発電・エネルギー事業を手がける電源開発(J-POWER)は中長期の成長を見据え、2018年からスタートアップへの投資・協業に本腰を入れている。
同社はCVCとしては後発だからこそ、特徴を打ち出すことを意識してきた。シード・アーリーステージに転換社債型新株予約権付社債(CB)で出資するなど、異例の投資スタイルを取り入れる。
VCの経験者などを採用したわけではなく、自社のプロパー社員3名でCVCを立ち上げたJ-POWERは、事業の特性などに合わせてどのように独自の投資手法を築いてきたのか。CVC活動を推進する遠藤二郎氏にユニークな投資戦略について聞いた。
「技術シーズを見つける」が目的
アーリーステージのスタートアップに積極的に投資するなど、他のCVCとの違いが目立ちます。なぜ現在のような投資スタイルになったのでしょうか。
J-POWERの投資対象はディープテック(研究開発型)のスタートアップが中心となっています。技術シーズを見つけていきたいという事情があるため、必然的にシードアーリーへの投資が多くなっています。
そのため、協業に結びつけるまでの時間軸が必然的に長くなります。CVCや事業会社による出資でシリーズA以降のスタートアップを対象とするケースが一般的となっているのは、投資先の事業がある程度形になっているほうがすぐに協業できるからでしょう。逆に我々の場合、既存事業の周辺の領域ですぐに協業できるスタートアップについては基本的に出資をせずに、まずは業務提携で事業部との連携を進めます。
CVCは一見すると本業とは結びつきにくい、少し離れた領域を投資対象としています。その場合、J-POWERにとって新規参入になるためすぐには協業できません。そこでCVCが出資し、株主となって深いコミュニケーションを取りながら、協業のタイミングを見計らいます。事業連携だけの場合と投資してから協業する場合とではコミュニケーション量と質が大幅に異なります。
例えば、バイオ燃料製造のGreen Earth Instituteには2019年に出資しましたが、協業に向けて本格的に動き始めたのは2021年です。出資をすることでより深くスタートアップとつながり、中長期での事業連携、新規事業創出につなげる体制を整えています。
当初から経営陣にはディープテックが中心となるため、少なくとも最低5年は成果が出るまでは掛かる、ということはCVCの立ち上げ時に説明していました。
Green Earth Instituteとの共同事業(オイルパーム廃木を活用したバイオマス燃料の製造)
CVCでは異例の出資形態
一般的にCVCは普通株式や種類株式で投資しますが、J-POWERは積極的に転換社債型新株予約権付社債(CB)を用いています。その理由を教えてください。
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