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2020/07/03

複数回EXITの経験。創業者の最も重要なスキル、教えます

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2020年、海外投資家の視線が集まる日本のスタートアップ。

今回INITIALは、スマートラウンドにプレシリーズAで投資を実行した米国エンジェル投資家、マティアス・デ・テザノス(Matias de Tezanos)氏に独占インタビューを敢行。

マティアス氏は過去にCEOとして米国・ラテンアメリカで4回のEXITを経験した連続起業家でもある。投資会社「PeopleFund」の代表を務める傍ら、エンジェル投資家としても活躍。現在は東京に拠点を置き、米国を中心に欧州・日本を含むアジアなど世界のスタートアップに投資する。

創業者の最も重要なスキルとは何か。エンジェル投資と投資会社の差分は何か。起業家・投資家として20年以上の経験を持つ氏のインタビューから、海外投資家の目利きの秘密を明らかにする。

CONTENTS

CEOとして4社のEXITを経験。秘訣は「創業チーム」と「マーケットプレイスの専門性」

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マティアス・デ・テザノス(Matias de Tezanos)/ 連続起業家・投資家。 ラテンアメリカで人気のホテル予約サイトHoteles.comの創業者。CEOおよび投資家として4回のEXIT経験をもつ。2012年からエンジェル投資家として活動し、多国籍投資会社PeopleFundの代表として、米国を中心に欧州・アジアなどの企業に投資。2009年当時29歳で世界経済フォーラムからヤング・グローバル・リーダーとして表彰され、2011年と2012年にはINCマガジンから米国のヒスパニック系起業家トップ10の一人に選ばれた。

マティアスさんは米国とラテンアメリカで20年以上の経験がある連続起業家で、4度の会社をEXITさせた経験があります。そのような成長企業をつくりだせた理由は何ですか。

大きな原動力となったのは、創業当初にいたコアな創業チームです。メンバーは非常に経験豊富で、コミット力も高いチームでした。

多くの場合、会社の長期的な成功は初期のコアチームによって決まります。スタートアップが初期の段階で経験豊富なメンバーを揃えることができれば、成功の道は近いです。

また、4社の設立企業に共通するテーマは「マーケットプレイス型」のビジネスモデルです。どんなに業種や顧客が違っても、本質的にビジネスモデルは共通していたのです。

私はCEOとして、オンラインマーケットプレイスの概念やビジネスのルールをホテル(Hoteles.com)、自動車(Autoweb.com)、保険(Healthcare.com)、広告(ClickDiario)など多種多様な業種に適用しました。(※編集部注:カッコ内はマティアス氏が共同創業者を務めた会社)

当時は、あらゆる業界でマーケットプレイスの市場をつくる機会がありました。もちろん1つの会社で全ての業界をカバーする選択肢もありましたが、戦略の関係で別々の会社でやることに決めました。これまでの約15年間で、約4〜5年に一度、業界を変えて新たに会社を作ったのです。

専門家になるためには、特定の分野に10〜15年の経験が必要です。例えば、私たちは保険や自動車の専門家とは言えませんが、マーケットプレイスは16年近く経験があるため専門家と言えるでしょう。

大切なのは、学び続けることです。本当に何かを学ぶためには、最低でも5年は時間を投じる必要があると思います。1年ごとに次から次へと飛びついてしまうと、何も学べないのです。

起業家としての経験で一番大変だったことは何ですか。

資金が尽きてしまったこと、それと同時に問題を解決する方法を見つけられなかったことです。2つの問題を同時に抱え、とても大変でした。

多くの起業家と同様に、私たちもこのような状況を何度か経験しましたが、共に問題を解決するチームがいたからこそ乗り越えることができました。とにかくチームで解決策を見つけ出し、時にはピボットして、変化を起こしてきました。

単に運が良かっただけとは思いません。一生懸命働きました。GoogleやFacebookのような企業ですら、成功する前に廃業しそうになった話を聞いたことがあります。信じられませんよね。

まるでジェットコースターのように上がったり下がったりしていました。ある日は全て完璧に見えても、別の日にはすべてがうまくいかない。それが私たちの経験でした。

投資会社と日本で投資を始めた理由。エンジェル投資家との違いとは

連続起業家として活躍する一方で、投資家としての顔もお持ちですね。投資会社「PeopleFund」の創業者・代表としてスタートアップへの投資も行っていますが、違いはありますか。

私たちは1998年から、主に米国とラテンアメリカでソフトウェアやハードウェアのテクノロジー企業に積極的に投資をしてきました。

今まで起業家として馴染みのない領域にも投資しています。例えば、バイオテクノロジーやエネルギー、半導体などです。新しいことを学べるのは投資家の醍醐味ですし、今の仕事が好きな理由でもあります。

長年マーケットプレイスの領域をやっていたので、何か新しいことをしたいと思っていました。ある意味、人生の決断でしたね。

創業者時代の大変だった経験も活きています。投資家として、厳しい状況にある企業にコーチングを提供し、苦境から抜け出す手助けをできるようになりました。

これまで米国を中心に投資してきましたが、日本での投資を決めた理由は何ですか。

経済規模、法制度、イノベーションなどの要素を私たち独自で分析した結果、アジアで投資を始める場所として日本が最適だと判断しました。

中でも、日本と米国の法制度が似ていることが決め手となりました。

多くの人が投資先として中国に注目していますが、特に市場規模に関しては、日本にも大きなチャンスがあると考えています。

アジアの投資機会は何年も前から模索していましたが、最終的に日本への投資を決めました。2015年から日本について調べ始め、2019年からは日本でより多くの時間を過ごすようになりました。

2012年からエンジェル投資家の活動も始めています。エンジェル投資家での個人投資と、投資会社・PeopleFundとの投資でどのような違いがありますか。

主な違いは、1)投資企業のステージ、2)投資企業への支援方法です。

PeopleFundでは、創業初期(アーリーステージ)のスタートアップは投資対象にしていません。ファンドのサイズと投資金額が見合わないからです。

エンジェル投資は、将来の機会を探すための方法のひとつです。創業初期の段階で、創業者と関係を築くのに役立ちます。

まだ会社が小さい頃に、創業者と関係を築くことは重要です。なぜなら、とても小さなチームが時間をかけて、大きな会社へと発展していく可能性があるからです。それらの企業が成長して大きくなる頃には他の投資家を見つけてしまい、機会を失うことになりかねません。

また、投資先への支援方法も違います。

エンジェルとして個人投資をする場合は、創業者との関係構築に個人的な時間を割いています。日本で投資をしたサニー(※編集部注:スマートラウンドの砂川氏)のような創業者とは、戦略や私がどのように支援できるか話し合ったり、コーチングをしたりします。

対照的にPeopleFundで投資する場合は、専門のチームやより多くの人が関わるため、制度的な支援に近いです。必ずしも会社と一緒にいる時間が長いわけではありません。個人的に一緒に時間を過ごすというよりも、より金融投資的な位置付けです。

矛盾に聞こえるかもしれませんが、「投資額が小さいほど、支援は大きい」のです。投資額の大きさと支援の大きさは反比例しています。

投資哲学は「チーム」。最高のチームを見極める、魔法の質問

投資哲学、ならびに投資を決めるのに重要なポイントは何ですか。

「チーム(People)」に投資するのが私たちの投資哲学です。チームに投資するために「PeopleFund」と名付けたのです。

私たちはテーマや事業計画には投資しません。なぜなら事業計画は常に変わるからです。今でも世界的な感染症の影響で、多くの企業が事業計画を変更していますよね。

もし「どの企業が今後生き残るか」と質問されたら、私は「最高のチームを持っている企業」と答えます。「数年前の事業計画が最高の企業」ではありません。

チームこそが投資の最重要な要素であり、かつ投資家にリターンをもたらすものです。

世界中の投資家は、常に最高のチームを探し求めています。ここからは、私がどのようにチームを見極めているかをより具体的に説明します。

なぜ創業者だけでなく、チームが大切なのでしょうか。

創業者の最も重要なスキルは、採用です。特に創業初期の、何もない段階で事業を進めようとする時期です。

チームを作る上で重要なのは、リーダーが自分よりも優れた人材を採用できるかどうかです。その人が特定の分野で、より優れた人を採用できているかどうかに特に注意を払う必要があります。

例を挙げてみましょう。Facebookでは、マーク・ザッカーバーグが信じられないほど優秀なエンジニアを採用していました。Googleの創業者もそうですが、彼らが一緒に働くエンジニアの基準は高く、天才的なエンジニアばかりでした。FacebookやGoogleの例からは、 創業者がいかに優秀な人材を採用し、会社を大きくして成功させたかを示しています。

最高の人材を雇うことがいかに重要か、それがスタートアップの成功にどのような影響を与えるかを理解しているか。その明晰さこそ、私たちが投資先に求めていることです。

採用スキルを持つ創業者はどのように見極めるのですか。

私がいつも創業者に聞く具体的な質問があります。

「あなたは人を雇うのが得意ですか?」これは魔法の質問です。

人を雇うかどうかは、非常に具体的な質問です。人の良し悪しで創業者を判断するのではなく、シンプルな問いでスキルを判断するのです。採用はスキルです。営業担当者を採用するのに、「あなたは営業が得意ですか?」と聞くのと同じ質問です。

この質問で採用のスキルを見極めて、「非常に優秀な起業家だけど、他の人を採用するのに苦労している企業」への投資は避けようとしています。

もちろん、私たちが常に正しいわけではありません。チームがバラバラになったり、共同創業者同士が喧嘩することもあります。 しかし、ほとんどの場合、うまくいくチームは苦難の時も一緒にいて乗り越えるのです。

採用スキルは後天的に身に付けることができます。多くの起業家は何度か採用で失敗した経験から学び、最高の人材を採用することの価値を理解するのです。ただし、それには時間がかかります。だからこそ、長年の採用経験を持つことは、信じられないほど強力な力を発揮するのです。

私はいつも冗談でこう言っています。「企業の人事部長は、潜在的に偉大な起業家になれるかもしれない」と。なぜなら、彼らは常に採用をしているからです。

ほかに最高のチームを見極めるために何を行っていますか。

チームがどのように集まったのかを理解するのに最も時間を割いています。

創業者と会うときには、最初にどんなタイプの人を雇うのかを聞きます。

例えば最初にエンジニアを雇うとしましょう。Web広告を掲載してエンジニアの応募を待つのか、それとも他社で一番優秀なエンジニアを口説いて連れてくるのか。採用方法に関する答えから、チームについての考えが類推できます。

社員数20〜30人の企業でも同じプロセスで見ています。どのように人を見つけて採用したのか、彼・彼女らを採用する価値はあるのか、なぜ採用する必要があったのか、などの質問から詳しく掘り下げていきます。

なぜこのような質問をするのか。誰を採用するかを真剣に考えて、今の仕事を辞めて一緒に働くように口説いてチームに参加してもらったのか、あるいは仕事を必要としている人をただ採用しただけなのかを見極める必要があるからです。特に創業初期の段階では、それは大きな違いになります。

私たちはこの採用のストーリーを本当に大切にしています。このような質問を投げかけることで、創業者の脳内でも採用スキルの重要性について強調されるからです。

残念ながら、私たちは未来が見通せる魔法のボールは持っていません。会社の将来に賭けるためには、チームの成り立ちを理解する必要があります。

米国はオープン、日本はクローズドなエコシステム。理由は言語の問題と海外VCの少なさか

日本のスタートアップと米国との違いをどう見ていますか。

一番の違いは、スタートアップエコシステムがオープンかクローズド(閉鎖的)な環境かどうかです。

日本の現地のエコシステムは、特に私のような日本語を話せない人にとっては非常に閉鎖的に感じます。米国に行けば、日本人の創業者であってもオープンなことが多いです。

日本のスタートアップのエコシステムは、海外投資家ではなく、現地(日本)のVCと話すのがより自然なのかもしれません。

ただし、あまり否定的に捉えて欲しくありません。言語の問題、あるいは日本で海外のVCがあまり設立されていない事実が要因かもしれませんから。

例えば、Light Speed Venturesのように、シリコンバレーの有名なVCの多くは中国にいますが、日本にはいません。そのため、現地のエコシステムはよりローカルな考えになっているのではないでしょうか。

マティアスさんのような海外投資家とはどうやったら繋がりを持てますか。

smartround(スマートラウンド)が、海外投資家と日本のスタートアップを繋ぎ、Linkedinのように連絡を取り合うプラットフォームになることを期待しています。(編集部注:スマートラウンドはマティアス氏のエンジェル投資先)

ネットワークも重要です。私は日本に移住したジャスティン(編集部注:Zynga共同創業者のジャスティン・ウォルドロン氏。スマートラウンドに投資した米国のエンジェル投資家)を通じて、スマートラウンドの創業者であるサニー(砂川氏)と知り合いました。ジャスティンとはシリコンバレーでは共通の友人がいて、元々は繋がりを持つためだけに3年前に最初に会ったのです。

ご存知の通り、日本に移住してくる外国人にはあまり出会わないので、彼とはとても気が合ったのです。私たちは投資をする場および住む場所として日本を見ている理由が同じで、共感しました。投資家や起業家という経験も共通していたため、投資や経験も共有できたのです。

また、海外投資家と繋がるためには英語力も欠かせません。日本では素晴らしく優秀な人たちに会いましたが、言語の問題でお互いを理解するのに非常に苦労しました。

日本で最も天才的な人たちである起業家とコミュニケーションが取れないのが残念です。サニー(砂川氏)は英語がとても上手なので、コミュニケーションが取りやすいです。

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(写真:INITIAL編集部 / オンライン取材で撮影)

日本のスタートアップには海外投資家を巻き込み、知見や経験を活用してほしい

日本のスタートアップが海外投資家から調達するためには何が必要ですか。

投資家は構造化されたスタートアップ企業の情報を求めています。全てのスタートアップは、オンラインで会社情報や会社資料を英語で作成して載せるべきです。英語での情報がなければ、最初の一歩として非常に厳しいでしょう。

スマートラウンドには可能性があります。日本の企業情報が英語に翻訳されれば、投資家がオンラインで確認でき、チャンスは広がります。日本にいる海外投資家だけでなく、世界中の投資家から資金を調達することができます。

私たちは2020年代に生きていますし、オンラインでもっとコミュニケーションを取る方法があるはずです。

最後に、日本の起業家へアドバイスはありますか。

みなさんにはグローバルにも機会があることに気づいてほしいです。もちろん国内の投資家からも資金調達はできますが、重要なのは資金だけではありません。

特に、創業初期の段階から海外展開を考えているスタートアップの場合、海外投資家が必要です。海外投資家から得られる知見や経験、異なる視点や国際的な繋がりは、スタートアップにとって非常に価値のあるものになるでしょう。

私がもし日本人の創業者だったら、サニー(砂川氏)のように国内投資家と海外投資家の両方から調達すると思います。なぜなら、異なる視点と資金を同時に得られるからです。

彼はなぜ私を株主として迎えたのかが明確でした。起業家の経験がある私たちのように、異なる視点を提供できる海外投資家の存在は、貴重なのではないでしょうか。

(聞き手・文:藤野 理沙、デザイン:石丸 恵理)

前回:アーリーステージでの海外調達。クロスボーダーファイナンスの差分

次回:coming soon


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