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2019/07/21

志願者40%ダウンの衝撃。「甲子園止まりのアート環境」を変える逆転戦略

#アート

「アートのメジャーリーグ」を目指して、アーティストが技術を磨くー。将来こんな光景が当たり前になるかもしれない。

現在のアート業界には、明確な「夢の大舞台」がないため、その魅力や成功への道筋が描けないのが現状だ。芸術を志す人の最高峰の大学の1つである東京芸術大学への志望者数も、少子化が背景にあったとしても減少傾向だ。

そこに、テクノロジーの力で挑むスタートアップがある。

アーティストが不得意なプロモーションや市場選定のサポート、カフェのカップなどと作品をコラボさせることでアートを身近にする試みをしている。掛け合わせからビジネスが成立する仕組みをつくろうとしているのだ。

弱冠24歳の起業家は、その仕組をどのようにつくるのか。「アーティスト=食えない」の概念を変える野望をきいた。

(前編はこちら

CONTENTS

必要なのは支援ではなく「仕組み」

昨今アートに注目があたっていますが、日本のアート界は盛り上がってきていますか。

山口さんの『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』といった書籍の出版をはじめ、以前に増して「アート×ビジネス」の可能性が注目されるようになってきました。

アート系のスタートアップも少しづつ増えてきており、私たちが最初に資金調達で動いた去年の夏頃に比べて、環境はかなり前向きに変わってきていると思います。

少しずつですが、我々が行っているアーティストと世界中のコレクターをつなぐECサイト「HARTi marche(ハーティー・マルシェ)」にも、注目が当たりつつあるのではないでしょうか。(詳しくは前編へ)

しかし、業界全体でみるとまだまだ厳しい状況にあるのは変わりありません。

まず、アーティストになりたい人が減っています。東京芸術大学美術学部一般入試志願者数推移を見ると、志願者数が12年前と比較して60%になっています。

HARTi-4グラフ

少子化の影響もありますが、「アーティスト=食えない」という考えが広がり、アーティストを目指していた層が、それ以外の職業選択をするようになっている印象があります。

HARTi-4 5

吉田 勇也(よしだ・ゆうや)/ 19歳で起業し、フランス語のオンライン塾を経営したのち事業譲渡。世界40ヶ国をバックパッカーとして巡り、3ヶ国語を習得し帰国。2018年には東京大学i.schoolに通年生として参画、京都大学技術イノベーション事業化コース準優勝を経験。2019年、HARTiを創業。

それを支援していきたいと。

「支援」という言葉には違和感を覚えます。

支援とは、「富んでいる人が貧しい人に分け前を与える」ニュアンスが含まれていると思います。

大学で国際政治を勉強していた時から、一般的に「支援」と言われるかたちは、本当に正しいのか疑っていました。アート業界も同様ですが、フェアトレードが行われなければアーティスト自身の成長がなく、持続可能ではありません。

優れたアーティストはすでに才能はあるので、その才能を欲しているクライアントとマッチングできる仕組みさえあれば、自ずと売れていくと思っています。

例えば、日本で芽が出なかったアーティストが遠く離れたアフリカで人気が出るかもしれない。グローバルな視野で見ると、必ずその作風やストーリーに共感してくれる人はいます。

支援という一方的なお金の流れをつくるのではなく、「買いたい。欲しい。」そういった人に適切に売れる仕組みをつくる。それが私たちが目指すべきカタチだと信じています。

20190717 廣田 円グラフトリミング

世界と比べると大きな差がある(出所:「The Art Market 2018」Art Basel and UBS)

キーワードは「身近さ」

どのようにしてマッチングを実現していくのですか。

まずは、いかにしてアーティストを世の中の人に認知してもらうかが重要です。99%のアーティストは、そもそも名前を知られていません。

大半のアーティストは、4日で10万円程度払って銀座で個展を行い、認知を広げようとしています。しかし、友達しか来なかったり、自分のコミュニティ以外にリーチできていないことがほとんどです。それが稼げていない理由の1つだと思います。

20190720 HARTi非購入理由

そもそも作品に対する認知が低く購入に繋がっていない

アーティストの作品がスターバックスのカップや、Macbookのスリーブなど、もっと身近なところに入ってくれば、その方が圧倒的に認知が広がると思いませんか。

今までだと100万円の作品を買うという選択肢しかなかったものを、版画にしギフト化したり、アロマとパッケージで販売したり、別の形のプロダクトに落とし込みます。それらの収益の一部を、アーティストへ還元する仕組みも可能だと考えています。

私たちがイノベーションを志向する大企業とタッグを組んで、優秀なアーティストとコラボさせることで、認知が広がる。その結果、作品や周辺グッズも売れていく。このスキームをつくろうとしています。

「優秀なアーティスト」とはどのようなアーティストを想定していますか。

イメージは、「スタートアップ的な」アーティストです。

もちろんテクニックや作品内容が優れていることも重要ですが、「なぜ絵を描くのか」という志やストーリーのあるアーティストであることこそが重要だと思っています。アーティストとして生きている理由を追及している作家とタッグを組めれば、自然とお互いに成長できるのではないでしょうか。

過去の実績も大切ですが、志をもったアーティストをどんどん発掘していきたいですね。

どのように探すのですか。

最初はInstagramでフォロワーの多いアーティストの中から、「ギャラリーに加入するのは違うよね」と考えているアーティストを中心にお声がけしています。

例えば、既存のギャラリーでは扱えない、特殊なガラス工芸を用いたアートや、本を折って作った「Book Folding」など、伝統的な“アート”とは見なされてこなかった作風に、特に注目しています。新しい価値観を広げるためには、作風も新しくあって良いと思うのです。

shutterstock 166056710 (1)

(画像:ChameleonsEye / Shutterstock.com)

東京はもちろん、地方にも直接新幹線で私が会いに行き、私たちの目指す方向性と同じ場合は、その場で声を掛けさせていただいています。

イメージとしてはタレントのプロダクションに似ていると思います。

夢を見れる舞台をつくる

なぜ今までなかったのでしょうか。

アートに対して、世の中が目を向けていなかったからではないでしょうか。

市場は重要です。今はモノが溢れ、普通に過ごす分には満ち足りた環境になってきたからこそ、同じものがなくユニーク性の高いアートへの注目が、上がってきたのだと思います。

ファストファッションが流行り、流行を外さないユニクロのようなファッションが広がり、みなと同じものを持っていれば安泰という文化が以前はありました。これは他の先進国でもあります。

そこから次第に、他人と同じではなく、個性的なものがかっこいい、イケてるといった流れに、若者の目線もシフトしています。

そもそも美大や芸大を卒業する人のうち、アーティストを志望する人はどの程度いるのでしょうか。

現状では、「アートで食べていく」と考えている時点で、かなり選りすぐられています。

多摩美術大学の資料より、卒業生1,000人のうち作家になるのは100人前後であり、10%程度です。デザイナーや一般職として就職する学生が大多数です。

HARTi-4グラフ1

これはとても寂しい状況ではないでしょうか。

ただ明確な目指すべき次のステージがあれば、この割合はさらに増えると思います。野球ではメジャーリーグが、バスケではNBAがありますよね。こうした目標がみえると、人は挑戦しやすくなります。

そのステージをHARTi(ハーティー)がつくることで、今まで道を諦められることの多かった「アーティスト」という職業が、選択肢に入ってくるのではないでしょうか。

音楽業界でavexなどがやっているプロダクションのアート版を考えています。夢を見れる舞台を、私たちがつくっていきたいです。

具体的にはどのようなサポートを考えていますか。

いろいろな方向性があると思いますが、作品を売るだけの会社には絶対にならないと思います。

例えば、私たちはセカンダリー市場(オークションなど)といった、作品の転売は一切行わない方針です。あくまでプライマリー市場(画廊、百貨店、アートフェアなど)において、これから戦っていこうというアーティストへ、大舞台への「道路整備」をしたいと考えています。

スタートアップでいうシードからアーリーへの投資に近いですね。

アーティストとして頑張りたいが、ノウハウが足りなく先に進めない。こういった人に対して、プレゼンスキルを教えたり、マーケット選定、価格決定、ブランディング、グッズの販促をサポートするといったことを考えています。

2人3脚で、世界のマーケットに向けて作品を売っていく会社を目指します。

既存の画廊が似たようなことをした場合、競合になりえますか。

競合関係になるとは思いません。私たちは、画廊のシステムを壊そうとしている訳では全くありません。世界で活躍したいけど、そのためにはギャラリーの権威を借りるしかなかった。そんなアーティストへ別の選択肢もあることを伝えていきたいのです。

現に、次のウォーホルやバスキアのような歴史に名を残すことが目標だとすれば、画廊や批評家からの評価は非常に重要です。

私たちは、そこに美術界の人間ではない人々が評価し、価値をあげていくカタチを目指しています。いわゆる「ミシュラン」だけではない「Google review」的な評価体系を作りたいです。多くの人がアートのマーケットにアクセスできないのが、問題だと思います。

ギャラリーオーナーの平均年齢も高くなり、ECサイトでの販売や決済方法など、時流への対応に苦戦している部分もあります。そういった部分は既存のギャラリーのサポートもしていきたいです。

採用はしていますか。

急速に拡大しているので、採用も絶賛募集中です。

特にデザイナーの方を募集しています。どういった場所にアートを取り入れていくか企画提案する際に、プロダクトのデザイン案やコンセプト提案まで落とす部分を一緒にやっていきたいです。あとは、グローバル展開を見据えたマーケティング担当も募集しています

役職問わず、本当にいろいろな仕事があるので、興味を持っていただけた方は、ぜひ1度オフィスまで遊びに来てください。

HARTi-4編集

文・写真:ami

(起業するまでの話はこちら


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