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2020-02-28

2020年、大学発スタートアップを取り巻く環境の今

#資金調達記事

大学発スタートアップの創出を目指す「大学発ベンチャー1000社計画」が2001年に発表されてから、来年で20年が経過する。

2017年には存在数が2000社を超え、2019年には「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」が施行されるなど、現在も日本の科学技術やイノベーションの担い手として期待される大学発スタートアップ。

現状と彼らを取り巻く環境について、データを踏まえ解説する。

CONTENTS

大学発スタートアップの資金調達の現状

まずは大学発スタートアップの資金調達環境をおさらいする。

大学発スタートアップの調達額は、2018年時点では690億円。2018年のスタートアップ全体の調達額は3880億円(INITIAL 2019年2月21日基準。最新値は2020年1月23日基準で4330億円である)と、全体に占める割合は約18%である。

調達額が162億円(約11%)だった2014年と比較すると、2018年にかけて調達額と全体に占める割合はともに上昇している。

注目すべきは2015年から調達額が上昇していることだが、これは2014年6月に産業競争力強化法が施行され、国立大のVCへの出資が解禁されたことが要因の1つと考えられる。

産業競争力強化法の前段階として、2012年度の補正予算で東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学の4つの国立大学に対して合計1000億円が出資された。この出資を基に、4大学はVCを設立。

各VCはファンドを組成し投資活動を行っており、現在これらのVCによる投資先は98社(INITIAL、2020年2月25日基準)と、100社に迫る勢いだ。大学発スタートアップへの新たな資金供給源としての役割を果たしている。

大学発スタートアップを多く輩出する大学は?

次に、大学発スタートアップの存在数推移を見てみよう。

2004年度に1000社を突破した後も順調に増加していたが、2014年度には減少。しかし2015年以降は再び増加に転じている。

大学発スタートアップを創出する大学ランキング(2014年度~2018年度)は次のようになっている。

他大学を離して東京大学がトップを独走しており、京都大学、大阪大学、筑波大学と続く。

東京大学が独走する理由は、2004年4月の国立大学法人化を契機に、「産学連携本部」「東京大学TLO」「東京大学エッジキャピタル」の三者連携体制を確立させたことが大きいだろう。

前述したように国立大学によるVC出資が解禁されたのは2014年6月だが、その10年前から東京大学発スタートアップを資金面を含め総合的に支援を続けてきた。

3者の責任者の顔ぶれを見ると、産学連携本部(現産学協創推進本部)イノベーション推進部長の各務茂夫氏はボストン・コンサルティング出身、UTEC創業者の郷治友孝氏はジャフコへの出向経験があり、東京大学TLO代表取締役社長の山本貴史氏はリクルート出身と、いずれも民間企業での経験を持つ。

大学関係者だけでなく、民間からの人材を柔軟に受け入れ、早期から支援を重ねてきたことが今日の独走に繋がっていると考えられる。

一方、個々のスタートアップに目を向けると、東京大学以外からも、IPOや大型の資金調達を行うスタートアップが輩出されている。

IPO後の成長戦略を描くことに苦戦する大学発スタートアップも多い中、ペプチドリームは順調な成長を続けている。現在の時価総額は、同社の高い営業利益率(2019年6月期で49.6%)に対する期待感に支えられた数値といえる。

ペプチドリームは、ノバルティスやグラクソ・スミスクライン等グローバル大手の製薬会社との提携を行い、契約一時金や収入を積み重ねることで、赤字のケースが多い大学発スタートアップでも高い利益率を実現している。

一方、大型の資金調達を行った大学発スタートアップに目を向けると、先日ユニコーン入りを果たしたSpiberの成長戦略も注目される。

同社は2019年7月、タイにて構造タンパク質の量産プラントの着工を発表している。プラントの稼働と量産化によって売上を確保し、早いタイミングでの黒字化を実現できるかが今後の成長のカギの1つになるだろう。

研究開発型スタートアップを取り巻く環境

大学発スタートアップを細かく見ると、「研究成果スタートアップ」「共同研究スタートアップ」「技術移転スタートアップ」の3つはいわゆる「研究開発型スタートアップ」に属すると考えられ、全体の70%以上に上る。

大学発スタートアップの大半を占める「研究開発型スタートアップ」だが、彼らを取り巻く環境も変化している。

大学によるスタートアップ支援の変化

実は国公立大学は自らが直接投資を行うことは基本的に認められていない。

指定国立大学法人である東北大学、東京大学、京都大学のみ、コンサル、研修・講習に関する大学発ベンチャーへの出資が可能で、VCへの出資は国立大学のみが認められている。

研究開発型スタートアップの場合、大学の研究成果を事業のベースとしていることが多い。

そのため、他のスタートアップと比較すると、事業化に向けた研究開発への投資がより長期・大規模となる傾向があり、特許等の知的財産権のライセンスや事業化のための活動資金を、十分に確保できない場合があった。

しかし、2019年1月「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に施行されたことで、研究開発型スタートアップへの支援の対価として、大学が株式や新株予約権を取得可能であることが明記され、経済産業省によるガイドラインが整備された。

国立大学は自大学の研究開発型スタートアップに対し、より柔軟な支援を行うことが期待される。

実際の事例として、経済産業省は「大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き」の中でペプチドリームのケースを紹介している。

同社は設立当初、東京大学からのライセンス契約費用を現金で支出することは現実的でなかったため、イニシャル・フィーとして新株予約権を付与したという。

東京大学は上場直前時点で120,000株の新株予約権を保有していた(INITIAL調べ)。上場時初値の7,900円をかけると、約9.5億円の資産となった計算になる(ストック・オプションの付与の条件、払込額などを考慮していない)。

こうしたキャッシュアウトを伴わない支援の形が増えることは、初期から安定したキャッシュを創出することが難しい研究開発型スタートアップだけでなく、大学側にとっても歓迎すべきことだろう。

大学発スタートアップの今後の展望

法改正を受け、シード期の研究開発型スタートアップが、ライセンス供与やインキュベーション施設の利用の対価を新株予約権で支払うケースも増えるだろう。

それにより、資金調達がより必要なシリーズA以降に進むスタートアップが増え、大学発VCの出資機会も増加する可能性がある。

公的資金を扱う上での慎重さや、民業圧迫にならないバランス感覚が要求されるなど、大学が積極的にスタートアップに関与することには難しさもあるが、大学とスタートアップの接点が増えることは歓迎すべきではないだろうか。

また、経済産業省は「平成30年度⼤学発ベンチャー調査 調査結果概要」の中で「事業の実証が完了した後のフェーズでは、経営経験のある人材確保に成功していることが成長の要因である」と分析している。

実際にマッスルスーツを展開するイノフィス(東京理科大学発)は、シリーズAのタイミングでサンバイオ執行役員等の経歴をもつ古川尚史氏が創業者に代わってCEOとなり、経営体制を刷新した上でシリーズB、シリーズCでの資金調達を成功させている。

(参考)INITIAL「大学発ロボット開発のイノフィス、フィデリティらからシリーズCで総額35億円調達」

技術に精通した経営人材をスタートアップが独力で招聘することは難しさがある。大学や大学発VCが人材紹介やマッチングを行うなど、資金面以外でのフォローも求められるだろう。

(編集・執筆:三浦英之、デザイン:廣田奈緒美)

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