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2019/07/30

見積り作業を劇的に変える。購買担当100人の欲しかったに応えるSaaS

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スタートアップ最前線 by ami

「SaaSってお客さんに対してのメリットがすごく大きいんですよ」

SaaSが製造業のお客様にとってどれほど有用か語る松原氏は、営業職とVC業務を経験した後、2018年にA1A株式会社を設立。同社が提供するRFQクラウドは製造業の購買部門向けSaaSで、見積査定を効率化させることで最適な購買を実現する。

SaaSというビジネスモデルがIT業界ほど認知されているとはいえない製造業においても、お客様から返ってくる言葉は「これが欲しかったんだよ」という好意的な反応。

この言葉を引き出す裏には、SaaS自体が持つ強みと松原さんがサービスを提供する上で大切にしている思想があった。

CONTENTS

製造業が抱える見積り業務のむずかしさ

RFQクラウドはどういった事業ですか。

A1A CEO 松原脩平さん (以下、松原) 製造業の購買部門向け見積り査定システム「RFQクラウド」というSaaS(サース、Software as a Service)を提供しています。

製品が解決する課題は主に以下の3つです。

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(出所:AIA 会社説明資料)

①サプライヤーから受け取る見積りフォーマットがばらばらで比較ができない

②過去の類似品の見積書が残っておらず、属人的に管理されている

③見積依頼の実施や比較資料への転記作業など、単純業務の負荷が大きい

これらの課題は、サプライヤーが買い手に見積りを送るというあたりまえの商習慣によって発生していると私たちは考えています。売り手の書式、フォーマットで買い手が見積りをもらうかたちになるので、PDFやFAXの見積りが散在してしまい、買い手側は見積りを管理しきれないという状態が発生していました。

見積りの枚数が少なければいいのですが、購買担当者は1日におよそ10~30品目ぐらいの見積り依頼を行っています。加えて価格の妥当性を見るために数社に相見積りを取ると、受け取る見積りの枚数は膨大になるんですね。

そこでわれわれは解決策として、商習慣をガラッと変え、購買担当者が定めたフォーマットにサプライヤー側で見積りを入力してもらうことで、同じ基準で見積りを取っていくことを提唱させていただいています。そうすることで、相見積り比較は一瞬でできます。

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(出所:AIA 会社説明資料) 業者によっては、見積る部品数が千を超えるケースもある

加えて、過去の見積りや類似品の見積りとの比較もデータベースを活用することで価格妥当性を見ていくことが可能になります。最終的には原価低減、コスト低減の足掛かりを見つけていきましょうというシステムになっております。

見積りのデータベースを構築していくことで、見積査定の精度を向上し、加えて、業務効率化も進めていくことが可能になるのです。

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(出所:AIA 会社説明資料)

購買担当者は会社を代表して膨大なお金を使って調達業務を行っています。それ故、受領した見積りをExcelに転記して比較表をつくって、なぜこのサプライを選ぶんだ、なぜこの品目を選ぶんだという理屈をちゃんと考えて、妥当性を常に明文化しなければならない。それもシステムでやれば一瞬です。

各ステップで効率化を果たしていくことで、見積りのプロセスにかかる工数が5分の1ぐらいになっているという事例も出ていますので、非常に業務削減効果、業務効率化効果があります。

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(出所:AIA 会社説明資料)

製造業では、メールやExcel以外にもアナログな商習慣はありますか。

たとえばFAXはごく一般的に使われています。私が驚いたのは、CD-ROMを使っていらっしゃるケースでしたね。メールに大きいファイルを添付できない場合、ファイルをCDに焼いて送っていたりするんです。

紙で受け取ると見積りの枚数が膨大になるので、紙をスキャンして共有フォルダーに保存しているような会社さんは非常に大変だと思います。

定額にすれば、見積りコストがゼロになるわけではないのでしょうか。

たとえばペットボトルの蓋をつくっている会社があるとして、材料の価格は常に変動しますよね。

原価はどう構成されているかと言うと、材料費や加工費、運送費や梱包費などから構成されています。それらの費用は市況価格に応じて常に変動する可能性があるので、定額にすることが難しい部分があります。

キーエンスからコロプラネクストへ。toBのSaaS立ち上げに至るまで

製造業に変革を起こしたいと考えるまでの過程を教えてください。

最初に入社したのはキーエンスという会社で、製造業向けに画像処理センサを販売していました。静岡と浜松地区を担当していたこともあり、主に自動車メーカーさんがお客様でしたね。

浜松には自動車業界の会社さんが数多くあるんですけれども、工場の数も多いので同じ会社の複数の担当者が私の扱う商品の選定担当者になっていらっしゃいました。そこで感じたのは同じ会社のA工場、B工場、C工場があったとして、その3つの工場それぞれに商品を売りに行くわけですが、違う金額の見積りを出しても売れるという状況に対する違和感です。

普通は1物1価であるべきだと思うのですが、1物多価になっているという状態が散見されたんです。要は、調達品の情報が横串のささった管理をされていないのでは?と疑問を感じたということです。

製造業向けに営業をやっていらっしゃった方にこの話をすると「そうだよね」という話になりますし、私が購買担当者の方々に営業をする際に創業のきっかけをお話しすると「なるほど」と仰っていただくことが多いです。製造業が抱える課題だといえますね。

課題を感じつつ働かれていた中で、何か転機があったのでしょうか。

「このままいくと、自分はキーエンスでそのまま働き続けるだろう」と感じ始めたのが、3年目の終わりぐらいでした。慣れてくるとすごく待遇もいいし、良い会社なんですね。

それでも「自分はここで3年働いたら次のキャリアを選択すると決めていたな」と思い出し、コロプラネクストというコロプラの投資子会社にベンチャーキャピタリストとして転職しました。

将来的な創業を見据えた場合VCというキャリアは当然いいと思いますし、立ち上げ初期に関われるというタイミングもいいと考えました。

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(画像:lovelyday12 / Shutterstock.com)

VCで働く中で印象的だったことは。

一番衝撃的だったことは、起業家の成長が非常に早いということですね。

起業家さんを支援させていただいた中で、人が大きく増えるタイミング、売上がガッと伸びていくタイミング、そして資金調達したタイミングで起業家さんが大きく変わることを感じたんですよね。

逆に言うとどんどん追い越されていくというか、取り残されていく感覚が強くありました。そこで焦りを持ったことが印象的でしたね。

キーエンス時代の上司の、「10年前よりも去年、去年よりも1カ月前、1カ月前よりも先週、先週よりも昨日、昨日よりも今日のほうが楽しいと思える人生を生きなさい」という言葉がすごく好きなんですが、そんな生き方をしたいという思いは、自分の根幹にあります。

RFQクラウドのアイデアはどのタイミングで考え始めたのでしょうか。

会社を設立したのは2018年6月ですが、2017年12月頃には創業を決意して準備を始めていきました。

実は転職活動中にVC以外の会社の選考を受ける中で、新規事業を考えて来てくださいと言われたことがあり、そのときにいくつか事業案を考えていました。その中の1つのアイデアがRFQクラウドだったんですね。

その後、本格的にRFQクラウドを検討するにあたり、業界のことを調べる過程で、たくさんの購買担当者にヒアリングをさせて頂き、これは課題があると感じました。

50人ぐらい一気にヒアリングをしたんですが、本当に課題の深さを感じましたし、モックを簡単につくって持っていったところ、非常にウケもよかった。プロダクトマーケットフィットならぬ、プロダクトモックフィットを感じたんですよね。「これは行けるぞ」と確信に近いものを感じ、会社を創業をすることを決めました。

toCサービスを立ち上げることは検討されなかったのでしょうか。

最初の創業案づくりのときには、toCのアイデアも出しました。ただ自分がVCだったこともあり、toCのサービスをつくって成功するのはどういう人か、まじまじと見せつけられていたという経験もあります。

「主体として創業案をつくる自分」と、「一歩引いて投資家的な視点で見る自分」がいたときに、投資したいと思えるtoCサービスを描けなかったのが正直なところですね。

SaaSが製造業に浸透するために必要な考え方

製造業向けSaaSはまだ珍しいと思いますが、競争は激しいのでしょうか。

それについて言うと、製造業の会社はSIer(企業や公官庁のITシステムを構築・運用・サポートする業務や企業)に対して依頼を出して自社システムとして作るケースが一般的なので、確かにSIerさんと競合することも少なからずあります。

一方で、競合はするんですが、SaaSはお客さんに対してのメリットがすごく大きいんですよね。たとえばお客さまのところにサービスを持っていくと、「こんなの始めて見た」「こういうのをやりたかったんだよ」と仰っていただけます。

この事業で創業したいと一番強く思ったのは、お客さんに課題を聞きに行ったときに、お客さんから”我々が想定している”課題を次々自発的にお話しいただいた時ですね。

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(出所:AIA 会社説明資料)

「見積り管理できていないんだよね」「査定に時間かかっちゃってね」「価格の妥当性評価が大変なんだよね」といったお話を、われわれが何を言うまでもなく語ってくれていました。そういった状態なので、課題は大きくあると感じました。

われわれが営業をする上では、SaaSであることがすごく強みになっているところは正直あります。スタートアップかつ、SaaS事業者としての戦い方をしていますね。

ユーザーにとってのSaaSのメリットを具体的教えてください。

SaaSという観点で、我々のサービスが喜んでもらえる理由は2つあります。

1つは機能のアップデートが提供されるということですね。

IT業界で考えると横のつながりがすごくあるので、業界の標準化や他社事例を知ることができますが、製造業のお客様はある意味閉じているんです。

そうした背景もあり「御社の要望だけじゃなくて、いろんな会社さんからもらった要望の中で本当にいいと思ったものを機能として実装し御社にも提供しますよ」という提供の仕方はすごく喜んでいただける。これが1つ目の理由です。

もう1つが、SaaSのスタンスです。

「今までにSIerさんがつくられたシステムで困ったことありませんか?」とお聞きすると、「初期費用めちゃくちゃかけたんだけど、それが全然使えなかったんだよね」という話をしばしばいただきます。

SaaSのスタンスはカスタマーサクセスだと思いますが、たとえばうちの場合、「あくまで1年契約です。気に入らなかったら解約できますから導入リスクは少ないです」とお伝えしているんです。

しかし同時に「われわれとしては、解約されてしまうのは本当に避けたいので、お客さんに尽くします。頑張って、お客さんの成功のためにコミットしていきます」ともお伝えしています。

ビジネスとして「お客様の成功を」必然的に支援していくことになることをお話をさせていただくと、お客さまも納得してくださる。そういった点が、SaaSはいいねと言っていただけるポイントになりますね。

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(画像:OPOLJA / Shutterstock.com)

お客様からカスタマイズの要望をいただくことも多いのではないでしょうか。

お客様によってはご要望をたくさんいただく場合もありますね。また、自社システムに慣れていらっしゃるお客さまは、SaaSはカスタマイズ性が悪いですよという資料をつくっているにもかかわらず、「ここは何とかしてほしい」というご要望をいただくこともございます。

そこで一番大事なのは、われわれがどういう思想を持ってプロダクトを作っているか。

要はいろんなお客さまからの話を聞いて、「我々としてこれが最適解だと思っています」という意見を提案することで、お客さまの要望に対して正面から向き合うことが大事だと思います。

様々なお客さまの要望を抽出し、「これが標準化した仕組みとして一番いいと思うんですよね」と言えるプロダクトをいかにつくるか。標準パッケージを「ライセンス利用料」という形で提供できるのがSaaSのメリットで、安価に使える理由でもあるので、我々が提供する機能についての思想と、そこから得られるメリットを丁寧に説明していくことが重要だと考えています。

とはいえ、どのお客さんにもメリットがあり業界の標準になり得るようなカスタマイズ要望に関しては、是非取り入れていきたいと思っています。

アナログな習慣が残っている製造業でも、SaaSは馴染みますか。

非常にありがたいなと思うのが、クラウドというものが意外に受け入れられてきていることですね。たとえばサイボウズのkintoneやUZABASEのSPEEDAがそうだと思います。

今は「クラウドシステムを選ぶにあたってはこの点を気を付けてください」という様に、SaaSプロダクトを選ぶ注意書きがお客様の会社側から、選定者に出されているケースもありますから、それさえ満たしていればそれほどSaaSであることを嫌がられません。SaaSであることのメリットをちゃんと伝えれば、お客さんが合理的に判断してくださいます。

製造業の効率化を進めた先に、松原さんが目指したい未来を教えてください。

われわれは企業間取引、すなわちBtoBの取引をワンランク上にすることをビジョンに掲げています。BtoB(=B2B)を1個上に上げると、A1Aになるんですよ!

BtoBの取引をワンランク上に上げた世界について、われわれは「取引コストが下がった世界」であると定義しています。取引コストは「①探索コスト②交渉コスト③監視コスト」の3つで構成されているのですが、B2Bの取引はそのいずれのコストも異常に高い。B2C,C2Cの取引とは大違いな状況です。しかし、これがそのままであるはずがないと考えておりますし、変わっていくことが必然なのであれば、我々がそのプレイヤーとなっていきたいと強く思っています。

われわれは世界にまたがる企業間取引プラットフォームをつくっていきたいというふうに考えていますし、その足掛かりとして企業間取引で必ず発生する「見積り」の課題を解決していこうとしています。

バイヤーの企業さんの取引先は数百、数千、数万とあるケースがあるので、一気にプラットフォームに集め、最終的にその取引プラットフォームを目指していきたいと思っています。

20190606 A1A松原さんラスト ガウス

編集・写真:ami


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