## 設立5年で2号ファンド、IT融合・医療領域に強み

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### 慶應義塾大学VCの成り立ちについて教えてください。

慶應イノベーション・イニシアティブ（KII）は慶應義塾大学（以下、慶大）と野村ホールディングスが共同で2015年12月に設立したベンチャーキャピタルです。2016年7月から45億円の1号ファンドの運営を開始しました。

もともと慶大とは個人的にも会社としても関係性がありました。共同創業したグリーが上場した後に私が個人的に母校である慶大に寄附をしていたほか、会社としてはグリーでインターンをした学生が単位を取得できるプログラムや、研究を支援する奨学金の提供もしていました。また、2014年ごろから、慶大だけでなくほかの大学発スタートアップに出資するなど、個人として研究支援をしていました。

国立大学では大学発スタートアップに支援する仕組みが整っていましたが、当時慶大ではその仕組みがないように見えました。そこで慶大の執行部に提言したところ、ちょうど野村證券とVCを進めている段階で、それを手伝う過程で代表を打診されました。

技術系を始め、ライフサイエンス領域など研究開発型スタートアップには魅力を感じていました。自分だけでやっても土地勘がないですが、大学と組むことで人材の採用もできますし、知らない分野でもやれると思い代表を引き受けました。

タイミング的にも大学発スタートアップを支援しようとする動きが金融機関を中心に高まっていたので、資金集めも無事に行うことができました。2021年1月に2号ファンドを103億円でクローズし、1号ファンドと合わせて148億円を運用しています。

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### 投資先の技術に関する目利きはどのように行なっていますか。

大前提として、技術の実現の可能性が高いものに投資しており、科学的に実証されていないレベルの技術にはほとんど投資しません。技術の競争力があるか、顧客への提供価値があるかに加え、競合の有無などを見ています。確定しているある技術をもとに特定の市場でやりたいという仮説が起業家側にあるので、その仮説の妥当性を見ていますね。自分たちでわからない場合は専門家に聞いています。

## 100億円集めた次世代バッテリー企業、APB創業に携わる

### 具体的にどのように投資先の支援をしていますか。



私たちの投資先で最も評価額が高い、次世代リチウムイオン電池製造のAPBを例に説明します。

そもそもAPBは東証1部上場の化学メーカー、三洋化成工業と共同研究していた慶大から事業を分離し、新会社として設立しました。創業者で慶大特任教授の堀江 英明氏（現APB CEO）からスタートアップとしてやりたいとの要望があったので、創業時から資本政策の支援を行なっていましたね。

APBがつくる全樹脂電池は、大型化しやすい、安全性が高い、コストが安いなどの特徴がありました。ほかの技術と比べても競争力があり、量産までの時間軸を考えてもあと1〜2年で100億円集められれば事業になると考えて投資しました。

APBはこれまで約100億円を調達していますが、KIIキャピタリストの木下（秀一氏）が資金調達の提案も全て同行するなど、絶えずサポートしてきました。今でも週1日はAPBのサポートを行なっています。木下はジャフコで執行役員を務めた経験があり、バッテリー事業に知見があります。リード投資も行い、かなり中に入って支援しましたね。

ほかにも、創薬バイオのクリングルファーマについては資金不足に陥りそうな段階で投資し、以降の資金調達ラウンドを取りまとめました。海外のバイオカンファレンスにも同行し、後には海外バイオスタートアップとのライセンス契約の締結にもつながりました。結果的に、クリングルファーマは2020年12月に東証マザーズに上場しています。

細胞治療開発のセルージョンも創業初期から支援しています。セルージョンは慶大医学部発で、研究者の羽藤（晋）さんが起業したのですが、CxO人材を採用する段階では会社のホームページもありませんでした。ビジョンやミッションの大切さを伝え、何をやるか、どんな会社かを一緒に言語化していきましたね。おかげでCxOの採用にもつながりました。

このように主に資本政策、コーポレート機能、事業開発面でスタートアップを支援しています。ビジネス系の人材が鍵になることが多いです。

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### 研究開発系スタートアップ支援にはどのような人が向いていますか。

研究開発系のキャピタリストは__技術、ビジネスの両方を知ることが求められます。__そのため、これまでKIIでは自分たちが強みを持ちたい領域にフィットして、かつ能力が被らない人を採用してきました。特に医療・ヘルスケア領域では製造、開発、マーケティングなどバリューチェーンによって必要な知識が異なります。全部理解していないと投資判断がしにくいので、バイオ、薬学系、通信領域などの専門性を持った人材を採用しています。

ビジネスがわかる人材は投資先にも必要です。投資先には研究のバックグラウンドがある人が多いですが、営業やマーケティングなど事業を形にする人材、PR、IR、財務などコーポレートの専門人材が足りていません。

ディープテック企業は社会性のある会社が多いです。そこに意義を感じて外資系やコンサルティングファーム出身者など、流動性の高いビジネス人材がもっと飛び込んでくれれば変わると思います。

## ディープテックの発展には、資金がまだまだ足りない

### ディープテックのさらなる発展には何が必要でしょうか。

__資金がまだまだ足りていません。__もちろん以前に比べてこの領域は注目を浴びていますが、100億円を超えて調達するディープテック企業は少ない。いま日本で100億円を集めようとすると、VCだけでは足りず、事業会社を集めないと難しい。対して米国では1ラウンド、VCだけで100億円近く調達する会社もあります。

社会課題を支えるスタートアップには資金が必要です。そのためにも、まず資金の規模を大きくしないといけません。ミッション、ビジョンがあって資金があれば、良い人が採用できて人材の課題も解決できます。

資金だけでなく、協業などによる事業会社からの支援も重要です。ディープテックはITと異なり、仕入れ、開発、生産、販売などバリューチェーンが長いのでスタートアップで全部をカバーするのは難しいです。技術はスタートアップが担当し、ほかの工程で事業会社と連携して量産していくなどの体制をつくることが、結果的に事業の成長につながると思います。

事業会社とディープテック企業の協業は、表に出ないだけで行われているケースは多数あります。APBも工場立ち上げで、三洋化成工業のノウハウを使わせてもらったおかげで素早く量産化ができました。

### 今後取り組んでいきたいことを教えてください。

__日本でもM&Aを含めたエコシステムをつくっていきたいです。__米国でも新規事業を自社だけでやることの難しさに気づいていますし、すでに医薬品・医療機器の業界ではバリューチェーンに合わせた買収が出てきています。

たとえばリスクを取って製品開発するのはスタートアップ、出来上がった技術と製品を大企業が買い、彼らの販売網を使って販売するような仕組みです。

この変化は医療・ヘルスケア業界だけではありません。自動車業界ではGMが自動運転や電気自動車のスタートアップを買収していますし、今後もイノベーションを取り入れる動きは加速するでしょう。

日本はこれまで自前主義が多かったですが、スタートアップがどんどん新しいことにチャレンジして、大企業が買収で彼らを取り込んでいくような流れを作っていきたいですね。

（聞き手・文：藤野理沙、編集：濵田尚子、デザイン：石丸恵理）

APB株式会社

株式会社セルージョン

クリングルファーマ株式会社

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慶應イノベーション・イニシアティブ

VC/CVC

製薬・創薬

バイオテクノロジー

ハードウェア

慶應大VCが明かす、ディープテックの育て方

独自の特許技術を基に角膜移植課題の解決を目指す。
水疱性角膜症の治療を目的としたiPS細胞由来の角膜内皮細胞代替細胞「CLS001（シーエルエスゼロゼロイチ）」を開発。
「ひとの可能性を再生する。」をミッションに、「もっと⾃由で、もっと笑顔が⾒える世界へ。」をビジョンに掲げる。

セルージョン、第三者割当増資を実施 シリーズCラウンドにて総額28.3億円を調達

セルージョン、Minaris Regenerative Medicineと業務提携 水疱性角膜症に対する再生医療等製品のグローバル展開を加速

セルージョン、東洋製罐グループホールディングスと資本業務提携 水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装を加速

セルージョン、ニコン・セル・イノベーションと提携 水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装を加速

セルージョン、第三者割当増資を実施 シリーズBラウンドにて総額11億円を調達

セルージョン、東邦ホールディングスと資本業務提携 水疱性角膜症に対する再生医療等製品CLS001の社会実装を加速

セルージョン、第三者割当増資を実施 総額3.6億円を調達

AIS CAPITAL株式会社

SBIインベストメント株式会社

アクシル・キャピタル・パートナーズ2号有限責任事業組合

スパークス・アセット・マネジメント株式会社

ニッセイ・キャピタル株式会社

JICベンチャー・グロース・インベストメンツ株式会社

株式会社Gemsekiインベストメント

株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ

SMBCベンチャーキャピタル株式会社

DBJキャピタル株式会社

UTEC Partners有限責任事業組合

東洋製罐グループホールディングス株式会社

東邦ホールディングス株式会社

株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ

株式会社iPSポータル

（株）セルージョン　CLS001が水疱性角膜症に対するFDAの希少疾病用医薬品指定を取得

（株）セルージョン CEO 羽藤晋が「第23回 Japan Venture Awards」の「経済産業大臣賞」を受賞

【大学発ベンチャー表彰２０２３】受賞者の決定について

セルージョン 経済産業省の支援プログラム「J-Startup」に選定

セルージョン JHVS2022  Venture Awardを受賞

セルージョン、昭和電工マテリアルズ傘下のMinaris Regenerative MedicineとCLS001の海外市場向け製法開発に関して業務提携

（株）セルージョン、東洋製罐グループホールディングス社と資本業務提携

iPS細胞を用いた再生医療ベンチャーのセルージョン、SMBCベンチャーキャピタルなど3社から総額3.6億円の資金調達を実施