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2019/08/11

【本質】元官僚が挑む「伝え方」のアップデート。VRにデバイスは必須じゃない

  • #VR
  • #SaaS

スタートアップ最前線

Oculus RiftやPlayStation VR(以下、PS VR)と言った一般ユーザー向けのデバイスが発売され、2016年はVR元年と呼ばれた。それから3年が経ち、市場は急速な拡大傾向にある。

世界では2016年には3000億円程度だった市場規模も2018年には2兆円弱まで拡大している。

また活用方法も多様化しており、ゲームといったtoC向けだけでなく企業向けに研修や営業支援ツールといった使われ方も増えている。

今回は森田CEOに私たちの知らない新しいVRの使い方と、見据えているこれからの見通しを話してもらった。

CONTENTS

VRの世界

IDCのレポートによると世界のVR/ARの市場規模は2025年には950億ドル(約10兆円)に達すると予想されている。これは2017年における日本国内ECの市場規模に匹敵する大きさだ。

既に2018年の市場規模は181億ドル(2兆円弱)になっており、年平均成長率も80%近くで推移し続けると予想されている。

市場規模

ハードウェアだけでなくソフトウェアの市場も拡大傾向にある。2023年にはトレーニング(84.7億ドル)、産業メンテナンス(43.1億ドル)、および小売/展示(38.7億ドル)が最大の支出分野と予測される。(出所:Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2018H2 )

VRハードウェアの代表例としてOculus GoとPS VRが挙げられ、市場のおよそ半数をこの2つが占める。

ソフトウェアではVRトレーニングを提供するStrivrが、ウォルマートと提携し17,000台のOculus Goを使い研修プログラムを提供するなどしている。同社は商品の発注や会計、安全講習を行い、前年比で20%も業務内の怪我といったミスの件数を減少させるといった成果を生んでいる。

国内市場規模

国内でもVR市場は伸びており、ビデオ(VR用ビデオや360度ビデオ)やゲーム(VRビデオゲームや体験型VR)は2022年には1,000億円を越え、平均年成長率も37%以上を見込まれている。急拡大の背景には2020年に開始予定である5G(第5世代移動通信システム)やオリンピックが考えられる。

VR/AR領域のスタートアップへの投資も大型化が進んでいる。2017年はMagic Leap、Improbable、ポケモンGOをつくり話題にもなったナイアンティックの3社で全投資金額30億ドルのうち35%近くを占める結果となっている。

Magic Leap以外の2つはハードウェアをつくっておらず、ソフトウェアに特化していることから、機能性や利便性の向上といった部分にフォーカスが当たってきていると示唆される。

国内でも盛り上がりが予想されるVR業界。今回はその中でもソフトウェア領域で、どこでも簡単VRコンテンツを作成できるVR SaaS「スペースリー」を展開するSpacelyに注目する。VRスタートアップ、Spacelyが見据えている将来性と今後の戦略とは。

VRで「情報の伝え方を変える」

私たちが提供している「スペースリー」はVR SaaSというソフトウェア領域の事業です。

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VRコンテンツの作成ツールや顧客データの解析機能をクラウド上で提供しています。コンテンツ作成者は撮影したデータを「どこでも簡単VR」にアップロードすれば、簡単にコンテンツ作成やそれを活用して得られたユーザーデータの管理ができます。

VRは「Oculus Quest」や「PS VR」といったハードウェアの普及に市場が左右される印象があるかもしれません。

しかし、私たちはプロダクトのマーケットをデバイスを使ったVRに限定していません。VRが持っている情報伝達手段としての可能性を届けるために事業を展開しています。

事業を始める理由は人それぞれありますが、私たちは課題があるからやっているわけではありません。どちらかというと「プロダクトアウト型」の発想です。

もちろん、360度VRを製作する手間と取り扱いにくさを解決するとも言えます。しかし、その課題を解決するためではなく、シンプルにテクノロジーで世の中を良くするために始めました。

今後どのくらい時間が経てばVRが当たり前に使われるようになるか誰も分かりませんし、まだまだVRを知らない人も大勢います。

Spacelyは業務改善にフォーカスしたプロダクトですが、そのアプローチが最適かも分かりません。

ただテクノロジーをうまく使えば世の中をより便利にできると信じています。だから私たちはVRでチャレンジしています。

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(画像:ami)

今はnice to haveな事業かもしれませんが、それを当たり前にするのが起業家の仕事ではないでしょうか。既に当たり前のことは大企業がやっています。

21世紀は、市場を再定義し作り出す事業が増えると思います。課題の有り無しではなく世の中に価値をつくり出せるかが重要ですし、それが私たちの会社の存在意義だと思っています。

だからこそ「事業の本質的価値はなにか?それを提供できているか?」考え続けることが大切です。

「情報の伝え方を変える」というVRの本質的価値をプロダクトを使って実現し、それがあったことで世の中が良くなったと言われるようにしたいです。

ロゴにもその想いを込めています。 創造的なモノゴトをテクノロジーとアートでつないで積み上げ構築していく様を表現しています。

ロゴ

(画像:公式ページ)

VRデバイスに依存しないマーケット

私たちはVRデバイスに依存しない情報の伝え方にフォーカスして、価値提供をしています。

360度カメラを用いて撮った画像や映像を、ビジネス用に使いやすくする手段を提供しています。それらを活用するのにVRデバイスは必須ではありません。

活用できる用途が広がるのでVRデバイスが普及するに越したことはありませんが、デバイスありきの事業では決してありません。

VRという情報フォーマットが当たり前になることを前提に、VRの多様な使い方に対応するために使われるプラットフォームを提供する。これが私たちの方針です。今取り組んでいる分野も、ただ単にそこに市場があったからに過ぎません。

利用業者業種割合

360度VRという新しい情報フォーマットを提供することで、今まで取れなかった顧客情報やマーケティング情報が私たちの元に集まってきています。

その情報こそが私たちがもつ付加価値の源泉なので、デバイスがなくとも付加価値を十分提供できます。そういった点でデバイスありきの事業者とは、根本的にビジネスの捉え方が違うんじゃないでしょうか。

テクノロジーを社会実装するプラットフォームへの道

今後、目指していることは2つあります。1つは、今やっている事業をnice to haveからmust haveに変えにいきます。

内見に行かずに物件を決めたり、家にいながら美術館の展示を見たり。日常で違和感なくVRが情報伝達手段の1つとして使われる世界をつくる。それがまずは目標です。

その延長線上として、研究段階の新しいテクノロジーをマーケットに実装するための支援プラットフォームをつくりたいです。

「新しい体験や驚きをより多くの人に提供する」を会社の1大テーマに掲げています。

今提供しているプロダクトもそうですが、マーケットインの発想だけでなく、新しいテクノロジーで何ができるようになり、どんなサービスがつくれるか考えるようにしています。

「宇宙系の研究を世の中の役に立たせるには何が必要か」これが経産省に入省を決めた動機でした。そこから色々ありましたが、根本的な考え方は一切変わっていません。

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東京大学大学院航空宇宙工学専攻修了後、経済産業省で6年間勤務。その後、シカゴ大学大学院にてMBA取得しアメリカで起業。2014年からアート事業を始めて現在も運営。2016年11月から、「どこでもかんたんVR」にフォーカスし事業展開を開始。

VRが世の中に一気に普及するとは考えていません。分野によりますが、例えば不動産の領域では2,000万件の物件情報のうち、5年位で数十%にVRが導入されるといったスピード感ではないでしょうか。

ただ起業家の役割はテクノロジーが導入されるきっかけをつくるより、 社会実装を加速させることだと思います。

それを実現するチームをつくるため全方位的に採用をすすめています。コーポレートや開発エンジニア、デザイナー、営業、マーケティングなど様々な職種を募集しています。

なので事業に少しでも面白みや興味を持って頂いた場合は、誰でも気軽にご連絡ください

唯一私たちが求める資質は「プロフェッショナリズム」です。オーナー志向でやることに責任を持ちながら、考え実行し、学び続けられる人と働きたいです。

もちろん性格が合うといった要素も重要ですが、今の企業フェーズではまずはそれが大事だと思います。

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文・写真:ami


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