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2020/04/03

新型コロナに対するスタートアップの挑戦

  • #VC/CVC

未曾有のコロナ危機に、国内スタートアップはどう対応するか。

本記事では、新型コロナに対するスタートアップの動向を解説する。

INITIALは新型コロナの影響について起業家へのアンケート取材とリサーチを実施。スタートアップではサービス無償化に踏み切る動きや、スタートアップ主体で資金支援、新サービスの開発など、知恵を絞って苦境を乗り越えようとする強さが見られた。

またスタートアップにとって生命線となる資金繰りについて、利用可能な政府の支援策や投資家の動向についても解説する。事業環境が悪化する中でも、スタートアップの挑戦を支援する動きを止めない意思表明をする投資家も記載した。

※この度の新型コロナウイルス感染拡大に際し、感染された患者様には心よりお見舞い申し上げると共に、ライフラインの維持や医療活動に尽力されている皆様の安全と一日も早い事態収束をお祈り申し上げます。

CONTENTS

世界で新型コロナウイルスが急激に拡大する中、日本経済にはどのような影響があるのか。

4月1日に発表された日銀短観では、新型コロナの感染拡大の影響から景気判断を示す指標が製造業・非製造業ともに悪化。業種別では宿泊・飲食サービスの落ち込みが際立ち、過去最低の-59(大企業)を記録した。

日本政府や各自治体は外出自粛を要請。大人数が集まるイベントは中止、企業も在宅勤務に移行し、オンライン化の流れが加速している。

経産省は1.6兆円の支援を発表。スタートアップが利用可能な支援策

他国ではいち早くフランスがスタートアップ支援に取り組んだ。フランス経済相と公的投資銀行Bpifranceは3月25日、スタートアップ向けに40億ユーロ(約4800億円、1ユーロ=120円換算)支援を発表。2019年の国内スタートアップ投資額4462億円(出所:INITIAL)を超える、大規模な支援となっている。

日本では経済産業省がスタートアップに特化はしていないが、事業者向けに1.6兆円規模の金融支援策を発表した。(参考:経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」

スタートアップが利用可能な政府支援策を以下紹介する。

特にスタートアップにとって生命線となる資金繰りは、厚生労働省による雇用調整助成金や、日本政策金融公庫と商工組合中央金庫による運転資金または設備資金の融資が活用できる。

従業員の休業手当を補助する雇用調整助成金は、過去1ヶ月で5%以上の業績低下した企業が申請できる。助成金額は休業中の従業員の80%の給与、解雇しない場合は90%(いずれも中小企業の場合)と手厚い保障だ。補助金額は従業員1人あたり日額8,330円が上限となる。

新型コロナウイルス感染症特別貸付および危機対応融資では、融資額3億円を限度に、信用力、担保によらず融資後3年間まで貸付金利0.21%と金利負担が少ない。特別利子補給制度を併用することで、実質無利子、無担保の融資が可能になる仕組みだ。

日本政策金融公庫によるセーフティーネット貸付は、業績が悪化した中小企業に対して7.2億円まで融資できる制度だ。特例措置として貸付要件が緩和されており、「売上高が5%以上減少」等の数値要件にかかわらず、「今後の影響が見込まれる事業者」も融資対象となる。

都内のあるスタートアップは、「3月から日本政策金融公庫と数千万円規模の融資を検討していたが、4月に入ってより好条件で融資出来る可能性があると話があり、環境の変化を感じる」と話す。

エクイティ調達環境悪化の中、従来より柔軟な条件となった融資を活用するスタートアップも増えるだろう。

ほかにも、主にハードウェア系スタートアップにはものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、バックオフィスが未整備な創業初期スタートアップはIT導入補助金、テレワーク導入企業には事業継続緊急対策(テレワーク)助成金などが活用できるだろう。

医療、教育、テレワーク関連でサービス無償提供するスタートアップが増加

次に、新型コロナに対するスタートアップの取り組みを紹介する。以下は、新型コロナ対策でサービスの無償提供を発表したスタートアップだ。

特にオンライン化の恩恵を受けるWeb会議システムなどのテレワーク関連、医療相談や安否確認などのオンライン医療、オンライン学習プログラムの無料開放などの教育セクターで無償化を発表した企業がみられた。法人向けに4月末まで無償期間として提供する企業が多い。

2月の時点でいち早くAI搭載IP電話「Miitel」の無償化を発表したRevCommは、「(代表の會田CEOが)日本社会に貢献すべくサービス無償化を決めた。新規のお客様だけでなく、既存の取引先からも大きな反響があった」(CFO鈴木氏)という。一時的な企業負担よりも、社会課題の解決にいち早く取り組んでいることのあらわれだろう。

スタートアップ主体で飲食業の資金支援や新サービス開発も

サービス無償化以外で、新型コロナ対策の取り組みを発表したスタートアップは以下の通り。

特筆すべきはスタートアップ主導で資金繰りをサポートする動きが、飲食業を中心に見られる点だ。

クラウドファンディングを運営するCAMPFIREは、2月28日から新型コロナの影響で経営に支障が出た事業者を支援する「新型コロナウイルスサポートプログラム」を開始。通常12%かかるサービス手数料を無料にし、決済手数料5%のみでプロジェクト実施が可能になる。

プログラム開始から1ヶ月で応募件数は400件にのぼった。内訳は飲食関連が4割と最多で、イベント運営など音楽関連、宿泊関連などが続く。資金調達を開始したプロジェクトは100件、資金支援総額は1.3億円だ(2020年3月28日現在)。

スタートアップ同士で連携し、資金繰りを支援する動きも見られる。クラウドファクタリングのOLTAは、定額制飲食サービス「always」を運営するイジゲン社と連携。加盟店舗向けに売上金の早期入金サポートを開始した。新型コロナの影響で来客数、売上が減少した加盟飲食店の資金ニーズに対応する。

今回の有事に合わせ、消費者のニーズに合わせ新たなサービスができる動きも見られた。

スマホ専用ブラウザ「Smooz」を運営するアスツールでは、インターネット上のマスク在庫情報・価格を集約し1枚あたりの価格で比較できるウェブサイト「マスク在庫速報」を3月23日にリリース。1週間で100万人以上のユーザーが利用した。現在はサービス名を「在庫速報.com」に変更し、アルコールジェル、アルコール消毒液の在庫も掲載している。

マスクの在庫を探すのに苦労した開発者がサービス開発を強く提案したことをがきっかけに、一企業として社会問題に貢献したい思いから今回のリリースに至ったという。

「在庫速報.com」のサービスイメージ画像(出所:アスツール社 プレスリリース)

オンライン診療サービス「curon」を運営するMICINは、新型コロナ対策を通して短期間でサービスの開発・改善を実行した医療系のスタートアップだ。特設ページの開設(2月28日)に始まり、オンライン診療後に医療機関から薬局への処方箋を送付するシステムを短期で開発(3月2日)、さらにオンライン診療から服薬指導・医薬品の配送まで行う仕組みも提供した(3月10日)。現在は薬局がオンライン服薬指導を実施するための専用サービスも開発中だ。

中高生向けAIタブレット教材「atama+」を運営するatamaplusは、Web版プロダクトを緊急開発。従来では塾や予備校内のタブレットでのみ利用可能だったが、今回の開発により生徒が自宅でもブラウザ上で受講が可能になる。

目の前の社会課題に対するソリューションをスピーディな開発で顧客に届けるスタートアップの動きは今後も多く見られるであろう。

資金調達の遅れに懸念も、多くの投資家がスタートアップ継続投資を表明

最後に資金調達環境の影響について紹介する。INITIAL実施アンケートで、新型コロナが事業に与える影響として起業家から最も多かった声は「資金調達の遅れ」だ。

また起業家が投資家に求めるのは「不況時の乗り越え方の発信」「海外市況や各社動向の情報提供」「投資方針の明確化」「資金繰りのサポート」などの声があがった。

投資家サイドでも動きが見られる。

DNX Venturesは不況を乗り越えるための指針として「SaaSスタートアップのためのCOVID-19クライシス対策:現状分析と今後の対応」を発信。

グロービス・キャピタル・パートナーズ代表の堀氏は、投資方針として「投資先企業への経営支援強化、既存投資先はメリハリをつけた上で追加出資や積極姿勢、新規投資の継続」を表明した。グローバル・ブレイン代表の百合本氏も「引き続き安定的に投資活動を進める」と表明している。

マネーフォワードのグループ会社マネーフォワードシンカ代表の金坂氏は「このような環境下でも積極投資したいVCと今後半年程度で調達を検討するスタートアップをマッチングしたい」とSNSで発信。氏の思いに賛同した20社以上のベンチャーキャピタルが参画し、オンライン面談マッチングを開始。最終的にスタートアップ170社から、3000件以上の面談依頼が来たという。

グリーは4月1日に投資事業の強化を発表。既存の「STRIVE」や「GRF Fund」に加え、「グリーベンチャーズ」を新設。国内のインターネット関連領域でスタートアップへの投資を行なう。

新型コロナ影響下で積極投資の意思を表明したスタートアップ投資家は、ANRI、DNX Ventures、Full Commit Partners、Global Catalyst Partners Japan、Hike Ventures、iSGSインベストメントワークス、KVP、Plug and Play Japan、Spiral Capital、STRIVE、WiL、XTech Ventures、いよぎんキャピタル、インフィニティベンチャーズ、グリー、グローバル・ブレイン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、 グローブアドバイザーズ、サムライインキュベート、ジェネシアベンチャーズ、ジャフコ、デライト・ベンチャーズ、ニッセイキャピタル、フューチャーベンチャーキャピタル、リノベるだ。(INITIAL編集部調べ、2020年4月3日現在。出所:マネーフォワードシンカ社プレスリリース、企業公式ブログ、SNSなど公開情報)

INITIALでは引き続き、スタートアップ関係者への取材およびリサーチを通じて新型コロナに対するスタートアップの影響について発信する予定だ。

(執筆:藤野理沙、リサーチ:三浦英之、町田大地、平川凌、デザイン:廣田奈緒美)


【アンケート実施中】 より新型コロナに対するスタートアップの実態を把握し、正確な情報を発信するためにアンケートを実施します。起業家、投資家などスタートアップ関係者の皆様、こちらのリンクからアンケートのご協力よろしくお願いします。


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