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2019/11/29

スタートアップの平均的な成長モデルを知る

(更新日:2023年8月4日)

スタートアップの成長フェーズを可視化する。

その目的のため、「INITIALシリーズ」をリリースした。

今回はシリーズ別に、企業評価額、調達金額、シリーズ上昇までの期間(次の大型資金調達までの期間)を分析し、日本における、スタートアップの平均的な成長モデルを見出していく。

※本文中のINITIALシリーズについて、最新の「Japan Startup Finace」レポートにて最新値が公表された際に、その値を更新する。

CONTENTS

先日、INITIALシリーズを公表した。本定義に基づいて、資金調達に関する集計を行った。本集計対象は、2015年以降に会社設立や資金調達など資本に影響するイベントを観測した企業である。

シード期の資金調達は公表されることが少ない状況に鑑み、シリーズA以降の資金調達状況について分析する。

INITIALシリーズAの定義は「原則、株価変化しており、調達後企業評価額5億円以上」の先である。それ以降のシリーズ上昇は「原則、対象ラウンドの調達前企業評価額と前回ラウンドの調達後企業評価額の変化率が20%以上」である。詳細はこちらの記事をご参照いただきたい。

INITIALシリーズ別の調達後企業評価額中央値

INITIALシリーズ別に調達後企業評価額の中央値を算出した。資金調達後企業評価額は「株価×株式数」で定義される。資金調達に用いられた株価と、資金調達後の発行済株式総数(潜在株式含む)をかけ合わせたもの。上場企業の時価総額に相当する概念である。

2023年7月17日時点では、シード~シリーズCは横ばいであるが、シリーズD以降の評価額が下落した。

シード~シリーズAは3.4倍、シリーズA~Bは1.9倍、シリーズB~Cは1.8倍、シリーズC~D以降は1.7倍で推移している。これまで、シリーズAからDは約8倍の評価額だったが、最新のものでは5.9倍へ推移した。

ご参考)【最新版】2023年上半期スタートアップ調達トレンド

INITIALシリーズ別の調達額中央値

企業評価額だけでなくINITIALシリーズ別に対象ラウンドにおける調達額の中央値もみてみよう。

2023年7月17日時点では、大小はあるがいずれのシリーズでも調達額の中央値は下がった。現象が顕著なのは、シリーズD以降で、シリーズCと同水準になっている。

ご参考)【最新版】2023年上半期スタートアップ調達トレンド

INITIALシリーズ別の希薄化率中央値

新たに株式を発行して資金調達を行うので、資金調達の度に創業者等の既存株主の株式保有割合は低下する。この既存株主の株式保有割合の低下率を「希薄化率」という。会社に対するオーナーシップをベンチャーキャピタルなどに一部手放すことで資金を得て成長を加速させていくのがスタートアップの基本的な成長モデルだ。

INITIALシリーズ別に希薄化率の中央値を算出した(データの時点は2023年1月18日)。

各シリーズでの希薄化率に大幅な変化はみられない。

INITIALシリーズ別の到達月数中央値

スタートアップは、会社設立からどの位の期間でシリーズAに達するのか。シリーズAを経てシリーズBに達する期間はどの程度か。その様な疑問に応えるためにシリーズ間の月数を算出した(データの時点は2023年1月18日)。

本月数は、シリーズ別でのラウンドの実行日の差分から算出している。同一シリーズで複数ラウンドが存在する場合は、当該シリーズの最初のラウンドの実行日と当該シリーズの1つ前のシリーズの最後のラウンド実行日の差分をとっている。

ユーザベースのラウンドを例にみてみよう。

ユーザベースのラウンドをINITIALシリーズ定義にあてはめてみた。INITIALシリーズAは3ラウンドある。会社設立からシリーズAまでの到達期間は、シリーズAの最初のラウンドである2012年9月28日から会社設立の2008年4月1日の差分をとった53ヵ月である。すなわち、4年だ。

シリーズAからシリーズBは、2014年1月6日と2014年7月25日の差分である6ヵ月だ。2013年12月30日と2014年1月6日のラウンドは提携目的の少額出資と見られる。したがって、これらのラウンドを例外として外す考えもあり得るが、定性判断による恣意性を排除するために、シリーズAに含まれるラウンドと見なしている。

同様に企業ごとに各シリーズ到達月数を算出し、中央値を算出したのが以下のグラフである(データの時点は2023年1月18日)。

会社設立からシリーズAまでがおよそ35ヵ月。すなわち、会社設立から約3年でシリーズAに到達するのが平均的な成長モデルであると言えそうだ。

その後は約1年おきにシリーズが進んでいる。会社設立からシリーズDに到達するのは6〜7年後である。

しかし、IPOしたスタートアップがすべてシリーズDに到達するのではない。事実、上で紹介したユーザベースはシリーズBを経て上場している。

今回の記事について、「データを丸めることでスタートアップの成長動態を単純化し過ぎている」という批判はあるかもしれない。

我々の目的は、INITIALシリーズの定義についての記事でも書いたように、スタートアップの成長フェーズ、成長モデルを可視化することで、スタートアップの世界を分かりやすくし、起業やスタートアップへの転職といった「挑戦を増やす」ことである。

その目的に沿う形に内容をブラッシュアップし続けるため、本記事を読まれた方からぜひフィードバックやご提案をいただきたい。

(文:森敦子、編集:佐久間衡、デザイン:廣田奈緒美)


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