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2019/12/27

「選択肢が増えれば、集中力は増す」39歳、役員を辞めて起業した理由

  • #起業ストーリー
  • #HRTech

年齢、家庭、役職ー。

新しいチャレンジをする際に、ためらう理由は数多くある。その結果、挑戦したいと思いながらも、行動を起こせないない人は多い。

地方の中小企業に特化した人材マッチングサービス「JOINS(ジョインズ)」を運営する猪尾 愛隆氏は、ためらいを感じながらも起業の道へ身を投じた1人だ。

博報堂を経て、投資型クラウドファンディングサービスを責任者・取締役として立ち上げ、12年間運営した後、JOINSを創業した。

起業する前は、会社でポジションを失う恐怖心から「休むとなかなか言えない時期もあった」と話す彼は、なぜ起業を決断したのか。

「恐怖から自分の本心を無視していた」と語る猪尾氏に、起業に至るまでの過程を聞いた。

※本記事は、以前noteで公開した記事を再編集した内容です。

CONTENTS

非難される怖さから、家族の時間をないがしろに

起業前はスタートアップで役員を務めていましたが、なぜ起業したのですか。

「自分の人生を生きられていない」と気付いたからです。

転職して2社目のスタートアップで、10年ほど役員をやっていました。

会社や事業に対して全力で取り組んでいましたし、やりがいも感じていましたが、その環境を失う恐怖心も抱いていたんですよね。「今の水準の給料をもらえて、やりがいも感じられるのはこの仕事しかない」と思い込んでしまっていました。

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猪尾 愛隆(いのお・よしたか) /JOINS 代表取締役。 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、博報堂を経て、ミュージックセキュリティーズ株式会社に2005年に入社。投資型クラウドファンディングのプラットフォームであるセキュリテ事業の責任者・取締役として事業立ち上げし、12年間運営に従事。2017年6月に退職し、JOINS株式会社を創業。

そんな中、家族が企画してくれてた初めての海外旅行を直前でキャンセルしてしまって。

「旅行で休む」と会社に言ったらメンバーから非難されると怖くなり、自分の居場所を守ることを優先して家族の想いをないがしろにしてしまったんです。

役員だったにも関わらず、怖さを感じるものでしょうか。

同じ会社に長年勤めていたことで視野が狭くなっていたのに加え、35歳を過ぎていたことで自分には今後転職できる企業はないと考えてしまっていたのもあります。

自分が役に立てることは多くあるのですが、その時は1つの側面でしか自分の価値を感じられないことが多かった。気付かないうちに、そこに固執してしまっていたんです。

その結果「今やっていることが自分ができることのすべて」と錯覚し、恐怖心から自分の本当の感情を押し殺してでも、その状態を守ろうとしていました。

逆に言えば、いろいろな角度から自分が役立つ場所を把握できれば、経済的にも精神的にも自立できます。

自分が苦しんだ状況を解決する「自分の居場所を知れるサービス」をつくりたいと思い、会社を辞めて起業しました。

役員を辞めて起業することに対して、家族から反対はなかったのですか。

家族に心配をかけないように、起業する前にあえて転職活動してみたんです。その結果、企業から内定をいただけました。

「起業して失敗しても、雇ってくれる企業があるから今チャレンジしたい」と伝えたところ、納得してもらえました。

何か決断をする際に選択肢を増やすことで、本当にやりたいことに集中できることはあると思います。 今のやっていること以外にも、能力を発揮できる場所があることが分かると、視野が広くなるからです。

また、家族を含め周りの人も安心できますし、自分にとっても視野を広げられるきっかけになります。

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「300年続く会社」を支援したい

いま運営されてる事業は大都市×地方に特化した人材マッチングサービスですが、なぜそこに着目したのですか。

前職のクラウドファンディング事業で、300年続く酒蔵や林業のような地域で代々継承してきた会社に触れる機会が多くあり、日本の大切な価値観が次の世代に残せる企業の手伝いをしたいと思ったからです。

ある酒蔵のお手伝いをしていた時にそこの人が、「酒蔵がつぶれることは、その地域の食文化が1個失われること」と言っていて。

彼らは今まで長いところだと300年間事業が続いている企業もあるので、これから数百年後まで続けることをミッションに事業をやっています。

酒蔵だけではなく、農業や林業、町工場のように、地方にはその土地独自の自然や文化、技術を事業を通じて守ってる中小企業がたくさんある。

そういった今まで自分が追い求めていた「売り上げがいくらか」とは異なる仕事の価値観が、カッコいいと思ったんですよね。

実は地方の中小企業の再興は、経済的なインパクトも大きいです。地方は儲かりにくく、経済的なインパクトが少ないと思われがちです。

しかし例えば、日本全体のGDPは約530兆円(内閣府 平成26年度県民経済計算)ほどですが、東京や大阪、名古屋などの大都市を除いた、ローカル経済でも約314兆円もあり、全体の約6割を占めています。また、企業数も中小企業が全体の99.7%を占める。

つまり文化的にも経済的にも、地方の中小企業が頑張れる環境をつくることは大きな意味をもっています。

その上で活性化に向けた重要な要素が「人」。中小企業では人が足りておらず、休廃業・解散してしまう企業のうち、半分は黒字の状態です。これは本当にもったいない。

お金はあっても、実行する人を集められないために前に進めない。

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人手不足は地方に限らず全国的に当てはまります。人材マッチングで解決できるのですか。

解決のカギは、少ない人数でも事業を回していけるように「生産性上げる仕組み」をつくれる人材です。現場の生産性を上げるために組織化や業務マニュアル作成をしている大企業の人などが当てはまります。

これらの人材を中小企業で増やせれば、大きく好転する可能性は十分にあるでしょう。

しかしそれらの人を採用しようにも、大都市と地方では給料格差もあり難しい。

そこで考えたのが、週1日などの少しの時間を集めて副業で働いてもらうようにする形でした。週1日働いてもらって、10-20万円払う形にすればいいのではと考えました。

週5日来てもらって100万円は払えませんが、10-20万円なら払える企業は多いです。

働く方も手伝っている企業に転職するしないに関わらず、環境が変わることで別の角度から自分の役立てるポイントを見られるので、今やっている仕事の質も向上する。

今はまだ地方に行くと聞くと都落ちのように感じ、ためらいがある人も多いのではないでしょうか。

しかし見方を変えれば、普通であれば旅行で行くような場所を職場にできたり、会社も人数が少ないので部長のような重要な役職をいきなりやれるチャンスもあります。

新しい価値観として「都市部との環境の違いをうまく使いこなす働き方」を広めたいです。

(聞き手:藤野、森 編集:町田 画像:INITIAL)

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