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2019-10-22

「興味のない広告」は無くせるか?最先端アドテクが描く未来とは

# AdTech# SaaS# FLUX
# AdTech# SaaS# FLUX

スタートアップ最前線

「不動産を検索したら、マンションの広告が表示されるようになった」といった経験はないだろうか。

私たちが普段目にするネット広告は、一人一人に違う内容が表示されている。その裏側では個人のネット上での行動を基に広告が表示される「アドテクノロジー」と呼ばれる仕組みが動いている。

個人情報保護の問題にGoogleといったプラットフォーマーも直面する今、スタートアップのFLUXが挑むのは「個人情報に依存しない」ネット広告の実現だ。

CONTENTS

ネット広告における「オークション」の仕組み

ネット広告で広告主がメディアに広告を出す場合、大きく分けて「純広告」と「運用型広告」の2つの手段が存在する。

(画像:ami作成)

かつては広告主とメディアが1対1で広告枠の交渉を行う純広告が一般的であったが、現在は複数の広告主が入札を行い、広告枠を獲得する運用型広告が主流となっている。

たとえば、マグロの競りをイメージすると分かりやすいだろう。

マグロが欲しい人が1人ずつ交渉して価格を決めるのではなく、築地といった魚市場で、複数人が競りを行って落札者を決める。これと同じことが、ネット広告の裏側で起こっている。

魚市場とは違う点はネット広告の入札はオンライン上で行われるため、それを管理するサーバーが必要となることだ。

現在、広告オークションサーバーとして最も多く使われているのが「Googleアドマネージャー」だ。Googleアドマネージャーが最適な広告主を選ぶため、メディアは入札を確認する手間が省ける。

しかし、その便利さと引き換えに注意しなければならないのが、Googleが自動で選んでくれることに対して、その他の機会を逸していることで機会損失が生じている可能性があることだ。

この問題を解消し、広告配信の機会損失を無くす「ヘッダービディング」とは何か。株式会社FLUXの永井CEO、李CTOに話を伺った。

メディアのマネタイズの救世主「ヘッダービディング」

FLUXはなぜ「ヘッダービディング」に着目したのでしょうか。

永井 現在のネット広告オークションは、Googleが提供するシステムが主流のため、これを利用しないという選択肢はほぼありません。

しかし、このオークションのアルゴリズムはGoogleの広告配信を中心としています。

(画像:FLUX会社説明資料を元にami作成)

これを見ると、最も高い金額を提示している広告主Aが落札できるのが当然だと思いませんか?しかし、現行の仕組み上は、Google Adsenseが設定した180円の入札以外の機会を逸している可能性があるんですね。

永井 元治(ながい・げんじ)/ 株式会社FLUX 代表取締役 慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、米系戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニーにて、大手通信キャリアの戦略立案 投資ファンド・大手総合商社の M&A 案件などに従事。2018年5月に株式会社FLUXを設立。

適切に広告を届けるためには、様々なユーザーの情報が必要になります。世界中の人がGoogleのサービスを毎日使っている分、その情報収集能力はGoogleが圧倒的です。

そして彼らは得られたデータを自社サービスに活かし、広告枠の購買に利用しているんですね。

Googleが提供する広告オークションに入るには、Googleの広告配信を中心とした仕組みを受け入れざるを得ないという課題があります。

Edwin Li / 株式会社FLUX CTO 英ケンブリッジ大学コンピューターサイエンス学部中退後、東京工業大学工学部卒業。アルゴリズム、機械学習、深層学習専攻。

永井 「ヘッダービディング」は、ユーザーがWebサイトにアクセスし、Webサイトのヘッダー情報(HTML上に記載された各種の属性情報)が読み込まれるタイミングで、複数の広告主に同時に広告リクエストを送信する仕組みです。

Googleのオークションシステムはリクエストの順番をメディア側で決める必要があり、同時に複数の広告主に問い合わせることは困難でした。

これに対しヘッダービディングは、同時に複数の配信元に問い合わせができるので、1番高い単価の広告を出せることが大きな違いです。

(画像:FLUX会社説明資料を元にami作成)

全ての広告主に同時に問い合わせることによって、1番高い価格の広告を表示するという公平なオークションを実現させられるんですね。

広告枠を提供することで利益を得るメディアとしては、より最適なマネタイズ手段を考えられるというわけです。

この仕組み自体は、アメリカでは数年前から一般的になっているそうですね。

永井 アメリカでは、一定規模以上のメディアであれば約9割が使用していることを示す統計もあります。

アメリカのWebメディア業界は誕生が早かったこともあり、アドテクの経歴が豊富な人も多く在籍し、知見も溜まっています。ヘッダービディングの仕組みを内製化しているメディアも多いんです。

同様に中国でもこの技術は発展していて、バイドゥや、アリババ、テンセントといった企業が、独自の広告サーバーを持って広告を展開しています。

一方日本で普及が遅れている理由は、マネタイズの部門に割ける人員が限られていることが影響していると思います。

アメリカに比べるとWebメディアの歴史も浅いですし、コンテンツをつくることがメインの仕事ですから、マネタイズ専門の部署を抱えるメディアは数が限られているんですね。

FLUXは参入僅か1年で、ヘッダービディングのシェアトップレベルとのことですが、競合との違いはどこにありますか。

永井 アメリカで上場している外資企業など、私たち以外にも日本で展開しているプレイヤーは存在します。

そういった企業との違いは、「カスタマーサクセスへの注力」にあると思いますね。

アメリカの場合、使い方を丁寧にサポートしていなくても担当者が運用できている企業もあります。

しかし日本ではこのヘッダービディングの仕組みがまだ普及していない分、プロダクトと同様にカスタマーサクセスも重要になります。

FLUXはカスタマーサクセスに人員を多く割いており、より多くのメディアを取り扱える体制になっていることが特徴の1つだと思います。

(実際のサービス画面 FLUX会社説明資料より)

画期的な技術ですが、日本で大きなニュースにならないのはなぜでしょうか。

永井 Webメディア業界にとっては、ヘッダービディングというプロダクトは話題性のあるものですが、アドテクの進化するスピードがかなり早いことが関係していると思います。

レガシー産業であれば、これまでIT技術の利用度合が小さかった分、技術の導入によって業務が大きく効率化される可能性が高いですよね。

アドテクは全てデジタル上で構成されていますから、たとえ新しいIT技術が導入されたとしても相対的にインパクトが小さくなっているのではないでしょうか。

「ユーザー推定技術」で不安は軽減できるか

EUでは「一般データ保護規制(GDPR)」と呼ばれる法律が施行されました。FLUXが開発中の新プロダクトは、GAFAといったプラットフォームが直面する個人情報問題の対応策になりますか。

永井 これまで企業がユーザー情報を得るために、大きく2つの方法が用いられてきました。

1つ目は、GAFAといったプラットフォーマーが自社のサービスに入力された情報を取得する方法です。

サービスの利用開始時には、会員登録として名前や住所といった情報を取得できしますし、 その後も押した「いいね!」の数や投稿文、シェアした写真といった様々な情報を把握できます。

2つ目は、プラットフォーマー以外の多くの企業が採用している「Cookie」を用いた方法です。この技術は名札のようなイメージで、どういう記事を読んだか、どういう商品に興味志向があるか、といったユーザーの行動履歴を一時的に保存するものです。

しかし私たちが開発している「FLUX id Solution」はこの2つの方法とは異なる技術で、独自のアルゴリズムにより、追跡するものです。

一元的にユーザーの行動特性をトラッキングするのみで、個人情報に該当する情報とは一切紐づきません。その上、個人情報が入力されなくても、ユーザーの興味関心に一致する広告が出せるようになります。

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(画像: metamorworks / Shutterstock.com)

たとえば化粧品メーカーのHPを訪れたユーザーに対して、その人が普段愛用する化粧品の新作がお勧めする、といったことが可能です。このような広告の出し方は、広告主とユーザーにとってWin-Winの関係といえるのではないでしょうか。

1人1人のユーザーをネット上のアバターとして捉えるような仕組み、と考えてもらえば分かりやすいと思います。

たとえば、「この人は今日、飲食店の口コミサイトでこの記事を見た。また別の日には、経済紙でこの記事を見た。だからこんなユーザーではないか」という推測を行うイメージです。

この「推測」という方法こそ、プラットフォーマーとの大きな違いだと思います。

プラットフォーマーは正確な個人情報データを持っていますが、その情報の使途をユーザーが理解しないまま広告等に利用されている。これが今問題になっていることです。

現在はバーチャルとリアルの境界線が曖昧になってきていますが、正確な個人情報まで干渉されると、気持ち悪さを感じますよね。

しかしネット上で取得した情報を元に「推測する」形であれば、ユーザーに受け入れられるのではないかと考えています。

「個人情報を用いず、推定された人物を元に広告が配信されている」と言われれば不安も軽減されるかもしれません。

永井 プラットフォーマー以外のプレイヤーは、ユーザーを個人情報レベルで判別することできないんですよね。

たとえば私が飲食店の口コミサイトを複数回見たとしても、会員登録されていなければ、私がどういった人物で、常連なのかただの一見さんなのか、サイト側は把握することはできません。

これは広告出稿に限った話ではなく、マーケティングやECの運営など、ネットで活動するプレイヤーが共通して抱える問題です。

ネットやYouTube上に現れる動画広告も、興味があれば数分の長さであっても見てしまいますよね。正しいターゲットに正しい広告がマッチすれば、不快感は与えないと思うんです。

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(画像: pixinoo / Shutterstock.com)

本当に広告を出して欲しくない場合は、ユーザー側で広告の配信を停止することもできますが、「興味関心があるジャンルの広告だけを見たい」という人に対しては、その広告が見れるようになっていることが最適な状態といえると思います。

今後のFLUXの展望を教えてください。

今の広告主は化粧品メーカーから家電メーカーまで、多岐にわたっています。

彼らが新商品を開発したり既存商品を改善するときは、ユーザーを集団として捉え調査会社を通して満足度を把握し、それを元に施策を打つのが一般的ですよね。

しかし、どんな商品も買ってくれる熱烈なユーザーもいれば、ほかのブランドと比較した結果選んでくれるユーザー、セール期間中は買うがそれ以外は買わないユーザー、という風にいろんなユーザーがいます。

一括りにはできないユーザーイメージをもっと明確にして、それぞれのユーザーに適応したマーケティング手法やキャンペーンの設計のヒントになるプロダクトを提供していきたいですね。

永井 私たちのビジョンは「情報をつなぎあわせ、正しい価値を認識する」です。

このビジョンを達成するために、3段階に分けてプロダクトを展開していくことを考えています。

(画像:FLUX会社説明資料を元にami作成)

1つ目が正しく広告価値を認識させるための「FLUX Header Bidding Solution」。これは現在FLUXが提供している、ヘッダービディングのプロダクトです。

2つ目は先ほど説明した、現在開発中の「FLUX id Solution」です。

そして3つ目が、ユーザーの価値を認識するための「FLUX LTV Analytics」です。

個人情報を特定できないWeb上のユーザーであっても、1人1人の行動データには何らかの価値があります。その価値を活かすために、先ほどご説明したデータを蓄積する手法を用いて、ユーザーの行動を1つ1つ予測するプロダクトを考えています。

たとえば20代女性がユーザーであれば、洋服は生涯にわたってどれ位購入するかとか、次に購入する化粧品は何か、といった行動分析をするイメージです。

これらのステップを踏むことで複雑化したネット広告の仕組みをオープンにして単純化し、メディアや広告主、ユーザーに価値を提供する。これがわたしたちの目指す世界です。

20190925 FLUX 最後

聞き手:松岡遥歌、文:三浦英之、写真:ami

# AdTech# SaaS# FLUX

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