「目指すのは、チーム一体型採用活動ができるようになることです」
こう語るのは「すべての人をより輝かせる」をビジョンに掲げる株式会社Carat代表の松本直樹さん。同社は、求職者向けにAI転職マッチングアプリを、企業向けには転職者採用ツールGLITを提供しており、2019年5月にプレシリーズAラウンドで資金調達を実施した。
求職者はプロフィールにあった求人情報が自動的にレコメンドされ、企業側は採用候補者の洗い出しが自動化されているため、求職者・企業双方にメリットがあるサービスだ。
GLITで企業に提供したい新たな価値と、資金調達に至るまでの最大の苦労についてお聞きした。
AIを活用し、求職者・企業の採用活動を効率的にサポート
GLITはどのようなサービスですか。
GLIT 松本さん(以下、松本) GLITはAIを活用し、求職者と企業双方の効率的な転職・採用活動を支援するマッチングサービスです。
求職者には、スマホで転職マッチングアプリを提供しています(iOS・android)。プロフィールに合わせてパーソナライズされた求人情報が自動でレコメンドされる仕組みです。
通常求職者の方は求人メディアで能動的に検索しますが、GLITではスマートニュースさんやグノシーさんのように受身で情報を受け取れます。それによってあまり時間をかけずに、良い会社からオファーをもらって採用が決まることが可能になります。
(出所:GLIT資料)
企業向けには、転職者の採用ツールを提供しています。効率的なスカウト活動が可能な採用サービスとして、現在200社前後の企業にご利用頂いています。
求職者の洗い出しプロセスすべてを自動化しているので、運用工数がかなり低いサービス設計になっています。
通常だと、人事や担当者の方がスカウト対象者の洗い出しに多大な時間をかけているケースが多いので、自動化でできる部分は評価をいただいています。
また、レコメンドされた求人情報に対してユーザーが興味を持った企業のみスカウトを送れて、かつ温度感が高いタイミングでスカウトを送っているので、開封率が高いことも特徴ですね。
(出所:ホームページ)
全社一体型採用活動を可能にする「Slack連携」
企業向けにはサービスを導入して終わりではなく、実際の採用まで寄り添う形なんですね。
成果報酬モデルで導入を進めているので、お客様の採用がうまくいくことが私たちのゴールにもなっています。
導入までは決裁者や人事の責任者の方とお話してスムーズに進んでも、運用する人事・採用担当者の方に使ってもらうのが難しくて。
初期のオンボーディングでつまずいている企業さんが大半で、実際にサービスを使ってもらうところに課題を感じていました。
導入推進者と実際運用する方が違うと、認識の齟齬がずれたりゴール設定があいまいになったりするので、今はオンボーディングに力を入れています。
キックオフミーティングを設定し、採用チャネルや採用の体制などをしっかりヒアリングした上で、私たちの方で一次フィルタリングやスカウトを送ることなども積極的にやっています。
企業側のプロダクト改善にも取り組まれたようですが、具体的にどのようなことを行いましたか。
チャットツール「Slack」との連携を開始し、管理画面上にアクセスしなくてもSlack上で候補者の確認やスカウトの送信ができる仕組みを整えました。
ターゲットのセグメントを明確に決めたことも大きかったですね。ターゲットとしたのは、自社サービスを持っている成長中のIT系企業で、月1人以上採用していそうな採用ニーズが高い企業。 メインターゲットの企業はSlackを使っていることや、既存のお客様にしっかりヒアリングをした結果、Slack連携のニーズに気づき開発に踏み切りました。
(出所:GLIT資料)
Slack連携をした狙いは、チーム一体型採用活動ができるようになることです。つまり、採用担当だけでなく、採用に関わる全ての人が自社に興味を持ってくれている人材を見てスカウトを書いてもらえるようにすることです。
今は採用担当の方がメインで使っていただくケースが大半ですけど、例えばベーシックさんは社長が使ってくれているんですよ。
マーケットの流れがすごい変わってきていて、たとえば、エンジニアの方だと引く手あまたで、人事を通していると選考のプロセスが伸びますし、リードエンジニアやCTOの人からスカウトを送ってもらったほうが結局、よりスムーズに採用活動を進めることができます。
(出所:GLIT資料)
Slack連携をすることで、実際に使っていただく機会が増えましたし、今後よりスピーディーに採用活動ができると思います。
採用とファイナンスのバランス
今後、事業として優先度高く対応すべきことは何ですか。
GLITで採用が上手くいった成功事例を多く出すことです。
この半年間は企業側のプロダクト改善にフォーカスしていたので、今後はより求職者側の方にフォーカスしていきたいですね。
求職者側では、Web版をクローズしてスマホだけにフォーカスすることを決めました。 ほとんどスマホで使われていたことと、開発のリソース上Web版のアップデートを続けられなかったことが大きいです。
クローズによって事業的にデメリットになったポイントというのは、今のところあまりありません。
リソースが限られていますから、やらないことを決めることはスタートアップ的に大事だと思うのでよかったと思います。
ここ最近の最大の苦労はなんでしたか。
資金繰りなどファイナンス関連に尽きます。
アーリーステージ、シリーズAあるあるかもしれませんが、人の採用と資金繰りのバランスが難しくて。
採用はやはり時間がかかるので、いい人に早めに声をかけながらも、お金のことを気にしていました。キャッシュフローの転換点のタイミングで結構いい人が現れちゃったり(笑)。
なので、ファイナンスと会社の状況を説明した上で「このタイミングでジョインしてよ」とオファー手前まで話していました。
経営者にとって採用は重要です。良い人材を見逃す方が機会損失だし、最悪何かあったら自分で何とかしようと思って覚悟を決めていました。過去2回そういう場面があり、半年間で一番ヒリヒリした経験でしたね。
現在人材募集中とのことですが、どういう人と一緒に働きたいですか。
いま会社は7名体制で、プロダクトサイドが4名で、CTOと副業エンジニア2名、副業デザイナー1名。ビジネスサイドは3名で、私とセールス、マーケターです。(※2019年4月現在)
今募集しているのは、カスタマーサクセスができる方ですね。 お客様のサポート、オンボーディングからコンサルに入って、ゴール設計を一緒にしながら伴走できるような人と一緒に働きたいです。
文・写真:ami