スタートアップ最前線
あなたは何かやりたいことがあるとき、どのように仲間を集めるだろうか。
友人、同僚などの繋がりに留まらず、幅広く一緒に挑戦する仲間を集めるプラットフォームがある。TOMOSHIBI(トモシビ)とTEAMKIT(チームキット)だ。ともにスタートアップが運営しており、TOMOSHIBIは株式会社CAMPFIRE(2019年4月に事業譲渡)、TEAMKITは株式会社Lboseのサービスだ。
自分から旗を上げてプロジェクトを始めるだけでなく、自分のスキルを生かしたい、自分の価値観に合うような仕事がしたい時に、挑戦する仲間のプロジェクトに参加することもできる。
仲間を集めるサービスとして似ているように見える2つのサービスだが、届けたいユーザーとプロジェクトのユースケースが明確に違っている。違いは起業家としての原体験にあるという。
TOMOSHIBI田中氏、TEAMKIT小谷氏が語る、両社のサービスの違いと働き方の未来とは。
仲間を集めるプロジェクトプラットフォーム
TOMOSHIBI田中さん、TEAMKIT小谷さんにお越しいただきました。それぞれのサービス説明をお願いします。
TOMOSHIBI 田中さん(以下、田中):TOMOSHIBIは、仲間集めのプロジェクトチーミングプラットフォームです。
フリーランス・会社員・起業家の立場に関係なく、何かやりたいことがある人が、プロジェクトをつくって仲間を集めるサービスです。人版のクラウドファンディングのイメージで、「この指とまれ」をインターネット上でやるサービスです。
(画像:提供)
基本的な仕組みは、プロジェクトオーナー、やりたいことがある人が、TOMOSHIBI上にプロジェクトを掲載して、共感した人が「一緒にやりたいです」と手を挙げることができます。
メリットとして、プロジェクトページをつくることができます。
個人でやりたいことがある人が、HPを自分でつくるのはなかなか難しいですが、TOMOSHIBIではどんなに小さなプロジェクトでも簡単につくれるので、Webページでやりたいことを発信できます。
TEAMKIT 小谷さん(以下、小谷) TEAMKITは、プロジェクトメンバー募集サービスです。
フリーランスがプロジェクトで働く際に、仲間が必要になる場合があります。そのようなときに、プロジェクトごとにチームを組めるようにサポートしています。
(画像:提供)
TEAMKITでできることは2つあります。 1つ目は、自分のプロフィールページがつくれること。今までの実績や持っているスキル、取り組んできた仕事の変遷といった情報を一覧にまとめることができます。
2つ目は、プロジェクトメンバーの募集ができること。 TEAMKITでは「Tent(テント)を立てる」と言っています。Tentには、プロジェクトの目的や概要、募集職種などがまとまっているので、効率的にメンバーの募集ができます。
(TEAMKITのサービス詳細や原体験に関する記事はこちら)
違いは個人の思い起点か、企業のプロジェクト起点か
どちらもプロジェクトで働く仲間を集めるサービスですが、具体的に何が違うのでしょうか。
田中 届けたいユーザーや、プロジェクトのユースケースのイメージが明確に違いますね。
TOMOSHIBIは個人起点でのやりたいこと、一定のメッセージ性があるプロジェクトを集めたいと考えています。
たとえば、すごい田舎に住んでいるTwitterフォロワー5人ぐらいの高校生が、地元の商店街のために何かやりたいケース。
その高校生の思いに共感して、その地域出身で東京で働いているWebデザイナーさんがLP作成に力を貸したり、隣町の高校生が手伝ったり。思いを起点に仲間が集まるプロジェクトのユースケースをつくりたいです。
一番サービスを届けたいユーザーは、スキルはないけど思いがすごく強い人。
東京にいる僕らだったら、何か新しいことをやりたい時にTwitterや周りにいる起業家に声をかければ多分集まるんですよ。そういった人に対してではなく、人脈もなくて、何から始めたらいいか分からないけど、やりたいことがある若い層にもっと届けていきたい。
小谷 TEAMKITはフリーランスで働く人たちが企業に関わるプロジェクトを集めたい。
今求人自体はたくさんあって、タスクベースのクラウドのアウトソーシングは多いですが、プロジェクトベースでの求人はまだあまりないんですよ。タスクより上段のプロジェクトベースで仕事を捉え、スキルとして明確に表しにくい「経験や想い」といった部分も含めて、企業・個人がお互いに共創できるプラットフォームをつくりたいと思っています。
フリーランスの人たちを集めて、オープンイノベーションのかたちで企業案件に取り組む状態が理想です。規模感・予算共に大きいハリウッド映画や宇宙開発みたいなケースもつくりたい(笑)。
(画像:Seasontime / Shutterstock.com)
プロジェクトを始めたい・参加したいユーザーは、TOMOSHIBI・TEAMKITどちらのサービスを使うか、どう判断すれば良いでしょうか。
田中 自分がどういうプロジェクトをやりたいか、どういう人に集まって欲しいかによって変わると思います。
小谷 本来、サービスによる話じゃないと思うんですよ。
参加するユーザーも、自分のスキルを生かして貢献したいとか、自分の価値観に合うような仕事がしたいときには、どちらも登録していいと思います。
ユーザーが自分の趣味・趣向にあったプロジェクトに参加して、たまたまプロジェクトのプラットフォームが「TOMOSHIBIだった」「TEAMKITだった」というかたちが理想です。
田中 ユーザーにとってはどのプラットフォームを選ぶかはどうでもいいんですよね。面白いプロジェクトがあったらそこに参加すればいいだけなので。
TOMOSHIBIでは、TEAMKITさんのように、スキルの確立したフリーランスの人が揃っているわけではないので、必ずしもエンジニア・デザイナー・ディレクターが集まってくるとは限らないです。
スキルよりも思いベースが強いことが特徴です。思いがあるから手伝いたいとか、共同創業で入ってくる人もいます。 集まる層が違いますね。
プロジェクト単位で働く文化を共創する
目指している方向性が似ていますが、一緒にサービスを展開しようと思ったことはありますか。
田中 一緒の事業でやろうとは思わないですね。事業を始める上でそれぞれの原体験が違っていて、今現在向き合いたい人が違うのは大きいです。
小谷 僕のやりたいことはフリーランスの働き方を変えていくこと。田中くんは個人で思いが強い人が挑戦できる環境をつくること。お互い、アプローチや届けたい相手が違うこともわかっています。
ただ、プロジェクトに関わる・働くことに関する課題感は一緒なので、プロジェクト単位で働く文化を浸透させることは一緒に取り組んでいきたいです。
田中 今、フリーランスと正社員の働き方は完全に分断されているんですよね。
5〜10年経つと、働き方が「フリーランス」「会社員」ときっちり分かれたものではなくてもっとグラデーションのあるものになる未来を想像しています。その時は僕たちのサービスもより似た形になると思っています。
プロジェクト単位で働くにあたって、まだまだ難しいことや、社会的な障害がたくさんあるので、それを越えるために我々含めたプレーヤーが広めていければいいと思います。
(聞き手:松岡遥歌、編集:藤野理沙)