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2019/09/15

「レシピのない」料理教室が子どもの創造力を豊かにする秘密

  • #起業ストーリー
  • #EdTech

スタートアップ最前線

料理を活用して教育をアップデートしようとしているスタートアップがある。

その企業が提供するサービスは「ハクシノレシピ」。

サービスは「自宅に料理を教えてくれる先生が来て、子どもと一緒に料理を作る」というシンプルな仕組みだが、そこには脳科学的に裏付けられた他にはない工夫がある。

日本の教育では正解に沿って行動することが良しとされることが多い。しかしハクシノレシピでは、あえて正解をつくらないことで自由な発想をしてもらう形をとっている。

なぜ正解をつくらないことが重要なのか。株式会社Hacksii 高橋CEOに、「普通ではない」料理教室の秘密について聞いた。

※本記事は、2019/3/7に公開された記事2019/3/29に公開された記事を再編集し、公開したものです。

CONTENTS

なぜ起業したのか教えてください。

ハクシノレシピは、一言で言うと「子ども向けの出張料理教室」です。一般的な料理教室と違い、全て子どもが主体的に考えて実践していく、アクティブラーニング の学習方法を取り入れています。 更に、家庭での取り組みのサポートも行うことで、子どもの教育だけではなく、保護者の方にも勉強になると言っていただいています。

プロフ

髙橋未来(たかはし・みく)/ 新卒でIT企業へ入社したのち、幼児教室で講師として勤務を開始。その後介護事業会社の人事職を経て2018年10月からハクシノレシピを提供開始。

アクティブラーニングとは、学習者である生徒が主体的に行動して学ぶスタイルのことを指しています。

現在の学校教育では先生が生徒に教える一方通行の学習スタイルが多いですが、そうではなく生徒が主体的に学習するのがアクティブラーニングです。

まだアクティブラーニングというワード自体をご存知でない方も多いと思いますが、2020年に行われる教育改革で学校教育にも取り入れられると言われています。

他の料理教室にはない決定的な違いがあります。

サービス名であるハクシノレシピの「ハクシ」には真っ白な紙(白紙)と博士という2つの意味が込められています。

私たちのサービス独自の特徴は「レシピも使わなければ、作るメニューも決まっていない」という点です。白紙の紙に、子どもたちが博士のようにアイディアを書いて、自分たちでレシピを発明するという意味を込めてハクシノレシピというサービス名にしました。

一般的な料理教室では、その日につくる料理の材料が用意してあり、筋書き通りにつくっていくのが一般的かと思います。

しかし私たちの場合は、冷蔵庫を開けて、どんな食材があるかを子どもに確認してもらってから、「冷蔵庫の中のものを使って、どんなものができるかを子どもに考えてもらう」スタイルを取っています。

つまり正解をあえてつくらずに、自由に料理を作ってもらう形になっています。 その結果、毎回とっても素敵な発明レシピが生まれるんですよ。

「選ばれなかった」経験が私に与えた影響

この形にしたのは、自分の幼少期の経験と、幼児教室で勤務をしていた時に感じたことが大きく影響しています。

わたしが幼稚園のときにお遊戯会でお姫さま役に立候補したのですが、最終的に先生のお気に入りの女の子がお姫さまになり「自分はなれなかった」経験をしました。

それがすごく悔しかったんですよね。

今思えば些細なことですが、小さい頃の私は「自分は認められなかった」と悲しい気持ちになってしまいました。大人になってからも、時々思い出して自分に自信を持てなくなってしまうこともありました。

その経験から、幼少期の体験はその後の人格形成に関わってくると身を持って感じました。だからこそ子どものうちに、たくさんのポジティブな経験をして欲しいと思っています。

そんな想いがあり、私は新卒でIT企業に入社しましたが、1年半で退職をし、幼児教室で講師として勤務をすることにしました。

そこでは0歳〜小学校4年生までの各クラスの担任を持たせてもらい、約100名の親子に関わってきました。

ある日の小学校1年生のクラスで、みんなに手をあげて発言してもらうように促すと、シーンとしてしまって誰も発言しなかったんです。 その理由を尋ねてみると、「間違えたくないから答えたくない」と7人クラスの全員が口を揃えて言いました。

これは正解しなければならないという社会の価値観が原因で、それを押し付けてしまっている大人のせいだと強く反省しました。

だから、子どもたちが「失敗をしてもいいから自由に発想してチャレンジしてみよう」と思える環境を作る必要があると思い、起業したんです。

褒めることに本質的な意味はない

褒めることで自信をもたせるということですか。

褒めること自体に本質的な意味はありません。褒めるというより、1人の人間として子どもを尊重してあげることが何よりも大事だと思っています。

子どもの自由な発想で料理をしてもらうので、保護者の方が思いもつかなかったような料理が生み出されることが多々あります。

子供の料理

(画像:ハクシノレシピ公式資料)

これは、小学校1年生の女の子が作ってくれた、「お花畑タワー」という作品です。 私たちは出来上がった料理のことは、作品と呼んでいます。

この写真の黄色いもの、なんだと思いますか?実は、菊の花なんです。

菊の花がお花畑のように見えることと、サンドイッチをタワーのように盛り付けたのでこの作品名にしたそうです。

この日のレッスンではお買い物にも一緒に行ったのですが(※オプションでお買い物も可能)、黄色い野菜を探しに行こう!と言っていました。

実際にスーパーについて黄色い野菜を探して、まずパプリカを手にしました。次に菊の花を見つけて、そっちにしたんですよね。

実はこれにはエピソードがあったようで。 この日のレッスンの前の回で、この子はピーマンをサラダに入れたそうなんで、お母様が「ピーマンはサラダじゃない方がいいな」ってリクエストしたそうなんです。

それを思い出して、パプリカとピーマンの形が似ていたことから、パプリカではなく菊の花を選んだとのこと。

お母様のことを想って食材を選ぶって、とっても素敵ですよね。(ピーマンとパプリカは味が違うということはお食事の時の話題に上がっていました)

何より、菊の花って絶対に大人じゃ選びませんよね。そもそもこんなに大量に使わない。笑

子どもの発想は、本当に素晴らしい。まさに、博士のようです。

この日、他のご家族は声を揃えて「こんなの自分じゃ考え付かないな〜。本当にすごいね!」言っており、生徒さんはとっても嬉しそうにしていました。

この子は3ヶ月ご利用いただいていますが、ご家庭で「お料理って楽しい〜、大好きになっちゃった!」と言ってくれているようで、普段習いごとに熱中することがないとのことで、ご両親がとても驚いていらっしゃいました。

少し話がそれましたが、このように褒めることが子どもの自信に繋がることは間違いありません。しかし、ただ褒めればいいわけではありません。

例えば包丁を使う際に危険があった場合など、包丁を使えて偉いねと褒めるのは人として見下していることになると思います。

頭ごなしに注意するのではなく、包丁の刃を触ったらどうなる?と言ったように、なぜ包丁を扱う時には慎重にすべきなのか、などをきちんと考えてもらわなければ意味がないんです。

きちんと注意することが、人として尊重することですし、その子の成長にも繋がります。

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(画像: GUNDAM_Ai/ Shutterstock.com)

また注意をすることで、「なんでそれがだめなのか?どうして自分は注意されたのか?」を子どもが考えるきっかけを作ることができます。

いかなる時も、子どもに考えさせることが重要なのではないでしょうか。

ハクレピメソッドの「秘密」

そもそもなぜ挑戦する領域として料理を選ばれたのですか。

「料理は頭をフルに使う」という仮説を私が持っていたからです。

新卒で初めて一人暮らしを始めたときに、お米の炊き方も分からずコンビニ弁当ばかり食べていたところ、1カ月で5kg太ってしまいって(笑)。このままではマズイと意を決して自炊を始めました。

自炊をやってみると限られたスペースで、限られた食材を使って作るものを考えるので、頭を非常に使うことに気が付いたんですよね。

更に幼児教室で講師をしている際に、右脳の発達には五感の活用が重要であると学んだので、五感をフルに使える料理って、とても子どもの教育に良いのではないかと思いました。

そこで私たちのサービスを利用している子供の脳の活動を料理中に観察したところ、「考える力を司る前頭前野の活動を活発化する」データが得られました。

脳科学結果

(画像:ハクシノレシピ公式資料)

また脳科学的に、継続することでより高い効果が期待できるというエビデンスも出ています。定期的に月2回以上ご利用いただければより高い学習効果は期待できると思います。

具体的にレッスンはどのような流れですか。

1回のレッスンは子どもに料理を考えてもらってつくるところまでで2時間を予定しています。そこにお買い物をプラスすると、プラス1時間で3時間になります。

お買い物といってもレシピはないので、お子さんと買うものを作戦会議をして決めます。

まず冷蔵庫に「どんな食材があるか」をお子さんに確認してもらい、それらの食材を使って何ができるかを絵や言葉で表現してもらい紙に書いてもらいます。その後「他になにが必要か?」を一緒に想像してお買い物するものを決めます。

料理シート

(画像:ハクシノレシピ公式資料)

また、無理に子どもを料理に集中できることもしません。

それこそ、1回目の料理教室では1時間も集中力が持たず、キッチンから脱走しておもちゃで遊んでしまうことはよくあります。

しかし、繰り返し取り組むにつれて、集中できる時間が増えていき、3回目ぐらいで大きな変化がみられます。

というのも、一連の流れを3回繰り返すことで、「どういったことをやるのか」が自分の中にインプットされ、「この場面ではこうする」という思考プロセスが身につき、その成功体験から自分自身にも自信がつきます。 そうするとさらにできることが増え、料理も含めチャレンジが楽しくなっていき、自然に集中できる時間が長くなっていくのです。

私たちのサービスは、料理のプロになってもらうためのサービスではないので、料理を好きになることがゴールではなく、子どもが自信や創造性を持つためのプロセスを作ることに重きを置いています。

「保護者の方の価値観も変える」

自由な発想を子どもができるようにするには、保護者の方にも考え方を理解していただく必要があります。

2020年には学校教育において大きな教育改革が行われますが、それをきちんと理解している保護者は10%もいないというアンケート結果が出ています。

残りの90%の方々は理解していないために、今まで通り「正解があることが当たり前」という価値観でお子さまと接してしまうと思います。

理解していたとしても、急に価値観を変えるなんて無理な話ですよね。

ミッション

(画像:ハクシノレシピ公式ページ)

ハクシノレシピを通して正解通りがすべてではないことを保護者にも理解してもらい、そのうえで子どもへの接し方を一緒に考えてもらうこともミッションの1つとしています。

その点でも料理は適しています。

保護者に「正解どおりが全てではないことを踏まえた上で子どもと接してください」と言っても、どうすればいいか悩んでしまう人が大半ではないでしょうか。

しかし料理ならば、お子さんが考えて自由に作ったものを褒めることで、お子さんを肯定してあげられます。

「正解通りじゃなくても、素晴らしいんだ」という価値観を保護者も簡単に体現できます。その意味で、料理は既存の価値観を排除し、新しいものを形成することに適していると思っています。

だからこそ、私たちは保護者に対するサポートも行います。 レッスンの方針は初回のレッスン前に事前カウンセリングを行い、保護者の方と決めていきます。 また、LINEを使っていつでも疑問を解消できるため、家庭での取り組みのアドバイスも。

幼児教育は、子どもだけではなく、保護者も、(そして私たち運営者も)共に育っていく「共育」という概念であるべきだと考えています。

文末記事

聞き手・文:町田大地


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