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2020/03/18

東証再編、マザーズへの影響は。2020年2月スタートアップファイナンス動向

  • #資金調達記事

スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL(イニシャル)」では、ファイナンスを中心として、データとストーリーからスタートアップの情報を多角的にお届けしている。

本記事では資金調達や投資家の情報から2020年2月のファイナンス動向をコンパクトにお伝えする。

市況が本格的に悪化する前であり、2月のスタートアップ調達環境について1月から大きな変動は見られなかった。

CONTENTS

2020年2月ピックアップニュース3選

①東証、新市場区分の概要を公表(2020年2月21日)

東証は2020年2月21日、上場銘柄の厳選と市場の特徴を明確化させる狙いのもと、「新市場区分の概要等について」を公表した。

東証は市場区分を現在の1部にあたる「プライム市場」、中堅企業の「スタンダード市場」、スタートアップを中心とする「グロース市場」の3つに再編するとしており、2022年4月の一斉移行を目指す。

スタートアップに特に影響が大きいのは、現東証マザーズの位置づけがどう変化するかだ。

マザーズに上場している企業が「グロース市場」を選択する場合には、市場選択に係る手続が必要となり、「プライム市場」「スタンダード市場」への移行にあたっては、新規上場と同様の審査手続が必要となる。

収益に関する基準については、プライム市場が「最近2年の合計利益が25億円以上」または「売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上」、スタンダード市場が「最近1年間の利益が1億円以上」と、直近の状態を重視した数値が設定されている。

2017年以降に上場したスタートアップの内、プライム市場の「最近2年の合計利益が25億円以上」の要件を現在満たすのはレノバとティーケーピーの2社のみだ。赤字前提で先行投資を行い急成長を目指すスタートアップの場合、プライム市場への移行は容易ではない。

東証は「2022年4月の一斉移行日までの間に意見募集を行う」としているが、上場企業の新陳代謝が適切に進むよう、投資家やスタートアップの意見も反映された基準になることが期待される。

②Repro、約30億円の資金調達を発表(2020年2月13日)

マーケティングプラットフォームを提供するReproは、デットファイナンス(借入)を含め約30億円の資金調達を発表。同社の調達後評価額は約181.8億円(INITIAL、2020年2月12日基準)となった。みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行と商工組合中央金庫からデットファイナンスを行っている。

昨年6月にはヤプリが、今年2月にはベルフェイスがデットを含む資金調達を行っているように、ミドル~レイター企業の大型資金調達の中にデットが組入れられることはそれほど珍しいケースではない。

2019年に5億円以上のデットファイナンスを行ったと推測されるスタートアップは7社あり、アクティブソナーやOLTA、アクセルスペース等、シリーズB以降の企業によるものが多かった。(INITIAL、2020年3月18日基準)。

また、2019年11月にはあおぞら銀行が「スタートアップ向けデットファンド」を立ち上げ、1号案件として薬局向けSaaSを提供するカケハシの社債を引き受けるなど、独自の取り組みを行う銀行もある。

既に予定していたIPOを中止する企業も現れているように、資金調達やExit環境が不安定になっていくことが想定される。スタートアップはエクイティ・デットを含め柔軟なファイナンス戦略を考える必要が出てくるだろう。

(参考)「ビザスクIPOまでの資本政策。堅実な成長を支えたデットファイナンス」

③新型コロナウイルス拡大に対する動き

新型コロナウイルスの拡大に対し、オンライン上で独自の取り組みを行う投資家やスタートアップが増えている。

マネーフォワードのグループ会社であるマネーフォワードシンカは、VCとスタートアップのオンライン面談マッチングを3月13日まで実施。グロービス・キャピタル・パートナーズやSTRIVEを始めとして20社以上のベンチャーキャピタルが参画していた。

また、AI搭載型クラウドIP電話を提供するRevCommはサービスの無償提供を行っているほか、営業特化型Web会議システムを提供するベルフェイスも、2020年4月30日までの間サービスの無償提供を実施している。

各国で移動制限が行われる中、新しいコミュニケーションの形が急速に求められる。2社のようなオンライン商談用ツールや、ビジネスチャットなどのクラウドサービスを提供するスタートアップの動きに注目したい。

2月の資金調達額上位10社

2月の注目の資金調達は、AI契約書レビューSaaSを提供するLegalForceの調達だ。シリーズBで10億円の調達を行い、同社の累計調達額は15.8億円、調達後企業評価額(以下、評価額)は54.8億円となった(INITIAL、2020年2月28日基準)。

リーガルテック(ITを活用した法務サービス)に属するスタートアップは、契約マネジメントシステムのHolmesや法務ドキュメント管理サービスを提供するHubble等が存在するが、現在未上場のリーガルテックスタートアップの中では、LegalForceは唯一のシリーズB企業となった。

同社の評価額とINITIALシリーズ付与企業の評価額中央値と比較すると、シリーズAの中央値11.8億円に対して23.3億円、シリーズBの中央値29.1億円に対して54.8億円と、同社に対する投資家からの期待の高さも見て取れる。

日本ではリーガルテックの先駆けとして、2014年に弁護士ドットコムが上場している。それに続くスタートアップとして成長できるか、今後のLegalForceの展開に期待したい。

月別投資件数の推移

2020年2月の件数は前年と同等の数値となっている。投資件数は観測データであり、調査進行の影響を受けるため、今後も2月の投資件数は増える可能性がある。

なお、2020年2月には新規に組成されたVCファンドはなかった。VCファンドの運用期間は5~10年程度であることを踏まえると、ファンドレイズの減少は長期的な資金調達環境の変化を示す目安の1つとなる。

今後、新規ファンドの組成は減少トレンドに変化していくのか。3月以降のファンド組成に注視が必要だ。

スタートアップの成長フェーズ別社数

現在のスタートアップの成長フェーズ別の社数をINITIALシリーズの定義に沿って示した。1月からの変動を見るとシリーズCの増加率が高く、129社から134社に増加している。

2020年2月以降にINITIALにて評価額を推測し、シリーズを進めた企業を一部ピックアップして紹介する。

最新ラウンドにおける調達前企業評価額と調達後企業評価額の変化率をみると、clearは87.31%、Mellowは238.44%、ベルフェイスは137.38%、メガカリオンは28.92%となっている。

企業によって変化率に大きく差があるが、前回ラウンドから今回のラウンドまでに要した時間にも特徴がある。

たとえばメガカリオンは約26か月で評価額が28.92%上昇したのに対し、ベルフェイスは約8か月で137.38%上昇と、急速にバリュエーションが変化している。この差は、各事業の成長に要する時間と、投資評価の難しさが関係していると考えられる。

(参考)「スタートアップの平均的な成長モデルを知る」

メガカリオンの設立は2011年だが、2020年現在では血液製剤の実用化には至っていないように、研究開発型スタートアップの場合、マイルストーンに設定した研究成果が出るまでには数年単位の時間を要することがある。

また、研究テーマも各社で異なるため、研究開発型スタートアップに共通した評価指標やフォーマットは存在していない。そのため投資家は独自に研究成果や事業を評価する必要があり、投資検討に要する時間も長くなる傾向がある。

一方ベルフェイスのようなSaaSスタートアップの場合、SaaSに共通するMRRや解約率等のKPIを基に、自社の将来性を示すことができるため、投資家も事業の評価をより素早く行えるものと考えらえれる。

ベルフェイスCEOの中島一明氏は「今回の調達は、継続率・解約率、顧客属性や傾向のデータが蓄積され、投資家を説得できる数字を作れたタイミングだった」とINITIALの取材で語っている。

(参考)「ベルフェイス、52億円大型調達の裏側。営業データで切り拓く世界」

スピーディーな調達や評価額の大きさだけが事業の成功を保証するものではなく、スタートアップの事業内容によってファイナンスの特徴も大きく異なることは、改めて認識すべきポイントだろう。

(執筆:三浦英之、編集:INITIAL編集部、デザイン:廣田奈緒美、バナー写真:show999 / Shutterstock.com)


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