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2019/12/11

カスタマーサクセス管理ツールのHiCustomer、プレシリーズAで1.5億円調達

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カスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer(ハイカスタマー)」を提供するHiCustomer株式会社は、約1.5億円(調達後企業評価額7.57億円)の資金調達を公表した。(※1)

2023年には約8,200億円に拡大することが予想されている、日本のSaaS市場(※2)。SaaSスタートアップに対して、海外投資家が大型投資を行っていることも記憶に新しい。

そうした市場の広がりを背景に、HiCustomerは2018年12月、日本初のカスタマーサクセス管理ツールとして正式リリースされた。

リリースから1年が経過した今、CEOの鈴木大貴氏は「今回のプレシリーズAでの資金調達によって、エンジニア採用を加速し、PMF(プロダクトマーケットフィット)を素早く完了させる」と語っている。

本記事では鈴木氏へのインタビューと、リード投資家のアーキタイプベンチャーズからのコメントを中心に、資金調達の背景と今後の展望を紐解く。

(※1 評価額は登記簿情報を元にINITIALが算出。HiCsutomerによって追認された数値ではない。) (※2 スマートキャンプ株式会社発行「SaaS業界レポート2019」より)

CONTENTS

カスタマーサクセスを効率化する「HiCustomer」

HiCustomerは、BtoB SaaS事業者向けの「カスタマーサクセス管理ツール」であり、顧客スコアリング、コミュニケーション管理、利用状況分析といった機能を持ち、カスタマーサクセス担当者が具体的なアクションを考える上で有用なアシスタントとなる。

(画像:HiCustomer会社資料)

単なる管理ツールではない。カスタマーサクセス担当者が何をするべきかを通知し、打ち手がどう結果に結びついたかを可視化・分析する。そして次のアクションに繋げられることが、HiCustomerの強みと言えるだろう。

プレシリーズAで1.5億円の調達

HiCustomerは2018年7月、J−KISS型新株予約権の発行により、シードラウンドで6,000万円の資金調達を行っている。

今回のプレシリーズAでの調達は、アーキタイプベンチャーズ、BEENEXT、 Coral Capital(旧500 Startups Japan)を引受先とする総額約1.5億円の資金調達であり、3社ともに2018年に続いての投資となる。

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HiCustomerはどのようにカスタマーサクセス管理ツールとしてのPMF(顧客の課題を満足させる製品を提供し、適切な市場に受け入れられている状態)させるのか。資金調達の経緯と今後の展望について同社CEOの鈴木氏に話を聞いた。

「解約率20分の1」を実現する、HiCustomerの強み

今回の資金調達が実施できたのは、順調な成長が背景にあるのでしょうか。

鈴木 大貴氏(以下、鈴木) HiCustomerの正式リリースから1年が経過しました。お陰様で成長中のスタートアップから東証一部に上場する企業まで、幅広いユーザーに利用いただいています。

鈴木 大貴(すずき・だいき)/ HiCustomer株式会社 代表取締役 高専卒業後、医療器械メーカーや人材系企業、ITベンチャーを経て主にB2B SaaSスタートアップへの投資を行うアーキタイプに入社。スタートアップ支援と事業会社向け新規事業開発コンサルティング業務に従事した後、2017年12月にHiCustomer会社を創業。国内初のカスタマーサクセス管理ツールをSaaS事業者向けに提供。

私たちが現在、事業の進捗を把握するために見ている指標は、「導入社数」「MRR(月間経常収益)」の2点だけです。

具体的な導入社数は公開していませんが、導入後の成功事例をいくつかお話しします。

まず紹介したいのが、HiCustomerを導入後、解約率が20分の1に低下した事例です。

月次解約率が2%程度のサービスを提供するあるユーザーにHiCustomerをご導入いただきました。

その後、オペレーションを約半年かけて改善をした結果、月次解約率は0.1%まで低下しました。

これはユーザーの顧客データをHiCustomerが一元管理することで、プロダクトの活用状況が「ヘルススコア」の形で可視化され、カスタマーサクセス担当者が要対応顧客へのフォローアップを効果的に行えるようになったことが背景にあります。

また、HiCustomerを導入して半年間、同様のPDCAサイクルを回した結果、全ユーザーの内、7%のユーザーをアップセルに繋げることができた事例もあります。

HiCustomerが提供するバリューは、利用データから対応が必要な顧客を可視化し、カスタマーサクセス担当者に「このユーザーに対し、このアクションをとるべきです」という通知を自動で生成すること。

点在する利用者の情報をHiCustomerに集約して、カスタマーサクセスの運用コストを下げるなどのメリットを高く評価いただいていると思います。

今回プレシリーズAでの資金調達が実施できたという点で、プロダクトの手応えを感じたのではないでしょうか。

鈴木 そうですね。シリーズAはPMFを達成した企業が基本的に行うものだと理解していますが、私たちはシードとシリーズAの間にいると考えています。

厳密に「これが達成出来たらPMF完了」という定義があるわけではありません。しかし、目標数値に迫り、PMFを少しずつ達成していることを実感している現在、仮に資金調達をしなければ運転資金がなくなる状況です。

このような背景もあって、今回はPMFを完了させ、シリーズAでの資金調達を実現させるために、シードラウンドと同じ投資家から調達を行いました。

2018年6月のシードラウンドの時点では、無料でHiCustomerのベータ版を公開しています。そこからプロダクトをブラッシュアップし、2018年12月に有料の正式版をリリースしました。

正式版をリリースして実際に導入いただいたことで、「お金を払っていただけるプロダクトだ」と確信を持てたことが、一番大きい手応えですね。

それに加え、アップセル(より高額なプランへのアップグレード)をしていただけるユーザーがいることも、自信に繋がっています。

もう1つの手応えとしては、営業の際に「価格をもう少し下げられないか」といった声をいただく機会が減ったこともあります。

トライアルでHiCustomerを利用したユーザーが、「この価格なら払ってもよい」と感じていただけるようになり、費用に対するリターンの期待値を超えるプロダクトになってきたと感じています。

「HiCustomerのカスタマーサクセス」が行っている具体的な取り組みを教えてください。

当然ですが、私たち自身がHiCustomerを使ってカスタマーサクセスを行っており、HiCustomerユーザーの活用頻度が低い場合、積極的に連絡するなどアクションをとっています。

また、エンジニアと連携するカスタマーサクセスのメンバーがいることも特徴の1つですね。

HiCustomerの導入にあたっては、他のプロダクトとデータ連携を行う必要があります。ここをしっかりサポートしています。

(画像:HiCustomer会社資料) データ連携後のHiCustomerの管理画面

私たちが事業を行う上で感じる難しさの1つは、外部のプロダクトの時系列データを大量に扱い、HiCustomerと連携させる点です。

逆に言えば、この技術的な連携の難しさが、競合が参入する上での1つのハードルになるのではないでしょうか。

資金調達で目指す「カスタマーサクセス管理ツール」の確立

「カスタマーサクセス」の概念はこの数年で普及した実感はありますか。

鈴木 分かりやすい例としては、Wantedlyの募集職種の項目に「カスタマーサクセス」が追加されたことがあると思います。

これは1つの職種として、カスタマーサクセスに対する認知度が高まったことの表れではないでしょうか。

また、営業を行う際にも環境の変化を感じます。

営業先はSaaS事業者が中心になるのですが、カスタマーサクセスチームが既にある、またはこれから組成予定である企業が、1年前に比べ明らかに増えてきています。

今後はHiCustomerのPMFを素早く完了させることが次の目標になるかと思います。具体的な展望について教えてください。

現在HiCustomerのメンバーは総勢10名で、プロダクトとビジネスサイドが5名ずつの構成です。

今回の調達資金は採用に使用し、特にプロダクトチームの採用を加速させていきたいと考えています。

HiCsutomerをPMFが完了したプロダクトに進化させるためには、MRRやカスタマーサクセス業務にかかるコストといった「カスタマーサクセスに関する数値」を可視化させる機能が必要だと考えているからです。

まずはプロダクトチームの強化によってプロダクトを改良し、次のシリーズAでの資金調達を迅速に行っていきたいですね。

アメリカで上場するSaaS企業の中には、IRレポートの中でNRR (Net Revenue Retention = 売上継続率)をベンチマークとして公表している企業がいます。

なぜ、SaaS企業にとってNRRが重要な指標なのか。

それは、たとえ新規顧客の獲得がなかったとしても、既存顧客の継続とアップセルによって成長していけるのがSaaSだからです。

今後、日本のSaaS企業にも「事業の成長にはNRRを高める必要がある」という考えが広まると思いますし、その時にはカスタマーサクセス、そして管理ツールの重要性もより高まると考えています。

投資家からの評価と期待

本ラウンドのリード投資家であるアーキタイプベンチャーズ株式会社の福井俊平氏に、投資の背景を伺った。

なぜHiCustomerへの投資を決めたのでしょうか。

福井 俊平氏(以下、福井) まず、出会いの背景についてお話しすると、鈴木さんはアーキタイプ出身であり、同じオフィスで働いていました。起業アイデアのディスカッションをしたりと、当時から交流がありましたね。

そうした経緯もあり、HiCustomerが構想段階だった時からお互いのことを知っています。

継続率やMRRといったトラクションを見ているわけではなく、「鈴木さんが解決したい課題とそこに対する情熱」「解決方法」を評価し、投資を決定しました。

また、「カスタマーサクセス」という概念を広く捉えると、SaaSビジネスだけでなく、他の業界でも求められる役割だと感じています。ブームやトレンドなど関係なく、地に足のついた継続的な成長を十分に見込める広大な市場規模とポテンシャルがあると思います。

定量的なヘルススコア(ユーザーがプロダクトを使い続けるかどうか、程度を指標化したもの)で見える「カスタマーサクセス」と、定性的なNPS(プロダクトに対する愛着・信頼の度合い)で見える「顧客満足」。

その双方の指標を改善出きるHiCustomerは、「Customer Happiness」を実現できるツールだと思います。

今後のHiCustomerの更なる顧客開発と、テクノロジーの深堀りを期待しています。

聞き手・文:三浦英之、デザイン:廣田奈緒美、写真:INITIAL


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