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2020/12/15

強いコミットで信頼のスパイラルを起こす、凸版印刷CVCの闘い方

  • #VC/CVC

CVC活動を行う上で、スタートアップとの協業は避けては通れない。今回は、凸版印刷のスタートアップ投資とコミットに焦点を当てた。大手印刷会社がスタートアップとどのように協業し、ビジネスを展開しているのかについて解説する。

トッパングループでは中長期的な経営戦略の一部として、成長事業領域におけるオープンイノベーションや少額出資、買収を通じた事業展開の加速を掲げている。この中で、少額出資を手段としてスタートアップと連携し、事業開発までを手掛けるのがトッパンCVCのチームとなる。

本インタビューでは、凸版印刷株式会社 戦略投資センター課長、ユニファ株式会社 社外取締役の坂田卓也氏のほか、国内投資チームの吉田 光志氏にCVCの投資スタンス、投資先へのコミットメントについて話を聞いた。

CONTENTS

国内外領域の投資プロフェッショナルが集まる、4つのチーム体制

現在のチーム体制を教えてください。

坂田 卓也氏(以下、坂田) 凸版印刷は事業開発本部の戦略投資センターがCVC活動を担っています。

部署は国内投資、海外投資、PoC(Proof of Concept、実証実験)、管理を担当する4つのチームに分かれています。

国内投資チームは、スタートアップを探して投資のクローズを行うほか、出資先と事業開発を行います。海外チームも同様の構造で、PoCチームが入って支援する場合もあります。

PoCチームは投資実行前の実証実験の支援や、投資後の事業部との橋渡しを行なっています。目先の売上にはなりにくくても、3〜5年後の事業化が見込める案件はPoCチームが担当します。

管理チームは、主にモニタリングを行います。ただし独自でソーシングを行なったり、国内投資チームと一緒に投資をすることもあります。

2016年の戦略投資センター設立以降、約40件に投資を行なっています。年間の投資件数は10件程度で、投資先の中には、私たちが出向する場合もあります。

国内投資チームメンバーである吉田さんにもお伺いします。凸版印刷で投資業務をしようと思ったきっかけを教えてください。

吉田 光志氏(以下、吉田) もともと2009年に新卒で凸版印刷に入社して、当時は坂田さんと新規クライアント開拓の日々を送っていました。2016年に転職したエードットでは、執行役員・管理部部長として会社を上場させることができたのですが、1社しか経験していない状態ではファイナンスの知識が身に付いていない気がしていました。

そんな時に坂田さんに誘っていただいたことがきっかけで2019年に再びジョインしました。凸版印刷に戻った理由は、ファイナンスの知識を幅広く活用した業務ができて、刺激的なスタートアップと出会える場所だからです。

戦略投資センターには、どのようなバックグラウンドがある方が多いですか。

坂田 国内投資チームには法務出身、新卒が2人います。海外チームは中途入社のVC経験者や、PoCチームはIT企業出身、研究所出身、管理チームにはPEファンド経験者や、財務コンサル出身者もいます。

それぞれの専門家がいるのでセンター内で何か質問すれば、誰かが何かしら応えてくれる環境です。

足りないピースを探し、仮説に基づいた未来にベットする

どのような投資スタンスで行なっているのでしょうか。

坂田 投資スタンスとしては、ミッシングピースとムーンショット、の2点を意識しています。

ミッシングピースとは本来足りないピースを探す、という意味ですが、自分たちが戦略上やりたいことを実現するためにその機能を持っているスタートアップと協業していこう、というものです。

もう一方のムーンショットは、マーケットの将来性が非常に高く、これまで自分たちが培ってきたマーケット感覚やアセットを生かせる仮説を立てた上で、野心的にチャレンジして圧倒的な成果を目指す、というものです。

ミッシングピースが圧倒的に多いですが、ムーンショットにも挑戦しようとしています。

事業シナジーはどのように計測していますか。また、投資領域はどのように決めているのでしょうか。

坂田 シナジーを数値管理・設計するものと、事業戦略的な意味合いで投資を行うパターンがあります。

3年後に数十億狙いたいと決めるものもあれば、例えばA社とB社が一緒にプロダクト開発を連携して数十億を狙う場合もあります。

一方で中には3年よりももっと長いスパンで、5〜10年後に花咲くものもあります。そうした場合は事業計画書を今から作っても仕方がない。ただマーケットは必ず出来てくるから、その時を見据えてジョイントベンチャーをつくる場合もあります。

アロケーションの枠は細かく決めていませんが、目安となる領域はあります。

1点目は、弊社が定めている成長4領域(「健康・ライフサイエンス」、「教育・文化交流」、「都市空間・モビリティ」、「エネルギー・食料資源」)に取り組んでいるかどうか。

2点目は、成長領域の中からキーワードを3〜4つ選び、優先順位の高いものからソーシングする取り組み方です。

今回のコロナが与えた影響のようにマーケットは常に変化しているので、適宜見直しているかたちです。

特に近年力を入れているのは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」ですね。何故かと言うと、私たちの会社はそうした取り組みをずっとやってきたからです。

電子チラシサービスの「Shufoo!」や、電子書籍ストア「BookLive!」などはまさにそうですね。自分たちの強みとなるプロダクトを作って、顧客との密着度や信頼度を積み上げていく、というのがこれまでの売り方でした。

一方で、そうしたサービスが次々に生まれる会社ではないので、自分たちに足りない部分をスタートアップに頼っているとも言えます。

投資実績を拝見すると、実に様々な領域に投資されています。宇宙ビジネスにも進出されていますね。

坂田 宇宙スタートアップのispaceは、ムーンショットのパターンですね。彼らは宇宙空間の中に住環境やインフラをつくっていきたい理念を持った会社です。

ミッションに共感し、パートナーになりたい思いから、いくつかの仮説や事業提携テーマ、研究開発テーマなどに取り組んでいます。

ゼロからCVCの仕組みをつくる。特徴的なある仕組み

凸版印刷内でのCVCは坂田さんが始められたんですか。

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