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2019/09/12

リリース1週間で100件超の問い合わせ殺到。エンプロイーサクセスで組織を成功に導く方法

  • #起業ストーリー
  • #HRTech
  • #SaaS

スタートアップ最前線

古くから、組織研究の分野で重要なテーマの一つとして、従業員のモチベーションがある。

従業員のモチベーションと組織パフォーマンスには相関関係があるからだ。

会社勤めの読者なら、従業員の満足度やモチベーションを測るアンケート調査に一度は参加したことがあるのではないか。

しかし、実際の施策を結果に結びつけることは難しい。

従業員のモチベーションを経営指標にする会社は少なく、モチベーション管理は永遠の課題となっている。

そのような中、Boulder 牟田 吉昌CEOは、エンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」でAIを活用し、組織や従業員の課題をアンケートに頼らずに早期発見・解決しようと挑んでいる。

従来のサービスでは解決できない、独自の「秘訣」に迫る。

CONTENTS

従業員の成功は世界的な経営課題

近年、顧客の成功=カスタマーサクセスとともに、従業員の成功=「エンプロイーサクセス」を重視する機運が高まっている。

エンプロイーサクセス(従業員の成功)とは「従業員のウェルビーイングと自社の収益を両立させることを目指す概念」だ。

ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的に満たされた”幸福”状態を指す。

日本ではまだあまり馴染みのない概念だが、米国ではSalesForceなどのIT企業が人事部を「エンプロイーサクセス部」と名付けるなど、数年前から浸透している。

boulder employee success

(Boulder牟田氏発言、デロイトトーマツレポートを参考にami作成)

背景として、従業員のモチベーションが業績に比例することや、優秀な人材獲得競争が起こっていることから、人材への投資が大切と考える企業が増えていることがあげられる。

多くの企業は従業員の満足度・モチベーションや組織の現状を把握するために、アンケート調査を実施している。

しかし実際はアンケート設計、記入、回収、集計など運用にコストがかかる。

従業員のコンディションをリアルタイムに把握できないことに課題を感じたBoulder 牟田 吉昌CEO。「良い組織はエンプロイーサクセスから始まる」との思いから、日本初のエンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」を開発した。

boulder mutta profile

牟田 吉昌(むた・よしまさ)/ 株式会社Boulder 代表取締役CEO。新卒でリクルート入社、新規決済事業「AirPay」に従事。2017年11月、株式会社フラミンゴに取締役COOとして参画。2019年4月、株式会社Boulder設立。日本初のエンプロイーサクセスプラットフォーム「Well」の開発・運営を行う。

アンケート不要、リアルタイムで従業員のコンディションを把握

「Well」は、社内で利用しているコミュニケーションツールから、従業員や組織の課題を客観的に可視化。組織をエンプロイーサクセスへと導くサービスです。現在α版を提供しています。

boulder well

(画像:Boulder提供)

従来のサービスとの大きな違いは、リアルタイムに、自動で運用ができる点です。アンケートは基本不要です。

従来のアンケート型で組織の状態を把握するには、以下のような課題があります。

“アンケート内容は主観が入り、「アンケートに答えてください」と人事やマネージャーから言われてどうしても受け身になってしまう。また記入時間も長いため、面倒になって提出しない人や、適当につけてしまう人も出てきてしまう。せっかく集計・分析したアンケートの結果がわかるのも1〜3ヶ月後で、タイムリーに組織や従業員の課題が把握できず、対処が遅くなってしまう。”

boulder well update

従来のサービスと比較してWellがアップデートした4つの要素(画像:Boulder提供)

Wellでは、コミュニケーションツールからの分析に基づいているため、自分や組織の状態を客観的に認識できます。また集計のリードタイムもなく、結果も自動的に、リアルタイムでわかることが強みです。

コミュニケーションツールに十分な量のデータが溜まっていて、かつ異なるパターンを持っていればアンケートは不要です。

データが不十分な場合でも、感情や行動について聞く1〜2回初期アンケートをとる必要がありますが、以後はデータを紐づけ、アンケートは不要になります。

SlackのDMが増えると危険信号

組織・従業員の状態は、Slackのデータを元にAIが行動解析と感情解析を行うことで可視化しています。

分析指標はワーク・エンゲージメント、コミュニケーション、Slack稼働時間の3つです。

boulder well detail

ワーク・エンゲージメントは用いる単語本来の意味や文脈、意味づけの変化・用いる頻度、コミュニケーションは返信速度や用語を元に解析される(画像:Boulder提供)

Slackの行動・発言そのものよりも、変化によってコンディションの相関が見えます。

わかりやすい例で言うと、SlackでDMが増えると危ないです。ポジティブなことはオープンチャットで、ネガティブなことはDMで言う傾向がありますね。

あるいは「ありがとう」と良く言っていた人が、ある日から言わなくなるケース。今ちょっと疲れているかどうかが分かります。

感情解析の実例はこちらです。

boulder well analysis

Wellの解析事例。感謝、喜び、驚き、不安、怒り、焦りなどの感情がSlackの発言データから読み取れる (画像:Boulder提供)

この解析事例からは、「ありがとう」などの感謝の発言が多く突出して高いスコアが出ており、組織のコンディションは悪くない状態だとわかります。

今後、スタンプの解析なども視野に入れています。解析のモデリングは難しいですが、東工大出身で機械学習研究の博士である弊社中村CTOが頑張っています(笑)。

8月にリリースしたばかりなので、現在ファーストクライアントを募集しています

α版リリース発表で問い合わせ100件超え

リリース発表から、有難いことに100件近い問い合わせを頂きました。

ヒアリングから自分の仮説は確信していたのですが、世の中が本当にそう思っているかは不安があったんですね。想像以上の反響でしたが、興味を持つ方が沢山いらっしゃったことは嬉しかったです。

boulder well value

ヒアリングの結果、アンケート不要、リアルタイムに価値を感じるユーザーが多かった (画像:Boulder提供)

リリース前は、Wellが価値を発揮するのは数百人以上の組織だと思っていました。しかし、意外に30人〜100人の規模で急成長している会社からの問い合わせが多かったんですね。

急成長しすぎると事業と組織が追いついていない話をたくさん伺いました。

組織規模を問わず幅広く使えることと、人数が少ない企業でも早期に課題感を抱えていることが、問い合わせをいただいた結果わかりました。

boulder well query

問い合わせがあった企業規模と課題大小を軸とした分布図。100〜1000人規模の会社からの引き合いが多い (画像:Boulder提供)

問合せに対して、弊社メンバー大崎と2名で全員に対応しているのでお待たせして申し訳ない部分もあります。新サービスでお客さんの期待値も高いと思うのですが、できないことはできないと言うなど、背伸びしないことを大事にしたいと思います。

バリューの違いからCOOを退任

サービスに至るまでのお話を伺います。起業前にフラミンゴのCOOを勤めていましたが、なぜ独立したのですか。

理由は2つあります。元々起業の意志がありゼロイチを自分で体験したかったからと、バリューの違いが生まれたからです。

フラミンゴにCOOとして参画した時は、プレ・シリーズAの段階で創業初期の泥臭い部分を経験できなかった。ゼロからの立ち上げを、自分で体験したい思いが強かったことがひとつ。

もうひとつは、自分が大切にしているバリューと一緒にやっていくメンバーのバリューに違いが生まれたことです。

メンバーとも話し合い、このままバリューの違うメンバーがやり続けるよりも、自分が出た方がいいという結論になりました。

どちらが正しいか、正しくないかではないです。ロックバンドで言う「音楽性の違い」に近い感覚です。未だにビジョンはすごく共感しています。

とはいえ、取締役としてコミットすると言ったのに、自分がやりきれなかったのは事実ですし反省しています。

boulder mutta 1

マネジメント経験の失敗から起業アイデア構想へ

もともとWellのアイデアは構想していたのでしょうか。

退任の話し合いは2019年の2月に行い、正式に辞めたのは2019年3月末で、4月に株式会社Boulderを登記しました。

以前から起業は考えていましたが、フラミンゴの取締役を務めていたので当時は何で起業するかは考えていなかったですね。

退任してからは、課題を探すため自分の原体験を掘り下げながら色々な人と話し合いました。

Wellのアイデアに至ったのは、自分自身ペインを感じた経験がきっかけです。

フラミンゴでチームのマネジメントに失敗した経験があるんですね。マネジメントしていた大事なメンバーが退職してしまったことがあって。しかもあまり良い辞め方ではなかったので、辛い思いをしました。

自分自身も新卒で入ったリクルートで多忙な部署に配属されて、大変な時期があったんですよね。

そういった経験をふまえて言いたくても言えない従業員や自分の状況を、テクノロジーを使って改善できないか考えました。

自分自身がペインに感じていたことですし、まだ解決策もありません。自分のやりたいことが重なり「これしかない」と思いました。

自分の原体験だけではなく、多くの人が共通する課題にはどのように気づけたのでしょうか。

自分だけでは解決策を生み出せないと思っていたので、1日5回カフェに行ったりしてヒアリングをしまくりました。60人以上と会ったと思います。

従業員は「アンケートは負担だし、何に繋がるのかわからない」。マネージャーも「アンケートをどう使うか分からない」と、多くの人が同じことを言っていました。自分の仮説と一致したので、Wellのアイデアで行こうと決めました。

フラミンゴを辞めた後は、急に今まで追ってたミッションがなくなり、「どうしよう」と不安がすごくあったんですね。

目的があってやりたいと思うと人は行動しますが、目的がなくなると人は焦るじゃないですか。少なくとも私はそうです。

その不安に駆られたのと、限られた時間を無駄にしたくないという一心で行動しました。

朝から晩までヒアリングをして、ビジネスを考えては壊してを繰り返す。辛かったですけど、やらないと目的が出てこないので。

boulder mutta 2

投資家の決め手は「信頼」「共創」「ユーザー目線」

boulder investor graph

α版リリースとともに6,000万円のシード調達を発表しましたね。投資家はどのように決めたのですか。

「信頼」「共創」「ユーザー目線」が決め手です。

信じあえる相手かどうか、共につくっていけるか、ユーザーのために共にやっていけるかどうかを判断軸としました。

ジェネシア・ベンチャーズの田島さん、相良さんは3つを満たしていました。ファイナンスも決まっていないタイミングから、ユーザー体験(UX)含めて「ユーザーがどう思うか」を議論したんですね。

「この人たちと一緒にやりたい」と思ったので、そこから他のVCの方と会うのはやめました。カジュアルに十名以上とお話しましたが、正式にピッチをしたのはジェネシアさんだけです。

佐藤(裕介)さんは多くの事業経験から知見があること、佐久間さんは人として学ぶことが多くあることから、仲間になって頂きました。

boulder investor

(写真:Boulder提供)

カスタマーサクセスに注力し、はたらく「不」をなくす

最後に、Boulderが目指すゴールをお聞かせください。

α版では、まずはカスタマーサクセスに注力します。

目の前のユーザーに向き合い、ユーザーの課題を特定する。一緒に組織を良くするコミットまでやっていき、ユースケースをつくっていく。

今後はSlackだけでなく、Teams・Chatworkなどのコミュニケーションツール、GSuiteなど業務ツールにも対象を広げる予定です。

ただし、コミュニケーションツールの解析にとどまるつもりはありません。

我々は、はたらく中で抱える「不安」「不満」「不幸」等の「不」をなくしたい

日々の不安や不満を抱えると想像ができないし、夢を持てないと思うんですよね。夢を持てない世界って残酷じゃないですか。

「人は想像していないことは決して実現できない」。

このダ・ヴィンチの言葉にもあるように、人類が前進している時はいつだってなにか未来について想像し、想像したことを実現するために働いている時です。

すべての人がウェルビーイングな状態で、前向きに働ける世界の実現を目指します。

boulder mutta last

(聞き手:森敦子、編集:藤野理沙)

*情報開示:株式会社Boulderは、ジャパンベンチャーリサーチ代表の佐久間 衡の投資先です。


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