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2020-05-15

コロナ禍でのシリーズE調達。クラウドクレジットに見る「投資家とバリュエーション」の一貫性

#資金調達記事#シリーズE#FinTech#VC/CVC

スタートアップの資金調達環境の悪化が懸念される中、クラウドクレジットがシリーズEで7億円の調達を発表、調達後企業評価額は102.0億円となった。

今回のシリーズE調達のファーストクローズは今年5月。「バリュエーションと投資家選びの軸をブラさずにやってきたことが、調達をスムーズに行えた理由の1つ」と同社CEOの杉山氏とCFO坂本氏は語る。

インタビューを通し、不安定な市況にも左右されず資金調達を行えた理由、そして同社が事業会社やCVCを中心とした調達を行う戦略について明らかにする。

CONTENTS

運用資産残高は158億円超、日本初の海外向け「貸付型クラウドファンディング」

クラウドクレジットは主に個人投資家向けに「貸付型クラウドファンディング」を展開している。投資家はネットを通じて運営会社と組合契約を締結して出資を行い、運営会社はファンドから事業者に対して貸付を行う事業モデルだ。

「フィンテック事業者向け」「マイクロファイナンス機関向け」など、複数用意されたファンドから出資先を選択することができる。

同社の累計出資金額は約292億円、運用資産残高は約158億円、ユーザー登録数は約46,000名と公表しており、個人投資家がユーザーの多くを占める。(2020年5月12日 同社プレスリリースより)

収益モデルは手数料収入がメインで、出資金に対し年率換算で最大4.0%の運用手数料を徴収する仕組みだ。

日本では貸付型クラウドファンディングは2008年10月に誕生し、複数の貸付型クラウドファンディング事業者が参入している。その中でクラウドクレジットの特徴は海外に特化していることだ。日本にいながら、地域や経済成長のステージの異なるグローバルな事業者への融資機会を得られる。

クラウドクレジットの貸付先の一例(出所:クラウドクレジット公式HP)

貸付型クラウドファンディング業者は複数存在するものの、海外の事業者への融資が行える業者は日本ではクラウドクレジットが最大手だ。

貸付先企業の発掘、交渉や審査、貸付後のモニタリングや定期的なコミュニケーション等、貸付先が日本企業に限定される事業者と比較すると、より多くのオペレーションコストがかかる。同社が築いたオペレーションとネットワークが、同業他社の参入障壁になっているといえる。

シリーズE調達後の評価額は102億円。株主の多くを金融系CVCが占める

シリーズD以降は、金融サービスを展開する事業会社とCVCで構成されていることが同社の投資家構成の特徴だ。

今回のシリーズE調達では、丸井グループが新規投資家として加わり、ソニーフィナンシャルベンチャーズとグローバル・ブレインが共同で資金を拠出するSFV・GB投資事業有限責任組合(以下、SFV・GB)がフォローオン投資を行っている。

投資家はFinTechに対する深い理解と、これまでの投資実績とデータを基に投資を詳細に検討することが可能となり、起業家と投資家双方の説明コストを低く抑えて資金調達ができることは、この株主構成のメリットの1つだろう。

次に、バリュエーションの観点からシリーズEまでのファイナンスの特徴を見てみよう。

ここ数年ではウェルスナビ、お金のデザインなど200億円以上の評価額を付け資金調達を行ったFinTechスタートアップもあり、高水準のバリュエーション事例も見られた。しかし、クラウドクレジットの各シリーズの評価額は、シリーズAにおいては中央値をやや上回っているものの、それ以外のシリーズでは中央値を下回っている。

つまり、クラウドクレジットはこれまで評価額を上げすぎずに資金調達を行なってきたことを意味する。

投資家の目線もシビアになっている今、高水準のバリュエーションで資金調達を続けてきたスタートアップは、次のラウンドで評価額を維持する成長を示す必要があり、それが出来なければダウンラウンドでの調達も有り得る。

今回の調達においてクラウドクレジットは、シリーズDから30億円程度評価額を上げており、投資家が同社の事業の成長を評価していることが分かる。

ここまで同社のファイナンスの特徴を「金融系の投資家中心の株主構成」「バリュエーション」の2点から見てきた。ここからはCEO杉山氏とCFO坂本氏、投資家へのインタビューを通し、同社のファイナンス戦略の軌跡と調達の裏側を聞いていく。

コロナ禍での調達を支えた「納得感の高い」バリュエーション

新型コロナウイルスの影響は、資金調達の中で感じることはありましたか。

坂本 隆宣氏(以下、坂本)

コロナショックが起こる前にバリュエーションを既存株主に説明したときは、「安過ぎるのではないか」と言われることもありました。しかし、結果的にこうした市況ですから、納得感の高いバリュエーションを設定していた意味は大きかったですね。

賛否両論あると思いますが、近年のFinTechスタートアップのバリュエーションは全体的に高いと感じていました。根拠となる収益が実現ができているのか疑問に思うこともありますし、バリュエーションが高すぎると、EXITが難しくなることも想定されます。

具体的なバリュエーション算出にあたっては、われわれと同様の事業を展開する上場企業が国内にないため、海外のP2Pレンディングの会社(編集部注:たとえばアメリカでは2014年12月に「Lending club」が上場している)をベンチマークにしています。

彼らの資本政策をForm 10-K(米証券取引委員会へ提出する、企業活動の年次報告書)等を使って読み解き、各種指標を見ながらバリュエーションを算出してきました。

調達額の大きさゆえに財布の紐が緩んでしまうと、PLやキャッシュフローが健全化しません。われわれの資金調達は、「限られた金銭的リソースと時間の中でどう成長するか」に力点を置いて設計しています。

杉山 智行氏(以下、杉山) 今年3月の米株暴落から、当社を取り巻く市場心理も急速に変わったと感じています。

日本で新型コロナウイルスの影響が本格化したのは今回の資金調達の最中でしたが、「上場株式が30%下落したから、評価額も30%下げる」といった事態は起きませんでした。

資本政策やバリュエーションについて投資家の方に納得感があるコミュニケーションを心がけてきたからです。

今回丸井グループ、SFV・GBを投資家に迎えられた理由を教えてください。

坂本 丸井グループからの出資は、彼らのビジョンである「ファイナンシャル・インクルージョン」と、クラウドクレジットの事業の特徴である「社会的インパクト投資」の方向性が一致したことが大きいです。

社会的インパクト投資とは、社会的事業を行う企業への投資によって、社会的成果と財務的リターンの両立を目指す投資の形です。丸井グループとの提携によって、この社会的インパクト投資を日本でも推進することが目的の一つです。

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(画像:CRS PHOTO / Shutterstock.com)

またSFV・GBについては、ソニーフィナンシャルグループのユーザーとクラウドクレジットの相性の良さがあります。

ソニー銀行はネット銀行業界の中で外貨預金取扱額が1位で、ユーザーは外貨に対する理解や許容度が高いと考えています。われわれの金融商品と提携することによって、これまでとは異なる付加価値をユーザーに提供できます。

事業会社、CVCの出資の熱量を事業シナジーで担保する

シリーズEに限らず、投資家の多くが金融系サービスを提供する事業会社、あるいはCVCですね。

坂本 事業会社、CVC、VC、いずれも直近の投資心理は良くありませんが、われわれへの出資に対する熱量は落ちず、スピード感も損なわれませんでした。検討時から出資額を増額していただいたこともその証拠です。

投資いただくにあたっては、資金面に加えて事業シナジーも重視しています。事業シナジーの実現性の観点から、「事業会社」「CVC」「VC」の順序でプライオリティを設定しています。

その上で、事業シナジーを前提とした投資家へのアプローチの考え方は2軸あります。

1つの軸は「ネットワークの構築」です。たとえば既存投資家である伊藤忠のグローバルなネットワークを活かし、われわれが融資を行える海外の候補先をご紹介いただきました。

もう1つの軸が「提携の可能性」です。たとえば国内の金融法人に出資を打診する際には、「出資いただければ、クラウドクレジットのユニークな立ち位置を活かし、御社の事業に独自性が出せますよ」と提携の可能性を常に提案しています。

投資家との提携を1社でも実現できれば、投資家の多くが金融法人、あるいはCVCであることを活かし、前例をベースに同様のご提案をできることは大きなメリットです。

今回のシリーズE調達はいつから検討を開始しましたか。

坂本 投資家と話し始めたのは昨年の12月からですが、そもそもシリーズEの調達をやるべきかどうかの議論がありました。昨年の時点で単月黒字化していたため、資金調達を行わない資金繰り計画が立っていたからです。

そうした中で調達に向けて動いた理由は2つあります。

1つ目は、金融機関として一定のキャッシュが必要だと考えたことです。

業法上の自己資本比率規制はありませんが、公共性の高い事業である以上、何か起こった際に「キャッシュが足りなかった」では許されません。海外の同業種の企業の事例を見て、資本効率を一定犠牲にしてもキャッシュを積んでおくべきだと考えました。

2つ目は、資金調達環境の悪化を懸念してのことです。

去年の秋頃から「スタートアップバブルが終わる」と警鐘を鳴らす声がありましたが、それも考慮しています。冬の時期に突入すれば資金調達はより難しくなりますから、昨年から動き始めたことは結果的に功を奏しました。


資本政策の軸は「事業シナジーの実現性」「堅実なバリュエーション」にあると話す2人。投資家の丸井グループとSFV・GBは、投資の決め手を次のように語る。

不安定な市況下での新規投資ですが、投資方針に変更はありませんでしたか。

森下 雄斗氏 丸井グループは、2023年3月期までに計300億円の投資を計画しており、「D2C」「サステナビリティ」「ファイナンシャル・インクルージョン」(編集部注:経済状況に関わらず誰もが金融サービスへアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるようにする概念)を軸として、これまでに約140億円の投資を実行してきました。

これらはアフターコロナの世界でも成長する領域と考えており、投資の方向性は変わっていません。「ファイナンシャル・インクルージョン」の観点から、当社子会社のtsumiki証券との相互送客により、われわれのお客さまにより多くの金融商品を提供する目的で、クラウドクレジットへの投資を決めました。

クラウドクレジットの経営陣は金融業に造詣の深い方とソーシャル面に強い方のバランスが取れた素晴らしいチームであり、バリュエーションについても、堅調な事業成長や既存株主へのヒアリングを通し妥当性を確認しました。

このタイミングでの追加投資の決め手を教えてください。

石井 茂氏 今回のコロナショックのような緊急時における投資条件は、時間軸順に分けると3つのポイントがあります。1つ目は難局を乗り越えるキャッシュマネジメントができているか。2つ目は状況が大きく変動する中でのリスク管理能力。3つ目は営業力、収益力を落とさないことです。

今のクラウドクレジットは、この3条件をクリアしていると考えています。特に2018年に投資を行ってから今回に至る間、海外の貸付先との関係性を築いてきたことは成長の証です。

また、ソニーフィナンシャルグループのお客さまとクラウドクレジットのサービスの相性の良さも投資の理由の1つです。実現段階ではありませんが、同社の商品ラインナップをソニー銀行のお客さまに紹介することは今後の協業の可能性です。

百合本 安彦氏 貸付先、投資家の両サイドからのリピートは多く、経営陣に対する信頼感と期待感は強いです。

今回のコロナショックによって、先進国から発展途上国に流れていた資金が潤滑に回らないことも考えられます。社会的インパクト投資を推進するクラウドクレジットの重要性は向上していくでしょう。


投資家からは事業の成長に加え、経営陣への期待も窺える。クラウドクレジットの今後についてCEOとCFOの役割を踏まえ話を聞いた。

ファイナンス戦略に応じたCEOとCFOの補完関係

資金調達上のCEOとCFOの役割はどう考えていますか。

杉山 現在私はほとんど資金調達に関与しておらず、創業理念やミッションを投資家にお伝えし、お互いの方向性を確認することが主な役割です。

もともと坂本が弊社に参画したのは、1年程シリーズCの調達で苦しんだ後に「CFOのキャリアに興味がある」と連絡をもらったことがきっかけです。

CFOに業務を引き継いだ後は、こんなに事業に集中できるのか!と驚愕しましたね(笑)。

シリーズD調達後は社員も増えましたが、組織の構築にフォーカスできたのはCFOが財務を一手にやってくれる信頼があればこそです。

坂本 CFOとして入社しシリーズC直後の資本政策を見たときは、率直に「いい投資家に恵まれている」と感じました。伊藤忠やマネックスグループは著名な企業で安心感がありましたし、スタートアップ界隈でも有名な磯崎氏率いるVC(フェムトスタートアップ・フェムトパートナーズ)からの出資もある。この会社でCFOをやる学びは多いと思って入社しました。

仮に資金調達先がVCだけであれば、CFOの私1人だけで対応してもいいかもしれません。しかしわれわれは事業シナジーや理念への共感も軸に資本政策を考えていますから、必要に応じてCEOとCFOの役割を分担してきました。

今後の資本政策も、「資本効率を考え、必要な時に必要な資金があるべき」と言う前提のもと、最適な形を考えていきます。

(インタビュー・文:三浦英之、デザイン:石丸恵理)

#資金調達記事#シリーズE#FinTech#VC/CVC

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