日米ゲーム界のレジェンドが集結し、新たなゲーム・チェンジャーが誕生した。
2020年9月21日、インスタントプレイゲーム開発のPlaycoは新会社設立とシリーズAで約100億円の資金調達を発表。評価額は約1000億円を突破し、設立・調達発表と同時にユニコーンと規格外の企業が誕生した。これだけに留まらず、Facebook、LINE、楽天Viber、SnapchatなどSNSプラットフォーム企業との提携も発表。
シリーズAのリード投資家を務めるのは、セコイアキャピタル・グローバル・エクイティ(Sequoia Capital Global Equities)とジョシュ・バックリー(Josh Buckley)。日本からは本田圭佑氏率いるKSK Angel Fund、孫泰蔵氏率いるMistletoe Singapore、デジタルガレージが投資家として参加している。
新たな市場開拓を目指す、設立間もないグローバル企業Playco。日本を最重要市場と位置付け、4名の共同創業者のうち3名が日米から東京に集結している。彼らの目指す世界とは?謎に包まれた最強ニューゲーム企業を紐解く。
「世界の人々をより近づける」ためのゲーム開発。新市場開拓へ
Playco(プレイコー)は、インスタントプレイゲームのプロデュース・開発に特化する世界初の企業だ。
インスタントプレイゲームとは、スマホなどデバイス上でのアプリダウンロード不要で、世界中の誰とでもすぐにプレイできるゲームを指す。
Playcoの創業者・代表は米国出身のマイケル・カーター(Michael Carter)氏。設立のきっかけは、カーター氏がゲーム企業Game ClosureのCEOを務める中で、後の共同創業者であるジャスティン・ウォルドロン(Justin Waldron)氏から助言をもらったことだ。
「インスタントプレイゲーム市場を新たに開拓するには、まず圧倒的な人気を誇るゲームを創り出すことが必要だ」との思いから、ジャスティン・ウォルドロン氏含む3名の共同創業者とともにPlaycoを設立した。
グローバル展開を狙うPlaycoは、日本を最重要マーケットと位置付ける。その理由は、2010年代に世界で初めてモバイルソーシャルゲーム市場の爆発的な成長を経験した国だからだ。
現在は本社を東京に置き、米国シリコンバレー、韓国ソウル拠点のほか、リモートワークベースで世界中から採用を実施している(本拠地登録は米国・デラウェア州)。
なぜ、会社設立間もない企業が名立たる投資家から、これほど巨額の調達をできたのか。その秘密は、Playcoが目指すミッションとビジネスモデルにある。
Playcoのミッションは「プレイを通じて世界の人々をより近づける」。
創業者のマイケル・カーター氏は、「誰かと一緒にゲームをプレイすることは、他人とつながる欲求を持つ人間にとって、非常に重要な行為だと信じている。会話やメッセージ送信のようにもっと気軽に遊べて、世界中の全ての人が楽しめるゲームを創りたい」と語る。
何十億もの人が同時にゲームをプレイするためには、複数のプラットフォームとの連携が不可欠だ。Playcoはインスタントプレイゲームに特化したゲームエンジンを独自に開発。クラウドストリーミング、Google Play Instantなど、インスタントプレイが可能なすべてのプラットフォームとの連携が可能となる。この技術により、プラットフォーム上で手軽にゲームがプレイできる。
Playcoゲームのスクリーンショット(写真:Playco提供)
ビジネスモデルは、多くの人々が気軽にプレイ出来るフリーミアムモデルだ。基本的なゲームは無料で提供し、ゲーム内の課金と広告で収益化を目指す。
日米ゲーム界のレジェンド大集結。Playcoを率いる4名の共同創業者
日本と米国から集結した、Playcoの共同創業者を紹介する。
Playcoの共同創業者は4名。代表を務めるマイケル・カーター氏のほか、ソーシャルゲーム・Zynga共同創業者のジャスティン・ウォルドロン氏、ゲームプロデューサーの大塚 剛司氏、ゲームプロデューサー兼エンジニアのテディ・クロス(Teddy Cross)氏だ。いずれもゲーム業界に知見が深いメンバーだ。
以前、ジャスティン・ウォルドロン氏はINITIALのインタビューで「日本で起業準備中」と語っていたが、今回発表のPlaycoがそれだったのだ。
4名の共通点は、全員ゲームエンジニア出身な点だ。マイケル・カーター氏はオープンソース接続プロトコルのHTML5 WebSocketの開発者だ。ヒットゲーム作品も多く生み出しており、ジャスティン・ウォルドロン氏はZynga Porker(ジンガポーカー)、大塚 剛司氏はDeNAで「怪盗ロワイヤル」、テディ・クロス氏は初期のHTML5ゲームをそれぞれ開発している。
国際経験も豊富だ。大塚 剛司氏は米国、テディ・クロス氏は韓国でそれぞれゲーム企業の勤務経験があるほか、マイケル・カーター氏、ジャスティン・ウォルドロン氏は数年前に米国サンフランシスコから日本に移住。共同創業者の3名は東京、テディ・クロス氏は韓国を拠点に働く。
Playcoには、ゲームに対する情熱と国際経験があり、世界数十億人を対象にしたグローバル市場を開拓するメンバーが揃っている。
セコイアのほか、日米中心にゲーム・エンタメ領域に知見のある投資家がシリーズAで約100億円出資
最後に、Playcoの新たな挑戦を支える投資家を見てみよう。
今回のシリーズAのリード投資家は、ゲーム開発者・エンジェル投資家のジョシュ・バックリー(Josh Buckley)と、セコイア・キャピタルが母体のセコイアキャピタル・グローバル・エクイティ(Sequoia Capital Global Equities)だ。
日本からはKSK Angel Fund、Mistletoe Singapore、デジタルガレージが投資家として参加。また米国からはSozo Ventures、Caffeinated Capital、Dreamers VC、シンガポールからMakers Fundが名を連ねる。ほかにも非開示の投資家がいる模様だ。
投資家の顔ぶれから、ゲーム・エンタメ領域に知見のあるグローバル投資家が集まっていることがわかる。デジタルガレージはPlaycoの前身であるGame Closureへの投資実績がある。孫泰蔵氏は「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」を生み出したガンホーの創業者だ。
共同創業者たちのゲーム業界におけるこれまでの実績と技術力、世界数十億人がターゲットになる巨大な市場、そしてわずか4年で年商10億ドルを達成し急成長したZynga(現在NASDAQ市場に上場)の成功事例があることから、投資家が集まったと言える。
調達資金は主に、グローバルでの採用、プラットフォーム企業との連携強化のための施策に投入予定だ。すでにFacebook、LINE、楽天Viber、Snapchat等との提携を発表しており、今後これらの企業との連携を強化するとみる。
INITIALではPlaycoの創業者マイケル・カーター氏と、共同創業者のジャスティン・ウォルドロン氏、大塚 剛司氏、テディ・クロス氏のインタビューを敢行。9月30日より「ニューゲーム特集」として、彼らのインタビューをお届けする。レジェンド集合の顛末や、新たに創り出すゲーム、日本を選んだ理由など、巨人が仕掛けるニューゲームの秘密に迫る。
(文:藤野 理沙、リサーチ:平川 凌、デザイン:廣田 奈緒美)