一年で100社を超えるユニコーンを生み出す中国。2010年代半ばから急激にスタートアップへの投資件数や金額が増加し、現在では成熟期に突入。日本のソフトバンクグループやトヨタ自動車も積極的に投資する。中国はなぜ、投資家を引き付ける魅力的なスタートアップを次々と生み出せるのか。
中国スタートアップ前編では、スタートアップ企業を支えるエコシステムについて概観する。
スタートアップの資金調達額は日本の28倍
2020年の中国スタートアップ資金調達額は8145億元(約13兆円、1元=16円換算、出所:IT Juzi)と、2019年対比で12%増加した。一方、投資件数は4367件と、2019年対比で約18%減少した。
日本のスタートアップの調達金額と比較すると、中国は約28倍、投資件数は約3倍の規模にあたる。件数が減少したにも関わらず金額が増加したのは一部のスタートアップに投資案件が集中した結果であり、日本でも同様のトレンドが見られている。
直近10年間のデータを見ると、2015年以降に資金調達額・投資件数ともにが一気に急増した後、2018年の投資額がピークとなり、2019年には調達額・投資件数ともに急落している。2020年はコロナ禍の中でも回復が見られた。
投資ステージの変化を見ると、直近5年はミドルからレイターステージの割合が増える一方、アーリーステージが減少している。
2018年以降顕著に増えているのが戦略投資の割合だ。戦略投資とは、シナジーをもとめた事業会社による投資を指す。BATと呼ばれるバイドゥ・アリババ・テンセントなどの中国大手企業や、プラットフォーマーの美団、ユニコーン企業のバイトダンスなどによる出資が増加した。
1年に111社のユニコーン誕生
巨額の投資資金を集め、中国では続々とユニコーン企業が生まれている。2020年には新たに111社がユニコーンとなり、累計数は266社となった。(出所:IT Juzi、2020年12月末時点)。2020年に日本でユニコーンとなったのは2社、アメリカでも73社となっており、中国の勢いが目立つ。
最も多くのユニコーンが誕生したのは2018年。EVや中古車のプラットフォーム、人工知能、製薬関連企業が大規模な資金を調達した。また、同年はMeituan(メイトゥアン、美団)やXiaomi(シャオミ、小米)など多くのユニコーン企業が相次ぎ上場している。
中国のユニコーンの特徴はIT大手のアリババ、EC大手のJD.com(京東)、金融大手のPing An(平安保険)、小売大手のSuning(蘇寧電器)などからスピンオフした企業が多い点だ。
代表的なユニコーンを見てみよう。
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