創業してわずか2年。 これまで5億円以上の資金を集めたスタートアップがある。
契約業務の一連のプロセスの最適化に特化したサービスを提供するHolmes(ホームズ)だ。
「契約」と聞くと、難解さや取り扱いにくさをイメージし、思わず顔をしかめる人も多いかと思う。
しかし、日常生活を振り返ってみると、賃貸借契約、業務委託契約、売買契約など、無数の契約に、誰しもが日々関わっているのがわかる。
HolmesのCEO・笹原氏はそこに着目した。
数ある領域の中でも、長らく最適な解が提供されてこなかった「契約」の領域を、どのように変えようとしているのか。契約の本質的課題を解決する、新プロダクトの全貌に迫る。
Holmes Project Cloudで「点を線にする」
Holmes Project Cloud(通称:プロジェクトクラウド)はどのようなサービスですか?
Holmes 笹原さん プロジェクトクラウドは、事業の流れに沿った形で契約をマネジメントできるシステムです。
契約について考えるとき、世の中の認識として、「契約書をどう作成するか、どうレビューしてもらうか、どの様に締結するか、どう管理するのか」といった様に、「契約書の一つのプロセスをどう効率化するか」という視点で議論がおこなわれてきたように思います。実際に、これまではその視点で契約書1通にフォーカスするソリューションが多く出てきました。
しかし、契約書の集合体が「契約」、契約の集合体が「事業」、事業の集合体が「企業」という関係図で捉えると、“契約書”をどうにかするというアプローチはほんの一部のことを解決するに過ぎないんですよね。
一方で、“事業”というアプローチから契約を捉えると、事業を構成するヒト・モノ・カネ(売上や経費等)の資源を仕入れたり、製造したり、販売することはすべて“契約”から成り立っていて、両者は“表裏一体の関係”であることがわかります。そう考えると、企業として目を向けるべきは「契約書」というアプローチではなく、「事業」というアプローチで契約を捉えることなんです。
つまりは、契約書という「点」と、それが「線」で繋がることで事業が推進されていくという考え方こそ、企業の本質的な課題解決に繋がります。
この考え方こそが、今まで提供していた、契約書を作成・承認・締結・管理する「Holmes Contract Cloud(通称:コントラクトクラウド)」に加えて、契約に関わる事業(=プロジェクト)全体のマネジメントが可能となる、プロジェクトクラウドを開発したという経緯です。
プロジェクトクラウドとコントラクトクラウドは別プロダクトですか?
別プロダクトではなく、今まで提供していたHolmesの中に、2つの機能としてそれらが実装されたイメージです。
Holmesにアクセスして、プロジェクトをクリックすると、プロジェクトクラウドに遷移します。
どのような領域で使えますか?
あらゆる領域で活用ができます。
例えば人事では、入社前、入社時、入社後とさまざまな書類が必要になりますよね。
入社される側もですが、管理する側の人事部も、そういった書類の管理は面倒ですよね。パソコンといった物品の貸し出しも必要になってくると、そこに総務部も関わってくるので、更に複雑になります。そういった時にHolmesを使えば、それらを全て、シンプルに一元管理できます。
突然「今までの新入社員の手続きの進捗を確認したい」と言われたときでも、HolmesのプロジェクトURLを共有すれば、一発で進捗や関連資料を見ることができます。
ーなぜ従来のタスク管理ツールではダメなのですか。 世界観は似ていますが、従来のタスク管理ツールでは契約書の作成やレビューをシームレスに移動させることができません。
つまり、従来のタスク管理ツールで管理する対象として「契約業務」があるとすると、作成する際に別のタブやアプリを開く必要があり、やり取りが分断されてしまうので、逆に手間がかかってしまいます。
そういった点で、契約自体をマネジメントする用途においては従来のタスク管理ツールは最適なソリューションとは言えないのかなと思います。
リーガルテックからの脱出
プロジェクトクラウドにはどのような機能があるのですか。
プロジェクトクラウドは、表示が時間軸になっていて、必要な契約を「フェーズごと」に見ることができるのが特徴です。
たとえば、家を借りるときに賃貸借契約を結ぶと思いますが、最初に申込書を出して、その後賃貸借契約をします。
賃貸借契約書を結ぶときも、関連する重要事項説明や、保障会社との保証契約など、さまざまな契約が同時に必要になってきます。
さらに不動産の契約は、借りている間も条件の変更や、更新・解約といった手続きが起こります。たとえ解約する時であっても、原状回復、原状回復の確認、敷金の精算など、さまざまなイベントが発生します。
(例:賃貸借事業において発生しうる契約フローのイメージ)
関わるプレイヤーの視点で見ても、賃貸借契約書は営業が行い、敷金の精算は経理が、さらに保証契約、敷金の保証は保証会社とやり取りが必要だったり。1つの賃貸借契約でも、さまざまなイベントとプレーヤーが出てきます。
そうすると、住宅を借りる例1つをとっても、時間軸やプレイヤーごとに捉えず、契約書という「点」だけで捉えていると、書類の抜け漏れや、進捗管理ができなかったりします。
これをプロジェクトクラウドでは、1つのワークスペースで一元管理できます。
また、関わるプレイヤーがフェーズごとにバラバラに動いていると、その部分の担当者1人だけに知識が偏ってしまい、属人化してしまいます。担当者が変わって、「話が戻った。まったく異なる対応をされた。」なども属人化のマイナスの側面が現れた例です。
プロジェクトクラウドでは、プロジェクトの一連の流れをテンプレート化できるので、属人化させずに、担当者が変わっても、簡単に引き継ぐことができます。
コミュニケーションもHolmes内で取れるので、現場の担当やマネジメント層に関係なく、全ての人が、現在プロジェクトの進捗を簡単に把握できます。
また今まで、契約書単位の管理はクラウドや紙ファイルで管理していたので、既存のソリューションでは、見ただけで更新されているか分かりませんでしたし、調べるのにも膨大な手間がかかっていました。
しかし、プロジェクトクラウドでは情報が一元化されているので、契約書のやり取りの履歴や本人確認書類といった関連資料の検索も楽に行えます。
実際に、複数の大手企業のマネジメント層の方から、「欲しかったのはこれです!」と言っていただけたりもしています。
あくまでも目指すのは「契約の本質的な解決」
PaaS(Platform as a Service)の形になっている気がします。
まだプラットフォームの部分には、そこまでフォーカスしていません。まずは、誰しもが明確にペインを抱えている契約に対して、本質的な解決をおこなうソリューションを提供していきたいです。
プラットフォームよりも、「契約の本質的なソリューション」になることが当面の目標です。
ー本質的な解決ができるとどのような変化がありますか。 契約の課題の解決と言うと、手間の改善や生産性に目が行きがちですが、僕はそうではないと思っています。
契約に関わる人が全員正確に理解できている状態になると、「権利の実現と義務の履行が自然と行われる」と思っています。
1通の契約書にはさまざまな権利や義務が規定されているにも関わらず、その契約の権利・義務の内容を、営業の現場や納品する人は覚えていないですし、そもそも契約書をじっくり見ていません。
そうすると、「この権利が実現されていない。この義務を履行していない」といった衝突が生じます。それを解決しようとすると、余計な経費も発生してしまいます。
本来、権利がしっかり実現されていれば、そういった無駄なコストもかからないですよね。
なので、権利が自然と実現される世の中になれば、そういった無駄なコストもなくなるし、スムーズに権利が実現されるので、シンプルに売上も上がっていきます。
つまり、「企業にとっての最適な契約の大動脈」にHolmesがなり、本質的な課題を解決できれば、企業が自ずと成長していく世界が実現できるのかなと思います。
どれくらいの期間で開発したのですか。
1カ月くらいですね。
去年から、今までHolmesを使ってくださったユーザー企業様や、興味を持って頂いていたユーザー企業様と話しをし、契約の本質的な解決方法をずっと考えていました。
その結果、去年の年末ぐらいにこの構想ができました。
ただ、他にも優先的に取り組む必要のある課題が幾つかあったので、開発に着手したのは今年の3月くらいからです。約1カ月で一気に開発を行いました。
開発陣は「頑張りました!」と、すごいアピールをしてくれています!(笑)
今一番困っていることはなんですか。
このプロジェクトクラウドは、本当に契約に対する本質的なアプローチだと思うので、ぜひ1回使ってみて欲しいです。
少しでも興味を持たれた方は、Twitterまでご連絡を頂ければ、速攻でご返信いたします(笑)。
文・写真:ami編集部