がん・認知症の領域に注力する製薬会社「エーザイ」。2021年からは中期経営計画を刷新し、患者だけでなく生活者すべてを支えるため、様々な業界との共創を通じて新たな価値を生み出す取り組みに挑戦している。
2019年に設立されたCVCも少数精鋭のチームながら、スタートアップとの面談数は年間約200社に迫り、日米拠点で世界のスタートアップ10社以上に投資する。
設立からわずか2年でどのように社内コンセンサスを形成し、グローバルで組織体制をつくってきたのか。CVCの立ち上げ時の幹部説得法や組織作りの秘訣について、CVCを管轄するエーザイ長山 和正氏と、投資を担当する石田 英和氏に聞いた。
※本記事は、2021年5月18日に行われたHOME TO HOME セミナー「CVCを新設したエーザイが挑む、スタートアップ投資 x オープンイノベーション」と追加取材の内容が元になっています。
5年で150億円の投資枠
エーザイの経営におけるCVC活動の位置付けについて教えてください。
長山エーザイは、神経領域とがん領域を重点分野とする製薬会社です。2021年からはわれわれの薬を提供する患者だけでなく、生活するすべての人の「生ききる」を支えることを目指しています。
2019年5月に、CVC活動を行うコーポレートベンチャーインベストメント(CVI)部を新設しました。投資枠は年間30億円をめどに5年間、総額150億円の枠内で、日本と米国の3拠点でグローバルに投資しています。
製薬業界は、自社内の研究開発だけでなく、他社の技術をいかに取り入れるのかが重要です。2016年から、米国のFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)で承認された新しい薬剤の75%は、大手の製薬会社ではなくスタートアップが開発した種が元になっています。
CVCを始めた理由は、革新的な医薬品を研究し続けるために、スタートアップの開発をうまく取り入れる必要性を感じたからです。私は以前から事業開発の担当者として、この他社と連携した研究開発に取り組んできました。
今後エーザイとしてできることは、CVC投資の形ではないか——。そう考え、最終的に内藤 晴夫CEOと柳 良平CFOに提案をし、短期間で承認してもらいました。
提案をしたのは、私と当時チーフデジタルオフィサーの内藤景介(現チーフエコシステムオフィサー)のふたりです。
あえて失敗事例をCEOに説明
エーザイはこれまで投資に積極的ではありませんでしたが、CVCの設立を短期間で承認してもらえたのはなぜでしょうか。
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