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2020/10/19

技術系スタートアップの大型調達もファイナンスに違い、カギはEXIT

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スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、資金調達など抑えておくべき3大ニュース解説、独自取材による注目スタートアップ紹介、Finance Reviewのコンテンツをお届けする。

10月2週目のピックアップニュースでは、日本国内ではなく米国市場を目指し上場申請した事例を紹介し、EXITの新たなトレンドを探る。

注目スタートアップは、衛星事業者向けクラウドサービスを開発中のスカイゲートテクノロジズを紹介。freee・自衛隊での経験から人工衛星データに着目し、宇宙事業に参入した代表の粟津氏。宇宙マーケットの現状と同社の今後の展開について話を聞いた。

Finance Reviewでは9月の調達額上位10社を分析。研究開発系2社の事例から素材系・バイオ系スタートアップのファイナンス特性の違いについて解説する。

CONTENTS

米国上場は新たなEXIT手段となるか。INITIALピックアップニュース3選

「INITIALピックアップニュース3選」では、資金調達など抑えておくべき3大ニュースを解説する。

今週は、10月2日から10月14日のニュースでEXITの新たなトレンド、大型調達など注目のスタートアップニュースを選定した。

ヘルスケア関連サービスを展開するメディロムは、米ナスダック市場に米預託証券(ADR)で上場申請を発表。ADRは株式を裏付けにした証券で、海外での資金調達がしやすくなるメリットがある。日本企業でADRとして米国市場(ナスダック、NYSE)に上場する企業は多いが、いずれも日本国内で上場してるケースだ。国内スタートアップが、国内市場に上場せずいきなり米国を目指すケースは珍しい。

しかし、同社は、2015年から米国での上場を目指す旨を公言していた。2015年に米IT企業サン・マイクロシステムズ役員出身のキム・ジョーンズ氏を取締役に迎え、2017年度の海外展開と事業拡大など、米国上場の体制を構築してきた。

現在米国側で上場審査中だが、上場承認された場合はスタートアップや投資家にとっても新たなEXIT手段となるだろう。

建設業界向け施工管理SaaSを展開するアンドパッドは、7月のシリーズC 40億円の調達に続き、シリーズCエクステンションラウンドで20億円の調達を発表した。

本ラウンドのリード投資家Minerva Growth Partners(元メルカリCFO長澤氏などが設立)、セコイア・キャピタル・チャイナ(Sequoia Capital China)ともに初の日本企業への出資案件となる。なお、同じセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)グループは、SmartHR、Playcoなど日本のスタートアップにも出資事例がある。

アンドパッドの調達発表と同日10月11日には、調剤薬局向けクラウド電子薬歴を展開するカケハシも18億円の大型調達を発表。この二社の動向から、レイターステージの業界特化型SaaS(Vertical SaaS)企業に資金が集まるトレンドが見られる。

宇宙ゴミ(スペースデブリ)問題に取り組むアストロスケールホールディングス(以下、アストロスケール)は、シリーズEで総額55億円の調達を発表。エースタート、清水建設、スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー、ヒューリックから追加調達を行った。累計調達額は212億円。

アストロスケールの注目投資家は、清水建設だ。清水建設は宇宙開発事業に取り組むほか、すでに宇宙領域にも投資事例もあり、アストロスケールは4社目の宇宙関連スタートアップ投資事例だ。今年7月には国内外スタートアップへの100億円の投資枠を発表。建設ICT技術・ロボット・AIなどの技術開発・事業化段階のアーリーステージ企業に投資する。

アストロスケールは、2013年設立。2015年以降、毎年数十億円規模の資金調達を行っている。海外でも事業展開を進め、英国、イスラエル、シンガポール、米国で宇宙ゴミ問題の認知活動、事業開発、法規制に取り組んできた。2020年度中に同社初の宇宙ゴミ除去実証衛星機「ELSA-d」の打上げを予定している。

スカイゲートテクノロジズ:マーケ x 宇宙ビジネスの発想で、人工衛星データを高速・手軽に届ける

注目スタートアップを紹介する、「INITIALピックアップインタビュー」。 今週紹介する企業は、衛星事業者向けクラウドサービスを開発するスカイゲートテクノロジズ社。代表の粟津 昂規氏に話を聞いた。

宇宙ビジネスでは人工衛星データの利用に注目が集まる

スカイゲートテクノロジズは、創業者の粟津氏が防衛省・自衛隊に勤務していた際に人工衛星の情報に可能性を感じ、2020年に創業した。現在、衛星データを高速かつ手軽に送受信できるクラウドサービス「Skygate」を開発中だ。

国内の事業会社にとっては、規制のハードルや高コスト構造、開発の時間軸の長さから敬遠されがちな宇宙関連事業。スカイゲートテクノロジズはスタートアップの機動力を武器に、専業で衛星データを活用した宇宙事業に参入した。なお、国内の衛星通信事業者ではスカパーJSAT社が最大手だ。

人工衛星を活用した地球観測データ市場は、2027年には世界で90億ドル(日本円約9450億円、1ドル=105円換算)までに成長すると予測されている(出所:Euroconsult「Satellite-Based Earth Observation: Market Prospects to 2027」)。2020年7月には米AWS(アマゾンウェブサービス)が宇宙・衛星産業に特化した新部門を設立するなど、グローバルで競争と成長が見込まれている。

同社の想定顧客は、人工衛星を打ち上げる国内外の衛星運営事業者だ。顧客はリモートセンシングにより観測を行い、観測データを同社の地上局を利用して受信。同社は取得したデータをもとに、ビッグデータなどのビジネスを展開する顧客に向けてサービスを展開する。

マーケティング的発想と宇宙ビジネスの組み合わせ

同社の特徴は、創業者の粟津氏がSaaSビジネスで学んだ手法を、宇宙ビジネスに取り入れている点だ。粟津氏が前職のfreee時代に学んだデータを元に仮説検証を行うマーケティング的発想と、防衛省・自衛隊時代に学んだ人工衛星に関する知見を組み合わせ、人工衛星データ領域での活用とクラウド地上局設立に挑んでいる。

また、ユニークな経験を持つエンジニアを創業メンバーに迎えている点も特徴だ。通信業界で基地局の立ち上げ経験を持つメンバーや、全ロシア電波工学研究所(VNIIRT)出身のメンバーが参画する。

2020年8月、シードラウンドで初の外部資金調達を実施

ピックアップニュースで取り上げたアストロスケール社のように、宇宙関連のスタートアップでは数十億円単位の大型資金調達が行われている。大型調達の背景は、研究開発や人工衛星の試作段階で費用がかかる点だ。一般的に、衛星製造から打ち上げまで超小型衛星であっても一基あたり最低1〜10億円の費用がかかる。

だがスカイゲートテクノロジズは、衛星を直接製造するのではなく、あくまで衛星からの空間情報データを、速く手軽に地上に届けてビジネスデータとして活用することを目指している。いわば「データセンターや、インフラサービスに近い」(粟津氏)モデルだ。

2020年8月には初の外部資金調達として、慶應義塾大学のVCである慶應イノベーション・イニシアティブからシードで3000万円の資金調達を完了した。資金調達で工夫した点として、粟津氏は「次のラウンドも視野に入れ、継続的な出資が可能なファンドとVCに絞って調達活動を行った」と語る。

投資家からは、「地上局サービス業界リーダーであるKongsberg Satellite Services(KSAT)社の売上数字や、衛星数、地上局の需要増により市場拡大が見込まれた点」(粟津氏)などが評価された。

今後の事業展開

従来は放送・通信用途などで用いる通信所を自社で保有するケースが多かったが、今後衛星データの利用が普及すると必ずしも自社で保有する可能性がなくなる。そのため、スカイゲートテクノロジズ社では、なるべく多くの人工衛星と接続できる無線機をソフトウェアで実装している。

今後は調達資金をもとに、2021年に国内初の人工衛星向け通信所を立ち上げる予定だ。衛星と地上間の通信をつなぎ、衛星データを瞬時にビジネスへ活用できる世界を目指す。

スカイゲートテクノロジズについて詳しく知るにはこちら

9月の資金調達額上位10社。Spiberなど研究開発系の大型調達が4社を占める

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