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2019/08/08

1年間売上0からの逆転劇。「才能の視える化」を求めて見つけたスタートライン

  • #起業ストーリー
  • #HRTech

スタートアップ最前線

OKR(Objectives and Key Results)をご存知だろうか。GoogleやFacebookといった世界で存在感を示している企業が採用する目標管理手法だ。

日本でも先日上場したメルカリを始め、IT企業を中心に導入する企業は増えている。

しかし、日本企業に十分に浸透しているとは言い難く、言葉自体を知らない企業もある。知っていてもナレッジ不足から運用が難しく、導入を止めてしまうことも少なくない。

そのOKRを地方の中小企業に導入する仕組みjoinnyを提供している企業が「株式会社まつりば」だ 大企業に比べて人的リソースの余裕がある訳でもなく、少人数で多拠点に分かれている場合もある。その状況でOKRを浸透させるのは容易ではない。いかにして浸透させるのか、その仕組に迫った。

CONTENTS

OKR × 人の力 = Joinny

Joinnyとはどのようなサービスですか。

まつりばCEO 森さん(以下、森) 社外メンター伴走型の従業員育成オンラインサービスです。OKRをベースに、専用のチャットを通じて、従業員の皆さんが気持ちよく働ける環境や成果が出やすい状態にメンタリングを行うことが大きな特徴です。

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(出典:Joinny公式資料)

Joinnyのメインターゲットは地方の中小企業さん。特に、工場や支店など拠点が複数に別れていたり、1つの拠点に本当に数人しかいないような企業が対象です。

中小規模で多拠点展開する経営者の多くは、育成制度の未整備、普段顔を合わせない社員との関係性構築の難しさ、などの課題を抱えています。そこで働く社員の方々も、誰に相談していいのかわからない漠然とした不安を感じていることも多い。そういう状況を放置してしまうと、あっという間に「働きづらい職場」になってしまいます。

森さんプロフィール

森 真悠子(もり・まゆこ)/ 在学中に経産省インターネット博覧会のプロジェクトメンバーとして参加。NTTドコモ入社。imodeのサービス開発に従事しながら、週末に音楽や演劇の子どもワークショップを運営。2007年ベネッセコーポレーション入社。高校生の進路支援のWEB事業・大学広告事業開発に従事。2014年7月株式会社まつりば設立。(画像:ami)

そこに「斜め上の先輩」としてJoinny専属メンターが介在することで、経営層と現場のコミュニケーションを円滑にし、誰もが活躍できる環境をつくろうとしています。

社外メンターを介在させる理由は。

地方の中小企業であれば、社員の7割は高卒採用ということも珍しくありません。 大学で就職活動を経た方には信じられないかもしれませんが、高卒採用の特徴は「一人一社制」。学校側が生徒一人ひとりに就職先を斡旋するのですが、紹介先は1社のみ。内定が出たらそこで終了です。

もちろん生徒全体の就職率の向上や地元人材の獲得など、ポジティブな面もあるのですが、就職する生徒側からしてみれば「働く場所を自分で選んだ」感覚は乏しい。

さらに自己分析やキャリアについて思考を深める前に就職先が決まるため、実際に社会人として働き始めてもなかなか能動的になれない実態があります。

もちろん経営者としては彼らに長く働いて欲しいと願っているのですが、全員が全員マネジメントのプロではないですし、コストをかけづらいのも現実。

例えば、先日新卒2年目の方から「1日のスケジュールの立て方を教えてほしい」という質問が来ました。

営業であれば、「午前中は社内で打ち合わせ、14時からアポイントがあるからその隙間に資料作成時間を設定しよう」となりますが、そういう感覚って先輩のカレンダーを見ながら学んでいきませんでしたか?

ただデスクワークがない企業では、まず共有カレンダーの文化すらないところがほとんど。とりあえず1年目がむしゃらに働いて、2年目で少し時間が出てきたときに「あれ、スケジュールって...」となる。 そこで先輩や上司にすぐ聞けるような環境であれば良いのですが、いまさら先輩にそんなこと聞けないって言うんですよ。

斜め上の先輩をつくりなさい、とよく言いますが、少人数かつ多拠点で働く彼らにとってはそれも難しい。そういう状況下において、全く、評価には関わらない第3者の社外のメンターとしてJoinnyが介入する価値はとても大きいと考えています。

OKRだけでは実現できないのか。

OKRを適切に機能させるのって本当に難易度が高いんです。

まずOKRを決めることが難しい。スケジュールの立て方さえ分からないのに突然「あなたのwillはなんですか?」と聞かれたところで答えられる可能性は低い。

マネジメント層にも課題はあります。会社の目標から始まり、部門、チーム、個人とブレイクダウンしていく、その因数分解って想像以上に難しくて、マネージャーだからといって誰でもできるわけじゃありません。何よりスケジュールの立て方さえ聞くのに戸惑う関係性で、OKRが機能するわけがない。

現場だけじゃなく、マネジメント層の双方に人的アプローチをしていくことが、とても重要なんです。

起業体験から生まれたα版、その盲点

今回はJoinnyが生まれるきっかけとなった「StartupBaseU18」のインターン生でありながら代表を務める水門さんにもお越しいただいています。まずStartupBaseU18とはどういうものでしょうか。

まつりば 水門さん(以下、水門) 10代を中心とした若年層向けの起業体験プログラムで、初めて出会った仲間たちと無我夢中に世の中に新しいサービスをつくり出そうと、企画の立案からチームビルディング、ユーザーヒアリング、プロトタイプの作成と改善など、実際の起業と同じような体験を2日間に詰め込んでいます。森さんが立ち上げた事業ですが、現在は学生のインターン中心で運営しています。

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(出典:StartupBase公式HP)

私たちはオフラインの場事業とよんでいますが、教育系の会社に勤めていた経験から、もっと個々人の才能を引き出し、多様に発揮できる社会をつくりたいと始めたのがこのStartupBaseです。

各所の反応もよく手応えも感じていたのですが、より多くの人に届けることの壁にぶつかっていました。毎回スタッフがいろんなところに行って、その都度人を集めて、というやり方ではスケールさせるのは難しいな、と。

StartupBaseで世界中のスタートアップの実例を調べたり、リーンスタートアップの話をする中で、どうにかしてこの場事業のバリューをWebサービスに展開できないかと考え続けて生まれたのがJoinnyのα版でした。

α版の時点でチャットメンタリングサービスだったのか。

いえ、全く違います。

バリューを生かすというよりは、才能の顕在化に重きをおいたのが一番最初のプロトタイプです。現在でいうポートフォリオの改良版みたいなもので、既存のポートフォリオに加え、他者から評価、行動特性を1枚にまとめられるのが特徴でした。

現在も尽きない話題ですが、履歴書の問題ってたくさん指摘されていますよね。あの紙1枚ではキャラクターが全く見えてこないし、会ってみたらイメージと違うとか。 そういう問題点の解決策として、新しいインタラクティブな履歴書をつくり、採用ニーズにあわせたマネタイズを考えていました。

水門 採用される側のいち学生として、Joinnyでポートフォリオを作成し、当時住んでいた800人以上が生活する学生寮で普及活動を行った結果、コミュニティの相互理解ツールとしてはワークしたものの、全くお金にならなかったのが現実でした。

水門さん

水門 菜花(みずかど・なのか)/ 大学ではコンピューターサイエンスを学ぶ。joinny(学生向けポートフォリオ作成サービス)、academist(学術系クラウドファンディングサービス)の2社のスタートアップでインターン中。様々な教育プロジェクトでも活動。(画像:ami)

当時営業先の採用担当者からは「で、そのデータベースには何人いるの?」と言われました。個人のキャラクターや才能を顕在化させることをバリューにしていきたかったのですが、いざ就活という文脈にのってしまうと、データの質よりも量に重きが置かれます。

1年間売上0の状態で、もう何社営業に行ったかすら覚えていませんが、当時はまさに躁鬱状態でしたね。起業家あるあるかもしれませんが、「いける!」と思う瞬間もあれば、「あー、もう絶対これだめだ」「このつくったもの全部だめなのかな」の繰り返し。

渋谷・代官山間を歩くことすらままならない状態でした(笑)。

ただ営業行脚を繰り返していく中で、当初は気づいてすらいなかった市場ニーズがみえてきたんです。新規採用の前に、既に働いている従業員の活かし方に悩んでいる経営者やマネジメント層が多くいて、そのフィールドこそJoinnyが生きる道ではないか、と。

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(画像:ami)

その発見が、現在のチャットメンタリングサービスへのピボットに繋がったのか。

私が考えるピボットとは、コンパスの軸を変えないまま、プロダクトや販売方法を変えること。JoinnyやStartupBaseにおける軸は、才能を顕在化したい、それだけでした。

なので、正直1割もプロダクトは変わっていません。変わったのはターゲットと打ち出し方。ピボット後、社内コミュニケーションやインタラクティブな部分で問題を抱えている方が多かったので、社外メンターとのチャットメンタリング機能を追加したかたちです。

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現在のJoinnyのメイン機能紹介(出典:Joinny公式資料)

森さんのwillから始まった事業が、営業活動というニーズヒアリングを通じてユーザーに受け入れられ始めたように思える。α版の前にニーズヒアリングはしなかったのか。

めちゃくちゃしていました。しすぎ!と言われるくらい。ただ今振り返ってみれば、ヒアリングする相手が違っていたのだと思います。

ポートフォリオ自体は今も機能として残っていますが、これは学生やエンジニアなどエンドユーザーからの受けはとても良かったんです。

けれど、実際に採用に関わるのは人事。そして採用ニーズって会社ごとに千差万別だという当たり前の事実がちゃんとくみ取れていなかったんじゃないかなと思います。

誰もが「Join」できる未来のために

StartupBaseとJoinnyの今後は。

水門 StartupBaseはこの度CAMPFIREさんと提携し、CAMPFIRE YOUTH(キャンプファイヤーユース)という、もっと10代の子たちのクラウドファンディング利用促進やアイデア実現のサポートを行っていきます。

また堀江貴文さん主宰のゼロ高等学校とも提携し、優秀なアイデアを持っている高校生は、さらにCAMPFIREユースでプロジェクト実践までフォローアップすることが可能になりました。

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(出典:SNS education株式会社公式リリース)

Joinnyはようやくスタート地点に立ったばかりで、メンタリングの部分でAIを活用していくなど、機能開発もまだまだ長い道のりがあります。

一方で、これだけ自己成長が社会的にも大きなキーワードになっているなかで、才能を顕在化させる決定版みたいなサービスって未だ無いんですよね。その難題をJoinnyがクリアさせることが出来たら本当に素晴らしいことだなと思っています。

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文・写真:ami


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