今週のトップニュースは、フードデリバリーサービスChompyの資金調達だ。
日本のフードデリバリー市場はこれまで出前館、Uber Eatsの2強体制であったが、2020年にはChompyなど国内外スタートアップの新規参入が進み、競争が激化している。後発企業のスタートアップの勝ち筋はどこにあるのか。業界構造の変化と、各社の事業戦略を解説する。
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フードデリバリーサービスを提供するChompy(チョンピー)は約7.8億円の調達を発表した。Delight Venturesとサイバーエージェントの藤田ファンドをリード投資家として、既存投資家のANRI、DCMベンチャーズ、Coral Capitalなどが出資。累計調達額は約17億円となった。
ニュースのポイント:フードデリバリー企業の新規参入が加速、スタートアップの勝ち筋は
Chompyは2019年設立の企業で、2020年8月から東京23区の一部のエリアでフードデリバリーサービスの展開を始めた。
すでに国内のフードデリバリー市場では資金力やネットワークに強みのある出前館(LINEグループ傘下)とUber Eats(ウーバーイーツ)の2強が存在していた。
しかし、コロナ禍での外出自粛などにより、消費者の需要と飲食店の導入が加速した2020年以降、Chompyだけでなく海外スタートアップを含め、フードデリバリーサービスの新規参入が進んでいる。後発企業である各社の事業戦略、勝ち筋はどこにあるのか。
各社の戦略は主に3つのタイプに分けられる。①地方エリアへの進出、②掲載店舗での差別化、③デリバリー商品の拡大だ。
1点目の地方エリアへの進出は、フィンランド発のWolt(ウォルト)や中国の配車アプリ傘下のDidi Food(ディディフード)が例にあげられる。Woltは2020年3月に広島市でサービスを開始し、その後は北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県呉市と地方都市を中心に事業拡大する。2強が捉えきれていない地方都市での市場獲得を狙う。
一方、DiDi Foodは関西エリアを中心に展開し、タクシー配車アプリにデリバリーサービスを統合することで顧客を獲得する。今後はスーパーアプリとして複数のサービスを提供し、収益拡大を狙うことが想定される。
2点目の掲載店舗での差別化戦略を取るのは、Chompyだ。Chompyは他社に比べ資金力に劣るものの、独自の市場を開拓している。サービスを正式リリースしてからわずか1年弱、展開地域も東京都内12区のみだが、ユーザー数は6.5万人を超える。
Chompyの特徴は個人店舗を中心に掲載している点だ。掲載店舗を企業側で担保することにより、ユーザーに発見と安心感を提供する。拡大路線になった時に、どこまで店舗数と質を担保できるかが課題になるだろう。
3点目のデリバリー商品の拡大戦略を取るのは、ドイツ発のfoodpanda(フードパンダ)だ。foodpandaは2020年11月にローソンと提携。飲食店のフードデリバリーだけでなく、ローソンで販売される食料品や飲料、日用品などの購入・配送も可能となった。これまでは札幌と福岡の一部店舗のみでサービスを展開していたが、7月からは新たに都内・札幌に対応店舗を拡大する。
新規参入が増える一方で、国内のフードデリバリー企業は業界再編の動きも見られる。
2021年6月にはKDDIが50億を出資し、フードデリバリー企業menu(メニュー)の株式を20%取得し関連会社化、7月にはぐるなびが楽天グループからフードデリバリー(楽天デリバリー)とテイクアウト事業を承継した。さらにNTTドコモは「dデリバリー」を2021年6月にサービス終了するなど、競争が激化している。
資金力で戦うUber Eatsや出前館に独自の戦略で挑む後発参入企業。各社はサービス対応地域の拡大に力を入れるが、今後の収益化が課題になるだろう。
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