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2020-03-26

「VR元年」から4年、VRスタートアップはtoBの時代へ

# VR# HRTech# マーケティング# B2B# 定量ファクト# SaaS
# VR# HRTech# マーケティング# B2B# 定量ファクト# SaaS

Facebookの「Oculus Rift(オキュラス リフト)」を筆頭に、一般消費者向けVRデバイスが相次いで発売されたことで、2016年はVR元年と言われている。

それから4年ほど経った今、toB向けVR市場が伸びてきているのはご存知だろうか。

国内でも評価額が100億円に迫るtoB向けVRスタートアップが出ており、大手不動産会社がVR内覧を本格的に導入し始めるなど、盛り上がりの兆しがみられる。

また足元では、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが推奨され、オンラインによるミーティングやイベントが急速に社会に浸透し始めている。この流れは、toB領域へのVRの普及を加速させうる。

本記事では、国内のtoB向けVRスタートアップの評価額上位10社を分析することで、同領域の最新トレンドを解説する。

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調査会社Tracticaによると、エンタープライズ向け(以下、toB向け)VRの市場規模は、ハードウェアとソフトウェアを合わせて2018年の10億ドルから2025年までに126億ドルに増加すると見込まれている(出所:「Virtual Reality for Enterprise and Industrial Markets」)。

2019年には、VRデバイスでシェア2位のOculusは大規模利用向けソフトウェアを、同3位のHTCは高性能デバイスをtoB向けに発表している。

toB向けVRサービス普及の背景には、デバイスの発達がある。

たとえば航空宇宙分野などでは、以前からシミュレーション用途にVRを活用する企業は一部あったものの、デバイスが高価だったため導入する企業は多くなかった。

転換点になったのが、2018年の「Oculus Go(オキュラス ゴー)」の発売だ。従来のVRデバイスの約半額である2万円前後で購入でき、ケーブル接続も不要で取り扱いが手軽になった。

VR企業に投資するベンチャーキャピタル、DBJキャピタル株式会社(以下、DBJキャピタル)の河合氏は、「安価で没入感も高いデバイスが登場し、視聴者の意思決定に影響を与えるケースが生まれ始めた。それにより、実証実験を越えた本格導入へのハードルが大きく下がり、企業のVR活用事例も急激に増えた。」と話す。

米国のVRスタートアップでも大型調達が見られる。VRコンテンツ作成支援ツールを提供する「Matterport(マターポート)」は、2019年に4,800万ドルの投資を受け、累計で1.14億ドル(日本円で125億円、1ドル=110円)資金調達をしている。同社の技術は住宅情報の「SUUMO(スーモ)」にも導入され、物件のバーチャル見学を可能にしている。

国内toB向けVRスタートアップ評価額上位10社の特徴

一方、日本国内ではどうか。国内toB向けVRスタートアップ評価額上位10社をみてみよう。

参考)INITIALシリーズの定義はこちら:スタートアップの成長フェーズを知る

評価額上位10社はいずれもソフトウェアサービスを提供。設立年は2013年以降、評価額は10〜20億円前後でシリーズA、総調達額は10億円以下の企業が中心だ。

アルファコードとHoloeyes以外はSaaS型でサービスを提供しており、業務効率化やマーケティング支援の1つとして、VRを提供する企業が多い。

評価額上位はナーブ、ジョリーグッド、InstaVRの3社だ。

ナーブは不動産領域を中心にVRサービスを提供。toB向けVRスタートアップのうち、唯一のINITIALシリーズDの企業だ。2019年には三菱地所や東急不動産ホールディングスなど不動産大手企業からも出資を受けている。

ソフトウェアだけでなく物件購入前にVRで体験、相談できる無人販売店舗「どこでもストア®」を自社で開発し、イオンモールなどの大型商業施設に展開している。展示場や不動産屋に行かずに遠隔で住宅情報を専門スタッフに相談できる。

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ショッピングモールなどで、VRを用いて物件情報を得られる「どこでも住宅展示場™」(出所:ナーブ プレスリリース)

ジョリーグッドはメディア業界向けVRサービスに強みを持つが、現在は研修・教育向け領域にも力を入れている。

2019年には米国ヘルスケア大手のJohnson&Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)と共同で、医療研修VRを共同開発した。医師の見学人数に上限がある手術現場を映像・VR化し、場所・時間を問わず名医の技術を学ぶことができる仕組みだ。

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ジョリーグッドとジョンソン・エンド・ジョンソンの共同開発する医療研修VRのイメージ画像(提供:ジョリーグッド)

InstaVRはVRアプリ作成ツールを提供する。特別なインストールやプログラミングをせずに簡単にVRアプリが作成でき、ウェブ上やVRアプリ上にワンクリックで配信が可能な仕組みだ。不動産、旅行、教育領域を中心に活用されている。

同社はグローバル展開が強みで、世界140カ国、約50,000社に導入され、海外売上比率が9割にのぼる。海外売上比率の高さが評価され、国内の投資家に加えてVRに特化した米国VC「The Venture Reality Fund」からも出資を受けた。

toB向けVRは不動産領域での活用が中心。今後他領域へ拡張も

つぎに上述した評価額上位10社のスタートアップが、注力している事業領域・業務領域を見てみよう。

最も参入領域が多い業務領域は、「営業マーケティング」だ。評価額上位10社中9社が参入する。とくに物件の内覧など不動産領域での活用が多くみられる。

同領域にサービスを提供するスペースリーCEOの森田氏は「不動産業界では、3Dでの設計が進み3Dへの抵抗感が少ない。また、内覧などオペレーションコストの高い業務が多く、消費者も場所や時間の制約に課題を感じている。もともと、VRを導入しやすい環境だった」と話す。

不動産に次いで展開例が多いコマース領域は、街並みや店内の雰囲気をVRで伝えやすいことが注目され、参入が増えていると考えられる。AmazonやAlibaba、eBayなど大手ECもVR店舗を導入したが、期間や場所を限定した活用が多く決定的な普及には至っていない。

スペースリーに投資するDBJキャピタルの河合氏は、toB VRサービスの活用について「現在は不動産が中心だが、今後観光分野やコマース、メディアなど他領域に展開できる拡張性がある」と語る。

国内スタートアップも自社プロダクトが適している領域や使途、導入効果を明らかにするために、データを集めている段階だと考えられる。得られるデータ量を増やすために複数の業界や業務に参入し、最適な活用方法を模索する意図がスタートアップ側にあるのではないか。

2020年以降に成長が期待される「VR研修」

不動産、コマースを中心にVRの利用事例が増える中、今後は「研修」領域の成長が期待できるだろう。すでにジョリーグッド、InstaVR、スペースリー、Synamon、Holoeyesなどのスタートアップが同領域に参入している。

DBJキャピタルの河合氏によると、展示会「VR/AR/MR ビジネスEXPO」でも多くの参加企業が研修領域のスタートアップを探しており、同領域への関心が高まっているという。

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河合 将文(かわい まさふみ)/ DBJ キャピタル ディレクター。国内大手機関投資家にてオルタナティブ投資、M&Aコンサルタントを経て、2011年より日本政策投資銀行にてクレジット投資やPEファンド投資など担当。2017年よりDBJキャピタルにて国内ベンチャー企業投資および国内外VCファンド投資を担当(写真:INITIAL)

研修領域への関心が高まる理由は、「能動的な体験型学習による研修者の習熟度向上と、体験しにくい事故などの特殊環境の再現による研修の質の向上が見込めるため」(河合氏)だ。

2019年には米小売企業最大手のWalmart(ウォルマート)が従業員1万人にVRを導入し、昇進テストや銃器による緊急対応などの研修を行っている。

国内でも導入が進む。松屋フーズが接客トレーニング研修でVRを用いているほか、前述のJohnson&Johnsonとジョリーグッドの事例や、スペースリーと大同メタル工業の共同実証実験の事例がみられる。

研修領域ではマイクロソフトのARデバイス「HoloLens(ホロレンズ)」の導入もみられるが、「現場での作業効率化はAR、時間と場所を選ばない学習体験はVRと両者で棲み分けできる」と河合氏は話す。

「視線データ」の活用を進めるスタートアップも

多分野でVRの活用が進む中、VRで独自に得られる「視線データ」を活用した取り組みも始まっている。

VRはアイトラッキング機能を活用すれば、視聴者がどこを見ているか正確に把握できる。このデータを用いて、ユーザーの興味や習熟度の把握を目指す。

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ユニ・チャームによるアイトラッキングを活用したパッケージの検証事例(出所:トビー・テクノロジー株式会社 プレスリリース)

視線データの最も簡単な活用方法は、ユーザーごとに視線の動きの差を出して評価する方法だ。プロ(熟練者)とアマチュア(学習者)の視線の差を測定し、初心者にプロと同じ視線の動きを学ばせスキルの向上を図る。

ジョリーグッドは発達障害者向けのトレーニング用に、VR内で視線データをつかって学習ログを残す試みを始めた。

VRコンテンツ内に、コミュニケーションを取る際に見てほしい箇所を事前に設定し、そこを見ると加点される仕組みを導入することで、これまで把握できなかった暗黙知を数値化したのだ

同様の仕組みを介護士向けにも導入している。視点データのログを継続的に取れば、紙面上では測れない暗黙知に近い能力も記録として残せるようになる。

「今後はコンテンツ内で見ている対象や音声、視線の動きを関連付けて、業務適正を提案するような使い方も考えられる」とジョリーグッドCEO 上路氏は視線データの活用方法を話す。


スタートアップの参入が増え、着実に普及への道のりを歩んでいるtoB向けVRビジネス。前編では、盛り上がっている領域とこれから成長が期待される領域を明らかにした。

後編では、成長が期待される「研修・トレーニング」用途にVR事業を展開するスタートアップ2社へのインタビューから、その最前線に迫る。

(執筆:町田大地、編集:藤野理沙、デザイン:廣田奈緒美)

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