高い。今後、設立5年程度でマザーズに上場した前述のAI企業二社のような早期の上場が期待される。
BASEによる初出資。シリーズAで3億円を調達した企業「MOSH」
最後に、今後成長が期待できるシリーズA企業を紹介する。MOSHは、シリーズAで3億円の調達を発表した。MOSHは個人や小規模事業者向けにオンラインでサービス提供、顧客管理ができるサービスを運営する。コロナ禍でオンラインライブレッスンを提供するユーザーが増えたことから、提供事業者数は2020年2月末から3ヶ月で2倍の10,000事業者に増加した。
ネットショップ運営のBASEは、今回のMOSHへの出資が初のスタートアップ投資となる。BASEは9月に実施した100億円規模の海外公募増資で調達した資金を活用した。今後も調達資金を活用し、スタートアップへ投資するのではないだろうか。
BASEは未上場時に、シリーズCで同じEC領域で異なるユーザーを抱えるメルカリから資金調達をしている。今後、MOSHはBASEとメルカリの関係のように、両者の強みを活かし補完関係を築きながら、ユーザー数を拡大していくと見られる。
Mellia:フェミニンケア特化のD2C企業。国内での市場開拓と文化の創生を目指す
注目スタートアップを紹介する、「INITIALピックアップインタビュー」。 今週紹介する企業は、フェミニンケアブランドを展開するMellia(メリア)社だ。代表の原 由記氏、和田 由紀氏に話を聞いた。
フェミニンケア特化のD2C企業
Mellia(メリア)は、化粧品メーカー出身の原氏、金融機関出身の和田氏の二名が2017年に創業。2018年9月から女性向けデリケートゾーンのボディケア(フェミニンケア)ブランド「I’m La Floria」を展開する。自社で企画・販売を行い、オンラインを中心に販売するD2C企業だ。
調査会社のGrand View Researchによると、世界のフェミニンケア製品市場規模は、11億ドル(2018年)、2025年までに15億ドルまで拡大が見込まれている。
欧米ではフェミニンケアに専用製品を使うことが習慣になっているが、国内ではまだ浸透の初期段階である。しかし、同社のアンケートによると約80%以上の女性が悩みを抱える。
Melliaは、課題の大きいフェミニンケアに特化して新たに市場を開拓する。
Melliaが展開するフェミンケアブランド「I’m La Floria」の製品(写真:Mellia提供)
最も愛用されるフェミニンケアブランドへ。国内市場開拓と海外展開から逆算したファイナンス
2020年10月、累計約3億円の調達を発表(直近ラウンドは2020年8月と9月)。本タイミングで調達した理由について、和田氏は「フェミニンケア領域で成長できると確信したからです。PR・マーケティングの結果、今年に入り売上は好調です」と語る。
投資家はD2C&Co.、ポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラ・オルビス)、LINE Venturesなど事業会社系が多いのが特徴だ。D2C&Co.は丸井グループが2020年2月に設立した新会社で、D2C企業への出資のほか、マルイ実店舗への出店も支援する。
「小売に強い丸井さん、ユーザー数を抱えるLINEさん、大手化粧品メーカーで女性支援も強化するポーラ・オルビスさんなど力強いパートナーにご支援頂き、今後も市場開拓をしていきたい」(和田氏)と語る。
事業会社以外の投資家には「海外展開を視野に入れているため、今後のファイナンスにも備え」(和田氏)、独立系VCのNOWや、金融系VCの新生企業投資も含まれている。また、エンジェル投資家としてD2Cの知見がある佐々木 康裕氏も株主および取締役に迎えた。
参考:D2Cが示す「ユーザーとの関係性」。スタートアップと大企業のトレンドを見る
評価額の考え方については、「フェミニンケアの現在の市場規模は、他社のD2Cメーカーが扱う商材と比べて小さいです。そのため、今後の成長する確実性についての説明は強くしました。また直接販売だけではなく、卸のチャネルも活用しているため、収益性の説明も難しかったです。最終的には私たちが目指すビジョンとチームに賭けていただいたのではないでしょうか」(和田氏)と語る。
今回調達した丸井グループ、ポーラ・オルビス、佐々木氏とはフェミニンケアブランドとして第一想起を取るための新たな取り組みを始めているという。
今後は調達資金を活用し、商品数を拡充するほか、マーケティング、商品生産管理などの人員も強化予定だ。「最も愛用されるフェミニンケアブランド」を掲げ、フェミニンケアが当たり前の習慣となる社会や文化の創生を目指す。
Melliaについて詳しく知るにはこちら(INITIAL企業ページ)
インドトップVCの投資状況から見る、2020年7〜9月投資セクターの動向
GLOBAL EYEでは、海外VCのマーケットトレンドを定点観測する。今回は、インドのスタートアップ投資環境を踏まえた上で、インドのトップVC6社の2020年7〜9月の投資状況から、投資セクターの動向などを解説する。
観測対象のインドトップVC6社は以下の通り。
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