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2019/07/11

プロダクトの真価は機能で測るな。シリコンバレーで学んだ「価値」の決め手

  • #起業ストーリー
  • #シェアリングエコノミー

大学生でシリコンバレーに渡り起業、プロダクトを譲渡し日本に帰国後2社目を創業。

現在はシリアルアントレプレナーとして「SpaceEngine(以下、スペースエンジン)」の野口 CEOは、新しい卸・仕入れのマーケットプレイスの構築に挑む。

スタートアップの本場シリコンバレーでの起業経験がある野口さんだが、4つ目のサービスであるスペースエンジンには、今まで経験してきた「失敗」が活かされているという。

3度のピボットを経験し、再び挑戦する起業家が考える正しい「プロダクトとの向き合いかた」とは。

CONTENTS

起業のきっかけとなったVCとの出会い

どのようなサービスですか?

スペースエンジン CEO 野口さん(以下、野口) スペースエンジンは、「店頭で商品を販売したいメーカー・ブランド」と「新しい商品の販売を希望する店舗」のマッチングサービスです。現在iOSアプリとブラウザで展開しています。

先日ありがたいことにTechCrunchとNewsPicksに取り上げて頂き、少しずつ認知も増えてきました。

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(画像:公式資料より)

起業を意識したのはいつですか。

アルバイト先に、2017年にクックパッドからMBO(株式・経営権を買い取って独立する手法のこと)したHoliday(ホリデー) 友巻さんがいました。彼が学生団体をつくってアプリ開発をしていたので、そこで一緒にアプリをつくったのが起業を意識した最初のきっかけです。

彼が東京のビジネスコンテストで勝ち有名になっていたので、「自分でもやってみたい」と思いました。

大学3年生のときに友巻さんのチームを抜け、Twitterでメンバーを募集しチームをつくりました。 ちょうどその頃、親しい友達の間だけで使うソーシャルネットワークサービスが出てきたので、私たちもFacebookの使いにくいところを改善したサービスをつくろうとしました。

開発資金はチームメンバーの自己資金で、深夜になったら誰かの家に集まってプロダクトをつくる生活をしていました。

そのあとアメリカに行っていますよね。

プロダクトをつくっているときに、大阪市が主催する若手起業家や学生を対象にしたシリコンバレーツアーに採択されたので、チームでシリコンバレーに1週間行けることになりました。

ツアーはGoogleやTwitterのオフィスを見学したり、インキュベーション施設でピッチをしたりする内容でした。しかし、シリコンバレーへの憧れが強かったので、私たちのチームは1か月余分に滞在できるように飛行機のチケットを取りました。

取ったはいいものの、ホテルに泊まるお金がなかったので、毎回ピッチの冒頭に「この後1カ月間滞在する予定だけど、泊まるところも食べるものもないから助けてくれ」と言っていました。

結果的に、大きいオフィスにちょうど移転したばかりのベンチャーキャピタリストが、プロダクトをApple Storeの申請に通すことを条件に「泊めてやる」と言ってくれました。

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(写真:提供)

そのオフィスには入居企業がまだいなかったので、テントと食糧のカップラーメン、炭酸飲料のスプライトを渡されて、ほぼ軟禁状態で1ヶ月間プロダクトを作らされて(笑)。

シリコンバレーのベンチャーキャピタリストやエンジェル投資家に、時々ピッチしに行くことはありましたが、基本的にはプロダクトをつくっては売り込みに行く生活でした。

最終的にApple Storeへの申請も通ったため、泊めていただいたキャピタリストに出資の話をしにいったところ、「プロダクトはいいけど、マーケットがないよね」と言われてしまって。

チームとプロダクトをつくる技術は素晴らしいので、別の領域でビジネスをやるなら出資すると言われ、結局つくったサービスはローンチさせず別のサービスに変えました。

それから日本で法人をつくり、時折アメリカに戻る生活を送っていました。

最大の失敗は「プロダクトの作り込み」

どのように次のプロダクトを決めたのですか?

ちょうどシリコンバレーでの1か月の生活を終え日本に戻ると、チームメンバーが就職のタイミングだったので、私と今も一緒にやっているCTOの2人以外は全員就職することになりました。

私もCTOも次の事業アイデアが無かったので、ベンチャーキャピタリストの考えを参考にしたビジネスを始めることにしました。

出資してくれたサンブリッジ グローバルベンチャーズは、Salesforce Japanに投資しておりCRM(顧客関係管理)に強かったので、それを活かすために考えたのが「電子名刺サービス」です。

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電子名刺サービス「Cofame」(写真:公式サイト)

当時SansanのEight(エイト、名刺情報管理サービス)も発展途上だったので、マーケットとして成り立つのか疑問はありましたが、その領域に大きな課題があることは分かっていました。

課題感が大きいので、課題全体の1%でも巨大なマーケットになります。全体の1%なら学生のチームでも戦えると考え、その領域に賭けることを決めました。

しかし、そこで大きな過ちを犯しました。それは、仮説検証をし過ぎてなかなかプロダクトを出さなかったことです。

社内で使ったり、β版を使ってユーザーだと思う人の声を集めたりして、機能を色々足してから正式版を出した結果、何の課題を解決するアプリか分からなくなってしまいました。

「交換した名刺データを座っている席次に並び替える、議事録をエバーノートで取れる」といった機能も付け加えたりしていましたが、必要なかったんです。

サービスが使われなかったのは、機能が足りなかったからではなく、そのサービスのコア機能が十分でない場合がほとんどです。使われるサービスをつくるには、プロダクトを早く出し、「本質的な価値を見つけること」が最も大切だと気付くのに1年掛かりました。

ユーザーのニーズを聞きすぎたということですか。

プロダクトを出さなかったので、自分たちでサービスの明確なターゲットを描けていなかったことが問題でした。

ネットで検索すると「名刺管理が面倒くさい」という課題はたくさん出てきます。しかしそれが誰にとっての課題で、なぜ課題に感じているかを検証しないまま、自分たちがベストな解決策だと思うサービスをつくってしまいました。

ビジネスマンが使うと想定していましたが、ビジネスマンというターゲットは対象が大きすぎて、あまり意味を持ちません。それをターゲットにサービスをつくったので、結果的に誰にも刺さらないサービスになってしまったんだと思います。

その後どうしたのですか。

2回目のピボットをし、新たに挑んだのがチャットボットサービスです。

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質問形式で相手の情報を知れるチャットボットサービス(写真:提供)

相手のメールアドレスや電話番号といったユニーク情報を入れると、ネット上に落ちているその人の個人情報を拾ってきて提示してくれるサービスです。

ネットで調べなくても、チャットボットに話しかければ会う人のことが事前に知れる、ビジネスマン向けのセールスアシスタントサービスをつくろうとしました。

ただ、いざローンチしてみると、ビジネスシーンではなくストーキングツールとして使われてしまい、それがカナダのメディアに取り上げられてしまいました。

使われかたをコントロールできれば良かったのですが、当時の私たちはそれができなかったので、最終的に失敗したんだと思います。

その後の方針を共同創業者と話したところ、考え方が異なったため、彼に事業を譲りスペースエンジンを始めました。

よく「譲ったことに後悔はないのか」聞かれますが、自分の意思決定に哲学やロジックはあっても、それに固執せず良いアイデアやもっともな改善点があれば、今までのやり方変えることに躊躇いはありません。後悔はありません。

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シリコンバレーの大手メディアVenturebeatにも掲載された(https://venturebeat.com/2017/04/17/5-bots-to-try-this-week/)

オフライン・リテールに見つけた可能性

スペースエンジンを始めたきっかけはなんですか。

シリコンバレーでGoogle、Amazon、Uber eatsといった大きな会社が、こぞって実店舗やポップアップショップを活用して、プロモーションをおこなっていました。それを見て、オフライン・リテールに注目が集まってきており、既存のプレイヤーも多くないこの領域に可能性を感じました。

スペースエンジンでは前回までの経験を生かし、プロダクト早く出してそれに対するフィードバックを参考にしながら改善していきました。さらにアイデアは貯めずに、思いついた手は全部打っておく。それを徹底して挑んでいます。

しかし、今回もすでに1つ反省があります。自分でビジネスモデルの仮説検証で手を動かし過ぎたことです。

仮説検証をするために、自分たちでお店を構え商品を販売したのですが、人手を抑えて行った結果、私1人で9時から21時まで販売して夜から事業にコミットする形になってしまい、サービスの開発スピードが落ちてしまいました。

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実店舗を使って仮説検証を行った(写真:公式ページ)

反面、やり過ぎたことで得られたこともありました。

当初は、チームから検証方法について否定的な意見もありましたし、私自身としてもやり続ける意味が分からなくなったときもありました。

しかし今になって考えると、徹底的に小売をやったおかげで小売に対する理解が深まり、小売出身者がいないチームながらもユーザーからの専門的な質問にも答えられるようになったと思います。

事業に対する軸がブレない限りは、トータルでみると役に立つことは多いので、やり過ぎて損をすることはないのではないでしょうか。

とにかくやってみることで多くの気付きを得ますが、やっている時はその気付きの多くがまだ必要ないことなので、正確に価値を測れません。

時間が経ち経験が一定の閾値を超えた時、過去の気付きと挑戦していることが繋がり役立つようになります。余裕があるときは、「やり過ぎる」くらいがちょうどいいと思います。

これまで事業をいくつもされてきましたが、どのような軸で取り組まれていますか。

まずは、他の起業家に失敗の共有することを意識しています。

失敗談から自分で学ぶことで役立つことは確かにあります。しかし、自分でやっていると時にロジックよりも情緒的な部分が大きくなり、本人が納得する感情に依存した選択肢を選んでしまうことがあります。

そうすると、過去の経験からその選択肢は失敗の可能性が高いと分かっていても、自分では気付けず見逃してしまいがちです。

だからこそ、私を含め第三者の立場にいる起業家や投資家が助言し、そういった機会損失を減らすことが重要だと思います。

また、自分が非効率だと感じた課題を効率化していきたいです。

今までつくってきたSNSサービスや電子名刺、チャットボット、スペースエンジンは全て自分が課題に感じたことを解決するために始めました。

もしかしたら将来はスペースエンジンのアイデアではなく、別のものに変わっているかもしれませんが、世の中に与える影響の大小に関わらず、課題に感じたことを自分の手で改善していきたいです。

20190613スペースエンジン野口さん1 (1)

文・写真:ami


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