スタートアップの最新トレンドを毎週発信する「INITIAL Briefing」。 今週は、ピックアップニュース解説、Finance Reviewのコンテンツをお届けする。
11月2週目のピックアップニュースでは、今年マザーズ最大規模のIPOを実施するプレイドの上場承認と12月のIPO市況見通しを中心に解説する。
Finance Reviewでは、10月の資金調達額上位10社を分析。One Tap BUYが71億円を調達し、ソフトバンクとみずほ証券に合弁会社化された事例や、上位10社の特徴を解説する。
プレイドが今年マザーズ最大規模のIPO。INITIALピックアップニュース3選
「INITIALピックアップニュース3選」では、資金調達など抑えておくべき3大ニュースを解説する。
SaaS企業のプレイド、海外同時売り出しで上場へ。想定時価総額は517億円
トップニュースは顧客体験プラットフォーム「KARTE」を展開するプレイドの上場承認だ。12月17日に日本国内と同時に海外でも株式の募集・売出を行うグローバルオファリングによる上場を予定する。グローバルオファリングはメルカリやfreeeが実施しており、プレイドは海外投資家向けに6割を売り出す。
上場の目的は既存株主へのEXIT機会の提供に加え、海外展開に向けた資金調達だと推測される。上場時の資金調達額は約21億円だ。
プレイドは2011年に設立以来、独立系VCのフェムトパートナーズや海外VCのEight Roads Ventures Japanなどから累計35.7億円を調達している。2019年11月にはGoogleから16億円を調達し、戦略的パートナーシップを結んだ。今後、Google Cloudの機械学習やAI技術面で協業をしていく予定である。上場前時点の保有比率は、共同創業者の倉橋氏、柴山氏が合計49.4%、VCは約33%、Googleの保有比率は3.6%だ。
2019年9月期の業績は売上高29.4億円、経常損失6.8億円と赤字上場である。
上場時に既存株主は大半の株式を売却する一方、Googleや、2020年10月にフェムトパートナーズから一部株式が譲渡された世界屈指の機関投資家T. Rowe Price Japan(ティ・ロウ・プライス・ジャパン)は売り出しを行わない。
例年12月はIPO企業が多く、プレイド含む12社の12月上場予定の承認が発表されている(11月13日現在)。マザーズ市場に上場予定企業は、ヤプリ、バルミューダ、ココペリなど8社だ。
上場承認から上場日までは約1ヶ月のタイムラグがあるため、年末までのIPO承認企業は今後11月3週・4週目に発表される見込みだ。需給バランスで値が決まる株式。年末までにどの程度「IPOラッシュ」があるか、今後の2週間に注目だ。
昨年12月はfreee、AI Inside、メドレーなど現在の時価総額1000億円を超える企業のマザーズ市場IPOが見られた。プレイドの想定時価総額は517億円と、マザーズ市場では今年最大規模のIPOとなる。今後、プレイドの公開価格が決定されるまでのプロセスにおいて、国内外の売出比率が変化するかに注目したい。
創薬企業のペルセウスプロテオミクス、3月の上場延期から8.6億円の資金調達
がん患者向けに抗体医薬品の開発を行うペルセウスプロテオミクスは、DBJキャピタル、京都iCAP、エムスリーなどから8.6億円の資金調達を行った。同社は2020年2月に上場承認、3月に上場予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大による市況の悪化から上場を延期した。
同社は東京大学発の創薬ベンチャーとして2001年に設立。2009年に富士フイルムの子会社化になり、共同で研究開発を行ってきた。2018年にVCから約14億円の調達を行なったことで富士フイルムの連結対象から外れ、上場を目指していた。
2020年3月の上場時に8.2億円、4月にみずほ証券を引受先として1.2億円、合計9.4億円の資金調達を予定していた。資金使途は、2022年度までの研究開発、事業運営資金であった。しかし、みずほ証券からの第三者割当増資は、上場が条件に含められていたため、上場延期により中止となった。
上場延期後の調達となる今回8.6億円は、同社の研究開発、事業運営資金約1.5年分に相当する。
2019年12月時点の総資産が6.7億円、2019年3月期のフリーキャッシュフロー(FCF)が-3.1億円であることから、数年内の上場再申請を視野に入れたブリッジ・ファイナンス(つなぎ資金)であると推測される。
国内初のドローン上場企業、自律制御システム研究所が10億のCVC設立へ
自律制御システム研究所(以下、ACSL)は中期経営方針に基づき、最大10億円のCVCファンドを12月に設立することを発表した。国内外の技術系スタートアップに知見があるリアルテックホールディングスと共同運用を行う。
ACSLが展開する産業用ドローンでの喫緊の課題は、墜落リスクなど安全性だ。ACSLはCVC設立によりセキュリティ、AI、画像処理、ブロックチェーンなど補完的技術を有する企業に出資することで同社のコア技術を補強する狙いだ。
産業用ドローンは、2022年度を目途に有人地帯における目視外飛行に向けた制度設計が進められており、市場の本格拡大に期待がかかる領域だ。
5Gインフラ整備もドローン活用を後押しする要因だろう。その勢いを表すかのように今年9月には上場前にACSLに出資したDRONE FUNDがファンド総額100億円のファイナルクローズを目指して3号ファンドを設立するなどの動きが見られる。
参考:ドローン・エアモビリティの社会実装をつなぐVCファンド
10月の資金調達額上位10社。One Tap BUYが71億円を調達、ソフトバンクとみずほ証券の合弁会社に
Finance Reviewでは、10月の調達額ランキング上位10社を解説する。
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