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2019/05/31

屋内ドローンは現場主義から生まれた。新技術を使うには「感」と「意識」の差がカギ

  • #起業ストーリー
  • #ドローン

ミュージックビデオをはじめ多くの撮影のシチュエーションで用いられることが多くなってきたドローン。 荷物の運搬など活用範囲の拡大も見込まれている。

世界の市場規模も2017年には600億円を越え、2020年には6倍近い3300億円規模の市場になると予想されている。

その中でも、今回は屋内の使用に特化した技術「Mark Flex Air」を開発したSpiralの石川さんにお話を伺った。

成長産業とは言え、なぜ国内の市場がまだ小さいドローン事業を始めたのか。どこを目指しているのか。

CONTENTS

amiファシリテーター町田(以下、町田) まず最初に、Mark Flex Airは「誰の」「どんな」課題を解決するのですか?

Spiral 石川さん(以下、石川) まずは「誰の」かでいうと、「屋内でドローンを使いたいけど、自分たちには難しくて使えない」と思っている現場の人たちです。

その人たちは「自分たちの倉庫で棚卸や点検、撮影がしたい」というニーズを持っています。

でも、自社でやろうとすると、「課題は解決できそうだけど、技術もユーザーインタフェースも複雑で使えない」という課題を解決したいです。

町田 いつからドローンに興味を持たれたのですか?

石川 もともとはドローンではなく、宇宙空間を含めた飛行ロボットの開発をやりたいと思っていました。航空機メーカーに勤めていた父親の影響もあるので、生まれたときから興味があったかもしれません。

ドローンについては、大学を卒業する前に、飛行ロボット、今でいうドローンにフォーカスをあてたベンチャーをやっていたので、そのときから飛行ロボットとロボ全般に興味を持ち始めました。

町田 父親が航空機メーカーに勤めていたことで、幼少期に飛行物に関わる機会もありましたか?

石川 飛行機のプラモデルをつくって、それをベランダから投げて、「飛ばないな」と思っていました(笑)。

父親が行っている会社の航空ショーに行って、大きな飛行機に乗せてもらったりして、空への憧れはあったんだと思います。

スライド1

※本文中の写真は、amiライブ画面のキャプチャーです

町田 「飛行機」ではなく、「宇宙空間」まで興味が移ったのはどのような理由だったんですか?

石川 高校生ぐらいのときぶ父親からいろいろな話をされたときに、反抗期だったので「何とか勝ちたい」と考えたとき、父親は航空機で成層圏の下の領域だったので、成層圏の上に行くしかないと思い、宇宙を目指していました。

町田 最近ではドローンという言葉が日常的に使われる機会が増えてきましたが、ドローンには課題が多くあるのですか。

石川` 屋外と屋内では決定的に違うので、われわれがやっている屋内の課題についてだけ話をします。屋内は、GPSが使えないことが一番大きな課題ですね。

GPSは革新的な技術だと思っていますが、屋内では使えません。いろんな技術で補完し合っていますが、GPSに代わる「屋内版GPS」のような技術はできていませんし、自分もその技術を考えています。

GPSに代替するものを皆さん一生懸命探している。探している人たちは研究者が多いんですが、研究者の方たちはストレートに言うと、「現場を知らない」わけですよ。

僕の経験上、工場のおっちゃんが何を考えているかなんて研究者は知らないんですよね。工場のおっちゃんはほとんど競馬か麻雀かパチンコかぐらいのことしか考えていない。

彼らは「自分たちがいいものをつくればいける」と思っています。でも、本当はそうじゃない、というところに参入の余地があります。

ドローンを屋内で飛ばす理由

町田 屋外ではなく、敢えて屋内というところに切り込んだ理由は何ですか?

スライド2

石川 大きく2つあります。

1つは、2016年に会社を始めようとしたときに全世界を探しましたが、屋内のドローンをやっているところがなかったんですよ。それで「これいけるんじゃないの?」って思いました。

もう1つは、10年前、実験で屋外のドローンを飛ばしていて、お客さんの目の前で、30mぐらいの高さからヒューって落下してしまったこと。

町田 自分でつくっていったドローンですか?

石川 はい。木っ端みじんになっても原因があまり分からず、「たぶん環境のせいだろうね」みたいな感じでした。

屋外って自分たちが予期せぬことが起こりやすいし、人間にはどうしようもない環境の影響がある。一方それが少ないのは屋内かなと思って、屋内に特化しました。

町田 屋外は、変数が多過ぎるということですか?

石川 技術的に難しいのは圧倒的に屋内なんですよ。でも、屋外の環境を人間はコントロールできない。たとえば、台風を止められますか。雨に「止まれ」って言っても止まらないじゃないですか。

それと同じで、上空1m~2mだったら風は読めるんですけど、50m、60mになったらどういう風が吹くか分からないですし、それに対する制御は大変じゃないですか。

それより、屋内で位置制御を頑張ったほうが可能性があると思っています。

町田 amiに様々な起業家の方に登場いただいていますが、ハードウェアをつくる事業は大変なことも多いと思っています。

ハードウェアをつくっていて、「IT系のサービスいいな」と思ったりはしないんですか?

ハードウェアの難しさ

石川 毎日思っています!

パラパラマンガみたいなイメージで、ボタンをぽちっと押したらドローンがぴゅーって浮き上がってきて3Dになって、もう1回ボタンぽちっと押したらぴゅーって飛んで欲しい。それぐらいのPDCAの早さが欲しい。

今の技術では、現実的ではないのは分かっているんだけど、そういう技術があれば、もうちょっと楽になって、スムーズにいくのにな、とよく思っています。

構想して図面に落として加工して、できたものが30m上から落下するということを何回も経験してくると、難しいなと思いますね。

町田 そういう難しさは理解されていない部分もあるんでしょうか?

石川 ハードウェアの難しさは、ある程度理解はされてはいると思うんですけど、僕自身がITがよく分かってないのと一緒で、その方たちもハードウェアをつくったことなかったら分からないと思うんですね。

配線にすごい時間がかかることや、はんだ付けだけでも大変だということも、やったことがない人には正直分からないと思います。

それでも、一般的に「ハードウェアは難しい」ということは浸透してきたと思いますけどね。

スライド3

町田 コメントを拾っていきたいと思います。よしたかさんからの、「屋内のGPSが使えないというのは規制でということですか」という質問です。

石川 いえ、規制じゃないですね。機能的なものです。

町田 もなきさんから「屋内だと、ドローンを飛ばすとぶつかりそうで危ないという先入観があります」とコメントです。

石川 将来的には、ロボットと人が共存できる世界が来るんじゃないかと思っています。

ですが今はコメントの通り、まずは人がいないところ、たとえば「夜間で人が絶対入らない」「人感センサーがあって人がいない」という前提、ルールで飛ばす必要があると思っています。

町田 事実としてまだ危険な部分というのはあるんですね。

石川 ロボットと人の共存についていうと、産業用ロボットは今、流行り出したところですが、ドローンはまだまだと感じていますね。

町田 引き続き質問があったらぜひ伺いたいです。

石川さんは今海外に行かれているという情報がありますが、ハードウェアを売ることについて、日本と海外で大きな違いを感じることはありますか?

「危機感」と「危機意識」の大きな違い

石川 ハードウェアというより、「自動化」や「ドローンで人を代替する」ことを考えたときに、自動化という意味では、海外は「危機意識」を持っている。日本は「危機感」しかない。

この「感」と「意識」の違いってすごく大事だなと思っています。

たとえば何か問題が起こったとき、自分で問題を解決するものを買ってくるか、自分でつくろうと思うことが「意識」だと思うんですよ。

スライド4

一方「感」は、「何か問題起こっているな、うーん、何とかなんねえかな」みたいな感じ。

日本の人たちは、「何とかなんねえかな」と感覚で考えている。

海外の人たちはどうするか。具体的な例でいうと、自分でドローンを買ってきて工場の中で飛ばしてみてぶつけまくって、うーん、難しいですねというような感じですね。

町田 そういった感覚と意識の差みたいなものは日本と海外で違いがけっこうあるんですか。

石川 そうですね。たとえば私が聞いたのは、「インドなんて課題がこれだけあるよ、これだけある課題の中からドローンでできることをあなたたちが選べばいいんだよ」という話。

日本は、「ドローンでできることは何かないかな」って課題を探すじゃないですか。逆なんだと言われて、なるほどねと思いました。

インドだけじゃなく、ほかの国も課題を多く持っていることが分かるので、その中から、「これはドローンでできそうだ」「これはロボットだな」「これはAIだな」というユーザーフォーカス的なアプローチがしやすいと思って、それを目的に海外行っています。

町田 ということは、たとえば海外だと「とりあえず使ってみようか」みたいな意識で使っていただけるんでしょうか?

石川 そうですね。どの課題に対して使ってもらえるかの認識を間違えなければ、使ってはくれると感じていますね。

町田 国内ではまた違ってくるんでしょうか?

石川 昔、自分がいた会社だと、「98.2%の不良率でも駄目だ、残りの1.8%を何とかしろ」「お前ら必死で頑張れ」みたいな指示がありました。

もちろんそれは大事なことなんですけど、「本当にそれが必要ですか」ということはもう1度考えるべきなのかなとは思います。

町田 海外では、ドローンを使っているイメージがありますが、実際に使われているのでしょうか。

石川 屋内に関してはそうでもないですね。

屋外はけっこうありますね。サーフィンをドローンで映したり、釣りでドローンを使ったりという動画がYouTubeで流れているように、いろいろなケースがあると思います。

町田 下町ロケットのような世界観」ですね。

石川 まさに。(笑)

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下町ロケットが放送されていたときに、ちょうど大阪で会社をやっていたので、すごく取材が来て、「うちは下町かもしれないけど別にロケットしてないし」ということがありました。

町田 屋内ドローンはどんな利用シーンが多いのでしょうか。

石川 非常にいい質問なんですね。

よく「物流倉庫の棚卸」が例として言われますが、それはありきたりなので説明はやめておきます。今やろうとしているのは、ショッピングモールの中の点検作業です。何かは言いません、敢えて。(笑)こうご期待!

あとは、東南アジアの工場の例でいうと、工場は広いのでいろんなところにセンサーをつけるんですけど、人間がセンサーの情報を拾いにいくというのは大変です。そこで、とりつけたセンサーを、ドローンが回ってセンサーを収集するという利用シーンがあります。

ほかにもトンネル点検は有名な話ですね。

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町田 そういった活用の方法はたくさんある。その中でも「点検」は大きな活用方法になりますか。

石川 そうですね。ドローンができることは「飛んで、見る」ことだと思っているので、それが一番活かせる分野を考えると、点検・モニタリングになるのかなと思います。

将来的には搬送もできるようになると思いますが、まだまだなので。

エンジニア側からはなかなか多様な使い方が出てこないので、面白い使い方があったら是非教えて欲しいです。

町田 「東京駅でドローンでビール売ってほしい」といった意見もきていますね。

ぜひ何かアイディアがあれば、石川さんまでFacebookなどで送って頂ければ思います。


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