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2020/07/03

アーリーステージでの海外調達。クロスボーダーファイナンスの差分

  • #資金調達記事
  • #VC/CVC
  • #海外

2019年、日本のスタートアップではレイターステージでの資金調達が確立したといっていいだろう。その背景には、海外投資家の存在が無視できない。

2020年5月に今後のスタートアップシーンを占うような資金調達があった。スマートラウンドがプレシリーズAで米国トップティアVCの1つFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のアジア太平洋地域向けスカウトファンドや、有名米国スタートアップの創業経験をもつエンジェルらから調達。

INITIALでは株式会社スマートラウンド(以下、スマートラウンド)代表取締役社長CEO砂川氏に公開インタビューを実施。本調達の概観、クロスボーダーファイナンスで生じるギャップを明らかにする。

CONTENTS

海外の視線が集まり始めた2019年

スタートアップの資金調達額が大型化しているのは、近年の特徴の1つである。それは、昨年、Sansanやfreeeの初値時価総額が1000億円を超えていたことに表れる。両社はレイターまで未上場で資金調達を実施し、シリーズEラウンドにティー・ロウ・プライスが参加していることが共通点だ。

数字でもその傾向は確認できる。VC投資だけに絞って数字を確認すると、海外VCからの投資額は2018年212億円に対し、2019年は383億円。VC投資全体に割合に占める割合も5.5pt上昇している。

具体例をみよう。昨年、SmartHRがLight Street Capitalと他1社(非公開)から、フロムスクラッチはKKRやジー・エス・グロース・インベストメントなど海外新規投資家を含めた投資家から大型調達を実施したことが話題となった。フロムスクラッチへ投資したKKRはINITIALの過去インタビューに対し、3年ほど前から日本のスタートアップへの投資検討を行っていたことを明かしている。

この他、2019年には米国PayPal Ventures、Soros Capital ManagementがPaidyへ、Fidelityがココナラやイノフィスへ投資している。また、Samsung Venture Investmentなど複数の韓国VCがCogent Labsへ投資を行っており、米国以外の海外投資家の活動もあった。この動きは2020年に引き継がれており、Goodwater Capital、Greenspring AssociatesがKyashへ、中国Legend Capitalがいちからへ投資をしている。

最近では、AppleやGoogleなど名だたるスタートアップのEXIT実績を持つ、シリコンバレーを代表するVC、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)が日本へ参入することが一部で報道された。

通常、ファンドサイズが大きい海外投資家の新規参入が相次いでいるのは、GDP規模が世界3位の日本においてスタートアップが育ってきており、投資対象と成り得てきたと言える。ゆえに、新規参入の投資はレイターステージが中心である。

アーリーステージにおける海外からの調達例:スマートラウンド

その流れの中で、1つ特徴的な資金調達が行われた。今年5月に公表されたスマートラウンドのプレシリーズAの調達だ。

資金調達の概要は以下のとおりである。これまでのラウンドはシードで国内エンジェル投資家中心、今回もエンジェル投資家を中心に実施したものだが、それが海外であることに特徴がある。

スマートラウンドは、スタートアップと投資家の業務効率化プラットフォーム「smartround(スマートラウンド)」を提供する。同社の代表取締役社長CEO砂川氏のインタビューを元に、今回の資金調達に迫る。

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砂川大(すながわ・まさる)1995年に慶應大学法学部卒業、三菱商事入社。2001年にHarvard Business Schoolに留学。卒業後、米国独立系VCであるGlobespan Capital Partnersに入社し、ディレクターとして投資業務に携わる。同社日本代表を経て、2005年に起業。株式会社ロケーションバリューの代表取締役社長として、複数の位置情報サービスを展開し、2012年にNTTドコモに同社を売却。2年半のロックアップを経て、2015年にGoogleに入社。Googleマップの製品開発部長、Androidの事業統括部長を歴任。2018年にGoogleを離れ、株式会社スマートラウンドを起業、現在に至る。また個人では、エンジェルとして国内外のスタートアップに積極的に投資している。

今回の資金調達はJ-KISSを活用し、3回のラウンドに分けて実施された。J-KISSは2016年に500 Startups Japan(現Coral Capital)によって「誰もが自由に使える、シード資金調達のための投資契約書」として無償公開されている。J-KISSは、当時のシリコンバレーで一般的な資金調達方法となりつつあった、KISS(Keep It Simple Security)がベースになっている。大きな特徴はバリュエーションの先延ばしだ。これによって、シード期における資金調達をスピーディに実施できる。

本メリットに限らず、J-KISSの英語版テンプレートが用意されていたことや、新株予約権であれば電子上で登記までを完結できることがわかったため、J-KISSを選択したと砂川氏は話す。海外投資家へも「KISSと同様の交渉が少ないコンバーティブル・エクイティである」旨を説明して受け入れられたという。

また、砂川氏は今回の資金調達の成功要素の1つに米国スタートアップのCarta(カルタ)の存在を挙げる。Cartaは有力VCからの投資を受けるユニコーン企業である。投資家には、SkypeやFacebook、Zyngaなどへの投資実績を持つ、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)が名を連ねる。同氏によれば、Cartaは特に海外投資家に知られるツールであり、投資家回りをする際に「Cartaの日本版」と伝えることによって投資家の関心を得ることができたという。

創業当初はとくにCartaを意識することなく自身が目指すビジョン実現のためにサービスをつくってきたが、現在はベンチマークとして捕捉し、本気でCartaに勝ちにいきたいとも語る。

有力VCからの調達で注目を集めたCarta

Cartaは2012年設立の米シリコンバレーに本拠をおくスタートアップだ。Cartaは2019年5月にAndreessen Horowitzをリード投資家に約3億ドル調達したことで注目を浴びた。その後、シリーズFを経て調達後企業評価額は31億ドルとなっている。

Cartaは、未公開企業向け資本政策の管理をメインに企業評価(409A Valuations※)やセカンダリーマーケットの運営、取締役会の文書管理、承認ツールなどのサービスを運営提供する。また、上場企業向けにも従業員株式購入プランなどのサービスを用意する。さらに、投資家や会計士、弁護士向けにはポートフォリオ管理サービスなどを提供する。

※409A Valuationsとは、Internal Revenue Service(IRS)による企業の評価プロセスのこと。スタートアップのフェア・マーケットプライスの決定が目的。この評価を経ずにストック・オプションを発行すると多額の税金を課されることがある。

2月には創業期のスタートアップを支援するCarta Venturesを設立するなど、Nasdaqに対抗するプライベート株式取引プラットフォームを目指している。

それに対して、スマートラウンドはスタートアップと投資家のデータの作成と共有を効率化するサービスを提供する。具体的には、資本政策、経営管理、株主総会などをマニュアル、 ツール、テンプレートで効率化する。Cartaとのポジショニングの違いとして、砂川氏によれば現時点でスマートラウンドはコミュニケーションの部分に重きをおく。

日本国内では未公開企業のエクイティに関連するサービスとして、ケップルが挙げられる。ケップルは日本経済新聞社、野村総合研究所らから出資を受ける。未公開企業の投資家向けに投資先企業の発掘、管理、サポートツール「FUNDBOARD(ファンドボード)」を始めとして、アフリカのスタートアップに投資するKepple Africa Venturesで現地スタートアップ支援、日本企業との協業支援なども行う。

このような環境下、なぜスマートラウンドはこのタイミングで海外投資家から資金調達を実施したのだろうか。その背景を探る。

プレシリーズAで海外投資家からの調達を選択した理由

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