経営者の悩みが尽きることはない。事業拡大はもちろん、そのための土壌づくりに組織のマネジメント...やりたいこと、やらなければいけないことが溢れている。
悩める後輩にセンパイが贈った言葉はただ一つ、「やりきること」だった。
Resily堀江さん(以下、堀江) 10月にamiでライブ配信させていただいた、クラウドOKRを提供しているResilyの堀江と申します。よろしくお願いします。
早速、ご質問させていただいていいですか?
スマートキャンプ古橋さん(以下、古橋) こちらこそよろしくお願いします。
堀江 ResilyはOKRという、目標管理のフレームワークをクラウドで販売している会社なんですが、OKRを知らない人がまだまだ多いです。どう世の中に啓発していくかすごく悩んだ結論としては、メディアなんじゃないかなと思っています。
メディアを立ち上げようと思っているんですけど、オウンドメディアは世の中にものすごい数があるじゃないですか。
もはやそれ自体が古いと言っている人もいますが、本当に尖ったメディアでいうと、新R25さんや、NewsPicksさんといったメディアのレベルまでコンテンツの力を引き延ばしていかないと、目立てないと思っています。
古橋さんはメディアを軸にサービスを提供されているという背景から、「オウンドメディアをやるべきなのか」「やるんだったらどうしたらいいか」「そもそもやらないほうがいいのか」、その辺りを聞きたいな_と思っています。
オウンドメディアの成功と失敗を分けるカギ
古橋 僕らもオウンドメディア要素があるボクシルをやっていますが、「絶対にやったほうがいい」と思っています。
OKRという言葉はここ最近に出てきたものだからこそ、「OKRといえばResily」みたいな立ち位置を取れるフェーズだと思うんですよ。
たとえば最近だと、Uniposさんがピア・ボーナス(従業員同士で少額の成果給を送れる仕組み)のサービスを展開していますが、ピア・ボーナスという単語はこれまでも存在していたけど、普及はしていなかった。
そういった、「まだ普及していないけど自分たちでその概念を広める」ことで、自分たちがシェアを取っていくことは、戦略としてありだと思っています。
OKRは僕もすごく注目していて、実際に検索のトレンドとかを見ると、ビットコイン的な伸び方をしている。
なんでこんなに伸びたのかと思ったら、ジョン・ドーアがOKRの本を出したから。
あの本が起爆剤になって、市場をつくったんじゃないかと思うんです。
なので、メディアはメディアでも、ゲリラ的にドカッと狙いに行くようなやり方で配信していくのはありかなと思っています。
僕はやるべきだと思っているんですけど、コツコツやるオウンドメディアは、すごく時間がかかるんですよ。
時間とコストがかかるので、「何とトレードオフするか」という判断になると思いますが、絶対にやったほうがいいです。
堀江 なるほど。
古橋 この会社規模であれば、堀江さんがブログを書く。
堀江 書きまくる。
古橋 そういうことが、ユーザーさんにも一番刺さるし、クライアントさんに受け入れてもらえるんだと思います。
とはいえ、ブログだけだとイメージ湧かない人も多いと思うので、ケーススタディや、それこそ、デモを全部見せちゃうとか。(笑)
OKRサービスの画面がいまいち分かっていないと、「OKRという言葉は知ってるけど、どういう評価軸でやるんだっけ?」という疑問が生じるはず。スモールでもよいので、デモを見せるとイメージが湧くんじゃないかなと思います。
堀江 分かりました。
「オウンドメディアをやるならこういうケースに陥らないほうがいいよ」みたいに、気をつけるべきことはあります?
古橋 やめないことですね。(笑)
堀江 やめないことですね。継続すると!
古橋 オウンドメディアってみんな始めるんですけど、結局やめちゃうんですよね。
堀江 大変ですよね。
古橋 はい。とくにBtoBだと、ROI(投資した資本に対して得られた利益)を見るので、「予算をいくらかけてどれぐらいリターンが出たんだ」って計算しても、オウンドメディアは、数値が外れるんですよ。
「1年で100万PVを出したら、そこからのコンバージョンレートが何%で~」みたいに、計算してKPIを出しても、ほぼ間違いなく達成しない。(笑)
それでも継続的にやり続けられる体制を、いかにつくるかということですね。
僕らも今、BtoBのSaaS企業に向けて、主にマッチング支援をしていますが、もともとは「企業のオウンドメディアを立ち上げるとお金も時間もかかるので、そこはボクシルに丸投げしてください」という思想から始まっています。
続けられているSaaSの会社さんもあり、そこはすごくうまくいっています。
オウンドメディアを続け、その中でわれわれのサービスも活用していただいたりしながら、愚直にやり続けるチームがあるかがすごく重要です。
ぼくもメディアが好きなので、自分でも書いていたんですけど、もし社長じゃない人がメディアを始めると、社長は「お前、これいくらかかるの?」みたいに思いますよね。
板挟みになってしまうので、そこをちゃんと堀江さんがリードできるかがすごく大切。
堀江 分かりました。僕がやりきるかどうかということですね。
古橋 全てそうなんですけどね。(笑)
堀江 分かりました。メディアを軸にサービスされている方の意見で、非常に腹落ちしました。
もう1つ、SaaSのバックグラウンドや知識がものすごい豊富な方に、ガチで相談したいことがあります。
古橋 何ですか? そんなに別に詳しくないよ。(笑)
メインターゲットを見定める
堀江 お客さんのところに行ったら、「クレジットカード決済はないの?」というピュアな質問が出てきて、どうしようかすごく迷っているんですよ。
Stripe(カード決済システム)を使えば、システム的にはそれほど工数重くなくできると思うんですけど、クレカ決済に踏み切るべきかどうか。
その基準をもしお持ちであれば、何を軸を判断すればいいのかというのを聞いてみたかったんですよ。
古橋 絶対に入れたほうがいいと思います。(笑)
堀江 入れたほうがいいですか、マジですか?
古橋 はい。僕の持論なんですが。でも、うちはクレジットカード決済は入れてないんですよ。(笑)
堀江 入れてないですよね。
古橋 入れてない。(笑)
裏側の話をすると、僕らがつくっているのはマーケティングのプロダクトなので、「プロモーション予算」みたいな考え方なんですよ。
「今年度はボクシルにいくら使ってもらう」という考え方になるので、クレカで月額決済というモデルは、思想的にあまり合っていない。
ちなみに、月額いくらの想定ですか?
堀江 だいたい、2万円~3万円です。
古橋 僕の肌感覚的には、10万ぐらいまでならカードでいけるんじゃないかと。
それでいうと、AWSって月何十万クレカで決済されたあと、無慈悲なメールが来るじゃないですか。
堀江 無慈悲なメール、来ますね。
古橋 「請求が完了しました」みたいにできれば、経営サイドの管理工数がかなり減るので、スモールな金額であれば、クレカ決済を導入したほうが絶対にいいと思います。
僕らはまさに疲弊していますけど、会社の規模が大きくなってくると、締め作業が発生したときに必ず予実のずれが出てしまう。
堀江 会社側としては工数が減ると。
古橋 リアルな話ですけど、クレカ決済はユーザー目線から見ても、企業目線からしても入れたほうが便利だと思う。
でも結局は、OKRがどこに刺さるかと思っているんですよ。どこが一番のメインターゲットになるのか。
僕の中では、ある程度大きくなり始めたスタートアップが、ファーストクライアントになると思っています。
そういうところはクレジットカードの抵抗感が絶対ないはずなので、基本的にはカード決済で月額をとりつつ、規模が大きなところは違う決済方法でもって行くのがいいんじゃないですか。
カード会社も、法人の決済を広げたがっているので、僕はありな気がしますね。
堀江 カード決済であれば、取りっぱぐれないですもんね、確かにね。
分かりました。大きなテーマを2つ持ち帰ることになって、どうしようかと思っているところです。
僕ばっかり聞いてしまっていますが、もう1ついいでしょうか。
古橋 大丈夫です。
社長としての時間の使い方
堀江 Resilyは今年で2期目なんですが、スマートキャンプさんは今年で5期目ということで、古橋さんの社長としての時間の使い方の遷移を、ざっくり聞きたいと思っています。
今まで自分は、プロダクトマネージャー、営業もやりましたし、リスティング広告についても全て見てきて、最近は、採用とかプロダクトに少しずつシフトしています。
参考までに、古橋さんがどういう遷移を経てきたかを聞きたいです。
古橋 最初から今までですか?
堀江 そうです。
古橋 最初は全部やっていましたよね。コンテンツもつくるし、営業もやるし、プロダクトワイヤーフレームも書くし、仮説検証、採用もやった。
まずはエンジニアがどんどん入ってくるので、開発を見ている時間が減るようになり、そのあとはメディアも人材が入ってきて僕がやることが減り、そして営業、ファイナンスも代わっていきました。
今フォーカスしているのは、大きめの企業さんとのアライアンス、諸々のファイナンスの準備、採用面接、この3つですかね。
それほど本質は変わらないんですけど、すこしずつ上流工程に行くようなイメージです。マインドもあまり変わらず、事業をつくるのがすごく好きなんです。
新しいプロダクトが出ても、最近だとチームに招待もされないんですが、すごく楽しそうなので自分から取りにいってます。「ちょっと入れて入れて」みたいに。(笑)
堀江 すごいですね。リーダー像としては理想的な状態な感じがします。
古橋 今、ようやくという感じです。事業をつくるのがすごく楽しいので、この気持ちは忘れずにいたい。
会社の規模としては、50人ぐらいになりました。
堀江 大きい!
古橋 「もうスタートアップじゃないよ」とメンバーには伝えています。スタートアップ自体は好きなんですけどね。
堀江 このタイミングでマネジメントの仕方も変わってきているということですよね。
古橋 逆にビジョナリーな部分もちゃんとみんなに伝えていく。
会話できる数が減ったぶん、「今、何を考えているのか」「どういう未来を一緒につくっていきたいのか」について、前より発信する機会が増えたという感じですね。
メディアを使わせてもらったり、直接話したりといろんなパターンで工夫して発信しているんですが、難しいことは難しいですけどね。
堀江 リアルな話をすると、現場がすこしぐちゃっとなることがあるじゃないですか。
古橋 全然あります。
堀江 そういう時は、どこまで自分で入っていきます?
古橋 今は任せていますね。マネージャーが10人ほどいますが、本当にマネージャーがギブアップするまでは、自分はあまり入らないようにしています。
僕は基本、経験ベースで学んでいくんですが、50人ぐらいまでの人数で想定され得るトラブルはこれまでとあまり変わらない。
たとえば、新しくプロダクトをつくるときは、5人ぐらいで始めるじゃないですか。そうすると、僕が5人ぐらいのチームでやっていたときと同じことが起きるんですよ。
歴史はめちゃくちゃ繰り返すんです。
繰り返すんですけど、「いつか見た景色」になっているので、あまり動じない。「既視感をどれぐらいつくれるか」ということも、20代の頃は大事にしていましたね。
堀江 なるほどな! それで、「100歳までに事業1,000個」という目標を立てているんですね。
古橋 そういうわけではなくて。(笑)
なるべく達成しにくいほうがいいじゃないですか、目標って。
堀江 たしかにおっしゃる通りです。工夫のしがいもありますからね。
古橋 そんな感じですね。
堀江 最後に、我々ぐらいのフェーズのSaaS企業に対するアドバイスがほしいです。たぶん、見ている方の中にはSaaS企業で働く方もいると思うので。
古橋 何のアドバイス?
堀江 1期目、起業して3カ月のSaaSのスタートアップに対するアドバイスをいただきたいと思います。
古橋 社長が泥臭く営業して記事を書け!(笑)
堀江 分かりました。泥臭く営業して記事を書きます。
古橋 今は情報量が多いので、情報をインプットして表面的に理解することはできても、体現するのは難しい。
本質的にはやるべきことはそれほど変わらない。
そこをブラさずに、情報が多い分、「ちゃんと情報を取捨選択してやるべきことをやる」という、当たり前のことをやる。
僕も我流なことを思いついて違う角度からやろうとするんですけど、「最初に立てた大きな道筋から外れて、最後は結局大通りに出る」みたいになっているので、ブレずにやればいいのかなと思います。
堀江 分かりました。