initial-logo
法人向け Enterprise詳細を見る
法人向け Enterpriseログイン
法人向け Enterpriseログイン
シェア
ホームオリジナル記事研究開発系スタートアップの新たな成長モデル
2020-11-09

研究開発系スタートアップの新たな成長モデル

#資金調達記事#海外#SaaS#人工知能#素材

スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、ピックアップニュース3選、独自取材による注目スタートアップ紹介、中国主要投資家の投資状況を定点観測する「GLOBAL EYE」のコンテンツをお届けする。

ピックアップニュースでは、合弁会社により独自の成長曲線を描く企業を資金調達ニュースから読み解く。

注目スタートアップは、ワークスペース管理プラットフォームの開発・提供を行うACALL(アコール)。6月にVC2社、9月に事業会社5社から調達し、すでに導入企業は4400社を超える。調達の背景と今後の展開について代表の長沼斉寿氏に話を聞いた。

GLOBAL EYEでは、中国スタートアップのマーケットトレンドを解説する。2020年の中国スタートアップ資金調達環境や、主要投資家の投資状況からみるセクター動向、中国IPO市場と注目のニュースについても紹介する。

CONTENTS

成長の鍵は合弁会社による共同出資。INITIALピックアップニュース3選

「INITIALピックアップニュース3選」では、資金調達など抑えておくべき3大ニュースを解説する。

今週は、10月30日から11月5日のニュースで、注目の資金調達、大型ファンド組成ニュースを選定した。

国内最大級の機関投資家、農林中央金庫の直接投資3社目

トップニュースは、AIの社会実装を推進するギリアの資金調達だ。投資家は農林中央金庫(以下、農林中金)、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、新生企業投資と金融系VCが中心だ。 国内最大級の機関投資家である農林中金は、今回のギリアがSun Asterisk、Photosynthに続く3社目のスタートアップ直接投資案件となる。

参考:Sun Asterisk IPOまでの資本政策。上場直前に外部出資を受け入れた理由

ギリアは2017年にUEI、ソニーコンピュータサイエンス研究所、独立系ベンチャーキャピタルWiLの3社の合弁会社として設立された。AIアルゴリズムの開発だけでなく、企画、データ作成、運⽤支援まで一気通貫のAIソリューションを提供する。

ギリアの評価額は、設立約3年の2020年4月時点で60億円を超える(INITIALによる推測)。すでに住友電気工業など、大手事業会社による導入実績もある。

つばめBHB、量産化に向けた研究開発段階へ

次に、素材系スタートアップの資金調達ニュースを紹介する。小型アンモニア製造装置を開発するつばめBHBは、みらい創造機構、芙蓉総合リース、三菱ケミカル、三菱UFJキャピタルから総額3.65億円を調達した。

つばめBHBは科学技術振興機構の支援の元、2017年4月に味の素、素材・化学系に特化したVCであるユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(UMI)、東京工業大学の細野教授らにより合弁会社(ジョイントベンチャー)として設立された。アンモニア合成触媒などの技術は、細野教授を中心としたグループが開発した。

アンモニア生産は2016年グローバルで年間5兆円の市場規模を持ち、2025年には約7.5兆円まで拡大が予想されている(出所:Coherent Market Insights)。これまでは大量集中生産が前提だったが、つばめBHBは小規模分散・注文対応でサプライチェーンに変革を起こすことを目指している。

調達の背景は2019年末、研究成果によって化学反応の反応速度を速める触媒を30%低減した、より効率的なアンモニア生産が可能となったことだ。今後はオンサイトアンモニア生産の実用化、量産化に向けた研究開発に取り組む。

素材系スタートアップは時間軸の長さと技術ブレークスルーの不確実性により投資家が不足しているため、技術の実用化とファイナンスの課題を抱える。

つばめBHBが設立わずか3年で実用化に向けた生産技術段階へとハイペースで進むことができた理由は、共同設立した味の素と、開発段階から量産を前提に連携してきたことが大きいのではないか。

今回の調達で化学メーカーの三菱ケミカルが新たに株主に参画した点も特徴だ。今後の生産技術段階でも三菱ケミカルとの連携で研究開発の加速、より高効率で環境負荷の小さいアンモニア製造プロセスの実現を目指す。

参考:新素材普及の一手となるか。「スタートアップ×大企業」の可能性(つばめBHBインタビュー)

DG Daiwa Ventures総額125億円の2号ファンドを組成完了

最後に、ファンド組成完了のニュースを紹介する。デジタルガレージと大和証券グループの合弁会社、DG Daiwa Venturesは125億円の2号ファンド組成を完了した。LP出資者はエーザイ、カカクコム、KDDI、三井住友信託銀行など事業会社から金融機関まで多岐にわたる。

オープンイノベーション型研究開発組織「DG Lab」(デジタルガレージ、カカクコム、KDDIが共同で運営)と連携し、ブロックチェーン、AI、xR、セキュリティ、バイオヘルス分野の国内外スタートアップに出資予定である。

2号ファンドはすでに2019年8月に100億円でファーストクローズをしており、13社に投資をしている。ファーストクローズ時のプレスリリースでは、2020年3月に200億円のファイナルクローズを掲げていたことから、コロナ禍で調達に苦戦したことが考えられる。

今回紹介したニュースはいずれも事業会社とのジョイント・ベンチャー(合弁会社)としてスタートした会社だ。特にギリア、つばめBHBは事業会社とVCが設立時から参画し、のちに外部投資家から調達する資本政策を取っている。

合弁会社として共同出資をしているため、一般的な協業よりも高いコミットが求められ、結果的に成長につながっているモデルケースではないだろうか。

ACALL:場のデジタル化を実現、ワークスペース管理のSaaS企業

注目スタートアップを紹介する、「INITIALピックアップインタビュー」。 今週紹介する企業は、ワークスペース管理プラットフォームの開発・提供を行うACALL(アコール)社だ。同社代表の長沼斉寿氏に話を聞いた。

参考:INITIALシリーズの定義はこちら

ワークスペース管理SaaS。コロナ禍も追い風に、導入企業4400社突破

ACALL社は、創業者の長沼氏が神戸を拠点に2010年に設立した。人々の「くらし」と「はたらく」を自由にデザインできる世界の実現を目指し、ワークスペース管理プラットフォーム「WorkstyleOS」の開発および提供を行うSaaS企業だ。

2016年7月にサービスリリース後、業界・業種・会社規模を問わず現在4400社以上の法人企業がサービスを利用する(2020年10月末現在)。コロナ禍でリモートワークが広がり、働き方が大きく変化する中で着実に顧客を獲得してきた。導入時には各企業の情報システム部門、総務部門、人事部門の担当者が対象になる。

新型コロナの感染拡大後は企業のニーズも変化し、「従来の主軸であったオフィス内のデジタル化から、周辺オフィスやリモートワークなどの多拠点運営を含めた利用のニーズが増えた」と長沼氏は語る。

Workstyle OSの提供サービス(画像:ACALL社 プレスリリースより)

ACALL社の特徴は、仕事場のデジタル化(スマートオフィス)に必要な機能を総合的にOSとして提供する点だ。

スマートオフィス関連では、入退室管理システムのビットキー、Akerun(Photosynth社が運営)、クラウド受付システムのRECEPTIONIST(レセプショニスト)、勤怠管理システムのジョブカン(Donuts社が運営)など様々なサービスが存在する。

ACALLと他社との違いは、類似の機能を持つアプリの多くを同社サービス内で保有し完結できる点だ。一部のサービスとは連携も行っている。個別プロダクトの提供にとどまらず、外部アプリケーションの連携やハードウェアによるセンサーも用いて、ソフトとハードを組み合わせた「場のデジタル化」を実現する。

リアルの場へのチェックインによる行動の共有や、社内外会議室の空室状況が確認・予約できるだけでなく、リモートワークのチェックイン状況を自動で勤怠システムに共有することなども一気通貫で行うことが可能となる。

リモートワークの普及により、スマートオフィス関連のツールは大手企業含め参入が激しい分野ではあるが、ACALLは「仕事場の体験を高めることに重きを置いており、国内では総合的に提供しているプレイヤーはほぼいない」と長沼氏は語る。

2020年に6月にVC2社、9月に事業会社5社から調達。DX共創を目指す

2020年6月にVCのジャフコ グループ、DBJキャピタルから約5億円、9月には阪急阪神不動産、コクヨなど事業会社5社(うち2社は既存株主)から約1.9億円のシリーズA調達を実施。累計調達額は8.3億円となった。

事業会社を株主に迎えた理由について、長沼氏は「働き方の変革は1社だけでは難しいからです。不動産(阪急阪神不動産、東急不動産)、オフィス(コクヨ)、IoT(ティーガイア)、金融(JA三井リース)のパートナーを迎え、サービス連携を進めています。DX推進にあたり、大企業と競争するのではなく、価値を共創することが大事です」と語る。

調達後企業評価額はシリーズAで約33.4億円。INITIALシリーズAの中央値である11.8億円を大きく上回る。評価額の考え方として、すでに4400社以上の顧客基盤があることから「月次経常収益(MRR)や、プロダクトのもつ価値(例えばデータの集積やネットワーク効果)も含めて評価されたのではないか」と長沼氏は語る。

今後は調達資金をもとに赤外線などセンサーの連携、AIフィードバック機能の強化を行う。組織面では主にエンジニア採用を強化し、年内には40名、2021年には60名規模まで拡大予定だ。

新たな働き方をデザインし、個人のための働く場のプラットフォームを目指す。今後は海外展開や上場も視野に入れる同社の動きに注目だ。

ACALLについて詳しく知るにはこちら(INITIAL企業ページ)

中国:2020年スタートアップ資金調達環境と投資セクター動向、IPO市場

GLOBAL EYEでは、海外VCの投資状況からマーケットトレンドを定点観測する。今回は、2020年(1〜9月)の中国スタートアップ資金調達環境、セクター動向、IPO市場について解説する。

この続きを見るには
この記事は、法人向け有料サービス「INITIAL Enterprise」限定公開です。
続きは、無料トライアルに申し込むと読むことができます。
契約済みの方はログインしてください

関連する企業


この記事をシェア
RECOMMENDEDおすすめ記事
VIEW MORE
技術系スタートアップの大型調達もファイナンスに違い、カギはEXIT2020-10-19
#資金調達記事#VC/CVC#SaaS#宇宙#素材#バイオテクノロジー