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2019/09/01

QRコード1つで自律飛行。屋内ドローンが現場作業者を救う

  • #起業ストーリー
  • #ドローン
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スタートアップ最前線

今や外で見かけることも珍しくない「ドローン」。屋外での撮影のみならず、UberEatsも実験しているデリバリー配送の分野でも存在感を示している。

市場規模も2018年度の約930億円から、今後5年で約5,000億円まで拡大が見込まれている。(出所:インプレス総合研究所)

しかし、屋内でのドローン活用は広がっていない。GPSが使えない屋内では、位置情報を測る技術を駆使するのが難しいからだ。

ドローンを使うニーズはあるのに、現場導入はハードルが高い- ドローンスタートアップ「Spiral(スパイラル)」は、現場で働く人のペインに着目した。

点検・モニタリングの分野で「現場作業者が使える」屋内に特化したドローン技術を開発。人の操作なしで、ドローンの自律飛行が可能になる。

フランス・ルクセンブルク政府からも展示会に招聘されるなど海外からも注目が集まる、ドローンの独自技術に迫る。

CONTENTS

国内ドローンのサービス市場は今後5年で約10倍に成長

2018年度の国内ドローンの市場規模は約931億円(出所:インプレス総合研究所)。内訳はサービス市場が362億円、機体市場が346億円、周辺サービス市場が224億円だ。

drone business

注目すべきはドローンのサービス市場の成長性だ。

2024年度はサービス市場が3,568億円、機体市場が908億円、周辺サービス市場が597億円と予測される。サービス市場は、機体・周辺サービスの成長性を大きく上回り、2018年度から年平均成長率60%と急激な拡大が見込まれている。

市場拡大の背景には、機械化・自動化と同様にドローンの有用性が認知され始めてきたことがあげられる。

成長が見込まれるドローンサービス市場で事業を展開するSpiral 代表取締役の石川 知寛氏にインタビュー。屋内ドローン技術の仕組みや、資金調達における課題、今後目指したい姿について伺った。

人の操作不要。現場で使える屋内ドローン

spiral ishikawa profile

石川 知寛(いしかわ・ともひろ)/ Spiral Inc. 代表取締役。大学在学中に飛行ロボットベンチャー創業に参画。ドローンや小型ロケットなどのシステム設計・開発に従事。 医療機器メーカーでの医療機器開発などを経て、2016年10月にSpiral 創業。屋内に特化したドローンの普及を目指す。

現場の方が屋内で使えるドローンシステムを開発・提供しています。

屋内ドローンの利用例は、建設現場での記録用写真撮影や、ショッピングモールでの屋内点検作業です。点検・モニタリング作業を現場の方の代わりにドローンが行うことで、現場の工数負担が低減できます。

GPSが使えない屋内の環境では、位置情報を測る技術が必要です。しかし、実際にドローンを制御するための技術は複雑で、現場への導入の障害になっています。屋内作業でのドローン活用は広がっていません。

そこで私たちが開発したのが「Mark Flex Air」です。

QRコードなどのマーカーを使うことで、人の操作がいらないドローンの「自律飛行」が可能になります。マーカーを室内に貼るだけで、簡単にGPSの代わりになる技術です。

仕組みは以下の通りです。

markflexair

(画像:Spiral公式HP)

ドローンに搭載しているシステムがマーカーを認識し、位置情報を受け取ります。ドローンは位置情報の指令通りに飛行し、次の指令を出すマーカーの情報を読み取り飛行する流れになります。

動画で見るとより分かりやすいかもしれません。

image6

(画像:Spiral公式HP) クリックすると動画が別画面で再生されます

ドローンは左に1.5m、今と同じ高度を保ったまま行きなさいという指令が出るので、ドローンはその指令に従って飛行します。次のマーカーを見ると、降りなさいという命令があるので、降ります。

マーカーを1回貼る作業をするだけで、ドローンを自律飛行させることができます。 人の操作がいらないので属人化を防ぐことができますし、簡単に現場で使えることを売りにしています。

spiral value

(画像:Spiral公式HP)

ハードウェアだけどSaaS?カテゴリー理解の難しさ

現場仕事で生じる属人化、つまりこの人がいなかったら作業が出来ない状態を、屋内ドローンを使ってなくしたい。「現場作業員の代わりにドローンがなる」ことを目指しています。

現場でドローンを操縦する人が必要となると、結局人に依存してしまいますよね。本末転倒じゃないですか。だから、人の操作がいらないドローンの「自律飛行」にはこだわっていますね。

Mark Flex Airによる自律飛行が向いているのは、建設現場やオフィス、商業施設など人が行けるところです。屋内で飛ばす場合は、高いところでも脚立やクレーンを使えば行けますよね。

本来ドローンが価値を発揮するのは、原子炉など人が行けない場所です。しかし、Mark Flex Airはマーカーを使うので、人が行けない場所では使えない。なので、人が行ける場所でかつ属人化を防げるような、現場の方に使ってもらうことにフォーカスしています。

drone shutterstock

(画像:Olga Tucha / Shutterstock)

ただ、一般的にはドローンと言うと空撮用のイメージが強いため、「屋内ドローン」の領域が確立されていないこと、屋内でやる必要があるのか理解されにくいことは課題に感じています。

また、Mark Flex Air自体もドローン本体ではなく、ドローンにつけるアクセサリーです。マーカーを認識して飛ぶ仕組みをサービスとして提供しています。

「ハードウェアだけどSaaS的特徴を持つ」とユニークな立ち位置にいるため、当初投資家の方に理解してもらうのに苦労しました。しかし、私たちの製品を使うユーザーがどうして使いたいのか、実際に会ってもらって生の声を届けると、投資家の方にも理解していただけるようになりました。

ハードウェアの資金調達は十億円規模の資金が必要だと思われていますが、私たちは機体をつくるわけではないので、そこまで必要ありません。

逆に、多すぎる額の投資を受けないようにしています。ドバイの投資家に「株主持分1%で、フォローで1億円投資する」と提示がありましたが、資金使途と合わなかったのでお断りしました。

世界を飛び回って現場の課題が見える

今後は、アジアを拠点に中東、ヨーロッパ諸国へ進出することを海外戦略の柱としています。

JETRO主催のスタートアップ支援プログラムに採択されたことがきっかけで、フランス・ルクセンブルクの政府からオファーがあり、展示会に出展する機会をいただきました。

日本発のドローンスタートアップとして参加しましたが、「同じようなサービスはいくらでもある中で、なぜあなたたちの製品を使うのか」など厳しい洗礼を受けました(笑)

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(画像: Chaay_Tee /Shutterstock)

ただ「競合会社いっぱいありますよね」という方にはあえて営業しないです。

ドローンを使いたい人は沢山いますが、本当に使いたくて喉から手が出るほど困っている人たちに使ってもらいたい。むしろ、苦労して悩んでいないと私たちのサービスは使えないと思っています。だから、安請け合いはしないです。

本当に必要な人に届けるために、そこまで悩んでない方にはお断りする。 選択と集中が必要と割り切っています。大学卒業後、10年以上自動化ロボットの導入・開発に関わっていた経験から、一番重要なことだと考えています。

世界中を飛び回ると、日本ではあまり知ることができない現場の人たちのバーニングニーズが知れて参考になります。ルクセンブルクの展示会に行った時も、20年現場で働いている建設メーカーのお客さんに「使いたい」と言ってもらえたんですね。

今までは建設現場側のゼネコン側しか見ていなかったので、一気に市場が広がる感覚をつかむことができました。

2022年に屋内ドローンが人の役に立つ飛行ロボットとして世界で活躍する社会を実現させたいです。

spiral ishikawa last

(編集・写真:ami)


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