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2026/10/20

資金調達額は10年で約5倍──国内ディープテック・スタートアップの現在地

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国内ディープテック・スタートアップの資金調達額は、2016年の785億円から2025年には3,877億円へと約5倍に拡大した。これは国内スタートアップ全体の伸び(約4倍)を上回っており、資金調達総額に占める割合も36%から45%へ上昇している。

政策面でも、政府が重点的な官民投資を進める17の戦略分野には、フュージョンエネルギー、航空・宇宙、AI・半導体、創薬・先端医療など、ディープテックに関連する領域が数多く含まれる。また、VCの間では、より大きな企業価値への成長が期待できるスタートアップを重視する動きもみられるなか、ディープテックへの注目が高まっている。

こうした状況を受け、資金調達額の拡大の背景やディープテック特有の資金調達の実態を分析し、市場の持続的な成長に向けた課題を探る。

CONTENTS

※本記事は、Speeda調査レポート『ディープテック・スタートアップレポート』の一部を抜粋したものです。有償提供しているレポート本編では、詳細なデータに加え、VC・CVC・機関投資家など計10名の有識者への取材・寄稿を通じて、ディープテック・スタートアップのファイナンス戦略や投資・協業の実践知を収録しています。

詳細は、画像をタップしてレポート購入ページをご覧ください。

国内で高まるディープテック・スタートアップの存在感

国内ディープテック・スタートアップの資金調達額は、2016年の785億円から2025年には3,877億円へと約5倍に拡大した。同期間の国内スタートアップ全体は約4倍、ディープテック以外は約3.5倍となっており、ディープテックが相対的に高い伸びを示している。

資金調達総額に占めるディープテックの割合も、2016年の36.1%から2025年には44.7%へと上昇。2026年上半期も43.2%と、引き続き4割を超えている。

一方、調達社数でディープテックが全体に占める割合は、2016年から2025年にかけておおむね25〜28%で推移しており、1社あたりの調達規模が拡大してきた。

ディープテックの市場拡大に寄与してきたのが、大学発スタートアップだ。

2014年4月に改正国立大学法人法が施行され、国立大学によるVCなどへの出資が可能となった。これを受け、2014年から2016年にかけて、東北大学、東京大学、京都大学、大阪大学の国立4大学の傘下にVCが相次いで設立され、それぞれ約100億〜250億円規模のファンドを組成した。

こうした環境整備が進むとともに、大学発スタートアップの資金調達額は、2016年の342億円から2025年には1,685億円へと約5倍に拡大した。調達社数も261社から609社へと約2.3倍に増加している。

資金調達額・希薄化・調達間隔から見るディープテックの特性

資金調達額を企業単位で見ると、ディープテックとそれ以外では明確な違いが見られる。

2026年上半期のディープテックの1社あたり資金調達額の中央値は9,900万円と、ディープテック以外の4,500万円の約2.2倍だった。

大型調達の比重も高い。10億円以上の調達案件が占める割合はディープテックで58.7%と、ディープテック以外の53.8%を上回った。

資金調達に伴う株式の希薄化率中央値を見ると、2026年上半期のディープテックはシードで25%、シリーズAで21%、シリーズBで19%と、ディープテック以外に比べて初期段階から希薄化率が高い傾向にある。一方、事業化・量産化を見据えるシリーズD以降では、希薄化率が11%まで低下し、ディープテック以外の企業との差も縮まっている。

設立から各シリーズの資金調達までに要する期間を見ると、2026年上半期のシリーズAへの到達月数中央値は、ディープテックが43カ月と、ディープテック以外の51カ月より8カ月短い。

ディープテックでは、事業化に先立ち、早期から研究開発に多額の資金が必要となる。そのため、大学などの研究成果や特許、技術的な優位性を根拠にエクイティで資金を調達し、補助金も組み合わせながら先行投資を進めることが多い。

一方、ディープテック以外では、顧客獲得やプロダクト・マーケット・フィット(PMF)の達成がシリーズA調達の重要な判断材料となり、十分な成果を示せるまで調達が難しいケースもある。こうした資金需要や投資判断の基準の違いが、シリーズA到達までの期間差につながっている可能性がある。

しかし、シリーズD以降ではディープテックが112カ月、ディープテック以外が80カ月と、到達期間の長さが逆転する。初期段階では技術の将来性を評価して資金を調達できても、シリーズD以降では実証から商用化への移行や量産技術の確立など、収益化に向けた事業進捗を示す必要がある。

資金を調達しなければ開発を加速させられない一方、資金調達には開発や事業化の進展が求められる。こうしたディープテック特有の難しさが、到達期間の逆転の一因とみられる。

ディープテックの次なる注目領域

今後のディープテック市場を考えるうえでは、政府の産業政策も重要な要素となる。

2026年7月に閣議決定された「日本成長戦略」では、官民が連携して2040年度までに累計370兆円超を17の戦略分野に投じる。そのなかには、AI・半導体、航空・宇宙、量子、フュージョンエネルギー、マテリアル、創薬・先端医療、合成生物学・バイオなど、ディープテックの領域も数多く含まれている。

戦略17分野の1つであるフュージョンエネルギーで、特に注目を集めているのが京都フュージョニアリングだ。日本でフュージョンエネルギーへの関心が現在ほど高くなかった2019年に京都大学発スタートアップとして設立された。

同社は、フュージョンエネルギーの実現を目指す世界各国の開発プロジェクトや研究機関に対して、プラズマ加熱装置「ジャイロトロン」などの周辺装置を開発・提供しており、国際入札の大半を獲得しているという。すでに140億円を超える受注契約を獲得している。

こうした事業実績を背景に、2026年8月にはシリーズDラウンドで167.2億円のエクイティ資金を調達するとともに、90億円の融資・与信枠を確保したと発表した。8月7日時点でのSpeedaの推計では、企業評価額は1,172億円にのぼる。

足元では、装置の量産体制構築や海外事業の拡大を進めるなかで、エクイティに加えてデット資金も確保しており、エクイティとデット(与信枠も含む)での累計調達額は400億円を超える。

インタビューでは、複雑な技術を事業の可能性として伝える「技術の翻訳」や、設備・開発体制を投資家に直接見てもらう工夫など、実践してきた6つのアプローチを紹介している。

もっとも、一口にディープテックといっても、同社のように大型の受注契約を持つ企業もあれば、研究開発が中心で収益化までに長い時間を要する企業もある。事業化までの期間や設備投資の規模、売上の見通しはさまざまであり、活用できる資金調達手段も異なる。

だからこそ、どの段階で何を示せば次の資金調達につながるのかを見極め、事業化までの長い時間軸を見据えて、技術開発と資金調達の計画を一体で考えることが重要となるだろう。

ディープテック市場の今後の課題

国内ディープテック・スタートアップの資金調達額は、この10年間で約5倍に拡大した。一方で、市場の持続的な成長に向けては課題も残る。

2025年に資金調達したディープテック企業は981社。個々のセクターではさらに調達社数が限られ、特定企業の大型調達が年間の資金調達額を大きく左右しやすい。今後は、産業政策の後押しも受けながら、新たなスタートアップをどこまで創出・育成し、研究成果の事業化につなげられるかが重要となる。

加えて、課題となるのがEXITの件数と規模だ。2025年にIPOしたディープテック企業は13社。被買収・子会社化は18件、事業譲渡は9件と、EXITの実績はまだ多くない。

投資家にとっては、十分な投資回収につながる規模のEXITが増えることが重要だ。回収した資金が次のディープテック・スタートアップへの投資に回ることで、市場の持続的な成長にもつながる。

そのためには、VCによる投資だけでなく、事業会社や金融機関、政府・自治体など、幅広い主体の関与が欠かせない。特に事業会社には、出資にとどまらず、顧客や共同開発のパートナー、さらには買収主体としての役割も期待される。

データだけでは見えない、ディープテックの実践知

本記事では、資金調達動向を中心に、日本のディープテック・スタートアップ市場の実態を紹介した。 一方、資金調達や投資・協業の実務にあたっては、技術や知的財産をどう捉えるか、事業化までの資金調達をどう考えるか、事業会社はどのような姿勢で関わるべきかなど、データだけでは見えてこない論点も多い。

本記事のもととなった『ディープテック・スタートアップレポート』では、全145ページにわたり、市場動向を詳細なデータで分析するとともに、スタートアップや投資家、事業会社へのインタビューを通じて、資金調達や投資・協業に関する実務家の考え方や視点を紹介している。

前編「市場動向と現場から学ぶファイナンス戦略」では、主要8セクターや大学発スタートアップ、投資家動向などを詳細に分析。さらに、ANRIの元島氏による補助金活用の解説や、京都フュージョニアリングのファイナンス・IR戦略に関する事例を収録している。

後編「投資・協業の実践」では、VC・CVC・機関投資家など8名へのインタビューを通じて、ディープテックへの投資判断の基本原則、技術領域ごとの評価・事業化の論点、事業会社による投資・協業のあり方などを取り上げている。

販売価格・お申し込み方法

本レポートは、前編・後編を合わせた完全版のほか、各編単独でもご購入いただけます。

  • 完全版(前編+後編、全145ページ):240,000円(税別)
  • 前編「市場動向と現場から学ぶファイナンス戦略」(83ページ):120,000円(税別)
  • 後編「投資・協業の実践」(67ページ):120,000円(税別)

お支払いは請求書払いとなります。詳細・お申し込みは以下のページよりご確認ください。

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執筆:平川凌、デザイン:山下和奈佳


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