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ホームオリジナル記事Sun Asterisk IPOまでの資本政策。上場直前に外部出資を受け入れた理由
2020-07-31

Sun Asterisk IPOまでの資本政策。上場直前に外部出資を受け入れた理由

#IPO記事#資金調達記事

2020年7月31日、デジタル・クリエイティブスタジオ事業を展開するSun Asteriskが東証マザーズに上場した。初値は1209円で、公募価格(700円)の1.7倍と堅調な動きを見せた。初値時価総額は438億円、7月31日終値ベースの時価総額は約546億円だ。

同社の特徴は、複数の企業が再編を繰り返し現在の3社体制に至っている点、そして取締役・執行役員ら経営陣の持分比率が8割以上を占める株主構成だ。

2013年の設立から上場直前の2019年までは現経営陣からの個人出資が中心で、自己資金をもとに堅実な黒字化を果たしている。しかし上場直前には農林中金等、長期目線の外部株主を受け入れ、上場後の更なる成長を目指す。

VCから出資を受け赤字を出して急成長するスタートアップの定石とは異なる、Sun Asteriskのファイナンスを明らかにしていこう。

CONTENTS

日本・ベトナムの2拠点を中心に、クライアントのDXを推進

株式会社Sun Asterisk(以下、Sun Asterisk)は、「本気で課題に挑む人たちと、事業を通して社会にポジティブなアップデートを仕掛けていくこと」をミッションに掲げる。

同社は「クリエイティブ&エンジニアリング」「タレントプラットフォーム」の2つを中心に事業を展開している。

クリエイティブ&エンジニアリング事業は、主に日本企業を対象に、事業アイデアの創出やプロダクト開発を請負・準委任契約の形で行う。

同事業の直近決算期(2019年12月期)の売上高は31.7億円。3か月以上継続する準委任契約はストック型、3か月未満の準委任契約及び請負契約はフロー型と分類しており、2019年12月期の本サービスラインに占める割合はストック型が約80%、フロー型が約20%だ。

タレントプラットフォーム事業は、子会社のグルーヴ・ギアが運営するプログラミングスクールの卒業性をクライアントに紹介・派遣、あるいは業務委託の形でクライアントのIT人材不足の課題解決を図る。同事業の直近決算期(2019年12月期)の売上高は、13.5億円だ。

また2019年からはスタートアップの立ち上げ支援の経験を活かし、同社の人材を通してスタートアップをサポートする「スタートアップスタジオ」事業を開始した。2020年からはSun Asteriskが国内外のスタートアップに直接出資を行うプログラムもスタートし、より包括的な支援事業となっている。

同社の強みは、ベトナム子会社のSun Asterisk Vietnamでエンジニアを1,000人超を擁することだ。ファーストプロダクトに経験豊富なメンバーが、サービス立ち上げ後のプロダクトの継続的な開発・運用をベトナム拠点のメンバーが担当することで効率化を実現をしている。

初値時価総額は438億円、資金調達額は13.2億円と中型のIPO

Sun Asteriskは設立から上場までに3回の外部調達ラウンドを経て、累計調達額は約16億円。2020年2月に行ったINITIALシリーズAの調達後企業評価額は180億円だ(INITIAL、2020年7月30日基準。ラウンドは外部向けにエクイティファイナンスを行った回数で、同一株価によるラウンドは同一として集計)。

初値時価総額は438億円(初値1209円を基準に算出)と、公募価格700円に比べて1.7倍の値をつけた。2019年におけるマザーズ新規上場企業の初値時価総額中央値である133億円(出所:KPMG「2019年のIPO動向について」)と比べると、中型の新規上場ケースとなる。

新規株式発行による資金調達額は13.2億円で、エンジニアを中心とした採用費および人件費などに充てる。既存株主(同社の役職員である藤本氏、服部氏、高倉氏)による売出は約15.0億円だ。

同社の予想PERは約39.5倍(IPO時企業評価額253億円、2020年12月期予測純利益6.4億円から算出)。マザーズ上場企業269社の平均PERである139倍(2020年6月末時点、出所:日本証券取引所グループ)より低く、比較的割安な水準だと言えよう。

Sun Asteriskグループ再編の流れ。経営陣内での株式移動も

現在の3社体制に至るまでは、複数の法人との再編、各創業者のSun Asteriskへの参画を繰り返している。

Sun Asterisk Vietnamの前身である、Framgia Vietnamは旧株式会社フランジア・ジャパンの100%子会社として2012年10月に設立。

またSun Asteriskの前身となる、株式会社アイピースは2013年3月に設立。2014年に旧株式会社フランジア・ジャパンおよびFrangia Holdings Pte. Ltd.(フィリピン)と経営統合を行った。

2017年12月にFrangia Holdings Pte. Ltd.と資本関係を解消した後、2018年2月にはFramgia Vietnam Co.,Ltd(ベトナム)を、2018年12月にはグルーヴ・ギア株式会社を100%子会社化。複数社との再編を繰り返し、現在のSun Asteriskグループが形成された。

現Sun Asterisk代表取締役CEO小林氏は、フランジア・ジャパンの設立に関与したほか、フランジア・ジャパンの共同創業者である平井氏と藤本氏、アイピースの創業者である服部氏、グルーヴ・ギアの創業者である石塚氏はいずれも経営陣としてSun Asteriskに在籍している。

この再編を経て、経営陣の間で株式移動が行われている。

2017年12月のグループ再編時には、現執行役員の藤本氏の保有する株式が、平井氏に対して200万株(持分比率5.28%)、小林氏に対して100万株(同2.64%)で譲渡され、現執行役員の高倉氏が保有していた株式が、平井氏に対し90万株(同2.37%)で譲渡されている。

Sun Asteriskグループとして統合を進める過程で、経営体制や資金面を考慮しつつ各創業者の現在の持分が決まっていったと考えられる。

自己資金中心のファイナンスから一転、上場直前期に農林中金等から調達。外部株主を受け入れた理由

Sun Asteriskの資本政策は、上場直前期に初の外部調達を行い、約8ヶ月で上場まで至ったことが特徴だ。

Sun Asteriskの前身・アイピース社設立からのファイナンスの経緯を時系列で見てみよう。

会社設立の2013年から約6年半外部株主を受け入れず、役職員による増資や役職員間の株式移動のみで成長してきた。

2019年3月に、株式会社フランジアとFramgia Vietnam Co., Ltd,をそれぞれ現在の社名であるSun Asterisk、SunAsterisk Vietnamに社名変更。リブランディング後、一気に外部資金調達へと動いた。

その後迎え入れた外部株主の特徴は、いずれも長期投資家である点だ。代表的な株主は、初の外部株主である農林中央金庫(以下、農林中金)で、2019年11月に10億円を調達した。

農林中金はJA(農協)、JF(漁協)、JForest(森組)を基盤にもつ全国金融機関である。市場運用資産は約62.2兆円(2020年3月末現在)と、国内最大級の機関投資家だ。1998年から国際分散投資を始め、不動産・インフラ・プライベートエクイティ(PE、未公開株式)やヘッジファンドなどオルタナティブ投資に強みを持つ。

農林中金はこれまでPEファンドを通じて未公開株式への投資を行ってきたが、スタートアップ個別企業の直接投資は初案件であった。農林中金はSun Asteriskへの投資を決めた理由として「幅広い企業に対する新たな価値創造のサポートを行っており、農林水産業を含めた日本の産業界の発展に大きく貢献していく企業である」ためと述べており、上場後の長期的な成長を見込んだ出資であろう。

2020年には、ソニー子会社のソニーネットワークコミュニケーションズ、エレクトロニクス商社の加賀電子など事業会社や、ソニーと大和証券グループの投資ファンドInnovation Growth Fundも株主に迎えている。Innovation Growth Fundは2019年7月に運用を開始した約200億円規模のファンドで、Sun Asteriskが初の上場案件となる。なお、株主の関係から主幹事は大和証券だ。

上場直前に外部株主を受け入れた理由は、イノベーション創出を目指し各国スタートアップの創出、投資を行うスタートアップスタジオ事業に資金が必要になったためではないか。

有報では第3期(2016年)から継続して黒字で安定収益モデルを築いていたが、よりリスクをとった事業展開をにらみ資本政策の転換が必要だったと推測する。

2019年11月から2020年2月までに融資を含め約20億円を調達。調達資金用途はテクノロジー人材育成プログラムの他国展開、各国のスタートアップ創出と投資の強化だ。

すでに調達資金を原資に国内外含むスタートアップ15社に出資を行っており、今後もスタートアップスタジオ事業の一環として継続的に投資を行う予定だ。

上場における売出に、2019年以降株主に迎えた外部投資家は入っていない。外部投資家にとっては上場後の長期的な成長を見込んだ投資であろう。

経営陣の持株比率は8割超。上場後の資金調達を見据えた安定株主

設立以降、経営陣による自己資金のファイナンスが中心で、2019年以降に外部株主を迎え入れたSun Asterisk。上場時の株主構成を見てみよう。

経営陣による持分比率は8割以上を占める。外部株主の保有比率はわずか8.6%。糸井氏(8.23%)、石塚氏(1.64%)は潜在株式数の割合である。

筆頭株主は、旧フランジア・ジャパン創業者の平井氏(34%)。次いでアイピースの創業者服部氏、 旧フランジア・ジャパン共同創業者の藤本氏、現在CEOを務める小林氏とSun Asteriskグループの母体となった企業の創業者および経営陣4名で75%以上を占める。

なお、8.23%を占める糸井氏は、同社グループの税理士であり新株予約権信託の受託者だ。この新株予約権は、将来の功績に応じて現在および将来の役職者等に対して分配される予定だ。つまり、現在および将来の役職員持分比率は9割以上といえる。

役職員の持分比率が9割以上であり、外部株主も農林中金を始め長期目線の投資家が中心。 Sun Asteriskが安定株主で固める資本政策を築いた理由は、経営の自由を維持するためであろう。会社法上持ち株比率が2/3以上を占める場合、定款変更や、取締役・監査役の解任、事業譲渡など特別決議を要する事項も決めることができる。上場後の資金調達の選択肢も残していると言えるだろう。

Sun Asteriskは自己資金をもとに安定的な収益モデルを築き、黒字化・堅実な成長を遂げてきた。上場直前には継続的に保有する長期目線の外部株主を受け入れ、上場後の成長を目指していく。

VCから出資を受け赤字を出し急成長するいわゆるスタートアップの定石とは異なるが、彼らのパートナーの選び方と資本政策は、今後のスタートアップの新たなスタイルになるのではないだろうか。

(文:三浦英之、藤野理沙、リサーチ:平川凌、デザイン:廣田奈緒美、石丸恵理)

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