今週のトップニュースは東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)の新ファンド設立だ。同ファンドは日本のサイエンス・テクノロジー領域としては大型規模となる300億円超を目指しており、同領域から日本発のグローバル企業を創出することを掲げる。
AI×光学技術×バイオ技術のシンクサイトがシリーズBで総額28.5億円を調達した。同社のリード投資家が「IPO時の時価総額は1000億円規模になる可能性を秘める」と語るシンクサイトの魅力についても紹介する。
GLOBAL EYEコラムでは、海外主要VCベンチマーク(Benchmark)の特徴と注力分野について解説する。
INITIAL編集部が選ぶ、先週の注目ニュースは以下の通りだ。
東京大学エッジキャピタルパートナーズ、新ファンド組成。300億円超を目指す
東京大学エッジキャピタルパートナーズ(以下、UTEC)は5号ファンドの組成と一次募集の完了を発表した。新ファンドでは総額300億円超を目指し、累計運用額は約850億円になる予定だ。
現在、公表されているLP投資家は中小企業基盤整備機構(中小機構)と三菱地所だ。三菱地所はUTECだけでなく、東大と共同でスタートアップ支援プログラム「東京大学FoundX」で創業前後の支援や、東大100%子会社の東京大学協創プラットフォーム開発(以下、東大IPC)のファンドにも出資するなど、アカデミアとのオープンイノベーションに力を入れる。
出所:株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ ホームページ
UTECは国立大から株式会社への出資が認められていなかった2004年に、東京大学産学連携支援基金の出資により設立された。以来、東大が承認する「技術移転関連事業者」として、東大発スタートアップを中心に大学や研究機関の技術や人材を活用する企業に投資してきた。
同じく東大関連のVCとしては東大IPCがあるが、東大の100%子会社として運営されているため、国立大学法人法の範囲内での活動に制限される。
一方で、UTECは東大からの直接出資は受けていないが、東大と活発に連携しながら、幅広い企業を投資対象とする。2020年12月時点では110社以上のスタートアップに投資し、そのうち13社がIPO、12社がM&AによるEXITを果たしている。代表的なIPO企業はぺプチドリーム、ライフネット生命、ニューラルポケットだ。
日本発の技術でグローバルに挑戦
今回のUTECのファンド額(約300億円)は、日本のサイエンス・テクノロジー領域としてはかなり大型のファンドとなる。本ファンドでは各社への出資額を増加させ、シード・アーリーステージからEXITまで継続して支援し、本領域で日本発のグローバルスタートアップを創出することを掲げる。
未上場の国内スタートアップは、資金面や組織構築の観点から国内市場にリソースを割り当てることが一般的だ。特に技術系スタートアップの場合は、研究開発に多額の資金を必要とする上、専門人材の採用が難しく、未上場段階から海外展開に踏み切るスタートアップは数少ない。今後UTECの支援で何社のスタートアップが海外展開に挑めるか期待が集まる。
また、UTECは新ファンドの組成で長期にわたる支援を行うとともに新たな取り組みも始める。
シードステージのサイエンス、テクノロジー企業を対象に①1ヶ月以内に最大1億円の投資を行うプログラムと、②創業前後のスタートアップに対して最長1年間の事業化支援と最大1000万円の返済不要の補助金プログラムを提供する。
特に大学発や技術系スタートアップは創業期から特許対策や専門家人材へのアクセスには課題を抱える。UTECが専門家や採用人材を紹介し、創業資金を提供することで、技術系スタートアップは事業が立ち上がりやすくなるだろう。
参考:京都大学認定ファンドのみやこキャピタル、総額142億円の2号ファンド
シンクサイト、世界初の技術をもとにシリーズBで総額28.5億円の資金調達
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