マテリアルファイナンス特集記事Part1では、素材系スタートアップが直面する「2つの死の谷」の正体について、事業化までにかかる時間の長さ、投資家の少なさの2点から明らかにした。
長い研究期間を超えて事業化を少しでも早めるために、素材系スタートアップはファイナンスをどう組み立てるべきかーー。
今回INITIALは設立後5年で50億円超を調達した、素材系スタートアップKyuluxのCEO安達氏とCFO水口氏に取材を行った。
技術発見から約12年、会社設立から約5年。「投資家とは長い時間をかけて対話し、ファンになってもらった」と語る2人に、これまでの事業ステージと資金調達の時間軸、今後のファイナンス戦略について聞いた。
累計調達額は50億円。Kyuluxのファイナンスを支えた事業法人
Kyuluxは2015年に設立された九州大学発スタートアップだ。同社は有機ELディスプレイや照明に用いられる、次世代有機EL発光材料の開発を行っている。
これまでの累計調達額は49.9億円、評価額は95.4億円のINITIALシリーズB企業だ。
同社の資金調達は、設立直後に開始したシリーズAでの15億円の調達、シリーズBでの34.8億円の調達に大きく分かれている。
シリーズAでは韓国の大手電機メーカーのSamsung Display(以下、サムスン)とLG Display(以下、LG)がリード投資家であり、シリーズBでは化成品や医薬品を取り扱う商社の長瀬産業、科学技術振興機構等が投資家として株主に名を連ねた。
技術の見極めが出来る事業法人を中心とした投資家構成で、創業から5年で50億円とスピーディーな調達を行ってきたことがKyuluxの資本政策の特徴といえるだろう。
Kyuluxの株主である投資家は約20社。素材系スタートアップの多くが直面する「投資家不足」に上手く対応しているように見える同社だが、「投資家を探す上では大きな苦労といくつかの幸運があった」と安達氏と水口氏は語る。
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