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2019/12/16

会計SaaSの先駆者、freeeの資本政策。素早い成長を支えた海外投資家

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会計SaaSの先駆者が、ついに上場。

2019年12月17日、クラウド会計ソフトを展開する「freee(フリー)」が東証マザーズ市場に上場した。

今年の新規株式公開(IPO)企業では、2019年7月に上場した法人向け名刺管理サービスSansan(初値時価総額1,400億円超)に次ぐ規模だ。

フリーは国内SaaS(Software as a Service)スタートアップで評価額646億円を誇り、INITIALシリーズEからの新規上場事例となる。

今回の上場では日本国内と同時に、海外でも株式の募集・売出を行うグローバルオファリングを実施。海外からの株式募集・売出比率は7割を超え、海外投資家からの注目も集まる。

2012年の設立から8年目。フリーのこれまでのファイナンスの軌跡。そして、佐々木社長のインタビューをお届けする。

CONTENTS

有料ユーザー企業数16万件以上、会計SaaSを主軸に人事・労務領域も

freee株式会社(以下、フリー)は、2012年に佐々木CEOにより設立。「スモールビジネスを、世界の主役に」をミッションに掲げ、バックオフィスの生産性向上に寄与するクラウドERPサービスを総合的に展開している。

基幹事業は、中小企業・個人事業主向け「クラウド会計ソフトfreee」。従来手入力が必要な請求書など取引情報を自動化し、日々の経理や決算業務をより効率的に行うことができるサービスだ。

他にも勤怠や労務管理・給与計算を行う「人事労務freee」、会社設立に必要な書類をオンライン上で作成できる「会社設立freee」などのサービスを展開している。

有料課金ユーザー企業数は約16万件(2019年9月30日現在)、月次平均解約率は2.0%以下(2019年6月期)と、中小企業・個人事業主向けに低い解約率を実現(いずれもフリー社新規上場申請のための有価証券報告書Ⅰの部より)。

フリーが選ばれる理由として、銀行やクレジットカードのデータから自動的に仕分けが行える点や、入力業務だけでなく入金管理や資金繰りなど上流工程まで含めた設計で使いやすい点があげられる。

上場前評価額は646億円。素早い成長に特徴

フリーのファイナンスをみてみよう。

フリーは2012年の設立から上場までに8回のラウンドを経て、累計調達額は約161億円。2018年8月に行ったINITIALシリーズEの調達後企業評価額は646億円となり、資金調達額・評価額ともに現在の未上場SaaSスタートアップでトップの数値を誇る。(INITIAL、2019年12月13日基準)

フリーのファイナンスの特徴は、まず素早い成長が挙げられる。

フリーは会社設立からINITIALシリーズDまで約3年で到達している。INITIALシリーズの各シリーズ到達月数中央値によると、会社設立からシリーズAまでの到達期間は約3年、シリーズDまでの到達期間は約6年後だ。フリーは、スタートアップの平均的な成長スピードよりも2倍近く速いスピードで成長している。

2018年におけるマザーズへの新規上場企業の初値時価総額中央値が113億円(出所:KPMG「2018年のIPO動向について」)であり、国内スタートアップIPOの目安となる時価総額は100億円程度だ。

たとえば直近12月に上場したランサーズとメドレーの初値時価総額はそれぞれ約130億円、約351億円だ。

一方、フリーのIPO時調達後企業評価額は約947億円(公募価格2,000円を基準に算出)。一般的に初値は公募価格を上回る傾向にあることから、初値時価総額1,000億円の大台超えも期待できよう。

未上場で1,000億円に迫るBtoB SaaS。これは、今年6月に上場したSansanを彷彿させるものだ。

PSRは20倍前後。企業評価額と売上高の推移

データが確認できる2015年6月期以降の売上高の推移と企業評価額をみてみよう。

フリーの2015年6月期から2019年6月期までの売上高年平均成長率は100%を超え、毎年約2倍の成長を実現している。それぞれの期の売上高を決算期直前直後、もっとも近い評価額の値で割り、簡易的にPSR(株価売上高倍率)を算出した。

現在よりも売上高が低い時期のほうが倍率が高い。2019年6月期時点のPSRは21倍(IPO時の評価額を用いて算出)。分母分子のタイミングのずれもあるだろうが、この5期は少なくとも20倍前後以上の水準で推移している。

Sansanの同じく上場前6期でのPSRの水準が、7倍から14倍のレンジで推移していたことを考えると高い水準だ。

同社の有価証券届出書(p.12)に日本の会計ソフト普及率は14.3%であり、先進諸外国比でも低い水準であるとともに、狙うマーケットが推計約1.1兆円であると示している。このマーケットポテンシャルも評価に表れていよう。

BtoB SaaSで未上場で大きく成長する舵切りはSansanに通じる点がいくつかある。

グローバル投資家の保有比率は3割以上。大株主を占める

フリーのファイナンスのもう一つの特徴として、グローバル投資家の存在があげられる。

米国のベンチャーキャピタルDCM Venturesは、2012年のシード期から投資を開始。シリーズDまで4回にわたり追加投資を行っている。投資家最大の株主保有率18%で、創業者の佐々木氏に次ぐ第二位株主である。同VCはSansanへも投資を行っていたが、フリーへ投資した時期のほうが早い。

シリーズCでは、シンガポール政府の投資会社Temasek Holdings傘下のプライベート・エクイティ・ファンドであるPavilion Capitalも投資。同ファンドはKDDI傘下に入ったソラコムに投資を行っており、日本のスタートアップ投資実績はフリーで2社目だ(INITIAL:2019年12月16日現在)。こちらも大株主に名を連ねている。

シリーズD以降も米国のSalesforce Ventures、2015年に設立し世界のテクノロジー関連成長企業に投資を行い、フリーが日本のスタートアップ初投資であると推察される英国のプライベート・エクイティGreyhound Capital、Sansanにも出資した世界屈指の機関投資家ティー・ロウ・プライスがフリーに投資。米国・英国・シンガポールと世界各地の投資家が、成長性を見込んでフリーの大型調達を支えたといえよう。

ミドルステージから海外PEによる出資を受け入れていることが目立つ。最近では、海外PEから日本の未上場スタートアップへの投資事例は増えつつあるが、全体からみた数は未だ少ない。

グローバル投資家は株式保有率でも存在感を示す。IPO時のグローバル投資家保有比率は32.3%と、全体の約1/3を占めている。

この株主構成は、フリーと同じ法人向け会計SaaSを展開し、2017年9月に東証マザーズへ上場したマネーフォワードのIPO時株主構成と比較するとより特徴が際立つ。

マネーフォワードのIPO時株主構成は、役員・従業員など個人37.2%、国内投資家27.6%、創業者20.0%、事業法人13.6%、海外投資家1.6%。大株主の投資家はジャフコ、マネックスベンチャーズ、クレディセゾン、静岡銀行、SBIホールディングスと国内の金融業界が中心で、海外投資家はFenox Venture Capital1社のみとなっている。

両社の株主の違いは、マネーフォワードが自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」から始まっていることに対し、フリーは最初から会計SaaSをスタートさせていることなども影響しているだろう。

また、フリーに海外投資家が多い理由として、米国を中心にSaaSの先行事例が多く、投資家側に知見があるため、積極的に働きかけたことが推察される。

グローバルオファリングで募集・売出株数の海外比率は7割以上

未上場時にグローバル投資家が多かった特徴は、IPO時のグローバルオファリングを活用する姿勢にも表れている。グローバルオファリングとは、日本国内と同時に、海外でも株式の募集・売り出しを行うことを指す。

グローバルオファリングは調達額500億円以上を超える大型IPOを中心に、資金調達額の最大化と資金調達手法の多様化を目的に活用される。近年ではリクルート、LINE、日本郵政などで活用されるケースがみられた。

国内スタートアップではメルカリ、Sansanがグローバルオファリングを活用した。英文での書類作成や海外投資家対応、弁護士費用などが追加にかかることから、大型調達でない限りはコスト勘案で見送られるケースが多い。

特に米国のルール144Aに従い、米国および世界の投資家を対象としたグローバルオファリングを国内のスタートアップで行った事例はメルカリのみである(Sansan、ラクスルはアジアや欧州などの投資家を対象に行った)。

フリーは、144Aルールに従い米国および世界の投資家を対象にグローバルオファリングを行う。募集および売出株数における国内・海外比率は当初42:58の予定であったが、12月2日・12月9日と二回にわたり臨時報告書で海外募集枠の増枠を発表。最終的に国内・海外比率は26:74となり、海外での需要が目立つ形になった。

海外機関投資家は長期的視点で投資をする傾向があるので、海外投資家を受け入れることは株主の安定化、ひいては経営の安定化にもつながるだろう。

国内スタートアップに目を向ける海外投資家

2019年のSansan上場時、Smart HR・フロムスクラッチなどSaaS企業の大型調達時の記事で「海外投資家の日本スタートアップへの投資は増えるのではないだろうか」と述べてきた。フリーは未上場時だけでなく、グローバルオファリングで上場後も海外投資家を株主に迎え入れる姿勢を見せており、まさに格好の事例といえる。

これらの事例は、日本のスタートアップを投資対象とみる海外投資家が増えているといえる。

この傾向はとくに、海外投資家が先行し、経験値をもつBtoB SaaSの分野で目立つ。今後、日本のスタートアップのファイナンスは未上場で大きく成長する企業とそうでない企業の二極化が深まると予想される。

国内に限らず、外に目を向けることで大きく資金調達できるチャンスが高まる一方、多様な金融プロに対してパッションだけではない説明責任が求められてこよう。

近年、デジタルトランスフォーメーションの文脈から、積極的にSaaSなどを活用し生産的な組織へ変えていこうとする動きが大企業でも進みつつある。この動きが加速するか。そして、BtoB SaaSスタートアップの飛躍へとつながるか―――。

後半は、フリー佐々木CEOへのインタビューをお届けする。

【インタビュー】フリーがIPOを決断した、3つのポイント

マザーズ上場の時価総額要件を考えると、より早いタイミングで上場することも可能だったと思います。なぜこのタイミングで上場を決断されたのでしょうか。

佐々木 私は上場のメリットが明確にならない限り、未上場のままでいるべきだと思っていました。未上場であれば、ステークホルダーが限定されており、集中して経営ができるからです。

株主は少数のVCをはじめとするや投資家であり、基本的に経営方針は私達で決められますし、管理コストも低い。これが未上場のメリットです。

個人的には「可能な限り未上場でいる」ことは、日本でも広がるべき考え方だと思いますね。

佐々木 大輔(ささき・だいすけ)/ freee株式会社 代表取締役CEO Googleで、日本およびアジア・パシフィック地域での中小企業向けのマーケティングチームを統括。 その後、2012年7月freee株式会社を設立。 Google以前は博報堂、投資ファンドのCLSAキャピタルパートナーズにて投資アナリストを経て、レコメンドエンジンのスタートアップであるALBERTにてCFOと新規レコメンドエンジンの開発を兼任。 一橋大学商学部卒。専攻はデータサイエンス。

では、なぜこのタイミングで上場するのか。それは「上場と未上場」の2つを天秤にかけた結果、3つの点で「上場」の優位性がわかってきたからです。

1点目は、事業の成長によって、投資家への説明が容易になったことです。

中堅企業向けのクラウドERPサービスを提供し始めてから、3年ほど経ちます。

個人事業主などのユーザーと、パートナーシップ企業(フリーに対応する税理士・会計士)のユニットエコノミクス(顧客一人当たりの採算性)をしっかり把握できる状態になってきました。

「事業投資によって、どれだけ成長が見込めるか」を具体的に説明できるようになり、細かい事業計画を開示しなくても、投資家を惹きつけられるステージにきたと考えています。

2点目は、コーポレートガバナンスについてです。

事業が成長するにつれて、取り扱うデータへの責任も高まり、コーポレートガバナンスの整備も重要になります。

上場を機に、私たちのガバナンスが問題ないことを、ユーザーも信頼しやすくなると考えています。

3点目は、資金調達の選択肢が増えることです。

今回のIPOでは約120億円を調達しますが、IPO後はエクイティ調達以外にも多様な資金調達の手法を取ることが可能となります。

その資金調達を元に、新たにM&Aを実施するなど事業戦略の柔軟性も増すと考えています。

直近のラウンド時から「上場と未上場」の2つの選択を比較していました。この3点が明確になり、このタイミングでの上場を決めました。

創業時、SaaSを見極められる投資家は日本にいなかった

フリーはシリーズEで約65億円を調達しています。上場と未上場のバランスをみながらきたとのお話しでしたが、これまでの国内スタートアップの調達状況から50億円超は超大型調達ともいえます。未上場での資金集めに不安はありませんでしたか。

佐々木 それほどありませんでしたね。通常の資金調達とは顔ぶれが変わりますが、視野さえ広げれば、引受先は確実に存在すると思います。

たとえばフリーの場合、今回のIPOプロセスを経て、主な投資家の属性は「プライベート(未上場企業)に投資するVC」から、「パブリック(上場企業)にも投資するグロースファンド」に変わっていくわけです。

投資家にフリーのIPOを説明すると、「プライベートでも投資しますよ」と言われることもありました。

実際に日本でも、KKRやティー・ロウ・プライスなどの海外機関投資家は、プライベートにもパブリックにも投資を行っています。

もちろん待っているだけでは海外から声はかかりません。彼らへのアクセスを持ち、日頃から投資のマーケティング活動が重要です。

これまでの資金調達で、苦労されたことはありましたか。

佐々木 もちろんあります。たとえば、最終的に投資家候補が数社しか残っていない局面もありました。

流石にその時は「2~3カ月後には大量に人を採用する計画になっているけど、うまくいかなかったらゼロからやり直しか?」と思いましたね。

今でこそ日本にもVCが増え、複数の投資家を比較した上で、資金調達ができる環境になっています。さらに世界に目を向ければ、海外機関投資家も選択肢として考えられます。

フィナンシャル・インベスターの良いところは、「ごめんなさい」ができる点ですね。相手も投資のプロなのでその点に理解がある。反対に、事業法人から投資を受ける場合、一度話が進んでしまうと断りにくい点は良くも悪くもあると思います。

一般的にFinTech企業は、金融系VCや金融機関から投資を受ける傾向があります。しかしフリーの場合は、海外VCから事業会社と、多様な株主構成になっています。

佐々木 実はこれまでに交渉した投資家の数としては、海外投資家もかなり多いです。

多様な株主と交渉するにあたっては、「事業、ビジョン、経営方針にどれだけ共感を持ってもらえるか」を重視していました。

フリーを創業した2012年頃を思い返すと、日本におけるSaaSビジネスに対する理解は、今ほど進んでいませんでした。

当時、既に普及していたパッケージ型会計ソフトに「勝てるわけがない」とVCに言われたこともあります。

加えて参考となるSaaS企業が日本にはまだなく、VCとしてもベンチマークを設定する難しさがあったのだと思います。

一方海外では、2012年時点で上場しているSaaS企業が数多くありました。

SaaSに詳しい海外の投資家は、「日本にSMB(中堅・中小企業)向けの会計SaaSはないの?それならチャンスだね」と思うわけです。

海外VCから資金調達が完了した後は、SaaSビジネスに対する国内の投資家の見方も変わりました。フリーが海外からの投資事例を作ったことは、日本のSaaS業界のためにもよいことだったと思っています。

今回フリーが「グローバルオファリング」を行っているのも、これと同じ考え方です。

グローバルオファリングによって「グローバルの投資家からはこう見られている」と、新しい視点を日本に展開できる。

それによって、日本のパブリックマーケットも活性化しますし、プライベート投資の評価ポイントもよりクリアになると思うんです。

日本のSaaS業界が盛り上がり、SaaSスタートアップが増えれば、お互いにAPI連携できる機会も増える。私たちだけでなく、SaaS業界全体にもメリットがあると考え、今回のIPOはグローバルオファリングに力を入れています。

日本でSaaSの理解が進まなかったのは、財務諸表上でSaaSの指標が表しにくかったことも関係がありそうですね。

佐々木 たしかに日本の財務諸表上、「LTV/CAC」「チャーンレート」といったSaaS独自の指標は見せ方が難しいです。

最も重要な視点は、販管費を「R&D(開発)」「S&M(営業・マーケティング)」「G&A(本社費用)」に分解して開示することです。なぜなら、これらの指標は世界中のSaaS企業が開示している数値だからです。

freee saas

(出所:freee 新規上場申請のための有価証券報告書(Iの部))

この数値を出さない限り、世界基準で比較できないため、海外投資家からの信頼は得られません。

またグローバルオファリングの場合、分厚い教科書のような有価証券報告書を、英語版でつくる必要もあります。

これがあって初めて、彼らに投資を検討してもらえるわけです。

コミュニケーションコストは高いですが、彼らと話すだけで勉強になります。ディスカッションパートナーとして株主になってもらえれば、大きなプラス材料になるでしょう。

海外の投資家とディスカッションする中で、印象的だったことはありますか。

佐々木 海外の投資家には「学派」のようなものがあり、投資家によって話す内容に違いがありました。

たとえばある投資家は、「君たちの事業は究極的にシンプルにすると、こういうことだね」と言って、ホワイトボードにまとめてくれたり、ある投資家の場合、1時間ひたすらカルチャーについて話すこともありました。

彼らが聞きたいのは、「この人はどういう考えで、どういうリスク耐性を持っていて、どのようにサービスや組織の優位性を語れるのか」といったポイントです。

創業者やCEOと話をする時間は、資料を読めば分かる「数字」ではなく、どういう思考をする「人」なのかを知る時間にしたいと考えているわけです。

ある意味では、就職活動の面接に近いかもしれません。

このタイミングでプラン内容変更に至った理由

先日、2020年2月より会計freeeにおける一部のプラン内容変更を発表されました。とくに法人事業所向けのベーシックプランでは多くの機能が制限されており、実質値上げとも見れます。本決断に至った背景を教えてください。

佐々木 フリーは常に機能追加・改善を行っています。その度に、新機能をどの料金プランに入れるかを決めています。

新機能を公開し、ユーザーが使う様子を見て初めて「新機能がユーザーのニーズに合っているのか」を判断出来ます。

プラットフォームやプロダクト全体の成長を考えるために、このギャップを定期的に洗い出し、「様子を見るべきか、提供するプランを変えるべきか」の議論を定期的にしています。

この議論によって、プロダクト全体だけでなく、より多くのユーザーに価値を届ける観点でも最適化できると考えています。機能制限とは逆に、ベーシックプランで使用できる機能を増やしたものもあります。

それぞれの機能を最適に使っていただくために、今回、機能の振り分けを見直しています。

この判断は定量的なデータだけで行っておりません。定性的にも「どうやって使い、どこまで使っているか」を調査しています。

たとえばある会社では、私たちが意図しない先進的な使い方をしていたり、大きな会社であれば、その会社特有の使い方をしていることがあります。それを定性的な調査によって把握します。

「定量的なデータ」と「定性的な調査」を総合し、プラン内容がニーズに合っているのかを、定期的に見直すわけです。

それこそ、価値を発揮できていない機能は閉じる決断も必要です。その機能は負債になり、ユーザーのためにならないからです。

フリーは非常に口コミ数の多い製品であり、コンセプトに賛同してご利用いただけるユーザー、パートナーシップ企業がたくさんいらっしゃいます。

エンゲージメントの高いプロダクトである分、エモーショナルなつながりも強いです。誤解を生むメッセージにならないよう、こうしたコミュニケーションの取り方は、常に改善していきたいと考えています。

ミッションである「スモールビジネスを世界の主役に」を達成するために、今後の事業展開をどう考えているのか教えてください。

佐々木 中長期的には、金融サービスや企業間取引といったテーマにも取り組んでいきたいと考えています。

まずはその足掛かりとして、会計フリーのユーザーであれば誰でも利用できる「資金繰り改善ナビ」の提供を2019年6月より始めました。「信用力はこのくらいだから、これだけ融資が受けられる」ことをユーザーに示すサービスです。

日本の会計・人事・労務領域におけるプロダクトのポテンシャルは大きく、特に会計領域を見ると、中小企業における会計ソフトのクラウド化率は未だに15%程度です。

当面は、この会計領域を伸ばすことに注力すべきだと考えています。

フリーとして掲げる「AIが中小企業のCFOになる」理想を実現するために、まずクラウドERPの基盤強化にフォーカスしていきます。

(インタビュー・編集・写真:森敦子、執筆:藤野理沙、三浦英之、デザイン:廣田奈緒美)


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