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2019/09/16

【Googleも参戦】民泊版「価格.com」の行方

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スタートアップ最前線

近年、旅行業界にGoogleといったグローバルIT企業が参入している。 複数のWebサイトを一括検索できる「メタサーチ」の領域だ。

民泊と組み合わせることでそのメタサーチ領域に挑むスタートアップがある。「StayList(ステイリスト)」だ。

民泊新法が2018年に施行され、「空いてる部屋や家を貸したい人」と「借りたい人」をマッチングさせる世界的サービス「Airbnb」に掲載される国内民泊数が一晩で約80%も減少した。

それからおよそ1年。回復する民泊の現在と「ローカルサービス」を活かした戦略をStayListの本間CEOにきいた。

CONTENTS

拡大する旅行EC

インターネットの普及に伴い、さまざまな領域でECサービスは成長を続けている。その中でも旅行は前年度比10%の成長をしており、国内だけで約3.7兆円(2018年)の規模である。

国内のBtoC-EC市場規模が約18兆円(2018年)からみると、旅行領域が約21%を占め、特定の単一セグメントでは最も大きい。

市場規模

旅行系ECの成長を牽引するのは、宿泊施設の予約仲介サイトであるOTA(オンライントラベルエージェントの略。インターネット上だけで取引を行う旅行会社)だ。国内企業としては楽天トラベルやじゃらんが、海外企業ではExpedia(エクスペディア)やBooking.com(ブッキング・ドットコム)などが代表的だ。

OTAへは新規参入も増えている。それにより、新たな課題が出てきた。「情報検索性の悪化」である。情報の絶対量が増えたことで、複数のOTAを行き来しないとユーザーは目的の情報を見つけることが難しくなっている。

メタサーチOTA関係図

その課題を解決する仕組みが「メタサーチ」だ。検索の際に項目欄に条件を入力することで複数のOTAのサイトを横断検索できる仕組みである。

消費者庁が行った調査によると、旅行予約時に約30%の人がメタサーチを利用して予約している。

サービス使用動向

参入プレイヤー増加の流れは民泊にも当てはまる。民泊の雄であるAirbnbに加え、楽天やRelux、一休.comといった企業が相次いで参入している。

一時は掲載数が約80%減少したAirbnbの物件掲載数も2019年2月には41,000件までV字回復しており、市況も盛り上がりを見せている。

再び勢いを取り戻している民泊業界だが、これからのビジネスチャンスはローカルサービスにあると本間氏は話す。

民泊サービスは1強になりえない

私たちが提供している民泊の一括検索サービス「StayList」は国内外合わせて10以上のサービスと連携し、300万程度の施設を掲載しています。

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本間 陽介(ほんま・ようすけ)/ 2016年に慶応義塾大学商学部卒業。在学中はリア(現Robust Design)にてインターンを経験した後、取締役に就任する。2016年に新卒としてリクルートに入社し、2018年に独立しStayListを創業。

有名なところで言うとExpediaやBooking.comといった世界最大規模の旅行サービスから、台湾でローカルな民泊サービスを展開しているAsiaYoといった様々な企業と提携しています。

別々のサイトに載っている民泊の情報を一括で検索できることで手間を削減できるのがStayListの提供価値です。

ビジネスモデル

民泊と言うと世界で600万件(2019年3月現在)を掲載するAirbnbをイメージされる方が多いと思います。

しかし世界2位の民泊サービスのHomeAway(ホームアウェイ)も新規開拓を強化しており、約200万施設を掲載しています。

他にも今までホテル予約を本業にしていたBooking.comやトリップアドバイザーも民泊領域を強化しており、Airbnb一強の構図が変わってきています。

リスティング結果

また世界各地で現地に特化した民泊サービスも増えています。理由は2つあります。

1つ目は、開拓スピードがローカル企業の方が早いことです。

民泊は民家を利用することもあり、現地での施設開拓が必要です。Airbnbもサービスを展開する国ごとに支社をつくっていますよね。

しかし支社をつくって開拓する方式は、人的リソースの制約といった部分で展開のスピードに限界があります。そのため、物件を確保しやすいローカル企業が相次いで民泊サービスを立ち上げています。

2つ目は、地域ごとの独自性に対応が必要なことです。

地域によって民泊の使われ方が大きく異なっているんです。例えば、東アジアの日本や韓国、台湾といった国の人は海外旅行の際に現地で民泊を使う人が多いです。しかし、東南アジアのタイやマレーシア、フィリピンなどは国内旅行で民泊を利用しています。

そういった違いによって地域ごとに高価なリゾート風の物件かリーズナブルで一定の質を担保した物件のどちらの開拓が必要かが異なってきます。

そういった地域ごとの問題からローカルサービスも勝負できるんです。日本では楽天LIFULL STAYが、台湾ではAsiaYo、ベトナムではラグステイといったローカルサービスが急激に成長している理由もこれらが関係していると思います。

メタサーチは民泊の「構造的負」を解決する

民泊サービスを提供しているプレイヤー数が増えると、ニーズに合った物件を見つけやすくなるメリットがあります。しかしプレイヤー数が一定以上多くなると、今度は検索の手間が増えるとデメリットも出てきます。

私も旅行が好きなのでよく民泊を利用します。その時、なるべくコストパフォーマンスの良い物件に泊まりたいので、現地のサービスやAirbnb、Booking.com(ブッキングドットコム)を見比べて検索していました。

ただお互いのサイトに情報の互換性はほとんどないので、異なる物件情報が出てくるんですよね。そこで、まとめて一括検索し比較したいと思ったのがStayListを始めようと思った最初のきっかけでした。

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(画像:BigTunaOnline / Shutterstock.com)

検索の手間を効率化する流れは海外でもあり、2010年にサンフランシスコではTripping.com、2014年にドイツでHomeToGoといったスタートアップが生まれ順調に成長しています。

これから民泊が本格的に成長してくるであろうアジアでも、同様のチャンスがあると思い起業を決めました。

国内の民泊市場も民泊新法の施行により2018年には一時的に約700億円まで縮小しました。しかしその後再び成長しており、2020年には2018年の1.7倍にあたる約1300億円規模になると見込まれています。

また、Googleといった企業も日本を含めたアジアの民泊を掲載し始めてきているので、これから民泊のメタサーチは盛り上がっていくと思います。

群雄割拠の民泊業界での勝ち筋

盛り上がりを見せているメタサーチ領域で、私たちが勝負するための戦略としては機能面での差別化を考えています。

今は検索する人の割合が多いですが、今後は検索ではなくレコメンドを望む人が増えてくると考えています。

カナダにHopper(ホッパー)という4,000万回以上ダウンロードされているメタサーチの旅行サービスがあります。

そのサービスの凄さは、レコメンド機能にあります。独自のアルゴリズムを活用して、行きたい場所を登録しておくと、値段が安くなったときに自動的にプランがレコメンドされます。ユーザーは手間のかかる検索無しに、待っているだけで安く旅行に行けるようになるんです。

たとえば温泉に行きたいとき、草津で探していても熱海で条件がより良い宿が安く取れるとなったら、そっちを選ぶと思うんですよね。

私たちもユーザーのニーズを的確に汲み取り、自動的にプランがレコメンドされる能動的な予約プロセスを強化していきたいです。そうすることで、サービスを使い続けてもらえるんじゃないかと思っています。

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(画像:ami)

もう1つは内部で予約が完結する仕組みをつくるつもりです。

メタサーチは検索したプランをその場では予約できず、別サービスに飛ぶ必要があることが多いです。これは本末転倒だと思っています。

手間を掛けたくないのに、飛んだ先のサービスに登録しないと予約できない仕組みは、快適なユーザー体験ではありません。そこで内部で予約が完結する仕組みにしていきたいと考えています。

大きな構想にはなりますが、取り組み自体はスモールスタートできるので、小さく進めて早いスピードで改善を繰り返し競合と差別化を図っていきます。

こういった新しい取り組みを実現するために、「ローカルサービスとの提携スピード」と「SEO対策」をして足元を固めていきたいです。

先ほど申し上げた通り、地域性が大きく関係する民泊はローカルサービスとのパートナーシップ強化がメタサーチサービスの有用性にも大きく影響してきます。

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(画像: dizain/Shutterstock.com)

StayListも現時点で8言語に対応し、10以上のサービスと提携しています。ユーザーも約60%が海外利用者で、韓国や台湾、タイ、マレーシアといった国の方に利用されています。

現在はまだアジア全域でメタサーチサービスを展開している会社はいないので、スピード感を持って展開できれば市場も大きいので生き残るチャンスはあると考えています。

起業当初は知名度が全くなかったので、提携依頼メールを送っても10%も返ってきませんでした。

他にも資金調達をしようとしていた時に、海外大手民泊企業と物件情報の掲載方法について意思疎通がうまくできないこともありました。業界のことをよく知らなかったことが理由です。

「このままその会社とうまくいかなかったら、ピポットした方がいいかも」と考えたこともありました。考えすぎて寝れないことも多々ありました(笑)。

そんな状況にあっても泥臭くスピードを落とさずに提携できたのが今につながっていると思います。

SEOも差別化になる部分です。多言語対応のSEOは難しく、例えば民泊を英語で言えない人がほとんどだと思うんですね。

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(画像:StayList公式ページ)

英語だとvacation rentalと言うのですが、日本語に直訳すると「休暇賃貸」となり全くニュアンスが違ってしまいます。

同じことが全言語で生じるので、タイ語、マレー語、インドネシア語などそれぞれの言語に対して適切な意味となるように対策しなければいけません。

この作業は大変でしたが、初期にやり切れたのは大きいと思っています。

まずはしっかりと提携とSEOをやりきり、ユーザーが「気付いたら民泊検索で使っていた」状態にしていきたいです。

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聞き手:松岡遥歌、文:町田大地


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