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2020-04-10

コロナ対策の担い手となるか。世界のオンライン診療スタートアップ

#資金調達記事#HealthTech

新型コロナウイルスの影響が広がる中、4月7日、日本政府は初診患者に対してもスマートフォン等を使ったオンライン診療を解禁することを決定した。

2018年3月に厚生労働省が「遠隔医療ガイドライン」を定めた後、医療のオンライン化の流れが停滞していた日本でも、今回を契機とした新たな動きが見られている。

世界のオンライン診療を提供するスタートアップを見ると、日本よりさらに先行して事業を展開し、累計調達額が1億ドルを超す事例もある。

「医師の診断は、まず対面で」の従来の流れはどう変わっているのか。世界のオンライン診療サービスを提供するスタートアップに焦点を当て、オンライン診療の今を見ていこう。

CONTENTS

1億ドル以上の調達例も。グローバルの「オンライン診療」スタートアップ

「Global Healthcare Report Q3 2019」(CB Insihts)によれば、2019年10月時点でVCからの調達を行ったユニコーンのヘルスケアスタートアップは37社あり、その中でオンライン診療のサービスを提供するユニコーンはone medical(アメリカ、2020年1月上場)、Babylon Health(イギリス)、WeDoctor(中国)の3社であった。

累計1億ドル以上を調達した各国のオンライン診療スタートアップ上位数社から、グローバルではどのようなプレイヤーがいるか見てみよう。

中国、アメリカ、ヨーロッパから、累計調達額1億ドル超のスタートアップが輩出されている。医師不足や良質な医療サービスに対するニーズの高まりが背景にあるだろう。

スウェーデンのKryやフランスのDoctolibはアメリカの大手VC「Accel」から、イギリスのBabylon Healthはサウジアラビアの政府系ファンド「Saudi Arabia's Public Investment Fund」から出資を受けるなど、ヨーロッパでは母国以外の海外投資家からの出資例が見られる。

背景にはこれらのスタートアップの積極的な海外展開がある。Kryはスウェーデン、フランス、イギリス、スペイン、Doctolibはフランス、ドイツ、Babylon Healthはイギリス、アメリカ、カナダ、ルワンダ、シンガポールでサービスを提供する。こうしたグローバル展開に必要な資金を調達するため、資金力のある海外投資家からの出資を選択したと考えらえる。

一方、中国はヨーロッパとは様相が異なり、ITジャイアントが存在感を見せる。JD Healthは京東集団、WeDoctorはテンセント、Ping An Good Doctorは平安保険が作った子会社だ。またHaodf.comとMiaoshou Doctorの2社は共にテンセントから出資を受けている。

今後もこれらITジャイアントと資本関係の深いスタートアップが中国のオンライン診療をリードするだろう。

次に、累計で1億ドルから1000万ドルを調達をしたスタートアップを見てみよう。

ドイツやイギリス、シンガポールといった先進国のほか、インドネシアやインド等のアジア新興国でも動きがある。

アジア新興国での盛り上がりは、既存技術を導入する前に最新技術を導入する「リープフロッグ」現象だろう。新興国では新しい医療システムに対する規制や法律の策定が追いついていないため、規制面での新規参入のハードルは低い。

また、医療システムも未整備な部分があることから使い勝手のいいサービスへのニーズは強い。規制と潜在需要の両面でスタートアップには追い風となる。

医療に使う金銭の余裕がある中間層が増加するアジア新興国では、適切な医療へのニーズが増えてきている。今後インドやインドネシアから次のオンライン診療のユニコーンが登場するか、見逃せないポイントになるだろう。

オンライン診療で進むAIの活用

グローバルのスタートアップの特徴を、「AI活用」と「ビジネスモデル」のポイントから見ていこう。

①AI活用

オンライン問診、診療を提供するPing An Good Doctorは、AI技術を活かし従来の対面診療よりも多くの診療が可能だ。

ユーザーがアプリでオンライン相談を開始すると、チャットボット形式でAIアシスタントが症状・年齢・性別を確認。基本的な事前診断が終わった後に、実際の医師が追加質問や所見を説明する仕組みだ。

同社は一日あたり40万回の診断を行っているというが、これほどの回数をこなせるのは初期段階でAIによるスクリーニングが行われた上で、実際の医師にパスする流れが確立されているからだ。

HaodfはPing An Good Doctorと同様にAIによるスクリーニングを行っているほか、カルテ管理や皮膚病の識別においてもAIを利用している。また、管理機能として診療画像や診断書の記録機能、OCR機能を提供しており、カルテを多角的に分析できる。

(画像:everything possible / Shutterstock.com)

この2社以外にも、Babylon HealthやAda Health、Alodokter、Docdoc、DocsApp等がAIをサービスに取り入れているが、問診から診療までの流れをAIだけで完結しているスタートアップは現在のところ存在しない。患者の振り分けにチャットボットが利用され、その後実際の医師につなぐなど特定の部分でAIが活用されている。

AIの活用には大量のデータの取得が必要になることを鑑みると、人口の多い中国やインドは強みを活かしやすい環境にある。今後、カルテ管理や診断画像などでAIを用いるスタートアップは、中国やインドから増えていく可能性は高いだろう。

②ビジネスモデル

各社はオンライン診療でどのように収益を稼いでいるのか。ビジネスモデルを見ると、大きく3つのポイントが存在する。

  1. (1)手数料方式

オンライン診療スタートアップの強みはAIスクリーニングや24時間対応など様々だが、ビジネスモデルは「登録医師と患者を繋ぐプラットフォーム」の形をとることが多い。患者が診察後に費用を払い、診療費からサービス手数料を差し引いた金額が医師に支払われる。

患者側のメリットは通院にかかる時間を削減でき、医師側もオンライン診療時間が対面診療より短縮されることで、時間当たり売上高が増加し、診療効率が上がるメリットがある。

  1. (2)サブスクリプション方式

サブスクリプション方式でサービスを提供するスタートアップもある。アメリカのOne Medicalは会員制の医療プラットフォームで、年会費の199ドルを支払うことにより、アプリ上での予約やビデオ電話による問診、24時間のチャット対応など複数のサービスへのアクセスが可能となる。他のサービス同様、医療費は利用時に都度発生するが、手数料は発生しない仕組みとなっている。

  1. (3)オプション(処方薬の販売、配送)

インドネシアのHalodocやインドのDocsAppは診療後、処方薬の配送まで手掛けている。予約から薬の配送までワンストップで医療サービスを提供できるのはオンラインプラットフォームならではの強みと言えるだろう。

国内オンライン診療スタートアップの動向

これまで日本のオンライン診療は「対面診断の補完」が前提であり、初診でのオンライン診療は認められていなかった。

こうした背景もあり、大規模な資金調達を行っているスタートアップはなく、シード~シリーズBに集中している。グローバルでは累計で1億ドル(約110億円)以上の調達を行うスタートアップがある一方、日本では最大でもインテグリティ・ヘルスケアの16.6億円に留まる。

上記10社の中で、サービスを導入する医療施設数が1,000を超えるメドレー、インテグリティ・ヘルスケア、MICINの主要3社の特徴を見ていこう。

2019年に上場したメドレーは他社に先駆けて2016年よりオンライン診療システム「CLINICS(クリニクス)」を提供している。クラウド電子カルテとオンライン予約システムを組み合わせ、業務フロー全体と連携できることが特徴だ。

インテグリティ・ヘルスケアの「YaDoc(ヤードック)」は、オンラインの疾患管理システムとして展開しており、オンライン診療システムの他、患者の状態変化を捉えるモニタリング機能や、オンライン問診機能も提供する。

MICINはAIを用いた医療データを解析、活用するデータソリューション事業を行うほか、オンライン診療サービス「curon(クロン)」を展開している。患者側はcuronのアプリ上で、病院(クリニック)の予約から問診、診察、決済までをオンライン上で行うことができる。

3社のビジネスモデルはメドレーが「サブスクリプション方式」「オプション(処方薬の販売、配送)」、インテグリティ・ヘルスケアが「サブスクリプション方式」、MICINが「手数料方式」「オプション(処方薬の販売、配送)」と、それぞれ特徴が異なっている。

こうした各社の費用体系やカバーする業務範囲の違いを踏まえ、医療施設と患者は比較検討する必要がある。

コロナウイルスの影響が拡大する中、対面診療による接触リスクを回避する手段としてオンライン診療のニーズが高まる一方、日本医師会からは「オンライン診療は対面に比べ診察時に得られる情報が限られ、リスクが高い」と懸念する声も出ている。

オンライン診療の初診解禁は現時点では「コロナウイルスの感染が拡大する間の特例措置」であり、恒久的な解禁には至っていない。

システムを導入する医療機関とサービスを利用する患者数が増え、事例をもとに議論を重ねられるかが、コロナウイルスの影響収束後、オンライン診療が普及するかの分かれ目になるだろう。

(執筆:三浦英之、編集:中村香央里、デザイン:廣田奈緒美)

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