スタートアップの最新トレンドを発信する「INITIAL Briefing」。 今週はピックアップニュースとグローバルコンテンツをお届けする。
トップニュースは台湾発Appier Groupの東証マザーズ上場だ。公募時価総額は1598億円で国内市場だけでなく、米国を含む海外市場で募集・売出を実施する。AI×SaaSでアジアから世界を目指す同社の事業戦略について解説する。また、日本だけでなく、欧州スタートアップも投資対象とするNEXTBLUEのファンド設立や金属部品の受発注プラットフォームを提供するCatallaxyの資金調達についても紹介する。
Facebook、Slack、Airbnbなどの投資家として有名なAndreessen Horowitzがマーケットプレイス領域で急成長しているスタートアップ100社のランキングと市場の変化に触れた『The a16z Marketplace 100: 2021』を公開した。全世界のVCが注目する同ランキングを日本国内の類似スタートアップとともに紹介する。
台湾発のAppier Group、マザーズに上場。INITIALピックアップニュース3選
INITIAL編集部が選ぶ、先週の注目ニュースは以下の通りだ。
今週は注目のニュースと資金調達を選定した。
台湾発のAppier Group、本日東証マザーズに上場
Appier Group(以下、エイピアグループ)が3月30日に東証マザーズに上場した米国を含む国内外での公募により146億円を調達し、公開価格で算出した時価総額は1598億円となっている。台湾発の同社は東証への上場でアジアでの知名度を向上させ、グローバル化を加速させる。
注目ポイント:台湾発、東京経由で世界を目指す
エイピアグループは2012年に台湾で設立されたAppier(エイピア)の持株会社である。エイピアはAIを活用したマーケティングツールを提供しており、すでに台湾、日本だけでなく、米国、インド、オーストラリアなど15カ国で事業展開する。Sequoia Capital India、ジャフコ グループのアジア向けファンド、LINE、ソフトバンクグループ、NAVERなど著名投資家がこぞって投資しており、中でもSequoia Capital Indiaは第二位株主となっている。
2020年12月期の連結売上高は前年同期比24.2%増の90億円、営業損失は16億円だった。黒字化には至っていないものの、2020年12月におけるARR(年間経常収益)は94億円と先日ARR100億円突破を発表したfreeeに匹敵する規模となっている。月次顧客解約率がコロナ禍にも関わらず、2019年の0.98%から2020年は0.82%に下がっている点にも注目である。
同社の成長を支えているのはアジア市場だ。2020年12月期の連結売上高のうち、68%を日本及び韓国の北東アジア地域、10%を東南アジアが占める。同社の広報は「文化が多様なアジア市場で成功することができれば他の市場も開拓できると考え、アジアを成長の柱に据えている」と話す。アジアで知名度を向上させる狙いから、上場先も台湾企業ながら東証マザーズを選んだ。
同社は潜在顧客の発掘から、ユーザーの分析、個別の特徴に合わせたマーケティング施策の実行などの工程別に4つのサービスを提供する。「1つのサービスを利用することで顧客に関するデータがたまり、それを活用するために他のサービスについても契約するという顧客も多い」(同社広報)という。
マーケティングの各工程のサービスを一気通貫で提供するために、同社はこれまでM&Aを積極的に活用してきた。2018年にはインド企業を、2019年には日本のスタートアップEmotion Intelligence(エモーションインテリジェンス)を買収している。エイピアのエンジニアのうち、約70%がAI又はビッグデータの領域における博士号又は修士号を保有している。AI技術を付与し、買収先のサービスを伸ばしてきた。IPO後も変わらずM&Aを成長戦略の1手段と位置づける。
日本のSaaS企業が海外で成功している事例は少ない。台湾発、東証マザーズ上場というユニークなグローバル企業であるエイピアは今後、M&Aなどを活用して順調に成長を続けられるのか。日本のSaaSカンパニーが成長戦略を練る上でもエイピアの今後の動向は一つのベンチマークになりそうだ。
NEXTBLUE、1号ファンドを設立
独立系VCのNEXTBLUEは1号ファンドの目標額30億円の約半分の資金を集め、一次募集を完了したと発表した。一時募集では丸井グループ、Q’s Fix、ギフティ、複数のエンジェル投資家がLP出資した。
注目ポイント:日本だけでなく、欧州のスタートアップにも投資
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