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2019-07-09

クライアントワークこそ成長のエンジン。今こそ問う「会社を成長させる」ために成すべきこと

# 対談# 失敗談# デザイン# グッドパッチ # RINACITA
# 対談# 失敗談# デザイン# グッドパッチ # RINACITA

「クライアントワーク(受託)を下に見る人には「なめるな」と言いたい」

今やベルリンやパリを始め、世界各地にデザインの切り口からサービスを展開するスタートアップがGoodpatch(グッドパッチ)だ。

Goodpatchが提供するプロトタイピングツール「Prott(プロット)」や、デザイナー向けのキャリア支援サービス「ReDesigner(リデザイナー)」といったサービスは、デザインに関わる人の課題を的確に解決をすることで支持を得ている。

しかし同時に、多くの企業において自社サービスより優先順位が下と捉えられがちなクライアントワークを創業当初から続けている。

その決断の意図はどこにあるのか。

CONTENTS

2人の起業家がサービスをクローズした経緯

どのようなサービスをされていますか?

Goodpatch CEO 土屋さん(以下、土屋) Goodpatchは、「デザインの力を証明する」をミッションに、UI/UX領域を中心に企業のデザインを支援しています。

2011年に創業し、東京とベルリン、ミュンヘン、パリの世界4拠点にオフィスがあります。グローバルも合わせると150名ほどの人が働いています。

事業は大きく分けると2つ行っており、他社の新規事業の立ち上げのお手伝いなど、クライアントと伴走しながらプロダクトやサービスを作っているのが1つ。

2つ目は、自社サービスの開発、提供です。現在は3つのサービスを運営しており、チームの力を最大限に活かすプロトタイピングツール「Prott」、デザイナー向けのキャリア支援サービス「ReDesigner」、デザイナーを目指す学生と、デザインの力を信じる企業をマッチングする就活プラットフォーム「ReDesigner for Student」です。

グッドパッチ土屋

土屋 尚史(つちや・なおふみ)/ Webディレクターとして働き、サンフランシスコに渡る。btrax Inc.にてスタートアップの海外進出支援などを経験し、2011年9月にGoodpatchを設立。UI/UXデザインを強みにしたプロダクト開発でスタートアップから大手企業まで数々の企業を支援。(写真:ami)

RINACITA CEO 小澤さん(以下、小澤) 昨年3月に会社を設立し、去年の夏頃にクリエイターやアーティスト向けのファンクラブサービス「CHIP」をリリースしました。

5月にサービスをクローズし、今は新たな事業の開発に取り組んでいます。

どのような経緯でクローズする決断に至ったのですか。

小澤 ずっと私自身が音楽をやっており、その時感じた課題感がサービスを始めたきっかけになっています。

小学生の頃から吹奏楽やバンドをやっていたこともあり、音楽漬けの生活を高校まで送っていました。高校卒業後はアーティストとして生きようと思っていましたが、お金や環境の問題で大学に進学することに決めました。

入学後も、周りを見るとクリエイターやアーティストを目指すも、同様の理由で「諦めざるを得ない、才能を存分に発揮できない、努力しきれない」といった人を多く見ました。

そんな状況をどうにか変え、アーティストとして夢を追い続けられる環境や仕組みをつくるために、誰でもファンクラブが簡単につくれるサービス「CHIP」を開発し始めます。

CHIPはアーティストやクリエイターが自分のファンクラブをつくり、制作過程の作品や活動記録を加入者限定で見せられるサービスです。

手数料を除いたファンクラブの会員費をファンクラブのオーナーに還元し、活動資金に充ててもらうことで活動の支援ができると考えていました。しかし、今年5月にクローズさせました。

クローズした理由は3つあります。

1つ目は課題設定の甘さです。アーティストやクリエイター側の「応援してくれる人だけにコンテンツを見せたい」というニーズには答えることができていました。

しかし、ファン側の「ファンクラブに入る理由」の検証が甘く、その部分をモチベートする設計ができていませんでした。

2つ目は、課題設定の甘さから、ターゲットとしていた「駆け出しのクリエイター」ではなく、「すでにファンがいて人気のある人」にとって便利なサービスになってしまったことです。ファンを自分で集められる人がうまくいく形は、最初に私達が目指していた方向性からはズレてしまいました。

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小澤 昂大(おざわ・こうだい)/ 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)環境情報学部を休学し、2018年3月にRINACITAを設立。同年8月に誰でも簡単にファンクラブを作成できるアプリ「CHIP」をリリース。2019年5月に「CHIP」をクローズし、現在は新規事業の開発を行う。(写真:ami)

3つ目は、方向性のズレを修正するには、サービスの形を大きく変える必要があり 、新規サービスをつくるのと同義だと分かったからです。使ってくれている人たちがいる中で大きく方針を変えるより、別のサービスとして出すほうが適切だと判断し、クローズに至りました。

クローズする際に、どういった部分にもっとも悩みましたか。

小澤 サービス自体は回っており、月に10~20万円程度の活動資金を得られている人もいたので、当初の目的を達成できている部分もありました。それでもクローズすべきかどうかは非常に迷いました。

共同創業者と1週間すべての作業を止め、これから何をするか話し合う中で、新規事業と並行してCHIPを続けることも案の1つとして出ました。

ただその状態でサービスを続けても、サービスの機能の更新が遅くなったり、要望があった機能を実装できなかったりすることで、ユーザーにも本気度の低さが伝わる可能性は大きいです。

ここまでお世話になってきたユーザーに、事業内容の変更を伝えないのも不誠実です。

CHIPを続けるとしたら100%CHIPにコミットするべきですし、できないのであればそれをユーザーに伝えた上でサービスを閉じる。そして、最善策だと考えるサービスにもう一度100%コミットする。それが長期的に見るとユーザーのためにもなると判断し、クローズさせる決定をしました。

土屋 21歳でここまで真面目なのは、本当に素晴らしいことですよね。

土屋さんはなぜサービスをクローズさせたのですか。

土屋 私たちの場合は、これまでに自社サービスを5個ぐらいやってきましたが、2つ目と3つ目のサービスをクローズさせています。

特に2つ目のサービスは、マーケットでは共感する声が多く、ローンチしてから1年続けました。しかし、毎月300万円ほど赤字が出ており、これ以上事業を続けるのは難しいと判断し、閉じることを決断しました。

共感が多くても、決められた期間内に結果が出なかった事業は経営者としてクローズの判断をする必要があります。

そして、私たちにとって説明責任を果たす機会になり、マーケットにとっても学びになると考え、その失敗をオープンに発信することにしました。

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(写真:ami)

結果的に、その失敗を書いたブログには多くの共感コメントが集まりました。

クローズするにあたって、ステークホルダーにはどのように説明をされましたか。

小澤 まずは同じ志で一緒にやってきた、共同創業者に相談しました。そこで、これからステークホルダーと話す中で、誰に何を言われても決断の大きな方向性は変えないことを2人で決めたのです。

その上で、社員にも話をしました。

じつはその時、すでにAndroid版の開発が終わっており、あとはリリースするだけという段階でした。

開発者からすると、つくっていたものが世の中に出せないのは辛いですし、少なからず今までの努力が無駄になってしまう部分も出てしまいます。

なので、どういった経緯でこうなったのかを説明した上で、どうしたいかを聞きました。返答次第では、決断の方向性を若干変える気でした。

そこでお互いが納得するまで話し合ったことが、最終的に円滑に進んだ理由だと思います。

そうして社内への説明が終わった後、投資家の方に説明させていただきました。 エンジェル投資家の中には、サービスに魅力を感じて投資してくださっている方もいたので、多少不安を感じていました。

土屋 反対意見は出ましたか。

小澤 明確に反対する方はいませんでした。

「このタイミングで決断できてよかった」、「次も頑張ってください」といった肯定的なコメントから、「今のサービスでもまだいけるのでは」といったものまで出ました。ただ、最終的には「次やるならそれでいいんじゃない?」と言っていただけたので、全員に納得してもらえたと思っています。

サービスをクローズする際に投資家と意見が合わず、会社を解散した話も聞くので、そういった意味では本当に恵まれています。

土屋 投資家には次に挑戦する事業の構想は話しましたか。それとも特に話さずに、クローズの話だけをしたのですか。

小澤 次のチャレンジについては話しませんでした。

外部資本を入れた上で経営しているので、最終的にイグジットを目指すことは義務だと考えています。

ただそれを達成する上で、やりたいことから外れていないサービスで目指すべきだと思っています。なので、具体的にどのようなサービスを次にやるかは決まっていませんでしたが、クローズの決断をしました。

起業家の真価が問われる瞬間

土屋 起業しなければよかったと思うときはありませんか。

小澤 ありません。最終的にサービスをクローズさせることになりましたが、自分たちが目指す世界をつくるために、他の人からお金を預かって全力で挑戦できる環境はとても貴重です。

他では経験できないことだと思いますし、そうやって挑戦ができることが充実感に繋がっています。

土屋 根が真面目です!小澤さんのような真面目なタイプの起業家が、今後どのように生き残っていくか楽しみです。

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(写真:ami)

サービスのクローズの次に、起業家としての真価が問われるのは、キャッシュがなくなったときです。

私たちの世代の学生起業家で、Wondershakeの鈴木さんという方がいます。彼は4人で起業し、順調にエンジェル投資家から5,000万円ほど調達しました。

ただその後、サービスがうまくいかず、キャッシュがギリギリになったとき、彼らは諦めなかったんですよね。

ロジック的には調達したお金は返す必要のないお金なので、キャッシュが無くなっても「すみませんでした、一旦就職します」とすることも可能です。

しかし彼らはそこで諦めず、受託の仕事をやりながらいろいろなサービスをつくり続けました。最終的にLocari(ロカリ)というメディアをつくり、それが今成長しています。

追い込まれたとき、「途中で投げ出すか、投げ出さないか」で、起業家としての真価が明らかになると思います。

人生には当然失敗することもあるので、投げ出してはいけない訳ではありません。

しかし大した金額も調達していないのに、会社つぶしてもう1回やり直す起業家を見ると、「まずはお金を返しなさい」と言いたいです。

別につぶすことはその人の勝手だと思います。しかし、そうなったときの対応はその後もずっと付いて回ります。

いくら借金でないとはいえ、信頼し投資してもらったのであれば、しっかりとリターンを出すまでやりきれるかが、起業家としての真価を表す部分だと思うので、ぜひそのような状況になっても粘って欲しいと思います。

クライアントワークが組織を成長させる

小澤 Goodpatchさんは自社サービスをやりつつも、デザインのコンサルや受託もやられていますが、なぜですか。自社サービス以外にリソースを割いて事業を続けるのは難しくないでしょうか。

土屋 まず、うちの会社では「受託」という言葉を禁止して、クライアントワークもしくはデザインパートナーと言っています。

私自身がWeb制作会社のディレクター出身で、最初の事業がUI/UXデザインのサポートだったので、クライアントワークにはプライドをもっています。

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(写真:ami)

よくスタートアップ界隈では、「受託で食いつなぐ」と言って、受託を下に見る傾向がありますが、「なめるな」と言いたいです。

クライアントワークとは、その会社ができないことを私たちがプロフェッショナルとして提供しているわけですよね。プロとしてやっている以上、自社のサービスであろうが無かろうが、そこに優劣はありません。

なので、受託を下に見ている人たちはなにも分かっていないと思いますし、「見ていろよ」という気持ちです。

また、クライアントワークは人を成長させます。

私は、Goodpatchという会社自体がプロダクトだと思っています。それを永続的に成長させるには、人の成長が不可欠です。

他社のサービスに関わり、クライアントの期待値を期間内で超えることが求められる環境は、人を成長させるのにもっとも適していると思います。

創業時、海外に比べて日本は全体的にデザインやエンジニアリングのレベルが高くありませんでした。なので、Goodpatchは入った人が成長できる環境にしたいと考えていました。

うちに入って成長し、ベースとして高い能力をもった人がマーケットに出ていけば、それでもいいと思っています。

人を大きく成長させるクライアントワークは絶対に外せない仕事だと創業当初から考えていますし、そこに「こだわり」と「誇り」を私たちは持っています。

クライアントワークから新しいプロダクトが生まれることはありますか。

土屋 「Prott」はまさにそうですし、その後の「ReDesigner」もクライアントワークの顧客課題の中から生まれたプロダクトです。

クライアントワークは、自社サービスと切り離されているのではなく、「成長のエンジン」であり、「プロダクトをつくる原体験」の役割を担っています。最初からそうなることを狙っていました。

小澤 クライアントワークを行うことで、「人が成長し、新規サービスの種も見つける」という相互作用を生じさせる。会社を伸ばすために、自社サービス以外にも取り組む考え方は、大変勉強になります。

土屋 クライアントワークをやっている会社は、みな同じことを考えていると思いますが、ほとんどの会社はこれをやりきれません。

しかしGoodpatchには、それをやりきるための明確な「意志」があります。だからこそやりきれますし、自社サービスとクライアントワークの両輪がきちんと回っているんだと思います。

後編に続く)

20190702 goodpatch土屋さん、尾澤さん-7 トリミング (1)

文・写真:ami

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