スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、独自取材による注目スタートアップ紹介、資金調達など抑えておくべき3大ニュース解説、Finance Reviewなどのコンテンツをお届けする。
注目スタートアップは、AIを活用した英会話サービスを展開するスピークバディを紹介。1年間で売上5倍まで至ったビジネスモデルを紐解く。あと1ヶ月で資金ショートになる局面まで追い込まれてからシリーズA、Bと無事調達を終えた経験について代表・立石氏に話を伺った。
9月3週目のピックアップニュースでは、メガバンクグループ初の医療系サービス買収上場企業の事例などについて紹介する。 また、Finance Reviewでは8月の調達額上位10社を紹介し、農林中金など政府系投資会社による直接出資の変化について解説する。
スピークバディ:AI技術と対人学習の両輪で、日本人の英語力向上にコミット
注目スタートアップを紹介する、「INITIALピックアップインタビュー」。 今週紹介する企業は、AIを活用した英会話サービスを運営するスピークバディ社。2020年8月にはシリーズBで3億円調達を完了している。代表の立石 剛史氏に話を聞いた。
スピークバディ代表の立石氏は、創業の背景について「仕事で英語を使うビジネスパーソンが、時間・費用・心理的不安から英会話習得を充分にできていないことに課題を感じていました。安価でストレスフリーなAI英会話を時間や場所を問わずに実現することで日本の英語力の問題を解決したい」と語る。
スピークバディは2013年、日本で初めて音声認識英語学習アプリを提供。主力事業であるAI英会話アプリ「スピークバディ」は2016年に開始した。現在のアプリダウンロード数は100万DL以上にのぼる。月額1,950円のサブスクリプションモデルで、有料ユーザーは2.5万人だ。
2019年にはオンライン英語コーチング「スパルタバディ」のサービス提供も開始した。3カ月間の受講期間で、コース料金は12.8万円と、通常の英会話教室に対して約1/4の価格設定だ。
同社の特徴は、対AIのアプリと対人のオンラインコーチング双方の事業で、収益面・開発面で相乗効果を生み出している点だ。収益面では、アプリで獲得した顧客からより高単価のオンラインコーチング事業へのアップセルが可能となり、事業の柱を支えている。また対人学習で得られた学習者のつまずきやすいポイントや学習効果をAI開発に活かすことができる。
英語学習アプリの競合は複数存在するが、スピークバディは設立時から取り組むAI技術の活用、楽しくキャラクターと会話できる仕掛け、言語習得理論に基づいた学習開発を強みに、ユーザーの英語力の向上にコミットし、かつ成長を遂げている。
順風満帆に見える同社だが、シリーズA調達時には資金が残り1ヶ月持たない局面まで追い込まれたという。当時を振り返って、立石氏はこう語る。
「シリーズAでは明確なトラクションが求められますが、会社全体や開発メンバーとその感覚をシェアするのが難しかったんです。ただ、残り3ヶ月で会社の資金がなくなることを全体に告知してからは、危機感が高まり、社員の目の色が変わりましたね。」
「必死にKPIを達成するために話し合い、実装が不可能だと思ってた機能の開発に踏み切りました。そこから急激に数字が伸びたのです。良いことも悪いことも社内で全て共有して認識合わせをすることの大切さを学びました」
その後は順調に、「1年で5倍増加した売上を大きく評価されて」(立石氏)2020年8月のシリーズB調達(グローバル・ブレイン、三井不動産から3億円調達)に至ったという。
語学学習系サービスのIPO企業はレアジョブやEduLabなどがあげられる。スピークバディはスタートアップの類似企業の中でもラウンドが進んでおり、IPOも視野に入るだろう。
「国内AI英会話No.1ポジションを確立し、今後は英語学習の新規事業や海外展開も計画する」(立石氏)と語るスピークバディの躍進から今後も目が離せなそうだ。
メガバンクグループ初の医療系サービス企業買収。INITIALピックアップニュース3選
「INITIALピックアップニュース3選」では、資金調達など抑えておくべき3大ニュースを解説する。
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